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第九十四話 デートの約束
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「それ、さっきラウラがミラにやったのと同じじゃない」
上司がするから部下が真似をしたのではないだろうか。セシリヤの中で浮上した疑問は口から出ることなく、呑み込まれた。口にすれば間髪入れずに否定されるのが目に見えている。その間にラウラは紙を受け取って文字を追っていた。紙がくしゃり、と音を立てて皺になる。これもミラと同じ反応だ。本部ではこのやり口が流行っているのだろうか……。
「なんですか、これ?」
あくまで冷静に問う。
「何って、お前の仕事だ。本部に帰って取りかかれば三日で終わるだろ?」
「……」
反論しようにも、ミラに似たようなことを言った手前何も言えず恨みがましく上司を睨み付けた。
「はっ、ざまあみろ」
黙っていたミラが鼻で笑う。
「うるさいわよ、後輩」
「まあまあ、そう睨み合うなよ。そうだ! 先に仕事を片付けた方がこいつとデートするっていうのはどうだ?」
「私⁉」
こいつ、と指されたセシリヤが目を丸くする。
「……そうね。あいつの仕事は頑張ってもせいぜい五日は掛かる。それに対して私の仕事は三日で終わる量。仕事を片付ければセシリヤとの時間も作れるわ。ヴァシリー様もたまにはいい事言いますね。そうしましょう!」
急に声音が明るくなったと思えば、ラウラはくるりと、向きを変えてセシリヤへ目線を合わせた。
「セシリヤ、あなたが着くまでに仕事を終わらせるから、ミッティアに着いたらまた会いましょう? 買い物したり、美味しい物を食べたり……ふふっ、楽しみだわ」
「はあ? なに勝手に約束してるんだよ!」
片手を頬に添えてうっとりとしながら言うラウラにミラが噛みつく。
「悔しかったら私よりも先に仕事を終わらせるのね。まあ、その量じゃ無理そうだけど」
煽ってくる相手にミラが紙をきつく握りしめながら奥歯を噛みしめた。
「……てやる」
「ミ、ミラ? おーい、ミラくーん?」
わなわなと震えているミラにセシリヤが声を掛ける。
「やってやるよ! 絶対にお前よりも仕事を早く終わらせてセシリヤさんとの時間を作ってやる!」
「だから! 本人抜きで勝手に話を進めないでくれる⁉」
「ははははっ! やっぱりこいつらを刺激するにはセシリヤが一番だな~」
「笑い事じゃないわよ!」
笑っているヴァシリーへラウラが「そうと決まれば行きますよ」と魔法陣を展開する。
「ラウラちゃん⁉ 急にやる気になってくれたのは有難いんだけど、ちょっと待って!」
待ったをかけるヴァシリーを冷めた瞳で見つめる。言葉にしなくても、せっかく転移魔法で連れて帰ってやるっていうのに他に何かあるのかと言いたそうだ。
上司がするから部下が真似をしたのではないだろうか。セシリヤの中で浮上した疑問は口から出ることなく、呑み込まれた。口にすれば間髪入れずに否定されるのが目に見えている。その間にラウラは紙を受け取って文字を追っていた。紙がくしゃり、と音を立てて皺になる。これもミラと同じ反応だ。本部ではこのやり口が流行っているのだろうか……。
「なんですか、これ?」
あくまで冷静に問う。
「何って、お前の仕事だ。本部に帰って取りかかれば三日で終わるだろ?」
「……」
反論しようにも、ミラに似たようなことを言った手前何も言えず恨みがましく上司を睨み付けた。
「はっ、ざまあみろ」
黙っていたミラが鼻で笑う。
「うるさいわよ、後輩」
「まあまあ、そう睨み合うなよ。そうだ! 先に仕事を片付けた方がこいつとデートするっていうのはどうだ?」
「私⁉」
こいつ、と指されたセシリヤが目を丸くする。
「……そうね。あいつの仕事は頑張ってもせいぜい五日は掛かる。それに対して私の仕事は三日で終わる量。仕事を片付ければセシリヤとの時間も作れるわ。ヴァシリー様もたまにはいい事言いますね。そうしましょう!」
急に声音が明るくなったと思えば、ラウラはくるりと、向きを変えてセシリヤへ目線を合わせた。
「セシリヤ、あなたが着くまでに仕事を終わらせるから、ミッティアに着いたらまた会いましょう? 買い物したり、美味しい物を食べたり……ふふっ、楽しみだわ」
「はあ? なに勝手に約束してるんだよ!」
片手を頬に添えてうっとりとしながら言うラウラにミラが噛みつく。
「悔しかったら私よりも先に仕事を終わらせるのね。まあ、その量じゃ無理そうだけど」
煽ってくる相手にミラが紙をきつく握りしめながら奥歯を噛みしめた。
「……てやる」
「ミ、ミラ? おーい、ミラくーん?」
わなわなと震えているミラにセシリヤが声を掛ける。
「やってやるよ! 絶対にお前よりも仕事を早く終わらせてセシリヤさんとの時間を作ってやる!」
「だから! 本人抜きで勝手に話を進めないでくれる⁉」
「ははははっ! やっぱりこいつらを刺激するにはセシリヤが一番だな~」
「笑い事じゃないわよ!」
笑っているヴァシリーへラウラが「そうと決まれば行きますよ」と魔法陣を展開する。
「ラウラちゃん⁉ 急にやる気になってくれたのは有難いんだけど、ちょっと待って!」
待ったをかけるヴァシリーを冷めた瞳で見つめる。言葉にしなくても、せっかく転移魔法で連れて帰ってやるっていうのに他に何かあるのかと言いたそうだ。
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