第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく

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冒険に出掛けるまでのお話

僕の記憶

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「魔王様ッ!…勇者が!勇者が、この城を攻めてきているようですッ!!」


全身黒い鎧の騎士が息を切らしながら慌てて部屋に入ってくる。


「…フッ…好きにさせろ。どうせ我に負ける。」

「…魔王様…流石です…!」


浅黒い体をした体格のいい男は慌ててきた騎士を鼻で笑う。

その近くにいる黒髪赤目の男はとても嬉しそうに浅黒い体の男を褒めている。

騎士の男は顔を真っ赤にした。


「…し、失礼しましたッ!」


騎士は魔王の言葉に恥ずかしくなったのではない。

魔王と側近の姿を見て顔を赤らめていた。


「…にしても魔王様…勇者が来るというのに私とこのようなことをしていて本当によいのですか?」


騎士が居なくなったのを見計らい、側近は寝そべった自分の腰に跨っている魔王に問いかける。


「…はぁんっ…よ、いのだ。あの勇者は弱い…っ…どうせ、我には勝てぬ。…っ…ベルナードも、我の力を疑うか…?」


ぱちゅん!

魔王は側近の腰に自身の尻を打ち付ける。


「いいえ…疑ったりなど私はしません!…ただ魔王様は少々うっかりなところがありますゆえ、少しだけ心配もあるのです。」

「心配…?何を…」


ドカン!と部屋のドアが炎で燃やされる。


「来たか…。」


そう言うと魔王は自身の体を黒い闇で包む。

次の瞬間にはシャツもズボンも黒な全身真っ黒な服に変わる。

すぐさま側近にシーツをかぶせる。

コツコツと人が近づく音がする。


「…お前が魔王だな。」


そう言って現れた金髪碧眼の青年は、後ろに魔法使いだろう黒髪黒目の青年を連れている。


「そうだが?貴様が勇者だな。」


そう答えた瞬間、勇者は聖剣を両手に持ち、稲妻のように輝かせるとそのままこちらに斬りかかってくる。


「…遅いな。」


魔王は勇者の腕を掴み組み伏せるとそのまま口を塞ぐ。


「…んぅっ……!?」


予想外の事だったのか勇者は目を白黒させ、魔王から離れようともがくがビクともしない。

邪魔しようとしてきた魔法使いを魔法で吹き飛ばす。


「…ぅむ…んんんっ…むぅうっ…んぐっ…!」


ゴクリと勇者は何かを飲み込む。


「ハハハッ…お前に呪いをかけてやったぞ!…なんの呪いかは教えないがな。」


魔王は顔面蒼白な勇者の上で高らかに笑っている。


「…ッ魔王様ァ!!」


側近の声に振り返ろうとすると、ザクッという音とともに、魔王の胸から聖剣が生えている。


「な、なんでお前が…。」


聖剣を刺したのは黒髪黒目の魔法使いだった。

魔法で吹き飛ばしたはず、すぐには立ち上がれないはず、そもそもこの魔法使いの能力なら気絶しててもおかしくない。

なぜ…。


「…愛の力だよ。僕達人間をおもちゃ感覚で殺してる魔王には一生わからないかもしれないけど。」


そう、黒髪黒目の魔法使いは答える。


「…あ、い。」


そう言いながらも魔王の体はキラキラと足の方から消えていく。


「魔王様ァ!…魔王様!!私を置いて行くのですか!!!」


大丈夫だ。また我は


「……なんだ魔王にも愛してくれる人がいたんじゃないか…。」


あぁ、これが愛なのだな。

必死に透けてきた体を抱きしめようとするベルナードを見て微笑む。


「…ベルナード、愛している。」

「ッ魔王様ァァァァ!!!」


魔王はキラキラと空に溶けた。






え、この魔王様が僕なの…?

それよりもこの勇者って兄様にそっくりだけどもしかして父様じゃない?

黒髪黒目の魔法使いもどことなくユースに似てる気がするよ…?

ぼ、僕、父様に無理やりキスしてたのぉ!?

