5 / 8
◆どんな君でも(side 未来)
しおりを挟む
里桜ちゃんと初めて会ったのは、幼稚園年中の四歳の時だった。父が企画したキャンプで、僕たちは出会った。
僕と里桜ちゃんはその日のうちにすぐに打ち解け、すっかり仲良くなった。
二泊三日のキャンプ中、僕たちはいつも一緒だった。草の上をふたりで転げまわり、花を愛でてきれいな石を集め、チョウチョやダンゴ虫をつついて笑い合った。
里桜ちゃんと僕は同じ年度の生まれだったけれど、四月生まれというのもあってか彼女は僕より体も大きくて、言動もしっかりしていた。
『ミィちゃん、危ないからダメだよ』
『やぁだ、おっきいわんわんと遊ぶ』
キャンプ最終日のその日。
僕は木に繋がれて置き去りにされた大型犬に興味を引かれ、里桜ちゃんの手を振り払って、その犬に走り寄っていった。ところが、僕がまさに頭を撫でようかという瞬間、これまで体を丸めて大人しくしていた犬は、激しく吼えながら両前足を振り上げた。
『ミィちゃんをいじめちゃめーっ!』
里桜ちゃんが大きな声を上げながら駆けてきたと思ったら、両手を伸ばし、横から僕を突き飛ばした。
気付いた時には、僕は地面に尻もちをついていた。見上げた視界に、僕を守るように犬との間に立ちはだかる里桜ちゃんの背中が飛び込んだ。
体を震わせながら、それでも一歩も引こうとしない里桜ちゃんの姿を目にし、僕は火がついたように泣きだした。すぐに大人たちが集まってきて、犬も飼い主にたしなめられて大人しくなった。僕たちにも、怪我はなかった。
大人たちは、激しく泣きじゃくる僕を『怖かったね』『驚いたね』となぐさめてくれたけれど、それらの言葉は僕にとってなぐさめとはならなかった。
僕が泣き止まずにいたのは怖かったからじゃなかった。ならば、僕はどうしてあんなに泣いていたのか?
当時の僕は、その感情を表す言葉を持ち得なかった。だけど、今ならば分かる。
あの時、僕は悔しかったんだ。
仲良しの里桜ちゃんに体を張って守ってもらうしかできなかった自分が不甲斐なくて、悔しかった。同時に、子供ながらに『今度は僕が里桜ちゃんを守るんだ』と、漠然と考えていたのだ。
そうして八年の月日を経て再会した里桜ちゃんは、とびきりキュートで可愛らしい女の子になっていた。太陽みたいな明るい笑顔は、当時と同じまばゆさで僕の目を釘付けにした。
里桜ちゃん自身は体形のことを悩みに思っていたようだが、それを補ってあまりあるくらい彼女には人を明るくする魅力があった。
僕が彼女の魅力を語る上で、その体形はまったく問題にならなかった。ただし、里桜ちゃんが体形のせいで自分に自信が持てずにいるのなら、力になりたいと思った。
当時の『今度は僕が里桜ちゃんを守るんだ』という思いは、月日を経ても色あせない。むしろ、ひとつ屋根の下で暮らす中で、彼女の存在感は日ごとに大きくなっていた。
――ねぇ、里桜ちゃん。あれから八年が経って、僕はちゃんと君に相応しい強い男になれているだろうか?
