第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく

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魔界内乱編

変わり者の集まり

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「ん、んぅ…」


なんだか少しだるく感じるなか、僕は目を開けた。


「あっ、起きました…?」


僕がいるベットの横で微笑んだイカルドの顔が近づいてくる。

ちゅっ…と瞼にキスを落とされる。


「…あれ?…サヴァンは?」


イカルドはいるが、サヴァンの姿が見えない。


「魔王様は魔王候補達との会議に向かわれました。なのでまた二人でお留守番ですね…!」


嬉しそうなイカルドが僕に抱きついてくるが、僕はそれどころではなかった。

魔王候補たちって…その中に街を襲ってユース達に変な事を言った人がいるかも…!


「ねぇねぇ、イカルド…!」

「ん?どうしました?」

「僕もその会議行く!」

「…はい?」


何でユース達が僕を置いてったのかは分からないけど、魔王候補の誰かが街を襲ったのは間違いない。

文句言うためにも顔を見なきゃいけないんだよね。

それに魔王候補たちがどんな人達なのかは現魔王としても僕の目で確かめる必要があるよね?

まぁ、魔王ってことは今の所言うつもりはないんだけどさ。


「ちょっと待ってくださいネムさん、魔王候補達はとても危険な奴等なんです。みんながみんな魔王さ…サヴァン様と同じだと思わないほうが良いですよ。」


なるほど…。


「サヴァン様は前魔王様のことはあまり好いていなかったようで、ほかの魔族と比べると人間にもお優しいですが…。ほかの候補達は前魔王に憧れていた為に人間を下に見ている節がありました。そんな中で人間によって前魔王様を殺されたんです。多くの者が人間を心底恨んでいるでしょう…。だから彼らの目の前に現れたネムさんが酷いことをされるかもしれません。」


なるほど…サヴァンは魔王候補の中でも穏健派だったんだね…。

それにしてもベルナードは僕が…魔王が生きていることは魔王候補達にも言ってないのかな…?

知ってたらそんなことにはならないはずだし…。

サヴァン達が気づかなかった訳ではなく、僕の存在を伝えてすらいないんだろう。

僕が魔王の力を持ってると気づくのは幹部だけって言ってたし…。

ベルナードが多分僕の代わりに魔王としての仕事をしてくれてるのかもしれない。

なんだか、少し申し訳なくなってきた。


「…それでも会いたいな。」

「それはっ…」


苦しそうな顔をしたイカルドが言葉を詰まらせた。


「じゃあ行かないならサヴァンに二人だけの時のこと全部話す。」

「えぇっ…!?」

「僕とちゅーしたり、お風呂で体を触り合いっこしたり、僕とベットで毎日気持ちいいことした事も全部全部言うもん!」


イカルドは妙にサヴァンにバレるのに怯えてたから、僕はそれを利用することにした。

そ、そんなぁ…と頭を抱えたイカルドは僕の提案を渋々と受け入れるのだった。















「見るだけですからね!話しかけたりしちゃいけませんよ!?」


イカルドの服を借りた僕は、広い廊下をイカルドに手を引かれながら歩いていた。


「ここです…。」


ゆっくりとドアを開けたイカルドに続き、こっそりと中に入ると部屋の端にある椅子にイカルドと二人で座った。

少しドアの音が響いたらしく、奥にいる人達が少しこちらをちらりと見た。

髪色が派手な少年や厳格そうな男、常にニヤニヤと笑ってる不気味な男、無表情な男など、パッと見るだけでも個性豊かな人達が集まっている。


「なになに、部外者は立入禁止なんですけど~?」


棒付きキャンディーを口に咥えた派手な髪色の少年に睨まれる。

他の者たちも同じようで何の用だという視線を感じる。

こ、こわっ…。


「すみません、私が勉強のために会議を見学させていただこうかと…。」


イカルドの言葉に余計にみんなの目が鋭くなる。


「じゃあ、横のそいつは?」


そいつ呼ばわりされた僕は、問いかけてきた派手な髪の少年に挨拶しようと立ち上がる。


「あ、」

「…どうかしましたか?」

「な、何でもない。」


イカルドに聞かれた僕は慌てて返事する。

こちらを見る人たちを見ると、もちろんサヴァンは居たが、その奥に…リッパーとベルナードの姿が見えた。

リッパーは僕が居なくなったことで幹部ではなく魔王候補になっていたらしい。

ベルナードは中央の席に座っていることからこの会議の進行を行っているようだ。

…ベルナードは僕の秘書のような立場だっただけで、実力自体はそんなになかった。

…だから魔王候補からは外されたんだろう。

それに、ベルナードが僕が生きてるの知ってるのに魔王候補になるはずないもんね。

リッパーは僕のことを知ってるけど、知る前はそれこそイカルドが言ってたみたいに、僕を殺した人間を恨んでいたかもしれない。

そうやってリッパーを見ていたら、ふと目が合ってしまう。


「まっ………ネム様ッ!」


リッパーは僕を魔王様と呼びそうになりながらも慌てて言い換えると、会議中だろうに立ち上がり、そのまま僕の方に走ってきてガバッと抱きついた。

周りにいた魔王候補たちとサヴァンは驚いてこっちを見ているし、隣にいるイカルドは口をパクパクさせて驚いている。

ど、どうしよう…。

とりあえず、ぐりぐりと頭を押し付けてくるリッパーの頭をよしよしと撫でる。

視線を彷徨わせるとベルナードと目が合うが、ベルナードは眉を下げて苦笑している。

これは自分でどうにかするしかなさそう…。


「ネ、ネムさんは…リッパー様と知り合いで…?」

「魔王候補の従者ごときがネム様の名前を呼ぶな!」

「ひぃ…!」


ひえっ…!

僕はリッパーの顔が怖くなったことにイカルドと一緒に驚いてしまう。


「じゃ、じゃあ何と呼べば…。」

「は?そんな簡単なこともわからないのですか?そんなの魔王様って呼べば……………………あ。」


……………………………あ。

今度は僕とリッパーの心が一つになる。


「……………魔王様と…?」


イカルドの疑う顔が僕に向けられている。

えっと…うん。

これは言い訳出来なさそうだね…。
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