あらざらむ

松澤 康廣

文字の大きさ
9 / 21

しおりを挟む
「待っていても仕方がない。今、鎌倉の玉縄城は改築中だ。小田原に負けないくらいの堅固な城になるらしい。そのための資材が不足しているということだ。だから、栗の木を切って、持って行く。お前も一緒に行くのだ」
 権現山城の戦いから2年が経った。
 河井の焦燥は極まっていた。開拓者が増えなければ、この村を放棄するしかない。
それは絶対、避けなければならないことだった。

 河井家の裏の森には数えきれない位の栗の木があった。以前住んでいた村の住人が育てたものなのだろう、適度な間隔で整然と育っていた。どれも立派な大きさの栗の木になっていた。そのうちでも、最も幹の太い栗の木を2本切って、荷車に積んだ。
 最初は直接城に栗の木を運んで、何とか交渉して城の有力者に会い、村に人を呼んで貰える様に依頼しようと河井は考えた。しかし、そううまく事が運ぶとは思えなかった。栗の木は奪われ、話は聞いて貰えず、早々に追い払われるかもしれない。そこで、考えを変えた。境川の河口の、材木を城に供給している材木専門業者に頼むことにした。 河井は幸田川の向こうの山越えの村の百姓から情報は得ていた。そこの村も材木を売って生計を補っていた。河口の材木専門の運送業者にもっていけば、いくらでも高く売れる……。
 その運送業者に頼み込んで城に運ぶ。都合のいい話だが、今後、必ず栗の木を売るとでも約束すれば、協力してくれると踏んだ。そして、それしか方法はないと河井は考えた。
 二本の栗の木の枝を切って運びやすくし、前日に荷車に積んだ。結構な重さになった。河井と三郎の二人で最初は行く予定だったが、最終的に河井と三郎と幸太で出発することになった。

 翌朝早く、三人は出発した。
 一山越えて、和田村に入る手前で、鎌倉道かまくらみちに入った。そこから境川沿いを下り、飯田村に出た。そこで境川を渡った。境川では、荷を降ろし、先ず荷車を運んだ。それから、三人で栗の木を肩に乗せて渡った。三人いても三度も往復しなければならなかった。
 飯田からは境川を右手に見ながら下った。
 戸塚に入ると、広い水田が広がった。
 前方かなり離れたところに小高い山があった。そのずっと向こうに玉縄城はあると河井は言ったが、どの道を通ればそこに行かれるかは河井も分からないようだった。
「この村からもたくさん働きに出ているよ。それらしい人間についていけば大丈夫だ」道を尋ねた百姓はそう言った。
 三郎は玉縄城への道を尋ねる理由が分からなかった。予定を変えて、そこに直接行くつもりなのかと思ったが、相変わらず、河井は川沿いを歩いた。城の場所を確認したかっただけのようだった。
 境川は海に近づくほどに川幅を広げ、海への注ぎ口では幾艘もの船が並行して通行可能なほどの川幅になっていた。三郎は、相模川もこうだったなと、初めて相模の地に足を踏み入れたあの日を思い出していた。
 河口の港の岸壁に屈強な若い男が腰を下ろしていた。男は荷車を引く三人を興味深そうにじっと見ていた。その男に河井は話しかけた。
「材木を玉縄城に運びたいのだが、だれか仲介できる人を紹介してくれないか?」
 男は声をかけられるのを待っていたかのように、満足げな表情をして、言った。
「栗の木を売りに来たのかと思ったが……。これは実に立派な栗の木だ。これなら、高く売れる。うちの主人が玉縄の城に材木を運んでいるから、ここで売ったらいい。主人は必ず買い取るはずだ。ちょっと待っていてくれ。呼んで来るから」
「いや。売るために持ってきたのではない」河井は、これを提供して、村に開発者を送り込んでもらえるよう交渉したいのだということを若者に告げた。
「城に知り合いでもいるのか。そう簡単に城には入れないぞ。そうしたいのなら、なおさらうちの主人に頼めばいい。きっと何とかしてくれる。ちょっと待ってくれ。呼んでくるから」
 河井の返事を待たずに、男は決めてかかり、両手で拝むしぐさをした後、急ぎ振り向いて、走り去った。

 それから、結構待たされた。しかし、予定通りと言えば予定通りだ。そう簡単にことは運ばないものだ。うまく会えるようだったら、実情を話して、主人に分かってもらうしかないと河井は決めていた。

「主人が会いたいと言っている。栗の木を見たいと言っているから、それを引いて、一緒に来てくれ」
 男は走って戻ってくると、苦しそうに息をしながら、言葉を吐き出した。