しかもユースの父親に刺されてるし!

いや、このときの僕は肉体的には僕じゃない…?

いや、でも僕は僕だよぉ!


「魔王様、大丈夫ですか…?私が張りきりすぎて、気絶させてしまいました…。申し訳ありません。」

「だ、大丈夫だよ。ベルナードさん…。」


目の前のベルナードは目を見開くと、抱きしめてくる。


「…名前ッ…思い出してくれたのですね!魔王様!!」


嬉しそうなベルナードに罪悪感を感じつつも僕は重い口を開く。


「お、思い出したよ…記憶は。…でも僕が今も魔王だっていう自覚はないかな…。人間を殺そうなんて思えないし、ましてや父様を倒すなんて…。」

「…いえ、ネム殿は魔王様ですよ。貴方がお生まれになったときに私は魔王様の気配をあなたの中から感じ取りました。」

「僕の中…?」

「ええ、魔力量も魔王様同様多く、使える魔法も光属性以外。18歳になるときに能力が発現するはずなので18歳になる前に能力のある魔王様は異常なのです。そして何よりも、魔王様の匂いがする…だから気づけた。」

「匂い…。」

「城に結界が張られていてすぐにはお迎えにいけませんでしたが、今日は魔王様が一人だったため、誰にも見られず迎えに伺えました。」


ニコニコとベルナードは笑顔で見つめてくる。


「で、でもベルナードさんが好きだった魔王様とは体格も違えば肌の色も違うし顔だって違うよ?」

「それは知っています。勇者から血を継いで生まれたあなたは光属性が使えますし、争いを好まないのもわかっています。肉体も生身の人間です。」

「じゃあなんで、僕を…。」

「性格は違えど根本的なところは変わりません。敵には厳しいのに身内にはすごく甘い…。他にも色々ありますが、魔王様は魔王様ですよ。」

「…ぅう……。」


ここまで言われると何も言い返せなくなる。


「…わかった。記憶もあるし、僕が魔王の生まれ変わりってことは認めるよ…。でも、僕はやっぱりローズ家のみんなも、ユースも大事だから、人間を滅ぼすなんてことは…。和解できたらいいのだけれど…。」

「和解ですか…他の魔族共が騒ぎそうですね…。あ、そういえばそのユースという青年がローズ国で勇者に選ばれたようですよ。」


…えっ!


「ユースがローズ国の勇者に!?」

「ええ、実力もあり、しかも神のお告げですからね。…何人か連れて冒険に出るように言われているようですね。」

「僕と一緒に旅に出るって言ってたのに…!ユースの嘘つき!すぐ向かわないと!」

「…魔王様、少しお待ちください。」


ベルナードはそう言うと両耳につけていた黒のフレームに赤色の宝石がついたピアスを片方だけ外し、僕の耳に取り付ける。


「……ぃたっ…。」

「これで我々幹部以外のものなら、勇者であっても君の能力を見破ることはできなくなる。ネム・ローズがもともと発現するはずだったものしか見えないだろう。」

「…僕から魔王だってバレたらまずいもんね…。」

「ええ、それとすぐ向かいたいなら転移がおすすめですよ。私は魔力が少ないので魔法陣を描く必要がありますが、前魔王様は念じるだけで使用可能でした。現魔王のネム殿もできるはず。」

「…やってみるね。」


念じるだけで…?

…ユースのところに行きたい。お願い!

グワングワンと何かに引っ張られる感覚だ。

パッ!と不思議な感覚がしたのでゆっくりと目を開けると、驚いたユースの顔が目の前にある。


「ユース!!」


僕はユースに思いっきりぎゅっと抱きつくとニュルっと体が滑り乳首が擦れる。

「…ひぁん…!」

よくよく見るとユースの体は泡だらけでだ。

そのユースの膝に跨るように向かい合って座っている僕もだ。







転移することで頭がいっぱいだったけど僕、裸だったじゃん!

しかも、目の前に急に出て来ちゃったみたいだけどどう言い訳したらいいの!?






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