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私がなんとかするしかない!
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しおりを挟むリリアーナの突然の宣言に、レティシアは慌てて手帳を取り出した。筆談であれば比較的スムーズにやりとりができることに気づいたため、彼女は最近筆談用の手帳を持ち歩いているのだ。
“それはすごく、難しいわ”
それを読んでリリアーナは「そんなことはありません」と首を横に振った。
レティシアは自分が「悪魔令嬢」と呼ばれていることなど露も知らないのだろう。出会って間もないけれど、彼女はきっと繊細で、優しさを持った人なのだと思う。
だから大切な人形が壊れた時も、あんなに涙を流して悲しめる。
あり得ないくらい人見知りなのに、顔を合わせることのないような使用人へわざわざ感謝を伝えようとする。
そんな彼女が、国中の人々が自分を「悪魔令嬢」と呼んでいるなんて知ったら、ひどく傷つくだろう。
もちろん、身に覚えのない罪を着せられる苦しみは計り知れないものだと思う。しかし彼女にとってなにより辛いのはきっと、今まで彼女が意図せず人を傷つけてきてしまったという事実。
彼女は悪くないけれど、それを知ったら、彼女はきっと深い自分を責めるだろう。罪悪感に押し潰されてしまうだろう。
だからリリアーナは、また「誰か」が傷つく前にこの負の連鎖を止めたいと思ってしまった。もちろんその「誰か」の中にはレティシアも入っている。
だからこそ、レティシアには変わって欲しい。これはエゴかもしれないけれど、リリアーナは彼女が傷つくのを見たくなかった。
「レティシア様は、変わりたくないんですか?」
「……それは」
レティシアはそれだけ言って黙り込んだ。自分で書いた文字に目を落とす。
“それはすごく、難しいわ”
彼女自身もきっと変わりたいと思っているのだ。だから「難しい」なんて言葉を使う。それは挑戦したことのある人の言葉だ。
「……変われる、かしら」
「もちろんです!」
レティシアの小さな呟きを、リリアーナはしっかり聞いていた。やっぱり彼女は、変わりたいと思っているのだ。小さいけれど確かに灯る勇気の火に、リリアーナは胸の奥がポカポカと暖かくなるのを感じた。
変わって欲しいと思うのはリリアーナのエゴだけれど、レティシアが変わりたいと願うなら、精一杯彼女を支えよう。
それが侍女としての務めというものだ。
「まずは……笑顔ですよっ!」
そう言ってリリアーナは、鏡に向かってニッコリと微笑んでみせた。
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