***
懐かしい夢の世界から、段々と意識が浮上する。
「……ん? 朝か」
幾度かまばたきをして、ゆっくりとまぶたを開く。窓の方に目線を向けると、薄く開けていたカーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
夏の盛りを過ぎて九月に入っても暑さに陰りはみえず、今朝も強い太陽の光が目にしみるようだ。だけど、あの太陽に負けないくらい、僕の前に立ちはだかった幼い少女はまぶしかった。
そして十三歳になった今の里桜ちゃんは、僕の目にもっともっとまぶしい。
夏用の掛布団をめくって半身を起こしながら、頭の中で五歳と今のふたつの笑顔が重なる。
里桜ちゃんの弾けるような笑顔も、真っ直ぐで優しい心も、当時と同じ。だけど八年の時を経た今、僕の心が同じじゃない。
大人っぽくなった彼女が、恥じらうような表情や仕草を見せる時、僕の胸はトクンと高鳴る。もっと色んな表情を見たくて、もっと近くで彼女を感じたくてたまらなくなる。
こんなふうに、僕が寝ても覚めても里桜ちゃんのことばかり考えているだなんて、きっと彼女は想像もしないだろう。……いや、もしかすると感じ始めているのかもしれない。
「だって昨日、里桜ちゃんは明らかに僕を意識していた……」
僕は昨日の夜のジョギングでのひと幕に思いをはせた。
昨日のジョギングは里桜ちゃんのお父さんも一緒だった。いつも通り里桜ちゃんを真ん中にしてジョギングコースを走っていたが、彼女は不自然なほどお父さんにばかり話しかけ、意識的に僕との間にスペースを取ろうとしていた。
彼女の態度に不安が募った。僕は行動を急ぎすぎたのだろうか。あるいは、他になにか不快な言動をしてしまったのか……。そんなマイナス思考を巡らせながら走っていた僕だったが、向かいからやって来た人を避けるのに里桜ちゃんと腕が触れてしまった時、大仰なくらい肩を跳ねさせて顔を真っ赤にする姿を見て確信した。
……里桜ちゃんの態度は、照れや恥ずかしさから。彼女は僕のことを男として意識し、距離の取り方や接し方に戸惑っているのだ。
気づいてしまえば、嬉しさが込み上げた。里桜ちゃんのよそよそしい態度も、もう、悲しいとは思わなかった。
意識が今に戻る。
……誰にもやらない。里桜ちゃんは、僕のものだ。
再会した日、里桜ちゃんは少し自信なさげだった。その彼女がダイエットを始め、減ってゆく体重と反比例するように、自信と輝きを取り戻してきていた。
ところが昨日、学校から帰宅した彼女はひどく追い詰めらていた。一カ月間、一回も手をかけようとしなかったお菓子の棚にはじめて手を伸ばしたことからも、彼女の落ち込みの大きさが知れた。
ちなみに、僕は初日に里桜ちゃんのお母さんに相談し、棚の中のお菓子を全て撤去していた。代わりに手製のヘルシーなお菓子を用意したのは、好きな時に食べてガス抜きをしてもらえればいいと考えていたからだ。
結局、里桜ちゃんは僕の予想をいい意味で裏切り、一度も棚を開けることはなかったのだが。
……昨日、彼女をあんなに追い詰めるだけのなにがあったのか。そして、誰が彼女をああも傷つけたのか。
彼女を傷つける奴は許さない。彼女の見た目で態度を変えるような奴だって信用はできない。
「今度は僕が里桜ちゃんを守るんだ」
ベッドを下りるとカーテンを引き開け、まぶしい朝日に向かって当時より温度を高くした思いを声にした。
僕と里桜ちゃんはその日のうちにすぐに打ち解け、すっかり仲良くなった。
二泊三日のキャンプ中、僕たちはいつも一緒だった。草の上をふたりで転げまわり、花を愛でてきれいな石を集め、チョウチョやダンゴ虫をつついて笑い合った。
里桜ちゃんと僕は同じ年度の生まれだったけれど、四月生まれというのもあってか彼女は僕より体も大きくて、言動もしっかりしていた。
『ミィちゃん、危ないからダメだよ』
『やぁだ、おっきいわんわんと遊ぶ』
キャンプ最終日のその日。
僕は木に繋がれて置き去りにされた大型犬に興味を引かれ、里桜ちゃんの手を振り払って、その犬に走り寄っていった。ところが、僕がまさに頭を撫でようかという瞬間、これまで体を丸めて大人しくしていた犬は、激しく吼えながら両前足を振り上げた。
『ミィちゃんをいじめちゃめーっ!』
里桜ちゃんが大きな声を上げながら駆けてきたと思ったら、両手を伸ばし、横から僕を突き飛ばした。
気付いた時には、僕は地面に尻もちをついていた。見上げた視界に、僕を守るように犬との間に立ちはだかる里桜ちゃんの背中が飛び込んだ。
体を震わせながら、それでも一歩も引こうとしない里桜ちゃんの姿を目にし、僕は火がついたように泣きだした。すぐに大人たちが集まってきて、犬も飼い主にたしなめられて大人しくなった。僕たちにも、怪我はなかった。
大人たちは、激しく泣きじゃくる僕を『怖かったね』『驚いたね』となぐさめてくれたけれど、それらの言葉は僕にとってなぐさめとはならなかった。
僕が泣き止まずにいたのは怖かったからじゃなかった。ならば、僕はどうしてあんなに泣いていたのか?
