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第一話 元・聖女様の現在
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ここはどこの国にも属さない、三つの国の境にあるトライアの森。
私、マリアはその隅に居を構えております。
居と言っても、とても小さな小屋でございます。山小屋くらいの大きさしかありませんが、お台所やお風呂、お手洗いも完備してます故、一人暮らしには十分なお家です。
私はこの小さなお家で、毎日自由にのんびりと暮らしております。
日々の糧は森で採れる木の実や山菜、川で釣ったお魚さんなど。
それからたまに行商さんが森の脇を通って行かれるので、木の実や薬草などと物々交換でお肉を頂いたりしております。
お料理、お掃除、お洗濯、それから繕い物や食材の調達など、やるべきことを終えたら後は自由に過ごせます。
時間やお務めに左右されずに好きな時に好きなことの出来るこの生活が私は好きです。
この生活を始めた頃は、失敗も多かったですが、今ではすっかり慣れました。
あまり人とお話する機会がないのは寂しいですが、そこは我慢です。
昔に比べたら、今のお一人様生活は最高ですから!
さぁて、今日もお家のお仕事をさっさと片付けてしまって、その後は川で水浴びでもしましょう。
──そう、思っていたのですが・・・・・・。
私の予定は予期せぬ訪問者さん達によって、狂うことになりました。
このお家の扉がノックされるなんて初めてで、凄く驚きました。
「どちら様でしょうか?」
誰何して扉を開けると、そこには見覚えのある紋章の入った服を纏った数名の男性達が立っていらっしゃいました。
羽ばたく翼と、天を突く剣の意匠。間違いありません。トライアの森を囲む三国の一つであるタンジェラ王国の騎士団の方々です。
けれど、この方々が今更一体何のご用なのでしょうか?
一番先頭に立っている男性と目が合いました。その方は私を見て一瞬驚いた顔をされましたが、すぐに表情を引き締めてこう訊ねられました。
「当然の訪問をお許し下さい。私はタンジェラ王国騎士団第二部隊隊長、ジェームズ・アルスと申します。貴女はタンジェラ王国第七三代目聖女様──マリア・フィリス様でお間違いないでしょうか?」
「家名は国を追われた際に置いてきました。今はただのマリアでございます。ですが──はい。アルス様がお訊ねになったマリアで間違いありません」
タンジェラ王国は私が生まれた国です。
ですが、諸事情がありまして、国を出ていかなくてはなってしまったのです。それが私がトライアの森で暮らしている理由です。
なのに、何故タンジェラ王国の騎士の方々がいらっしゃったのでしょう? あれから十年もの歳月が経っておりますし、今更私を訪ねていらっしゃる理由が思い浮かびません。
私が首を傾げておりますと、アルス様がおっしゃいました。
「マリア・フィリス様。国王陛下が追放を解かれました。マリス様にはタンジェラ王国に戻り、再び聖女として王国のために尽くして頂きたいとのことです」
「──はい?」
アルス様がおっしゃった言葉をすぐに理解することが出来ませんでした。
えっと、国王陛下が追放をお解きに? 聖女に復帰して欲しい? えーっと・・・・・・
「あの」
「はい」
「一つ、お訊きしてもよろしいでしょうか?」
「何なりと」
「確か、陛下は十年前に二度とタンジェラ王国の土を踏むことは許さないとおっしゃって、私を追放されたと記憶しておりますが・・・・・・何かの間違いではございませんか?」
私、マリアはその隅に居を構えております。
居と言っても、とても小さな小屋でございます。山小屋くらいの大きさしかありませんが、お台所やお風呂、お手洗いも完備してます故、一人暮らしには十分なお家です。
私はこの小さなお家で、毎日自由にのんびりと暮らしております。
日々の糧は森で採れる木の実や山菜、川で釣ったお魚さんなど。
それからたまに行商さんが森の脇を通って行かれるので、木の実や薬草などと物々交換でお肉を頂いたりしております。
お料理、お掃除、お洗濯、それから繕い物や食材の調達など、やるべきことを終えたら後は自由に過ごせます。
時間やお務めに左右されずに好きな時に好きなことの出来るこの生活が私は好きです。
この生活を始めた頃は、失敗も多かったですが、今ではすっかり慣れました。
あまり人とお話する機会がないのは寂しいですが、そこは我慢です。
昔に比べたら、今のお一人様生活は最高ですから!
さぁて、今日もお家のお仕事をさっさと片付けてしまって、その後は川で水浴びでもしましょう。
──そう、思っていたのですが・・・・・・。
私の予定は予期せぬ訪問者さん達によって、狂うことになりました。
このお家の扉がノックされるなんて初めてで、凄く驚きました。
「どちら様でしょうか?」
誰何して扉を開けると、そこには見覚えのある紋章の入った服を纏った数名の男性達が立っていらっしゃいました。
羽ばたく翼と、天を突く剣の意匠。間違いありません。トライアの森を囲む三国の一つであるタンジェラ王国の騎士団の方々です。
けれど、この方々が今更一体何のご用なのでしょうか?
一番先頭に立っている男性と目が合いました。その方は私を見て一瞬驚いた顔をされましたが、すぐに表情を引き締めてこう訊ねられました。
「当然の訪問をお許し下さい。私はタンジェラ王国騎士団第二部隊隊長、ジェームズ・アルスと申します。貴女はタンジェラ王国第七三代目聖女様──マリア・フィリス様でお間違いないでしょうか?」
「家名は国を追われた際に置いてきました。今はただのマリアでございます。ですが──はい。アルス様がお訊ねになったマリアで間違いありません」
タンジェラ王国は私が生まれた国です。
ですが、諸事情がありまして、国を出ていかなくてはなってしまったのです。それが私がトライアの森で暮らしている理由です。
なのに、何故タンジェラ王国の騎士の方々がいらっしゃったのでしょう? あれから十年もの歳月が経っておりますし、今更私を訪ねていらっしゃる理由が思い浮かびません。
私が首を傾げておりますと、アルス様がおっしゃいました。
「マリア・フィリス様。国王陛下が追放を解かれました。マリス様にはタンジェラ王国に戻り、再び聖女として王国のために尽くして頂きたいとのことです」
「──はい?」
アルス様がおっしゃった言葉をすぐに理解することが出来ませんでした。
えっと、国王陛下が追放をお解きに? 聖女に復帰して欲しい? えーっと・・・・・・
「あの」
「はい」
「一つ、お訊きしてもよろしいでしょうか?」
「何なりと」
「確か、陛下は十年前に二度とタンジェラ王国の土を踏むことは許さないとおっしゃって、私を追放されたと記憶しておりますが・・・・・・何かの間違いではございませんか?」
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