風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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2学期までの1週間

六話

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姫川と佐々木はあれから話し合い、柏木の事を風紀のメンバーにも伝える事にした。
祭りの時の様に風紀のメンバーに被害が及ぶのを防ぐためにも、きちんと知らせておいた方がいいというのが2人の意見だった。
「でも、柏木も俺たちの前では普段通りなのに、姫川の前でだけ本性を出すなんてどういうつもりなんだろうな。」
「そんなの俺が知るか。よっぽど俺の事が気に入らないんじゃないか?」
「それか、物凄く気に入ってるとか?」
佐々木の言葉に姫川が心底嫌そうな顔をした。それを見た佐々木は肩を竦めながら、
「まぁいずれにせよ、用心に越した事はないよ。生徒会の奴らはどうする?これから柏木が生徒会に入るなら知らせとかないと危険なんじゃないの?」
と言った。
途端に正木の顔が姫川の頭に浮かぶ。
昨日スーパーで楽しそうに柏木と話していた正木。いくら自分が柏木の本性を伝えた所で信じてもらえない気がする。そう思うと、何故か少し心が痛んだ。
「いや、生徒会の奴らに話しても信じないか、逆に敵視されかねない。もう少し様子を見た方がいいだろう。」
姫川が言うと、それがいいねと佐々木が渋々納得したように頷いた。
その後は、書類に目を通したり、始業式の流れを確認したりして過ごした。まだ、夏休みの真っ只中ということもあり、この日他のメンバーが風紀室に来ることはなかった。

姫川が風紀委員室を出たのは、もう夕方に差し掛かる頃だった。
思ったより長居をしてしまったな。
そう思いながら姫川は外で空を見上げる。少しずつ秋が近づいてきているからか、夕焼けがやけに綺麗だった。近くの山ではツクツクボウシの声が彼方此方で聞こえ、夏の最後を謳歌していた。
さっきまで冷房の部屋で作業をしていたからか、外に出た瞬間、汗が噴き出してきた。
佐々木は一足先に寮に戻っていた。姫川も暑さから逃れるため、寮への道を急ぐ。
寮に着くと、入り口の所に正木が立っていた。Tシャツにパンツというラフな格好なのに、正木が着るとやけにお洒落に見えた。
携帯を片手に俯いている正木に姫川が声を掛ける。
「暑いのになんでそんな所にいるんだ?寮に戻らないのか?」
姫川の声に正木がパッと顔を上げた。そして優しく微笑む。姫川はその顔を何故か直視できず、少し視線を外した。
「お前を待ってたんだよ。部屋に行ってもいないし。ここに居れば会えるかなと思ってな。」
「こんな暑い中で待つ必要あるか?」
姫川が思った事を率直に口にすると正木が拗ねたような顔をした。
「折角会いたくて待ってたのに、その言い草はなんだよ。それに、お前の部屋の前で待ってたら、それこそ他の役員に変な目で見られるだろ。」
それを聞いて、正木が自分の帰りを部屋の前でキョロキョロしながら待っている姿を想像してしまい、姫川がクスッと笑った。
すると、正木の顔がほんのり赤くなる。そして、
「そんな顔すんな。」
と言って姫川の頭をクシャッと撫でた。





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