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第五十六話 誘い 2/2
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扉が閉まるのを見届けたセシリヤは溜息を吐く。
「なに、あれ。人を不快にさせる天才?」
「それよりもセシリヤは私に何か言う事ない?」
魔石を掌に乗せたセシリヤはティルラをジッと見つめて首を傾けた。
「いくら苛ついていたからって握りすぎよ! 割れるかとひやひやしたんだから!」
「あーはいはい、ごめんね女神様」
棒読みで謝るセシリヤにティルラが文句を続けた。その声を無視してミラへ視線を向ける。
「良かったの、ミラ?」
問えば、相手は笑みを向けて「はい」と頷く。
「まあ、セシリヤさんと同じ宿に泊まりたいというのは本心ですけど、本部の者としては無視することもできないんですよね……」
ツノゴマが経営している宿パエパランツはコランマールにある宿の中でランキング一位をキープしている宿だ。基本的に宿泊する宿は自由なのだが、クエスト管理協会の本部に所属する者として先ほどの様に誘われれば断りにくい。ミラは溜息を吐いた。
「本部に所属するのも大変ね」
苦笑を零すセシリヤにミラは「セシリヤさん」と名前を呼んだ。
「なに?」
「一晩泊まりたくもない宿で我慢する代わりに明日朝一で会いに行ってもいいですか?」
真剣な表情で言うミラにセシリヤは笑みを向けてこう言った。
「断る」と。
「何でですかぁー」と涙目になったミラが言う。
「だって、断ったところでミラは絶対に来るじゃない」
セシリヤの言葉にミラの涙は引っ込んだ。図星らしい。顔を逸らして視線を合わせないようにしている。昨日彼が訪れなかったのはセシリヤが泊っている宿が分からなかったからだ。今はモンタナに宿泊しているという情報は手に入っているため、どこに宿泊しようがセシリヤの元へは行けるのだが、さすがにそれを黙って実行しては嫌われそうなのでミラは聞いたのだ。
「図星だった?」
「うぐ……」
ニヤリ、と笑うセシリヤに言い返す言葉が見つからないミラが押し黙った。
「まあ、クルバさんに迷惑を掛けないなら好きにしたらいいんじゃない?」
セシリヤの言葉にミラの表情が輝いた。動物に例えるなら犬だろうか。尻尾を左右に勢いよく振る姿を想像してセシリヤは小さく吹き出した。
何故笑われているのか分からないミラがきょとん、としながらセシリヤを見る。
「なんで笑ってるんですか?」
首を傾ける相手にセシリヤは「なんでもない」と言いながらも肩が揺れていた。
(……なんだかんだ言いながらセシリヤはミラに甘いわよね)
一連のやり取りを聞いていたティルラは魔石から二人を眺めていた。
「なに、あれ。人を不快にさせる天才?」
「それよりもセシリヤは私に何か言う事ない?」
魔石を掌に乗せたセシリヤはティルラをジッと見つめて首を傾けた。
「いくら苛ついていたからって握りすぎよ! 割れるかとひやひやしたんだから!」
「あーはいはい、ごめんね女神様」
棒読みで謝るセシリヤにティルラが文句を続けた。その声を無視してミラへ視線を向ける。
「良かったの、ミラ?」
問えば、相手は笑みを向けて「はい」と頷く。
「まあ、セシリヤさんと同じ宿に泊まりたいというのは本心ですけど、本部の者としては無視することもできないんですよね……」
ツノゴマが経営している宿パエパランツはコランマールにある宿の中でランキング一位をキープしている宿だ。基本的に宿泊する宿は自由なのだが、クエスト管理協会の本部に所属する者として先ほどの様に誘われれば断りにくい。ミラは溜息を吐いた。
「本部に所属するのも大変ね」
苦笑を零すセシリヤにミラは「セシリヤさん」と名前を呼んだ。
「なに?」
「一晩泊まりたくもない宿で我慢する代わりに明日朝一で会いに行ってもいいですか?」
真剣な表情で言うミラにセシリヤは笑みを向けてこう言った。
「断る」と。
「何でですかぁー」と涙目になったミラが言う。
「だって、断ったところでミラは絶対に来るじゃない」
セシリヤの言葉にミラの涙は引っ込んだ。図星らしい。顔を逸らして視線を合わせないようにしている。昨日彼が訪れなかったのはセシリヤが泊っている宿が分からなかったからだ。今はモンタナに宿泊しているという情報は手に入っているため、どこに宿泊しようがセシリヤの元へは行けるのだが、さすがにそれを黙って実行しては嫌われそうなのでミラは聞いたのだ。
「図星だった?」
「うぐ……」
ニヤリ、と笑うセシリヤに言い返す言葉が見つからないミラが押し黙った。
「まあ、クルバさんに迷惑を掛けないなら好きにしたらいいんじゃない?」
セシリヤの言葉にミラの表情が輝いた。動物に例えるなら犬だろうか。尻尾を左右に勢いよく振る姿を想像してセシリヤは小さく吹き出した。
何故笑われているのか分からないミラがきょとん、としながらセシリヤを見る。
「なんで笑ってるんですか?」
首を傾ける相手にセシリヤは「なんでもない」と言いながらも肩が揺れていた。
(……なんだかんだ言いながらセシリヤはミラに甘いわよね)
一連のやり取りを聞いていたティルラは魔石から二人を眺めていた。
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