シリーズ 愉快なQちゃん -わが母の記ー

松澤 康廣

文字の大きさ
10 / 10

ケアマネージャーの前で

しおりを挟む
 ここで暮らすようになる数年前のことですが、Qちゃんが寝てばかりいて、歩くのも億劫な様子だったので、次女がどんなものかと介護認定を頼んだそうです。
 しかし、Qちゃんは、判定者の前で、次女も唖然とする、見事な元気っぷりを示し、認定はかなわなかった。

 これ、よくある話だそうです。Qちゃんのケアマネージャー Sさんが教えてくれました。

 そこで、私は考えました。
 ケアマネージャーといっても、Qちゃんには何が何だか分かりません。ケアの説明をしたら、要らないって怒るかもしれないし……。
 そこで、
「Qちゃんの健康状態を調べに来るお医者さんだよ。Qちゃんも、若いとは言えないからね」と善意の嘘を以て説明しました。
「だから、元気な様子を見せないと、病院に行くことになっちゃうよ」

 病院が大嫌いなうえに、病院に行かず、健康診断も受けず(困ったものです)、#単語健康にお金をかけずに健康であることが大自慢の・__#Qちゃんですから、当然、私の期待に応えてくれます。

 何と言っても筋金入りの怖がりですから、普段のQちゃんは、壁に手を当てながらゆっくりしか歩かないのに、
「どのくらい歩けます?」の「お医者さん」の質問に、見事に期待に応えて実践してくれます。

 両手をしっかり振って、背筋をピン! 
 何とも速く歩きます。

 私が要求すれば、腹筋も背筋もスクワットも、何でもやります。
 だって、Qちゃん、この日のために鍛えてきたのですから。
 毎日、腹筋、背筋、スクワットに励んだのです。

「歯磨きは出来ますか?」
 Sさんが意外な質問をした。
「そんなの、当たり前ですよう……変なこと聞くねえ」とQちゃん。
 私の方を見て、Qちゃんが同意を求めた。

 Qちゃんは、総入れ歯。歯磨きはしません。

 我が家に来た時、Qちゃん、入れ歯はありませんでした。
 何度も無くしたから、姉たちが購入を止めてしまったからです。
 寝る前に入れ歯を外して、それでどっかにいっちゃったのか、外した入れ歯をごみと思って捨てちゃうか、が姉たちの解釈だ。

「総入れ歯ですから、歯磨きはしません!」と私。
 嘘をつくわけにはいきません。
 でも、本当に歯磨きしているとQちゃんは思っているのかなあ???などと考えていると、Qちゃんはこんなことを言いました。

「ひょえー、お前は総入れ歯かい。なんとまあ」



          (ブログ「Qちゃん 103歳 おでかけですよー」より改稿)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...