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本編
第四話 アルメリアの真実
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「……は? 何を言っている? お前はアルメリア・ツルーネだろう?」
「ええ、そうですね」
ぽかんと開かれた口から紡がれた質問に、私はこくりと頷きました。
「この国にツルーネという名の貴族はツルーネ男爵しかいない。くだらない嘘をついて誤魔化そうとしているのか?」
「そんなことしません。確かに私はツルーネ男爵家の娘です。ですが、ツルーネ男爵の娘ではないと申し上げているのです」
「何が違うんですか? わけのわからないことを仰らないで!」
まぁ、わかりにくいですよね。
とはいえ、一文で説明するとそうとしか言えないのです。
私とツルーネ男爵家の関係、そしてライラックとの関係、古きしきたり……それらを説明するには、何から話せばいいのやら。
しばらく思案してから、私は一つの事実を告げました。
「私は、シアーガーデン公爵の娘です」
「………………は?」
「………………え?」
グジル様とリマリーさんが古代の焼き物のように目と口を丸くして固まってしまわれました。
無理もありません。お二人にとっては初めて知ることのようでしたから。男爵令嬢だと思っていた相手が公爵令嬢だった、なんて子猫と思って育てたら虎だったくらいの衝撃でしょう。
「な、何を言ってるんだ、アルメリア。おかしくなったのか?」
「そうですよ。いくら婚約破棄が嫌だからって、そんな嘘をつくなんて──」
「嘘じゃない」
そう遮ったのはライラックでした。私に喋らせてってお願いしましたのに、我慢出来ない子ですね。
「ライラック」
お願いを忘れたの? と言うように横目に視線を向ければ、「俺が説明した方が早いだろ」と返されました。まぁ、確かに。
「アルメリアが言ったことは本当だ。アルメリアは紛れもないシアーガーデン公爵の娘であり、俺の双子の姉だ。だから、俺とアルメリアが男女の仲であるなんて有り得ない。次、言ったら消す」
「「ひっ」」
ライラックの殺意すら籠った最後の言葉に、お二人は身を震わせました。
まださっき疑われたこと根に持ってますね。地雷だから仕方ありませんけど。
蛇に睨まれた蛙のように震えていたグジル様でしたが、やはりなかなか信じることは出来ずに反論をされました。
「お、おかしいじゃないか。アルメリアが本当に公爵令嬢なら、何故アルメリア・シアーガーデンではなく、アルメリア・ツルーネと名乗っている? それに婚約の際に同席したのだってツルーネ男爵夫妻じゃないか!」
「それはごもっとも──と言いたいところですけど、その婚約を結ぶ席でそのことについてご説明したはずなんですけど」
「そんな覚えはない!」
やはり、話を聞いていらっしゃらなかったようです。結構丁寧に説明したのでそこそこ時間を掛けたはずですが、少しも覚えていないとはその時グジル様は何を考えてらしたのでしょう。
いえ、今になってはそこは大切ではありませんね。
「なんなんですか、一体! お二人でグルになって私たちを謀っているのですか?」
「そんなことしませんよ」
「なら、なんで貴女はアルメリア・ツルーネなんですか!?」
リマリーさんは酷く取り乱した様子で髪を振り乱して叫んでいます。ああ、せっかく綺麗に纏めていた髪がぐちゃぐちゃです。
──なんで、ですか。
その理由に思いを馳せて、私は目を伏せました。
ライラックも苦々しい表情をしています。
だって、それは私たち姉弟を引き裂いたものですから。
「しきたり、だったんですよ」
たった四文字の言葉。
それこそが、私がアルメリア・シアーガーデンになれなかった理由。血の繋がった家族から私を切り離した刃でした。
「ええ、そうですね」
ぽかんと開かれた口から紡がれた質問に、私はこくりと頷きました。
「この国にツルーネという名の貴族はツルーネ男爵しかいない。くだらない嘘をついて誤魔化そうとしているのか?」
「そんなことしません。確かに私はツルーネ男爵家の娘です。ですが、ツルーネ男爵の娘ではないと申し上げているのです」
「何が違うんですか? わけのわからないことを仰らないで!」
まぁ、わかりにくいですよね。
とはいえ、一文で説明するとそうとしか言えないのです。
私とツルーネ男爵家の関係、そしてライラックとの関係、古きしきたり……それらを説明するには、何から話せばいいのやら。
しばらく思案してから、私は一つの事実を告げました。
「私は、シアーガーデン公爵の娘です」
「………………は?」
「………………え?」
グジル様とリマリーさんが古代の焼き物のように目と口を丸くして固まってしまわれました。
無理もありません。お二人にとっては初めて知ることのようでしたから。男爵令嬢だと思っていた相手が公爵令嬢だった、なんて子猫と思って育てたら虎だったくらいの衝撃でしょう。
「な、何を言ってるんだ、アルメリア。おかしくなったのか?」
「そうですよ。いくら婚約破棄が嫌だからって、そんな嘘をつくなんて──」
「嘘じゃない」
そう遮ったのはライラックでした。私に喋らせてってお願いしましたのに、我慢出来ない子ですね。
「ライラック」
お願いを忘れたの? と言うように横目に視線を向ければ、「俺が説明した方が早いだろ」と返されました。まぁ、確かに。
「アルメリアが言ったことは本当だ。アルメリアは紛れもないシアーガーデン公爵の娘であり、俺の双子の姉だ。だから、俺とアルメリアが男女の仲であるなんて有り得ない。次、言ったら消す」
「「ひっ」」
ライラックの殺意すら籠った最後の言葉に、お二人は身を震わせました。
まださっき疑われたこと根に持ってますね。地雷だから仕方ありませんけど。
蛇に睨まれた蛙のように震えていたグジル様でしたが、やはりなかなか信じることは出来ずに反論をされました。
「お、おかしいじゃないか。アルメリアが本当に公爵令嬢なら、何故アルメリア・シアーガーデンではなく、アルメリア・ツルーネと名乗っている? それに婚約の際に同席したのだってツルーネ男爵夫妻じゃないか!」
「それはごもっとも──と言いたいところですけど、その婚約を結ぶ席でそのことについてご説明したはずなんですけど」
「そんな覚えはない!」
やはり、話を聞いていらっしゃらなかったようです。結構丁寧に説明したのでそこそこ時間を掛けたはずですが、少しも覚えていないとはその時グジル様は何を考えてらしたのでしょう。
いえ、今になってはそこは大切ではありませんね。
「なんなんですか、一体! お二人でグルになって私たちを謀っているのですか?」
「そんなことしませんよ」
「なら、なんで貴女はアルメリア・ツルーネなんですか!?」
リマリーさんは酷く取り乱した様子で髪を振り乱して叫んでいます。ああ、せっかく綺麗に纏めていた髪がぐちゃぐちゃです。
──なんで、ですか。
その理由に思いを馳せて、私は目を伏せました。
ライラックも苦々しい表情をしています。
だって、それは私たち姉弟を引き裂いたものですから。
「しきたり、だったんですよ」
たった四文字の言葉。
それこそが、私がアルメリア・シアーガーデンになれなかった理由。血の繋がった家族から私を切り離した刃でした。
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