崖っぷち貴族の私が「悪魔令嬢」の侍女になりました!

もりの

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いざ、決戦の舞台へ。

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 宵闇の中、馬蹄が土を蹴る音があちこちから鳴り響く。ランタンの灯に照らされキラキラと輝く豪奢な馬車たち。彼らが向かうのはこの国の中心、エデンガード宮殿。

 “大丈夫かしら”

 馬車に揺られながら、レティシアはそろりと手帳を差し出した。いつも以上に美しく着飾った彼女は、その優美な姿とは裏腹に不安げな様子でリリアーナの顔を覗き込む。

 「大丈夫ですよ! あんなに練習したじゃないですか!」

 リリアーナは彼女を勇気づけるようにニコッと笑いかけた。

 そう、2人は今日に合わせて何度も練習を重ねてきたのだ。

 人見知りなレティシアのダンスの練習相手は当然、リリアーナが勤めていた。動きは頭に入っていたものの、ペアで踊ったことがほとんどなかったレティシアだったが、そこはさすがモンフォルル家の血か、すぐに上達していった。リリアーナの方がついていくのに苦労したくらいだ。

 何度も練習して、最終的にはモンフォルル家に恥じない程度にまで仕上がったと思う。

 「一曲踊り終わったら、あとは私が上手くやっておきますから」

 リリアーナの頼もしい言葉を聞いて、レティシアも覚悟を決めたようだった。

 泣いても喚いてもこの馬車は王宮へと向かっている。とても不安だし、怖いけれど、リリアーナがずっと側に居てくれる。ここまで来たらもう、やるしかない。なるようになれだ。

 リリアーナがそっと手を握ってくれる。こうして彼女に手を握ってもらうと安心できた。お茶会の後、彼女が忠誠を誓ってくれた時のことを思い出すから。

 レティシアはリリアーナの目を見つめた。レティシアの視線と、リリアーナの純朴な眼差しが交わる。大丈夫。リリアーナならきっと助けてくれる。レティシアはゆっくりと頷いた。

 窓の外に映るのは今宵の決戦の舞台、エデンガード宮殿。松明に囲まれ煌々と照らされた王宮は、まるで巨大な山のように厳然と聳え立っていた。
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