翠眼の魔道士

桜乃華

文字の大きさ
上 下
43 / 114

第四十話 クエスト達成とお願い事 2/2

しおりを挟む
 支部の応接室の床に魔法陣が浮かび上がり、ミラたちが姿を現した。床に足を着いてすぐにセシリヤはミラの足を踏んだ。

 「っ、痛っ……!」

 痛みで手を離した隙にセシリヤはミラから離れた。ピー助も足元で鳴き、ミラのズボンの裾を嘴で引っ張っている。

 床に蹲り涙目になっているミラに少しやり過ぎたか、と心配になったセシリヤはミラに視線を合わせて「ミラ……」と声を掛けた。

 「うぅ……」

 涙目のまま唸っているミラにセシリヤは手を伸ばした。髪を撫でながら「ごめん……。ちょっとやりすぎた。えっと、回復魔法使おうか?」と問う。

 ミラは顔を上げた。

 「大丈夫です。セシリヤさんはいつも容赦ないですね」

 笑顔で言うミラにセシリヤの頬が引きつった。

 (いつもって何よ、いつも……。だいたいミラが密着するのが悪いんじゃない)

 溜息を吐きながら立ち上がったセシリヤはソファーに腰かけた。ミラも立ち上がり向かい合わせに座る。

 「確認は全部終わったのよね?」

 「はい。依頼は完了です」

 「なら私はこれで失礼するわ」

 腰を浮かせたセシリヤをミラが引き止めた。

 「セシリヤさん、昼食ご一緒しませんか? 僕、奢りますよ」

 応接室に設置してあった掛け時計へと視線を送れば、時刻は十四時を過ぎている。昼食の時間と言えばそうだが、セシリヤは少しだけ逡巡した。水路の調査へこれから向かおうと思っているのだが、地下水路へ降りるには人目がある。地元の住人ならいざ知らず、旅人であるセシリヤが地下水路へ降りれば怪しまれてしまう。そこで考えていたのはアンディーンから教わった水の操り方。ピー助に模した鳥だけではなく、様々な動物の形成方法を彼女から学んでいたセシリヤはこれで住人の目を惹こうと考えていたが、ピー助に手伝ってもらうにしても、もう一人人手は欲しいところ。

 「セシリヤさん?」

 おーい、と声を掛けて来るミラにセシリヤが近づいた。ジッと見つめる表情は真剣だ。ミラはキョトンとしている。

 「……ミラ、昼食は無理だけど夕食ならいいわよ。それと、一つお願いがあるんだけど」

 「いいんですか⁉ セシリヤさんからのお願いとあれば喜んで!」

 表情を輝かせるミラにセシリヤは苦笑した。

 「ちょっと、内容も聞かずに快諾していいの⁉」

 静かに聞いていたティルラがさすがに口を挟んだ。いくらミラがセシリヤに好意を寄せているからとはいえ、内容も聞かないうちから了承するのはいかがなものか。正直心配になる。

 「はい。僕はセシリヤさんを信頼していますので。それに、僕に出来ることならなんでも協力したいんです……。セシリヤさんには恩がありますから」
しおりを挟む

処理中です...