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お世話になる街

心配される

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ギルドに戻った俺は取り敢えず今日は家がないということでブランの家に泊まることとなった。


「本当に申し訳ないな。」

「気にしなくていいですよ!」


シャワーを浴びて濡れた髪をタオルで拭いているとニコニコとしたブランが温かい紅茶を用意してくれていた。


「いや、下着や服まで借りたのに気にしないわけにはいかないだろ?」


オーダーメイドで頼んだのはいいが、その分来るのが遅いようで、下着やシャツなどブランから一時的に借りることになった。

身長はあまり変わらないはずだが、俺のほうが筋肉があるのかもしれない。

少し胸周りやお尻の部分がきつい。

借りたシャツを胸元まで開けると少し楽になる。


「…少し、きついですか?」

「っ、ああ。」


隣に座ったブランに胸元を撫でられてピクッと反応してしまう。


「すみません、俺の替えしか用意できなくて…。オレッドの方が背が高いのでそこから借りるか悩みましたが、あいつのを着せるのはなんだか嫌だったので…。」

「俺はブランので良かった。だから気にしてない。」


俺がそう言いながらブランの手に自分の手を合わせると、うっとりとした顔でブランが近づいてくる。


「そういうこと言ってると、また襲っちゃいますよ…?」


鼻がくっつくぐらいの距離に思わず目を瞑ってブランの手をぎゅっと握る。

…?

なかなか来ない感触にゆっくり目を開けると、綺麗な茶色の瞳のブランと目が合う。

しばらくジッと見つめ合うとじわじわとブランの頬が赤くなり、その後すぐに俺から目をそらした。


「…………冗談です。流石にお爺様の学園の生徒になる人に手を出したりはしません。」


そう言ってブランは俺から少し離れると、こちらを見ないようにか、前を向いた。

一度出されてるし、もう一度手を出されてもいいんだが。

少し虚しい気持ちになりながらも目の前の紅茶を頂く。


「それにしても、ヴェルデはこの世界の常識についても覚えてない節がありますよね…?」

「…すまない。」

「いやいやっ…いいんです!…というか、そういうことを言いたいのではなくて、知らないことが多いと学園でも大変だろうと思いまして。」


最悪の場合、女神がいるから大丈夫だぞとはブランに言えないが…。 

特に心配はいらないと答えるか?

…いや、女神も自分に都合が悪いとこは教えてくれないかもしれないから聞いとくのもありかもしれない。


「確かに、失礼な事とかしたら不味いよな…。」

「失礼…といいますか、ヴェルデの場合は…。」


そこまで言ってブランは口ごもると、下に俯いてしまう。

なんだ、そこまで言って止められると気になるんだが。


「俺の場合は、なんだ…?」


催促するため、前のめりになり顔を覗き込む。


「うっ、…っヴェルデの場合、どこの誰かも分からないやつに騙される心配が…。」


騙される…?

昔から人を騙すことはあっても騙されるなんてこと特になかったんだが…?

人の裏を見るのは得意だからな。

というか、そもそもなんでわざわざそんなことするやつがいるんだ?


「他の生徒に俺を騙すメリットなんてあるのか?」


俺を騙すことで利益を得るやつなんているか?

記憶喪失で金なんて持ってないぞ?

俺が不思議そうに首を傾げると、眉を下げたブランに頭を撫でられた。


「あまり、自覚がないのかもしれないですが…ヴェルデは自分が思っている以上に容姿が整っていて、能力もあります。無理矢理にでも手に入れたいと思う人が多いと思うんです。」


容姿…はそうかもしれないな、受け身である俺でさえ少し欲情してしまうほどの体である。

そりゃ、そういう人からしたら格好の獲物かもしれない。

能力もロウリーが言ってたように光属性の魔法は珍しいんだろう。

でも女神様はそれが狙いでこの体にしたんだろうからな。

それを防ぐことはしない。


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だ。」


笑顔で俺が伝えるが、まだブランは心配そうな顔をしている。


「…そんなに俺は信用ならないか?」


悲しそうに俺が俯くと、ブランは大きく目を見開き俺をすぐに抱きしめた。


「すみません、悲しませるつもりはなかったんです…!ただ、一人で貴方を向かわせるのが心配で…。保護者として、心配なんです。」


一人…か。


「…オレッドも先生としているんだろ?」

「あいつはだめです。普段はまともなのに酒飲むと豹変するセクハラ野郎なので。」

「普段まともなら大丈夫なんじゃ…?」

「俺知ってるんですよ、あいつ学園でもこっそり、酒、飲んでますよ。」


それはなんとも…。


「だからオレッドにも近づいちゃいけません!」


俺の保護者は厳しいようだ。


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