当時の僕は、その感情を表す言葉を持ち得なかった。だけど、今ならば分かる。
あの時、僕は悔しかったんだ。
仲良しの里桜ちゃんに体を張って守ってもらうしかできなかった自分が不甲斐なくて、悔しかった。同時に、子供ながらに『今度は僕が里桜ちゃんを守るんだ』と、漠然と考えていたのだ。
そうして八年の月日を経て再会した里桜ちゃんは、とびきりキュートで可愛らしい女の子になっていた。太陽みたいな明るい笑顔は、当時と同じまばゆさで僕の目を釘付けにした。
里桜ちゃん自身は体形のことを悩みに思っていたようだが、それを補ってあまりあるくらい彼女には人を明るくする魅力があった。
僕が彼女の魅力を語る上で、その体形はまったく問題にならなかった。ただし、里桜ちゃんが体形のせいで自分に自信が持てずにいるのなら、力になりたいと思った。
当時の『今度は僕が里桜ちゃんを守るんだ』という思いは、月日を経ても色あせない。むしろ、ひとつ屋根の下で暮らす中で、彼女の存在感は日ごとに大きくなっていた。
――ねぇ、里桜ちゃん。あれから八年が経って、僕はちゃんと君に相応しい強い男になれているだろうか?
***
懐かしい夢の世界から、段々と意識が浮上する。
「……ん? 朝か」
幾度かまばたきをして、ゆっくりとまぶたを開く。窓の方に目線を向けると、薄く開けていたカーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
夏の盛りを過ぎて九月に入っても暑さに陰りはみえず、今朝も強い太陽の光が目にしみるようだ。だけど、あの太陽に負けないくらい、僕の前に立ちはだかった幼い少女はまぶしかった。
そして十三歳になった今の里桜ちゃんは、僕の目にもっともっとまぶしい。
夏用の掛布団をめくって半身を起こしながら、頭の中で五歳と今のふたつの笑顔が重なる。
里桜ちゃんの弾けるような笑顔も、真っ直ぐで優しい心も、当時と同じ。だけど八年の時を経た今、僕の心が同じじゃない。
大人っぽくなった彼女が、恥じらうような表情や仕草を見せる時、僕の胸はトクンと高鳴る。もっと色んな表情を見たくて、もっと近くで彼女を感じたくてたまらなくなる。
こんなふうに、僕が寝ても覚めても里桜ちゃんのことばかり考えているだなんて、きっと彼女は想像もしないだろう。……いや、もしかすると感じ始めているのかもしれない。
「だって昨日、里桜ちゃんは明らかに僕を意識していた……」
僕は昨日の夜のジョギングでのひと幕に思いをはせた。
昨日のジョギングは里桜ちゃんのお父さんも一緒だった。いつも通り里桜ちゃんを真ん中にしてジョギングコースを走っていたが、彼女は不自然なほどお父さんにばかり話しかけ、意識的に僕との間にスペースを取ろうとしていた。
彼女の態度に不安が募った。僕は行動を急ぎすぎたのだろうか。あるいは、他になにか不快な言動をしてしまったのか……。そんなマイナス思考を巡らせながら走っていた僕だったが、向かいからやって来た人を避けるのに里桜ちゃんと腕が触れてしまった時、大仰なくらい肩を跳ねさせて顔を真っ赤にする姿を見て確信した。
……里桜ちゃんの態度は、照れや恥ずかしさから。彼女は僕のことを男として意識し、距離の取り方や接し方に戸惑っているのだ。
気づいてしまえば、嬉しさが込み上げた。里桜ちゃんのよそよそしい態度も、もう、悲しいとは思わなかった。
意識が今に戻る。
……誰にもやらない。里桜ちゃんは、僕のものだ。
再会した日、里桜ちゃんは少し自信なさげだった。その彼女がダイエットを始め、減ってゆく体重と反比例するように、自信と輝きを取り戻してきていた。
ところが昨日、学校から帰宅した彼女はひどく追い詰めらていた。一カ月間、一回も手をかけようとしなかったお菓子の棚にはじめて手を伸ばしたことからも、彼女の落ち込みの大きさが知れた。
ちなみに、僕は初日に里桜ちゃんのお母さんに相談し、棚の中のお菓子を全て撤去していた。代わりに手製のヘルシーなお菓子を用意したのは、好きな時に食べてガス抜きをしてもらえればいいと考えていたからだ。
結局、里桜ちゃんは僕の予想をいい意味で裏切り、一度も棚を開けることはなかったのだが。
……昨日、彼女をあんなに追い詰めるだけのなにがあったのか。そして、誰が彼女をああも傷つけたのか。
彼女を傷つける奴は許さない。彼女の見た目で態度を変えるような奴だって信用はできない。
「今度は僕が里桜ちゃんを守るんだ」
ベッドを下りるとカーテンを引き開け、まぶしい朝日に向かって当時より温度を高くした思いを声にした。
0
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか
宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。
公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。
あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。
溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。
アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。
十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。
しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。
全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。
「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」
果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?
そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか?
レイルークは誰の手(恋)をとるのか。
これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分)
⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。
物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。
『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。
ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。
一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。
もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。
かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる