15 / 38
本編
響く余韻は止められて
しおりを挟む
あの後私はすぐに家に帰ることができた。
その日は、身体が限界でやることを終わらし、すぐに眠ってしまった。
次の日、私は心地よい朝を迎えた。
なぜだろう、全く憂鬱に感じない。新しい人生が始まったと決意したときのようなすかすがしさ。私のストレスはどこかに消え去ったのだろう。ケイリー様にアルツ様には感謝しなければ。
侍女もそんな私を察したのか、ポーニーテールの提案は、はもう、聞かなかった。
そんな時、コンコンと扉が手によって鳴らされた音が聞こえる。
「どうぞ、」
「失礼しますお嬢様、クロウ様がお見えです」
ああ、清々しい朝は終わりね。私が呆れたような顔をしていると、侍女も怒った。
「イアリス様出なくていいですよ!」
私も出たくないわ。彼はどんな顔で私に会おうとしているのだろう。今は全く理解出来ない。
私は取り敢えず、ドレスを着て、玄関に向かう。
「イアリス!」
扉を開けてすぐにクロウ様の声が聞こえた。
不機嫌かと思ったけれど…意外ね。
「どうしたんです?こんな早朝に」
「別に俺が来てもいいだろう。なにかやましいことでもあるのか?」
ああ、面倒だ。彼は私の浮気を疑うように、ニヤつきながら言う。彼のことだ、これが面白いと思っていっているのだろう。彼の笑いは、人を傷つける笑いで面白いなんて、冗談でも言えないわね。
「そういうことではありませんが…何か用がおありで?」
「ふっ…、イアリス。今日は遊びに行こうじゃないか!」
私が了承する、その選択肢以外はないだろう?と自信に溢れた顔で私を見る。ああ…ほんと、これ以上振り回されるのはごめんよ。当日に提案、なんて公爵家の長男のすることとは思えない。
「申し訳ありません…先約がありますので」
私は頭を下げ、謝った。
流石に、先約という言葉があれば、帰ってくれるだろう。
「っな…!先約は私より大事なものなのか?」
「ええ、とても」
今日は一ヶ月に一度しかないバイオリンのレッスン。ほぼ、私の趣味でやらせて貰っているようなものだから、必ずやりたいのだ。……まあ、クロウ様より他の約束事の方がすべて大切よ。
「っ…い、今までのお前ならそんな先約など俺の方が大事だと言ってくれたのに!!」
ええ、そうでしょうね。貴方に見えないよう下を見て歯を食い縛りながらいってたでしょう。
「…いや、俺が悪かったんだよな」
「…え、」
「イアリス、すまなかった」
頭を下げて、彼は謝る。なぜ、急に。
私は戸惑い、言葉を発することなくただ呆然として彼を見た。
「イアリスがそんなに俺のことが好きだったことに気づかず…!俺はこれからお前とずっと居るから。だから…!前のお前に戻ってくれ、無理しなくていい」
ああ、少しでも期待した私が馬鹿だったわね。
結局彼は自分しか見てない。私の気持ちなど、察せる筈がなかったのよ。
前の私に戻れ…なんて、彼は本当の私ではなく演じているイアリスが好き。
――なら、なぜ、前の私に愛の言葉の一つすらくれなかったのか。
「…お帰りください」
「な…なぜ?!」
「本日は忙しいので」
「…あ、分かった。お前も浮気しているんだろう?!だから、俺のことを蔑ろにして他の男と遊んでいるんだろう?!」
「っ…?!」
胸に矢が刺さったような衝撃が身体に刺さる。
そして、初めて、怒りを抑えられないかも、と思った。
その日は、身体が限界でやることを終わらし、すぐに眠ってしまった。
次の日、私は心地よい朝を迎えた。
なぜだろう、全く憂鬱に感じない。新しい人生が始まったと決意したときのようなすかすがしさ。私のストレスはどこかに消え去ったのだろう。ケイリー様にアルツ様には感謝しなければ。
侍女もそんな私を察したのか、ポーニーテールの提案は、はもう、聞かなかった。
そんな時、コンコンと扉が手によって鳴らされた音が聞こえる。
「どうぞ、」
「失礼しますお嬢様、クロウ様がお見えです」
ああ、清々しい朝は終わりね。私が呆れたような顔をしていると、侍女も怒った。
「イアリス様出なくていいですよ!」
私も出たくないわ。彼はどんな顔で私に会おうとしているのだろう。今は全く理解出来ない。
私は取り敢えず、ドレスを着て、玄関に向かう。
「イアリス!」
扉を開けてすぐにクロウ様の声が聞こえた。
不機嫌かと思ったけれど…意外ね。
「どうしたんです?こんな早朝に」
「別に俺が来てもいいだろう。なにかやましいことでもあるのか?」
ああ、面倒だ。彼は私の浮気を疑うように、ニヤつきながら言う。彼のことだ、これが面白いと思っていっているのだろう。彼の笑いは、人を傷つける笑いで面白いなんて、冗談でも言えないわね。
「そういうことではありませんが…何か用がおありで?」
「ふっ…、イアリス。今日は遊びに行こうじゃないか!」
私が了承する、その選択肢以外はないだろう?と自信に溢れた顔で私を見る。ああ…ほんと、これ以上振り回されるのはごめんよ。当日に提案、なんて公爵家の長男のすることとは思えない。
「申し訳ありません…先約がありますので」
私は頭を下げ、謝った。
流石に、先約という言葉があれば、帰ってくれるだろう。
「っな…!先約は私より大事なものなのか?」
「ええ、とても」
今日は一ヶ月に一度しかないバイオリンのレッスン。ほぼ、私の趣味でやらせて貰っているようなものだから、必ずやりたいのだ。……まあ、クロウ様より他の約束事の方がすべて大切よ。
「っ…い、今までのお前ならそんな先約など俺の方が大事だと言ってくれたのに!!」
ええ、そうでしょうね。貴方に見えないよう下を見て歯を食い縛りながらいってたでしょう。
「…いや、俺が悪かったんだよな」
「…え、」
「イアリス、すまなかった」
頭を下げて、彼は謝る。なぜ、急に。
私は戸惑い、言葉を発することなくただ呆然として彼を見た。
「イアリスがそんなに俺のことが好きだったことに気づかず…!俺はこれからお前とずっと居るから。だから…!前のお前に戻ってくれ、無理しなくていい」
ああ、少しでも期待した私が馬鹿だったわね。
結局彼は自分しか見てない。私の気持ちなど、察せる筈がなかったのよ。
前の私に戻れ…なんて、彼は本当の私ではなく演じているイアリスが好き。
――なら、なぜ、前の私に愛の言葉の一つすらくれなかったのか。
「…お帰りください」
「な…なぜ?!」
「本日は忙しいので」
「…あ、分かった。お前も浮気しているんだろう?!だから、俺のことを蔑ろにして他の男と遊んでいるんだろう?!」
「っ…?!」
胸に矢が刺さったような衝撃が身体に刺さる。
そして、初めて、怒りを抑えられないかも、と思った。
365
あなたにおすすめの小説
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした
カレイ
恋愛
子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き……
「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
愛してしまって、ごめんなさい
oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」
初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。
けれど私は赦されない人間です。
最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。
※全9話。
毎朝7時に更新致します。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる