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第四話 魔力の継承
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アレックスは沸点が低く、怒りっぽいが、どんなに感情が高ぶっていても心の片隅に理性を置いているため、きっかけさえあればすぐに冷静になることが出来る。
ロッシーの膝カックンを受け、頭を冷やされた──というよりは、目的を挫かれ、その隙にレティシアが畳み掛けるように説得したため、四人はいつも通りの対面でのお説教と相成った。
キャサリンに対して説教をしているアレックスは、顔の険は取れないものの、もう水鞭を持ち出す様子は無さそうだ。
安心したのも束の間、レティシアはいつも通りのこれをすることになり、五日連続で三食全く同じメニューを出されたような顔をロッシーに向ける。
「ロッシー様、流石に今回の件は無視出来ませんよ。次があれば今度こそ確実にアレックス様はお二人を打たれるでしょう。もうキャサリン様とは別れて下さい。それがお互いの為です」
常であれば、そもそもロッシーがまともに取り合ってくれず、アレックスの手前、それらしいことを言ってやり過ごすレティシアだが、今回は真面目に説得することにした。
「痛いのはヤダー。けど、キャシーと遊べなくなるのもヤダ」
「別に関係を断ち切れとまでは言いません。ただ、恋人関係だけ清算してくだされば、それで結構です」
子供のようにぷうぷうと頬を膨らませてダダを捏ねるロッシーに、レティシアは諭すように言った。
浮気相手と別れた後も交流を認めるなど愚の骨頂に思われるだろうが、下手に自由人を締めつけるとどこで反動が出るか分からない。
実際、レティシアはロッシーの行動を完全に読めた試しがないのだ。
分かっているのは、生まれつき喜怒哀楽の『喜』と『楽』だけで生きていることくらい。だからどんなに叱られようと、自分がその二つの感情を最大限感じられるのであれば、そこに至るまでに含まれるリスクのことなど気にしない。一瞬が最高のものであればいいという花火のような男である。
『その時自分がしたいこと』を最優先させるため、何をしでかすか分からない危うさがロッシーにはあった。
(とは言え、火遊び程度の浮気ならともかく、王命に反したと思われかねないことまでするなんて・・・・・・少し、ロッシー様の自由人ぷりを舐めていました)
前述した通り、レティシアたち貴族の婚約は魔力を残すために王命によって決められる。
レティシアたちの住まう国はテスタライズ王国といい、魔力を主力資源にして繁栄してきた。しかし、時が経つに連れ、魔力という資源は枯渇の一途を辿り、他国では魔法から科学に生活基盤を移すところも増えたきた。
だが、テスタライズ王国には科学技術で国民全員の生活を支えられるだけの資源がない。ないのであれば奪うしかないが、テスタライズ王国は二つの連合国家に囲まれた土地にあるため、争いになっても数の利で不利になるため、得策とは言えない。
であれば、国がやるべきことは主力資源である魔力の保存だ。
その中で特に力を入れているのが、急激な減少の一途を辿っている『四大魔力』の継承。
『四大魔力』とは、『火』『水』『風』『地』の四つの魔力属性の総称であり、『エレメント』とも呼ばれる。
『四大魔力』は強力で応用力に優れているが、遺伝しにくいという欠点があった。そもそも、現代では魔力持ち同士でも子に魔力が継承されないこともある。だからこそ、確率をあげるために同じ魔力の持ち主同士の婚約を結ぶのだ。
そして、レティシアたち四名はそれぞれ貴重な『四大魔力』の属性を受け継ぐ家の子女である。
レティシアは『火』の魔力を受け継ぐ、ソルシェ侯爵家。
ロッシーは『火』の魔力を受け継ぐ、クレアランブル侯爵家。
アレックスは『水』の魔力を受け継ぐ、フローセル公爵家。
キャサリンは『水』の魔力を受け継ぐ、プルリラ公爵家。
そして皆、家の魔力属性をしっかりと受け継いでいる。
王命は全て果たされなくてはならないものだが、その中にも重要性の位はあって、『四大魔力』保持者の婚約の重要度は特級だ。
それに逆らうなどあり得ないことだが、残念ながらレティシアの目の前にその例外がいる。
ロッシーとキャサリンの仲が露見すれば、レティシアやアレックスの方にも何らかの被害があるだろう。飛び火は御免なので、レティシアとしてはなんとしてでもキャサリンとの関係を終わらせてもらわないといけない。
だが──
「だからヤダってば。キャシーとは本当に馬が合うんだから。手放すには惜しいんだよ。大丈夫! バレなきゃ問題ナイナイ! だから、見逃して?」
両手を合わせて拝むようにお願いしてくるロッシーに、レティシアは眩暈を覚えた。
(この人・・・・・・この人はホンットーに! ぜんっぜん分かってない!)
