騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

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8章(ラスト)

53話「再戦、四天王との最後のバトル」

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 バルシスを仲間に迎え入れて四天王との再戦に挑むガイア達は武器を構えて四天王と対峙する。四天王達は先程までよりも殺気が強く、このバトルで終わらせに掛かってきている事が伺えた。
 バルシスの姿を見てキャロドゼは皮肉な笑みを浮かべ、他の3人もバルシスには警戒心を見せている。だが、ガイア達もそんな四天王を倒さないとフェランドを助け出す事も、アガルダを倒す事も出来ないのは事実だ。
「まさか貴方様が人間側に着くとは……。愚かな判断をされたまでだ」
『そう思うのであればそう思えばいい。私もアガルダの計画に乗る気は毛頭ないのでな』
「貴方様なら物分かりがいいものと思っておりましたが、見当外れだった様だ。ここで印籠を渡して差し上げよう」
「悪いが、俺達もお前達を倒さないといけないんでね。バルシスばかりに意識を向けられても困るんだが」
「笑わせる。先程の時にも我々には歯が立たなかったのを覚えておらぬか」
 イルスールトの言葉に誰一人反論する事は無かった。だが、それは全員が冷静さを保てている証拠であり、同時にそれは5人の心の強さでもあった。
 確かに四天王は強い、強いがそれだけの強さである事も分かっている。ガイア達には希望という全ての人々の願いがある。
 その希望と託された想いを背負ってガイア達は武器を構えて、四天王へと突撃していく。ヴォルグの切り払いとガイアの素早い突き攻撃がイルスールトとガイエリットに襲い掛かる。
 オベロナスの詠唱を妨げる様にルプスが2本ハンマーで接近戦を仕掛ける。ジェイドとバルシスはキャロドゼに向かって協力して攻撃していく。
 それぞれが混戦し始めるが、ガイアは的確に状況を見極めていく。まずヴォルグの攻撃は小さいけれどもイルスールトとガイエリットにダメージを与えている。
 ルプスの接近攻撃のお陰でオベロナスの詠唱は上手く進んでいない。ジェイドとバルシスの攻撃でキャロドゼは状況的に身動きが取れてないのが伺える。
「キャロドゼ、そろそろいいかぁ?」
「……頃合いだな。見せてやれ、我々四天王の恐ろしさを」
「俺達の本来の姿を見せたのはお前達が初めてだという事を忘れてくれるな!」
 イルスールトとガイエリット、オベロナスの肉体が人型から段々と魔獣へと変化していく。身体のあちらこちらから突っ張った骨が出て身体の部分、部分を強調していく。
 2本歩行だった姿が4足歩行に変化して、見ていた身体の大きさは人型の5倍の大きさを誇っている。唯一人型を維持しているのはキャロドゼだけで、そのキャロドゼは右手に握り締めている鞭の様な刃を持つ剣をしならせて、魔獣と化したイルスールトとガイエリット、オベロナスの頭上に浮かんで見下ろしている。
 ガイアとヴォルグは手前にいるイルスールトとガイエリットに照準を合わせて武器を構えて、ジェイドとルプス、バルシスはオベロナスの尖爪を警戒して距離を取りつつ間合いを図っていく。
「懐に入れば倒せると思ったら大間違いだな。この大きさに対しての攻撃には戦法があるんだよ」
「それも俺達の方が圧倒的有利だって事は断言出来るしな!」
「ほぅ……ならばその戦法で戦ってみるがいい。まぁ、潰されない様に足掻くがいい」
 ガイアは剣に魔法を宿し、足にも魔法を付与してその場を蹴りイルスールトの足を切り払う。対してダメージは入っていないのだろう、足を数回動かしただけでイルスールトは小さく笑った。
 その同じ部位にヴォルグも大剣で切り払うと思っていた以上のダメージが入る。イルスールトはそれに多少の驚きを見せているが足はまだ動くのでヴォルグを蹴り飛ばそうとするが動きが大振り過ぎて上手く当たらない。
 オベロナスとガイエリットはルプスが魔法で視界を遮り、ジェイドの弓がオベロナスの瞳を貫く。バルシスの尖爪がガイエリットの腹部に深々と裂き込み鮮血を流させる。
 キャロドゼはその攻撃に眉を軽く上げて驚きは見せているがそれでもまだ圧倒的有利だと思っているのか、イルスールトとガイエリットの2人に暴れる様に命令しオベロナスには瞳から矢を引き抜き攻撃に参加させる。
 だが、ガイア達はその攻撃を回避しつつ更にダメージを与えていく。その攻防が軽く30分ほど続くとキャロドゼ以外は疲労と小さなダメージの積み重ねでストレスが上がり過ぎて自我の制御が出来にくくなり始めていた。
「ちまちまと……!」
「その身体を潰してやるわ!」
「そんな小さな攻撃で私達を倒せると思っているのですか!」
「……」
「いい感じだな」
「デカさを武器にする相手にはこんなちまちました攻撃の方が効果はてき面だからな。そして、同時に傷口の回復も遅いから同じ場所への攻撃が最も効果的」
 ガイアの魔法剣がイルスールトの右足の足首を切り裂いた瞬間、イルスールトの悲鳴が上がる。巨体を支える足へのダメージが許容出来ない程の傷になってきていたのである。
 そして、同時にルプスとバルシスの攻撃でオベロナスとガイエリットの胴体にも傷が広がり、ジェイドの精霊魔法で矢に風を纏わせ威力を増やして放つ。それがオベロナスとガイエリットの身体に刺さると激痛で2人は暴れ始める。
