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第三十九話 クエスト達成とお願い事 1/2
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「これが魔王が地上で生きていけない理由よ。あれ以来魔王は一度も地上へは出てきていないわ」
「だからフラビィの目的は魔王が地上でも存在できるような足場を作ること……?」
ティルラの話を聞いていたセシリヤは眉根を寄せていた。足場を作る目的は先ほどの話で理解はできる。けれど、ティルラの話からは魔王と神は和解しているように聞こえた。誤解が解けたのなら地上へ現れる意味はないだろう。魔王が望んでいるとはどうしても考えられなかった。
「腑に落ちない、という表情ですね」
セシリヤの表情を見たミラがぽつり、と零した。
「ええ。だってその話からは魔王が地上へわざわざ足場を作ってまで現れる意味が見つけられないもの」
「僕も同意見です」
にこり、と笑ったミラが同意する。それにはアンディーンもティルラも同じようで結局のところフラビィの目的はあやふやとなった。
「というか、ティルラは封じられた時付近の記憶はないのに昔のことは記憶してるのね」
「ん? そうね。何故かはっきりと覚えているわ……」
不思議そうに言うティルラをセシリヤは可哀想な人を見る目で見た。
(……年寄みたい)
「ねえ、今とても失礼なこと考えなかった?」
ワントーン声を落としたティルラにセシリヤは首を左右に勢いよく振った。それでもティルラからの視線が痛い。話題を逸らさねば、と考えていたセシリヤは「あ!」と声を上げた。一斉に視線を受ける。
「セ、セシリヤ様、いかがないさいましたか?」
洞窟内に響くセシリヤの大声に驚いたアンディーンが声を掛けた。
「思いの外長居してしまっていたわ! そろそろ戻って調査に行かないと。ミラ、ここでの目的は達成しているのよね?」
問えば、彼は頷いた。記憶を読み取った時点で目的は達成している。
セシリヤは急かすようにミラに転移魔法の準備を頼むとピー助を呼び、アンディーンへ向き直った。
「じゃ! アンディーン、一度帰るわ。後でもう一度連絡するからまた協力してくれると助かる」
慌ただしく動いていたセシリヤに目を白黒させていたアンディーンは頼られていることに目元を緩めた。微笑んだ彼女は「はい、喜んで」と返す。
「セシリヤさん、準備出来ましたよ。いつでも転移出来ます」
「あ、うん。アンディーン、さっき教えてもらったやつ早速使わせてもらうわね」
魔法陣に入ったセシリヤが悪戯っ子のように笑った。
「さあさあ、セシリヤさん。しっかりと掴まっててくださいね」
「だーかーら! そんなに密着しなくても、ってどこ触って!」
左手はセシリヤの肩へ、もう片方は何故か腰。抱きしめるような形になっていることに焦りの色を見せるセシリヤにミラはにこり、と笑うだけだ。
ピッ⁉ ピーピー! セシリヤの危機を察したピー助が鳴きながらミラの手を突いた。
「痛っ! ちょっ、痛い痛い! 離せ、この鳥ー!」
「だったらその手を離しなさいよ!」
「いーやーでーすー! こんなチャンス滅多にないじゃないですかー!」
余計に刺激してしまったのだろう。ミラは涙目になりながらセシリヤを抱きしめた。
(あー……よし。諦めよう……)
これ以上何を言ってもミラは離す気がない事を察したセシリヤは抵抗を諦めて転移するようミラへ促した。すぐに魔法陣が光り二人と一匹は洞窟から姿を消した。
一人残されたアンディーンは唖然としていたのも束の間、賑やかだったセシリヤたちを思い出し声を上げて笑った。
「ふふっ、本当に賑やかな方々でした。……またここも静かになりますね」