子供のようにイヤイヤを繰り返し、何も大丈夫ではないのに、大丈夫だと言ってのけるロッシーの説得に心が折れそうになったレティシアは、ふと、お説教の名人であるアレックスを参考にしようと、アレックスとキャサリンのいる方へ目を向けた。その時だった。
「もーっ! アレックス様しつこいです! そーゆーエラソーなところが嫌って言ってるんじゃないですか!!!」
癇癪を起こしたように荒げられた声が、キーンとレティシアの鼓膜を震わせた。
ロッシーの膝カックンを受け、頭を冷やされた──というよりは、目的を挫かれ、その隙にレティシアが畳み掛けるように説得したため、四人はいつも通りの対面でのお説教と相成った。
キャサリンに対して説教をしているアレックスは、顔の険は取れないものの、もう水鞭を持ち出す様子は無さそうだ。
安心したのも束の間、レティシアはいつも通りのこれをすることになり、五日連続で三食全く同じメニューを出されたような顔をロッシーに向ける。
「ロッシー様、流石に今回の件は無視出来ませんよ。次があれば今度こそ確実にアレックス様はお二人を打たれるでしょう。もうキャサリン様とは別れて下さい。それがお互いの為です」
常であれば、そもそもロッシーがまともに取り合ってくれず、アレックスの手前、それらしいことを言ってやり過ごすレティシアだが、今回は真面目に説得することにした。
「痛いのはヤダー。けど、キャシーと遊べなくなるのもヤダ」
「別に関係を断ち切れとまでは言いません。ただ、恋人関係だけ清算してくだされば、それで結構です」
子供のようにぷうぷうと頬を膨らませてダダを捏ねるロッシーに、レティシアは諭すように言った。
浮気相手と別れた後も交流を認めるなど愚の骨頂に思われるだろうが、下手に自由人を締めつけるとどこで反動が出るか分からない。
実際、レティシアはロッシーの行動を完全に読めた試しがないのだ。
分かっているのは、生まれつき喜怒哀楽の『喜』と『楽』だけで生きていることくらい。だからどんなに叱られようと、自分がその二つの感情を最大限感じられるのであれば、そこに至るまでに含まれるリスクのことなど気にしない。一瞬が最高のものであればいいという花火のような男である。
『その時自分がしたいこと』を最優先させるため、何をしでかすか分からない危うさがロッシーにはあった。
(とは言え、火遊び程度の浮気ならともかく、王命に反したと思われかねないことまでするなんて・・・・・・少し、ロッシー様の自由人ぷりを舐めていました)
前述した通り、レティシアたち貴族の婚約は魔力を残すために王命によって決められる。
レティシアたちの住まう国はテスタライズ王国といい、魔力を主力資源にして繁栄してきた。しかし、時が経つに連れ、魔力という資源は枯渇の一途を辿り、他国では魔法から科学に生活基盤を移すところも増えたきた。
だが、テスタライズ王国には科学技術で国民全員の生活を支えられるだけの資源がない。ないのであれば奪うしかないが、テスタライズ王国は二つの連合国家に囲まれた土地にあるため、争いになっても数の利で不利になるため、得策とは言えない。
であれば、国がやるべきことは主力資源である魔力の保存だ。
その中で特に力を入れているのが、急激な減少の一途を辿っている『四大魔力』の継承。
『四大魔力』とは、『火』『水』『風』『地』の四つの魔力属性の総称であり、『エレメント』とも呼ばれる。
『四大魔力』は強力で応用力に優れているが、遺伝しにくいという欠点があった。そもそも、現代では魔力持ち同士でも子に魔力が継承されないこともある。だからこそ、確率をあげるために同じ魔力の持ち主同士の婚約を結ぶのだ。
そして、レティシアたち四名はそれぞれ貴重な『四大魔力』の属性を受け継ぐ家の子女である。
レティシアは『火』の魔力を受け継ぐ、ソルシェ侯爵家。
ロッシーは『火』の魔力を受け継ぐ、クレアランブル侯爵家。
アレックスは『水』の魔力を受け継ぐ、フローセル公爵家。
キャサリンは『水』の魔力を受け継ぐ、プルリラ公爵家。
そして皆、家の魔力属性をしっかりと受け継いでいる。
王命は全て果たされなくてはならないものだが、その中にも重要性の位はあって、『四大魔力』保持者の婚約の重要度は特級だ。
それに逆らうなどあり得ないことだが、残念ながらレティシアの目の前にその例外がいる。
ロッシーとキャサリンの仲が露見すれば、レティシアやアレックスの方にも何らかの被害があるだろう。飛び火は御免なので、レティシアとしてはなんとしてでもキャサリンとの関係を終わらせてもらわないといけない。
だが──
「だからヤダってば。キャシーとは本当に馬が合うんだから。手放すには惜しいんだよ。大丈夫! バレなきゃ問題ナイナイ! だから、見逃して?」
両手を合わせて拝むようにお願いしてくるロッシーに、レティシアは眩暈を覚えた。
(この人・・・・・・この人はホンットーに! ぜんっぜん分かってない!)
子供のようにイヤイヤを繰り返し、何も大丈夫ではないのに、大丈夫だと言ってのけるロッシーの説得に心が折れそうになったレティシアは、ふと、お説教の名人であるアレックスを参考にしようと、アレックスとキャサリンのいる方へ目を向けた。その時だった。
「もーっ! アレックス様しつこいです! そーゆーエラソーなところが嫌って言ってるんじゃないですか!!!」
癇癪を起こしたように荒げられた声が、キーンとレティシアの鼓膜を震わせた。
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