【R18】闇夜の龍は銀月と戯れる

やまたろう

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第三皇子 ナルシス

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 制圧の力を使って他国を支配する帝国では、高能力を受け継ぐ子供を作る事に国力を注いでいる、しかし年々高能力者の出生率は落ちていた。


 その要因の一つは、本来護るべき血統を護らず能力主義で突然変異の高能力者を皇帝にし続けた事にあると、第三皇子のナルシスは考えていた。


 ギデオンも自分の存在は突然変異だと考えている、そして突然変異が子孫を残しても同じ力は持ち得ないだろうとも。


 真珠色の髪と赤い瞳を持つナルシスは【東雲しののめの龍】と呼ばれている、髪や瞳の色が濃いほど能力が高くなる通説を見事に覆す彼もまた、突然変異なのかも知れない。


 ギデオンは今、自身の私室でナルシスと密談をしている。二人は以前から今の帝国の在り方に疑問を持ち意見を交わしていた、自分達の代で制圧の支配を緩やかに解いていく事が出来る様に、共に未来を模索していた。


 その一つが楽園計画で、制圧とは違う能力での緩やかな支配の脱却を目指す、繋ぎとして使える精神系魔力のデータを収集する事を目的とした施設が楽園だった。

 二人の考え方は周囲と隔たりがあり、今の帝国を支持する保守派の者達には理解されず疎まれている。二人は保守派を刺激しないように出来るだけ目立たない行動を取っていた。


 楽園を帝国では無くジュール王国に作ったのも保守派の眼を遠ざける意図があったからだ。
 ギデオンはナルシスへ問い掛けた。


「ナルシス、楽園の計測データは取れたか?」


「いや、芳しくない。楽園の稼働期間が短くて思うようなデータが収集出来ていない、精神系の魔力保持者もあまり集まらなかったし、今回は失敗だな」


 ナルシスはギデオンより年上で知性豊かな落ち着きのある男だ、制圧の他にも他人の魔力の質が分かる能力を持っていた。


「そう言えば青髪青眼の変わった奴がいたな、確か名前はジェラルドだったか?、魔力を持っている事は確かだが、その性質がまるで分からない不思議な男だった」


 データを見ていたギデオンはその男に興味を引かれた、ナルシスが分からない魔力とはどんな能力なのか、楽園が閉鎖された今はもう会えないのが残念だ。


「少ないデータから見ても制圧に勝る能力は無いか・・・・やはり精神系では制圧が一番だな・・・・」


 そう呟くギデオンに、ナルシスは事前に用意していたお茶を差し出した。


「だから帝国の支配が終わらず連綿と続いているのさ、制圧から逃れるのは簡単な事じゃない。心の中でどんなに抵抗しても制圧者には逆らえない」


 ギデオンは差し出されたそれを疑わずに飲んだ。少しして体に痺れを感じ始めてナルシスを見やるとルーベンが部屋に入って来た、後ろにサイラスもいる。

「やあ、ギデオン。調子はどうかな?」


「ルーベン!・・・・・・・・ナルシス、まさかお前まで」


 ナルシスは曖昧に微笑んで佇んでいる、その姿からは内面の葛藤は分からない。ルーベンがサイラスや他の皇子に制圧をかけている事は知っていた。だがナルシスは高能力者だ、ルーベンの制圧は効かない筈だった。


「驚いたか?、ナルシスを落とすのは簡単じゃなかったさ、毎日少しづつ制圧を掛け続けて時間はかかったが上手くいったよ。帝国の次の皇帝には僕がなる保守派も僕の味方だ、だから君には消えて貰う」


 ナルシスがギデオンの後ろへ移動して、背後から羽交締めにしてくる、体が痺れて動けないギデオンはされるがままだ。


「ギデオンの私室に暗殺者が入り、君は殺された、そう云う筋書きだよ」


 ナルシスがギデオンの体を膝立ちにさせて胸を張らせると、ルーベンの後ろから剣を持ったサイラスが歩出る。


「兄弟に見送って貰えるんだ、嬉しいだろう?、にいさんギデオン


「ルーベン!、貴様!」


 羽交締めにされたギデオンがルーベンを睨んで吠えたその時だった。


 ばーーん!


 ギデオンの部屋の扉が勢いよく開いた、そして母国へ送った筈のキュリアスが怒り心頭とばかりに怒鳴り込んできた。


「ギデオン!、よくも僕を刺客に・・・何をしている?、止めろ!」


 キュリアスは自分の見ている光景を直ぐには理解出来なかった、ギデオンの身に何か良くない事が起きている。

 ギデオンも自分の眼で見ている光景が信じられない、死ぬ前に自分の見たい幻覚でも見ているのだろうか。


「キュリアス、本当にお前か?」


「これはどう云う事だ?、ギデオン」


 キュリアスは足早にギデオンの方へ向かったが、途中でルーベンに捕まり拘束される。


「凄いタイミングで戻って来たね子猫ちゃん、丁度良い君にも見せてあげるよ、君を軟禁してた憎いギデオンが死ぬところをね」


 ルーベンの言葉にキュリアスは青ざめて拘束を外そうと暴れる。


「ギデオンを殺す気か?、僕を離せ」 


「あ~子猫ちゃん暴れないで、ギデオンを始末したら君を僕の奴隷にしてたっぷり可愛がってあげる、もうちょっと待っててね」


 ルーベンはキュリアスの華奢な体を片手で抱き締めて動きを封じると、もう片方の手で腰や尻を撫でる。


「離せ!、僕に触るな!」


 キュリアスが暴れると更に拘束する力が強くなり、ルーベンが益々調子に乗る。


「可愛いなぁ、流石にギデオンの制圧に上書きするのは無理だから今まで手出し出来なかったけどお前はもう僕の物だ」


 ルーベンはキュリアスの雄を服の上から掴んで握り込み耳元で凄んだ。


「やめろ!、僕に触って良いのはギデオンだけだ!、んっ、ギデオン!、ギデオン!」


 嫌がりギデオンの名前を呼ぶキュリアスに、ギデオンも力が入らない体でルーベンの方へにじり寄る


「キュリアス!、ルーベン、キュリアスを離せ!」


 ルーベンは面倒臭そうな顔でギデオンを一瞥するとサイラスを見て指示をだす。


「うるさいなぁ、サイラスやれ」


 ルーベンに制圧されたサイラスが剣を持ってギデオンに近づいて行く。


 キュリアスは急いで傀儡の魔力を展開させる、距離のあるサイラスやナルシスは操れないがルーベンは操れる。


 ルーベンを操り自分の拘束を外したキュリアスはギデオンの前に飛び出す。サイラスの剣はもうギデオンを切る直前だった。


「来るな!!、キュリアス!!」 


 ギデオンの声が聞こえたが、キュリアスは止まらずに自分の体で彼を庇う、ギデオンを助ける事しか頭に無かった、そしてキュリアスはサイラスの剣撃をうけた。










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