 キャロドゼは流石に危機感を覚え始めたのか3人の身体に武器を叩き付けて理性を取り戻させると、全員でガイア達への総攻撃をし始める事に。ガイア達もこれが最終的な攻防戦になると察して武器を握る力を込め直す。
「四天王と呼ばれている私達の全力を見せましょう。そして、畏怖しなさい。アガルダ様の支配こそこのオルガスタン大陸の真なる姿だという事を教えましょう」
「俺達は永遠の命は求めない。どんな命だろうと与えられた命を全うする事で初めて生きた事に感謝をする生命だからだ! 支配なんてさせない!」
「俺達の未来は俺達の手で切り開く! お前達魔族や魔神の言いなりの未来なんて望むもんか! オルガスタン大陸の未来は俺達が切り開く!」
「私達が諦めたりしなければ、希望は必ずアガルダを倒せる! 死んでいった者達の為にも私達は負けれない!」
「エルフも人狼も妖精も、人間も、未来を生きる為に力を使う。それが当たり前の様になっているけれど、それが普通の世界に生きて来た僕達の世界をお前達の好きにさせたりしない。僕達の世界は僕達が守る!」
 ガイア達の身体から溢れる光の力。それに対抗するように四天王からは漆黒の闇の力が溢れ出す。
 ぶつかり合う2つの力を感じながらバルシスはこの戦いに何かを見出そうとしていた。ガイア達の力が正しいのか、それとも四天王達の力こそがこのオルガスタン大陸には必要なのか。
 世界樹はこの戦いの果てに何かを願っている。それをバルシスも見届けてみたいと思ってしまう。
 イルスールト達の闇の力が刃の様に鋭い形を形成し、対してガイア達の光の力はその鋭い形の闇の力を砕くかの様な鉄壁の守りを見せる形に形成されて、対抗する。その2つの力が正面からぶつかり合った。
「我々の支配こそが正義なのだ!」
「違う! 支配なんて誰も望んでいない! 俺達は自分の手で切り開いた未来を進む事が希望なんだ! それこそが俺達の正義だ!」
 ぶつかり合えばどちらかの力は負けてしまう。闇の力が強いオジナル城の中であってもガイア達の光の力は留まる事も知らないで増幅していく。そして、四天王達が生み出す闇の力を上回って闇を飲み込んだ。
 光が四天王達を飲み込み、身体から闇の力を奪い取る。そして、四天王達は魔獣だった3人は人型に戻り地面に伏せているがキャロドゼは最後まで気丈に立って武器を構えていた。
 ガイア達も疲労困憊ではあるが、キャロドゼが武器を構えている以上武器を降ろしたりしなかった。キャロドゼは最期の力を振り絞って1歩前に身体を進めるがその前にバルシスが立ちはだかる。
「邪魔を……するなぁぁ!」
『お前達は光に負けた。それが何を意味するかは知らぬ訳ではあるまい。もうここで安らかに眠れ。お前達の存在は私が永遠に刻んでおこう』
「そんな……そんな屈辱を私達は望んでいない! 魔族として最後まで私達は戦う! 戦う牙を失っても心があれば戦える!」
『それが愚かな事だと気付いているのではないか? お前達はもう闇の力を扱うだけの力も器でもない。もはやお前達は捨て駒なのだと』
 バルシスの言葉にキャロドゼは唇を噛み締めて尚も食い下がろうとする。だが、その身体を闇の剣が貫く。
 ガイア達もバルシスもその剣がどこから出てきたのかは分からない。だが、剣は明らかにキャロドゼの心臓を狙って貫いた。
「ガハッ……! こ、これがお答え……なのですか……アガルダさ、ま……」
『もはや人間達に負ける様な魔族など必要などない。人間達の手に掛かるぐらいならば私の手で殺してやろう。それが情けだと思え』
 どこからか聞こえてくるアガルダの声にキャロドゼは瞳から血の涙を流して、自分の心臓を自分の剣で貫く。最期の瞬間まで魔族らしく生きる事と死ぬ事を選んだ末路。
 四天王を撃破したガイア達は静かになると不意に背筋が凍る様な寒気を覚える。バルシスがコツコツと足音がする方向に身体を向けると、アガルダの器にされたフェランドの姿をしたアガルダが歩いてきていた。
『四天王でも役に立たないとはな。やはり完全体なる私の手で葬り去る必要があるか』
『アガルダ……まだ運命に逆らう為にその御子を使うか』
「フェランドっ!」
『私は私の運命を変える。その為に利用出来るものは何でも使うぞ。私は2度と死んだりしない。2度と転生を繰り返す運命に従う気はない。今、ここで! 今こそ輪廻転生の呪縛から解き放たれて新しい世界の王者となるのだ!』
『愚かな。お前の運命はどう足掻こうと変わる事の出来ぬ宿命だと何故に理解しない。お前の存在は輪廻転生において変えようのない存在だというのに』
 バルシスは鋭い瞳で完全体のアガルダを見つめる。だが、アガルダもフェランドの身体を使ってまで自分の運命を変えようとしている猛者。
 お互いに相容れる事が出来ないこの運命の中で、ガイア達はその運命を打開する為に身体に力を込める。アガルダを倒せなければオルガスタン大陸の未来は終わりの未来となって希望も平和も無くなる暗黒時代の未来が待っている。
 そして、フェランドの魂を解放する事も出来ないままで永遠の暗闇に囚われてしまうだろう。だが、その運命をガイアもルプスもジェイドもヴォルグも受け入れようとは思っていない。
 最終決戦の幕が静かに上がり始める。フェランドの魂を救えるのは光の力を持つガイアのみ――――。
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