翠眼の魔道士

桜乃華

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第三十八話 回想ー神と魔王の争い 4/4

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 『っ! 主上、お体が!』

 『地上へ降りて来られるだけでも負荷がかかるのに、長時間留まられるなんて』

 焦燥の色を強くする女神たちに神は苦笑を向けた。彼の体は火傷を負ったように爛れて(ただれて)いた。魔王が地上で長く存在していられないのと同じく、神もまた同じなのだ。地上には人間たちの持つ正と負の感情が渦巻いている。その中に居続ければ神には負の感情が魔王には正の感情が毒となり体を蝕む。
 神は膝を付いて浅い呼吸を繰り返した。彼にティルラたちが駆け寄り自分たちの神力を分け与えた。

 『主上、ご無理をなさるから……』

 『はは。すまないね、君たちにも迷惑を掛ける。でも、無理をしてでも彼を止めたくてね』

 苦笑する神にティルラたちは顔を見合わせた。彼女たちの反応を気にしていないのか、それとも気付いていないのか、神は続けた。

 『彼は私の半神……。兄弟のようなものだから、ね』

 『(兄弟……)』

 『(つまり、今回の騒動は兄弟喧嘩……のようなもの?)』

 『(ティルラ、余計なことを口にしてはダメよ)』

 『(なんで私ばかり⁉)』

 釘を刺されたティルラが抗議の声を小さく上げる。それを聞いた他の女神たちが『(いや、だって……)』と口ごもる。

 (いつも余計なことしか言わないじゃない……と言ったら煩そうよね)

 『(……ものすごく失礼なことを考えてるわよね?)』

 ジト目のティルラに女神たちは笑顔を貼り付けて首を左右に振る。

 『はは。君たち、全部聞こえているよ』

 『はっ! いえ、私はそんな……!』

 『いいよ。そもそも私がちゃんと理由を告げていなかったのが一番の原因なのだからね』

 (……まあ、その通りよね)

 『ティルラ』

 『何も言ってないんですけど⁉』

 『ははは。少しは神力も戻ったから私は天界へ戻るよ。後のことは任せてもいいかな?』

 火傷の様な痕は残っているが、立ち上がる気力は戻ったらしい。彼は魔法陣を足元に展開すると女神たちへ向けて言った。

 『それと、今後も守護を頼んだよ。それと……魔族たちの動向には注意しておいて』

 『はっ』

 『お任せください、主上』

 四人の女神は膝を折ると首を垂れた。柔らかく微笑んだ神は魔法陣と共に消えた。
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