少しだけ寂しそうに零したアンディーンは湖の縁へ腰かけ、水に足を入れた。ピー助に似た鳥を形成したアンディーンが手を伸ばせば、指先に水の鳥が止まる。それを見てアンディーンは小さく笑った。
「だからフラビィの目的は魔王が地上でも存在できるような足場を作ること……?」
ティルラの話を聞いていたセシリヤは眉根を寄せていた。足場を作る目的は先ほどの話で理解はできる。けれど、ティルラの話からは魔王と神は和解しているように聞こえた。誤解が解けたのなら地上へ現れる意味はないだろう。魔王が望んでいるとはどうしても考えられなかった。
「腑に落ちない、という表情ですね」
セシリヤの表情を見たミラがぽつり、と零した。
「ええ。だってその話からは魔王が地上へわざわざ足場を作ってまで現れる意味が見つけられないもの」
「僕も同意見です」
にこり、と笑ったミラが同意する。それにはアンディーンもティルラも同じようで結局のところフラビィの目的はあやふやとなった。
「というか、ティルラは封じられた時付近の記憶はないのに昔のことは記憶してるのね」
「ん? そうね。何故かはっきりと覚えているわ……」
不思議そうに言うティルラをセシリヤは可哀想な人を見る目で見た。
(……年寄みたい)
「ねえ、今とても失礼なこと考えなかった?」
ワントーン声を落としたティルラにセシリヤは首を左右に勢いよく振った。それでもティルラからの視線が痛い。話題を逸らさねば、と考えていたセシリヤは「あ!」と声を上げた。一斉に視線を受ける。
「セ、セシリヤ様、いかがないさいましたか?」
洞窟内に響くセシリヤの大声に驚いたアンディーンが声を掛けた。
「思いの外長居してしまっていたわ! そろそろ戻って調査に行かないと。ミラ、ここでの目的は達成しているのよね?」
問えば、彼は頷いた。記憶を読み取った時点で目的は達成している。
セシリヤは急かすようにミラに転移魔法の準備を頼むとピー助を呼び、アンディーンへ向き直った。
「じゃ! アンディーン、一度帰るわ。後でもう一度連絡するからまた協力してくれると助かる」
慌ただしく動いていたセシリヤに目を白黒させていたアンディーンは頼られていることに目元を緩めた。微笑んだ彼女は「はい、喜んで」と返す。
「セシリヤさん、準備出来ましたよ。いつでも転移出来ます」
「あ、うん。アンディーン、さっき教えてもらったやつ早速使わせてもらうわね」
魔法陣に入ったセシリヤが悪戯っ子のように笑った。
「さあさあ、セシリヤさん。しっかりと掴まっててくださいね」
「だーかーら! そんなに密着しなくても、ってどこ触って!」
左手はセシリヤの肩へ、もう片方は何故か腰。抱きしめるような形になっていることに焦りの色を見せるセシリヤにミラはにこり、と笑うだけだ。
ピッ⁉ ピーピー! セシリヤの危機を察したピー助が鳴きながらミラの手を突いた。
「痛っ! ちょっ、痛い痛い! 離せ、この鳥ー!」
「だったらその手を離しなさいよ!」
「いーやーでーすー! こんなチャンス滅多にないじゃないですかー!」
余計に刺激してしまったのだろう。ミラは涙目になりながらセシリヤを抱きしめた。
(あー……よし。諦めよう……)
これ以上何を言ってもミラは離す気がない事を察したセシリヤは抵抗を諦めて転移するようミラへ促した。すぐに魔法陣が光り二人と一匹は洞窟から姿を消した。
一人残されたアンディーンは唖然としていたのも束の間、賑やかだったセシリヤたちを思い出し声を上げて笑った。
「ふふっ、本当に賑やかな方々でした。……またここも静かになりますね」
少しだけ寂しそうに零したアンディーンは湖の縁へ腰かけ、水に足を入れた。ピー助に似た鳥を形成したアンディーンが手を伸ばせば、指先に水の鳥が止まる。それを見てアンディーンは小さく笑った。
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