散らない春のアルメリア~婚約破棄を決めた婚約者が物凄い誤解をしてました~

夢草 蝶

文字の大きさ
5 / 33
本編

第五話 双子のしきたり

しおりを挟む
「しきたり?」

「ご存じありませんでした? 結構有名なんですけどね。シアーガーデン公爵家の双子のしきたり」

 この国の貴族で知らない人はいないくらい。
 だから、私はお二人が私の素性を知らないとは思いもしなかったのです。

「双子のしきたり? なんだ? それは」

 訝しげに訊ねてくるグジル様に、私は昔話を語るように話し始めました。実際、大昔の話ですけど。

「もうずっと昔の話ですよ。遠い遠いご先祖様の中に、私とライラックのように双子として生まれた男女がおりました。ただ──そのお二人がお互いに抱いた想いは、私がライラックに、ライラックが私に向けるような姉弟愛ではなかったのです」

 母のお腹にいた頃から一緒で、同じ日に生まれた時からもずっと傍らにいた存在。
 決して欠けてはならない自分の半分。双子のご先祖様たちは唯一無二の相手に、許されない想いを抱き、道ならぬ恋をしてしまいました。
 誰にも認められない恋の結末がどうなったのか、双子のご先祖様がどのような道を辿ったのかは記録に残されていません。分かるのは、それが周囲にバレてしまったことのみ。
 ──だから、しきたりは作られました。
 同じ過ちが繰り返されることがないように。また、シアーガーデン公爵家に男女の双子が生まれた時のために。
 全く、迷惑な話ですよね。男女の双子が生まれたからといって、必ずしも道ならぬ恋に溺れるわけではないでしょうに。
 少なくとも私とライラックには関係のない、忌々しいしきたりです。

「シアーガーデン公爵家に男女の双子が生まれた時は、女児を里子に出すべし。それがしきたりであり、私がアルメリア・ツルーネである理由です」

 過去の実例に基づいて作られたこともあり、古いしきたりの効力は絶大で、私はライラックが産声を上げた瞬間に里子に出されることが決まりました。
 そうして里親として選ばれたのがツルーネ男爵夫妻でした。
 というのも、ツルーネ男爵夫人は私とライラックのお母様の妹だったからです。他にも王都住まいであることや、私にとって義兄に当たる息子がいて子育ての経験があること、夫妻のお人柄や環境がもっとも理想的なものだったことを踏まえての選出だったそうです。
 実際、ツルーネ男爵夫妻は私にとってもう一組のお父様とお母様と呼べる存在です。
 里子に出されたといっても、それはライラックと別々に育てるためであって、籍自体はシアーガーデン公爵家にあります。しきたりも周知されているため、アルメリア・シアーガーデンと名乗っても問題ないと言われておりました。
 けれど、私を大切にしてくれるもう一つの家族が私は大好きで、姓に血とは別の家族の繋がりを見出だして、だからこそ私はアルメリア・ツルーネを名乗ることを選びました。
 もちろん、シアーガーデン公爵家の家族のことも大好きです。

「そんな──まさか、本当に──?」

「まだお疑いになられるのであれば、他の方々にもお訊ねになられたらいかがですか? 皆様、既知の事実ですし。そうでしょう?」

 ここまで説明して信じてもらえなかったら困りますし、私は最後の一押しのために周囲に問い掛けました。
 当然、この場にいる方々はご存じのことで、遠くから頷いています。
 大勢が首肯するのを見て、ようやく信じてくれたようで、グジル様とリマリーさんは愕然とした顔でその場に座り込んでしまいました。

「アルメリアはツルーネの姓を名乗ることを選んだけど、書類上はシアーガーデン公爵家の娘のままだ。それと、アルメリア側の婚約の証人を務めたのはツルーネ男爵夫妻だけど、婚約者を選んだのはうちの両親。今回ばかりは流石に見る目がなかったとしか言えないけど──そういうわけだから、貴様らは筆頭公爵の顔に泥を塗ったってわけ。で? これをどう清算する気なんだ?」

 崖に追い詰められた人間を更に一歩一歩進ませるように、ライラックが訊ねます。
 とはいえ、これは避けては通れない問題なので私も止めませんでした。
 実際、お二人はこれからどうする気なのでしょう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ジュゼットは、兄から父が背負った借金の金額を聞いて絶望した。 しかも返済期日が迫っており、家族全員が危険な仕事や売られることを覚悟しなければならない。 そんな時、借金を払う代わりに仕事を依頼したいと声をかけられた。 ジュゼットは自分と家族の将来のためにその依頼を受けたが、当然口外できないようなことだった。 その仕事を終えて実家に帰るジュゼットは、もう幸せな結婚は望めないために一人で生きていく決心をしていたけれど求婚してくれる人がいたというお話です。

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

侍女から第2夫人、そして……

しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。 翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。 ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。 一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。 正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。 セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。

しゃーりん
恋愛
侯爵家の跡継ぎにも関わらず幼いころから虐げられてきたローレンス。 父の望む相手と結婚したものの妻は義弟の恋人で、妻に子供ができればローレンスは用済みになると知り、家出をする。 旅先で出会ったメロディーナ。嫁ぎ先に向かっているという彼女と一晩を過ごした。 陰からメロディーナを見守ろうと、彼女の嫁ぎ先の近くに住むことにする。 やがて夫を亡くした彼女が嫁ぎ先から追い出された。近くに住んでいたことを気持ち悪く思われることを恐れて記憶喪失と偽って彼女と結婚する。 平民として幸せに暮らしていたが貴族の知り合いに見つかり、妻だった義弟の恋人が子供を産んでいたと知る。 その子供は誰の子か。ローレンスの子でなければ乗っ取りなのではないかと言われたが、ローレンスは乗っ取りを承知で家出したため戻る気はない。 しかし、乗っ取りが暴かれて侯爵家に戻るように言われるお話です。

振られたから諦めるつもりだったのに…

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。 自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。 その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。 一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…   婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。

処理中です...