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第二十五話 消火活動
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足の速さには自信があった。
ものの一分足らずで煙の上がっている校舎に辿り着いた。
校舎に近づくにつれ、どんどんきな臭くなっていたけれど、大分火の手が早い様で、その一分で最初は痩せっぽっちだった黒煙がぶくぶくの肥満体型に。
これ、あっちの校舎にいる人たち、大丈夫なのかしら・・・・・・。
心配しながら校舎へ向かうと、あちらこちらから叫び声や怒鳴り声が聞こえたが、想像していたよりは混乱してなかった。
「皆、落ち着いて! 早く消防に連絡を! 逃げ遅れたものはいないか、お互い確認し合ってくれ!」
「コンラッド殿下!」
「エルシカ嬢! どうしてここに!?」
私が来るとは思わなかったのか、コンラッド殿下は目を丸くした。
「煙が見えまして、気になって──状況はどうですか?」
「エルシカ・ガルルファング! これもお前の仕業かっ!!?」
げっ!? こいつは確か、シャルニィ嬢のハーレムの──。
目を逆三角形にした男子生徒が掴み掛かろうとしてきたので、身を反らして避ける。
こんなことしてる場合じゃないでしょうに!!!
「止めろ! 今は争っている暇はないぞ!」
そうだそうだ!
押さない、駆けない、喋らない、戻らない。
火事の時の四ヶ条の中に、どうして喧嘩しないが入ってないと思う? わざわざルールにしなくても当たり前のことだからだよ!
コンラッド殿下が止めてくれたし、本当にそんな場合じゃないため、この手合いは無視することにした。これ以上手ぇ出してくるなら、問答無用でぶん投げる。
「ふざけるな。どうせ、この火事もお前が──」
「邪魔だ! どけぇっ!」
「ぐっは!」
直後、男子生徒の後頭部に何かが直撃した。水桶だった。
見ると、水がなみなみと入った水桶を棒の両端から吊るし、肩に担いだヴァルト先輩だった。
「殿下! 水を汲んで来ました! ──ですが」
うん、圧倒的に量が足りない。火はどんどん大きくなっている。
今では、校舎の一階の教室が丸々一つ火に包まれている。
人力で水を運んできても、これじゃ焼け石に水だ。
コンラッド殿下も分かっている。早く消火しなくてはと、追い立てられている顔だ。
「大丈夫です」
項に手を伸ばしながら、私は言った。
「水なら、用意出来ます」
「エルシカ嬢?」
「どうやって?」と問いたげなコンラッド殿下に答えを提示するように、私は背中に仕舞った例の宝剣を鞘ごと引き抜いて、手に持った。
「お前! こんな時に剣なんて持ち出して、どういうつもりだ!?」
「うるさい。黙って見てなさい」
本来であれば、火に剣なんて風に一刺しもいいところだけれど、これは別。
「何をする気なんだ?」
「見てれば分かりますよ」
説明する時間はないし、何より見ればすぐに分かる。
私は鞘からするりと剣を抜くと、手を塞ぐ剣を地面に刺し、七つの蒼玉が縦一列に嵌め込まれた鞘の口を火に向けた。
「清かに溢れ出でて、荒炎鎮め、流し正せ!」
呪文を伝え、鞘をしっかりと両手で構える。
「放水!」
叫んだ途端、鞘の口から勢いよく、大量の水が逆流する滝のように噴射された。
ものの一分足らずで煙の上がっている校舎に辿り着いた。
校舎に近づくにつれ、どんどんきな臭くなっていたけれど、大分火の手が早い様で、その一分で最初は痩せっぽっちだった黒煙がぶくぶくの肥満体型に。
これ、あっちの校舎にいる人たち、大丈夫なのかしら・・・・・・。
心配しながら校舎へ向かうと、あちらこちらから叫び声や怒鳴り声が聞こえたが、想像していたよりは混乱してなかった。
「皆、落ち着いて! 早く消防に連絡を! 逃げ遅れたものはいないか、お互い確認し合ってくれ!」
「コンラッド殿下!」
「エルシカ嬢! どうしてここに!?」
私が来るとは思わなかったのか、コンラッド殿下は目を丸くした。
「煙が見えまして、気になって──状況はどうですか?」
「エルシカ・ガルルファング! これもお前の仕業かっ!!?」
げっ!? こいつは確か、シャルニィ嬢のハーレムの──。
目を逆三角形にした男子生徒が掴み掛かろうとしてきたので、身を反らして避ける。
こんなことしてる場合じゃないでしょうに!!!
「止めろ! 今は争っている暇はないぞ!」
そうだそうだ!
押さない、駆けない、喋らない、戻らない。
火事の時の四ヶ条の中に、どうして喧嘩しないが入ってないと思う? わざわざルールにしなくても当たり前のことだからだよ!
コンラッド殿下が止めてくれたし、本当にそんな場合じゃないため、この手合いは無視することにした。これ以上手ぇ出してくるなら、問答無用でぶん投げる。
「ふざけるな。どうせ、この火事もお前が──」
「邪魔だ! どけぇっ!」
「ぐっは!」
直後、男子生徒の後頭部に何かが直撃した。水桶だった。
見ると、水がなみなみと入った水桶を棒の両端から吊るし、肩に担いだヴァルト先輩だった。
「殿下! 水を汲んで来ました! ──ですが」
うん、圧倒的に量が足りない。火はどんどん大きくなっている。
今では、校舎の一階の教室が丸々一つ火に包まれている。
人力で水を運んできても、これじゃ焼け石に水だ。
コンラッド殿下も分かっている。早く消火しなくてはと、追い立てられている顔だ。
「大丈夫です」
項に手を伸ばしながら、私は言った。
「水なら、用意出来ます」
「エルシカ嬢?」
「どうやって?」と問いたげなコンラッド殿下に答えを提示するように、私は背中に仕舞った例の宝剣を鞘ごと引き抜いて、手に持った。
「お前! こんな時に剣なんて持ち出して、どういうつもりだ!?」
「うるさい。黙って見てなさい」
本来であれば、火に剣なんて風に一刺しもいいところだけれど、これは別。
「何をする気なんだ?」
「見てれば分かりますよ」
説明する時間はないし、何より見ればすぐに分かる。
私は鞘からするりと剣を抜くと、手を塞ぐ剣を地面に刺し、七つの蒼玉が縦一列に嵌め込まれた鞘の口を火に向けた。
「清かに溢れ出でて、荒炎鎮め、流し正せ!」
呪文を伝え、鞘をしっかりと両手で構える。
「放水!」
叫んだ途端、鞘の口から勢いよく、大量の水が逆流する滝のように噴射された。
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