 材木屋のある場所は、予想外に近かった。それにしては男の戻るまでの時間が長かった。きっと、主人への説明に手間取ったのだろう、ただ売りに来たわけではないことをうまく伝えられなかったのだろうと三郎は思った。
 広い材木置き場の前に主人は立っていた。しかし、そこには材木は一つもなかった。木の皮が散乱していて、それがそこが置き場であることを示していた。
「材木は今一本もなくて困っていたところだ。全部城に売ったのだ。今はどんな粗末な木だって売れる。特に栗は高級品だ。高く売れる。そいつは立派な太さだ。これなら、相当の値になるだろう。しかし、売らないで、ただであげる何てもったいないなあ。が、まあ、目的が人集めならしょうがない。これならいくらでも殿様は言うことを聞いてくれるに違いない。勿論、殿様には会えないが、私に任せてくれれば、そのへんのお偉方には会えるから、希望は絶対叶う。交渉は任せてくれないか。そのかわり、今後はこっちに売ってもらう。それでお互い様だ」材木屋の主人は、河井に近づき、河井の傍の荷車の栗を見ながら、言った。
 背丈もあり、主人を紹介した男以上に屈強で、さらに髷も結っていて、河井よりもはるかに若かったが、如何にも武士に口利きが出来そうな、剛力な男だった。男は山角惣兵衛やますみそうべえと名乗った。
 「もし、交渉がうまくいかなかったら、私に人を集めさせてくれないか。そのくらい、私にだってできる。使用人になるわけではなく、土地を貰えるということなら、漁を止めて農民になりたい者はこの辺にもいくらもいる。明応の地震は知っているだろう。あれで家族、土地を失った漁民や百姓は何人もいるから、一言声をかければすぐに喜んで移住に同意するだろう。何しろ、あてもないのに、城に行くのは止める事だ。理由をつけて栗の木を奪われる、それで追い返される、それだけだ。城は大慌てで作っている最中だから、忙しくて、普請ふしんと直接関係のない者の話など、まともに聞いてはくれない」
 河井も城に行けば必ずうまく行くと思ってここまで来たわけではなかった。この話は渡りに舟でもあった。信用するしかないな、と河井は覚悟した。

「この男も遠く紀州から、わが村にやってきた。もう6年になる。どうみても幸せそうだろう」河井は三郎の肩に手を回しながら、言った。三郎は慌てて笑顔を作った。幸せには間違いはなかった……。
 河井の交渉上手も三郎には勉強になった。河井は苦手なことはないように見えた。
 河井の出した条件は一緒に玉縄城までつきあわせてもらうというものだった。材木屋の主人が出した条件は栗の木は城に献上する。それでいい。そのかわり今後も毎年材木を購入させてもらうというものだった。河井は栗ばかりでは困ると言った。材木屋は栗以外でも良いと言った。それで相互に了承し、一緒に城に向けて出発することになった。
 来た道を少し戻り、鎌倉方面に向かった。すぐに、山がちの地形になった。

 玉縄城の追手門おうてもんは山と山の間を蛇のようにうねった道を延々と歩いた末に突如とつじょとして前方に現れた。
 追手門は普通の体躯たいくの男ではとても抱えきれないくらいの太さの二本の柱で築かれた大門で、扉も板やさんが幾重に分厚く貼り付けられていた。その上には大きなやぐらがあった。そこから武装した二人の兵が見下ろしていた。
 門の両側の土手は植物が全て綺麗きれいさっぱりぎ取られていて、一面赤かった。赤土は水を含むと滑りやすくなるため、土手の表面に厚く塗りつけているのだ。
 土手の上には一面柵が築かれていた。そこに何本もの旗がひるがえっていた。道と土手の間は深いほりが作られていて、そこを越えないと土手を登れない。その濠は深いうえにぬかるんでいて、そこに落ちたら容易に出ることは出来ないだろう。赤土で滑る土手を登るのは困難だから、敵は追手門を突破するしかない。土手の上から限りなく矢が降り注ぐだろう。一つの門を突破してもその先にある幾つもの門が行く手をはばむに違いない。全ての門がこのような仕組みだろうから、この城は容易に落ちないのは確実だった。
 材木屋は門を警護する武士に話しかけた。
 話はついて、門が開かれ、一行は荷車を押して、坂を登って行った。
 坂の途中で、材木屋は荷車を押していた河井ら三人をその場に留め、少し離れた溝の掘削くっさくを指示していた武士に声をかけた。交渉を始めたようだった。
 その武士の格好から想像するに、とても名の有る武士には見えなかった。
 しばらくすると、二人がやってきた。武士は言った。
「話はわかった。これだけの栗に見合った立派な農民を必ず村に送る。開発地を増やすのは我が殿の願いでもあるから」と。
 河井は何度も何度も頭を下げた。

