貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

あおい

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本編

捨てられた愛人

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「どうだった?…内容がいろいろ君には辛いものかもだったかも知れないけど」


涙を流してなどいなかったかのように、ケイリー様が聞く。切り替えが早いって羨ましい。私にも優秀な切り替え能力が欲しい。

内容…ああそうか、ケイリー様も知っていたのか。クロウ様は公爵家のものだもの。そりゃ私の名前も、悪い噂も広まるだろう。…はあ、やはり噂話は得意では無い。嘘か、誠か。それを保証するものがない噂が広まるのは嫌いだ。長い長いドミノが倒れるように、悪い噂であれば流された人の積み上げたものが全て崩れる。

友人の中でも趣味は噂話が好きな人も多いけれど。やはり話していて疲れることが多い。


「素敵でした。…最後なんて、泣いてしまいましたもの」

「僕もだよ。彼女には、ずっと幸せでいて欲しい」


彼は、ぎゅと拳を握り何か考えている顔をした。
彼も、あの舞台に何か思うところがあるのだろうか。


「ええ、本当に」


驚きだ。彼も、私と全く同じ事を考えていたとは。
気が合いますね、と笑いそうになった。


「良ければご友人に、私からの感謝を伝えてくれませんか?凄く面白かったです、と」

「ああ伝えておくよ。きっと喜んでくれるだろうね。よし…そろそろ帰ろう」

「そうですわね」



もう夕方で、辺りはすっかり暖かなオレンジ色だ。もう、ケイリー様の顔がよく見えないほどには、薄暗がりである。

これが誰ぞ彼、黄昏時というやつね。



ああ…帰りたく無い。もう少し、何処かで遊んでいたい。


「…ん?」


帰り道、私は気づいた。
あの雑貨店にいる水色の髪。彼女…もしかしてぼんやりとしか見えないけれど…シェリー様?



「――どうしたの?イアリス様?」

私がずっと一点ばかり見るものだから、彼が不安そうな目で私を見る。

「いえ…すみません」

今は、彼や彼女の事を気にしたってしょうがない。せっかく物語を楽しんで、つらい記憶は消えかかっていたのに。帰り道的に、彼女の後ろを通らないと帰れない。

そして、私はもう一度彼女を見る。
…あら、と思った。

目がパンパンに腫れている。それに隈も凄い。あの時、私にあんな誇らしげそうな顔をした彼女と同一人物とは言えないほど、顔が疲れている。


私はシェリー様にバレないよう近づいていく。はやく通り過ぎないと。魔法がかかってるとは言え、油断してはいけない。


「シェリー、何を買うつもりなの?」

私の横から、誰かがシェリー様の名前を呼ぶ。…まずい、こっちを見られてしまう。


「アンネッ…!」

シェリー様は、アンネと呼ばれる少女に走りながら近づき、抱きしめた。

「ちょっと…どうしたのよ」

「私ッ…クロウ様に捨てられたちゃった、クロウ様、私と話した時凄く怒ってたし冷たかったッ。今日も、遊ぶ予定だったのにドタキャンで…うッ…だから私ぃ、クロウ様にプレゼント買おうと思って…そしたらまた前みたいに私を見てくれると思って!!」


シェリー様は私たちの前でアンネ様を抱きながら言う。

ああ、またこれね…。まったくクロウ様は何故懲りないんだろうか。

…しかし、彼が不機嫌そうにするのは初めて聞いたわ。いつもは冷たいけど。笑ってはいたのに。

…なにかおかしいわね。



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