 河井は心待ちに待った。それは三郎も同じだ。しかし、農民を送るという約束は翌年になっても果たされなかった。所詮しょせん、材木屋が交渉したあの武士に力がなかったのだろう。そもそもその気があったかどうかもあやしいものだ。
 それでも、河井は、その年も、栗の木を伐採ばっさいし、三郎と幸太に荷車を押させて、材木屋に運んだ。それが約束だったからだ。その際に材木屋に約束が果たされていないことを河井は強く訴えた。
 しかし、翌年になっても約束が果たされることはなかった。           
 河井の落胆があまりにも大きかったことは申すまでもないことだが、これが三郎に思わぬ幸せをもたらした。
 急に、三郎と寿々の縁談話が河井家の話題にのぼったのだ。
 河井の落胆振りが余りに大きかったことに心を痛めた奥方が河井を喜ばせようという目論見もあって、寿々と三郎の縁談を進めることを河井に進言したからだ。河井に異論があるはずもなかった。
 永正12年(1515年)秋、庭にむしろを敷いて乾していた稲を皆で土間に移す作業を終えると、二人を祝う宴会が始まった。
 寿々は当麻で買い揃えた上等の赤の小袖で身を包み、三郎もはかまを履いて、いつも河井と奥方が座る、奥の席に座らされた。目の前には、幸太と甚助が捕えてきた、焼いた鰻が置かれていた。
 河井は上機嫌だった。
 河井は泥酔した。
 幸太も甚助も顔を真っ赤にしていた。
 奥方は楽しそうにそれを見ていた。
 河井は二人の息子たちに言った。
 お前たちの相手もじきにみつけるから、心配するな。
 二人は共に頭をかいて、同時に下を向いた。

 婚約しても生活は今までと変わることは無かった。
 寿々は奥方と寝所を共にし、三郎は男たちと寝た。
 それでも変わったことは一つあった。
 三郎は、ここからこの地で太田家が始まるのだから三郎ではふさわしくないと河井に指摘され、勧められるままに名前を太田忠良ただよしと変え、さらに出雲守いずものかみとなった。何故、出雲なのかという三郎の質問に、河井は出雲の地はかつて日本の中心だったのだ、だから肥前守より偉いくらいだと説明した。私がその呼称に不満を持ったと勘違いしての的外まとはずれの返答だった。
 河井は一年かけて、河井の家から少し離れた山伝いの地に二人の家を建てた。甚助、幸太に名前を変えた忠良、そして奥方も加わって、総出で建てた。
 その地は幸田川の作る沼地が尽き、幸田川の向きが北側に変わる、幸田川がよく見通せる高台だ。
 どんなに雨が降っても、ここまで被害は及ぼさないだろうと河井は言った。三郎が来てから一度も洪水は起きなかったが、河井は今も恐れていた。
 家を建てるとき、三郎の家のすぐそばには土民の家が残っていた。村にある唯一の、過去に人が住んでいた跡だった。それ以外の家は流されてしまったのだろう。この家までは水がせまらなかったということなのだろうから、その家をつぶして新しく家を建てても大丈夫だと思ったが、その上はもっと安全なのと、そこの家をつぶせば、そこを畑地にできるから、その方がいいのだと河井は言った。
 河井は太田家は河井家と同格だから、立派な家にするのだと言ったが、三郎にはそれが理由とは思えなかった。溺愛できあいする寿々のために、河井は立派な家を建てたいのだ。どんなに費用と時間を費やしても。
 寿々は河井に新たな家について、たくさんの注文を出した。河井はそのすべてを了承した。                                     
 永正13年(1516年)秋、忠良と寿々は完成した新居に移り住んだ。
 転居した夜、新居で河井一家と新婚夫婦のうたげが行われた。
 河井はこの日も泥酔し、しつこく、これからの生活について忠良に説教した。奥方が間に入って、河井をたしなめた。そのうちに、河井は泣き出した。寿々を頼む、寿々を頼むと繰り返した。
 奥方がなだめ、ようやく宴は終わりとなった。河井は奥方に支えられながら、よろよろと山のわずかに残る月の光を浴びながら、去って行った。
 その夜、月明かりの乏しい薄暗い闇の中で寿々を抱いた。寿々は先ほどまで着ていた淡い黄色地の小袖を掛け、月明かりを背にして、横向きになり身を固くしていた。
 寿々は無言だった。
 忠良は体に力がみなぎるのを感じた。小袖をぐと、裸体があらわになった。白い乳房が見えた。寿々はさらに身を固くした。堅い身体をほぐビすのに時間がかかった。
 寿々の胸に顔をうずめながら、忠良は寿々が明日、どのような顔を自分にしてくれるのかと考えていた。

 寿々との共同生活が始まった。
 寿々は何でも忠良と一緒に行動した。農作業もいとわなかった。だが、当然出来るだろうと思うことが寿々はできなかった。例えば、掃除だ。掃除をしないわけではないが、丁寧ではないのだ。万事がそうだった。食事も洗濯も同様だった。
 そのことを、忠良は不満に思わなかった。寿々は溺愛されたのだ。寿々が満足に出来なくても寿々に責任はない。時間をかけてできるようになればよい。
 忠良も寿々を溺愛した。
 そのうちに子どもが生まれた。女の子だった。寿々はふみ名付けた。
 子どもができると、寿々は忠良と行動を共にすることは無くなった。忠良は随分と落胆したものだ。
 寿々はふみの世話で生活の大半を費やした。食事すら、忠良が作らなければならないときもあった。ふみがぐずるからだ。
 それでも、忠良は満足だった。やることは決まっていた。
 河井の家と同じように家の周りに畑地を増やす、たやすく開墾出来そうな地を探し、そこを焼いて黍を植える、裏には炭小屋も作らなくては……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...