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本編
第五話 双子のしきたり
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「しきたり?」
「ご存じありませんでした? 結構有名なんですけどね。シアーガーデン公爵家の双子のしきたり」
この国の貴族で知らない人はいないくらい。
だから、私はお二人が私の素性を知らないとは思いもしなかったのです。
「双子のしきたり? なんだ? それは」
訝しげに訊ねてくるグジル様に、私は昔話を語るように話し始めました。実際、大昔の話ですけど。
「もうずっと昔の話ですよ。遠い遠いご先祖様の中に、私とライラックのように双子として生まれた男女がおりました。ただ──そのお二人がお互いに抱いた想いは、私がライラックに、ライラックが私に向けるような姉弟愛ではなかったのです」
母のお腹にいた頃から一緒で、同じ日に生まれた時からもずっと傍らにいた存在。
決して欠けてはならない自分の半分。双子のご先祖様たちは唯一無二の相手に、許されない想いを抱き、道ならぬ恋をしてしまいました。
誰にも認められない恋の結末がどうなったのか、双子のご先祖様がどのような道を辿ったのかは記録に残されていません。分かるのは、それが周囲にバレてしまったことのみ。
──だから、しきたりは作られました。
同じ過ちが繰り返されることがないように。また、シアーガーデン公爵家に男女の双子が生まれた時のために。
全く、迷惑な話ですよね。男女の双子が生まれたからといって、必ずしも道ならぬ恋に溺れるわけではないでしょうに。
少なくとも私とライラックには関係のない、忌々しいしきたりです。
「シアーガーデン公爵家に男女の双子が生まれた時は、女児を里子に出すべし。それがしきたりであり、私がアルメリア・ツルーネである理由です」
過去の実例に基づいて作られたこともあり、古いしきたりの効力は絶大で、私はライラックが産声を上げた瞬間に里子に出されることが決まりました。
そうして里親として選ばれたのがツルーネ男爵夫妻でした。
というのも、ツルーネ男爵夫人は私とライラックのお母様の妹だったからです。他にも王都住まいであることや、私にとって義兄に当たる息子がいて子育ての経験があること、夫妻のお人柄や環境がもっとも理想的なものだったことを踏まえての選出だったそうです。
実際、ツルーネ男爵夫妻は私にとってもう一組のお父様とお母様と呼べる存在です。
里子に出されたといっても、それはライラックと別々に育てるためであって、籍自体はシアーガーデン公爵家にあります。しきたりも周知されているため、アルメリア・シアーガーデンと名乗っても問題ないと言われておりました。
けれど、私を大切にしてくれるもう一つの家族が私は大好きで、姓に血とは別の家族の繋がりを見出だして、だからこそ私はアルメリア・ツルーネを名乗ることを選びました。
もちろん、シアーガーデン公爵家の家族のことも大好きです。
「そんな──まさか、本当に──?」
「まだお疑いになられるのであれば、他の方々にもお訊ねになられたらいかがですか? 皆様、既知の事実ですし。そうでしょう?」
ここまで説明して信じてもらえなかったら困りますし、私は最後の一押しのために周囲に問い掛けました。
当然、この場にいる方々はご存じのことで、遠くから頷いています。
大勢が首肯するのを見て、ようやく信じてくれたようで、グジル様とリマリーさんは愕然とした顔でその場に座り込んでしまいました。
「アルメリアはツルーネの姓を名乗ることを選んだけど、書類上はシアーガーデン公爵家の娘のままだ。それと、アルメリア側の婚約の証人を務めたのはツルーネ男爵夫妻だけど、婚約者を選んだのはうちの両親。今回ばかりは流石に見る目がなかったとしか言えないけど──そういうわけだから、貴様らは筆頭公爵の顔に泥を塗ったってわけ。で? これをどう清算する気なんだ?」
崖に追い詰められた人間を更に一歩一歩進ませるように、ライラックが訊ねます。
とはいえ、これは避けては通れない問題なので私も止めませんでした。
実際、お二人はこれからどうする気なのでしょう?
「ご存じありませんでした? 結構有名なんですけどね。シアーガーデン公爵家の双子のしきたり」
この国の貴族で知らない人はいないくらい。
だから、私はお二人が私の素性を知らないとは思いもしなかったのです。
「双子のしきたり? なんだ? それは」
訝しげに訊ねてくるグジル様に、私は昔話を語るように話し始めました。実際、大昔の話ですけど。
「もうずっと昔の話ですよ。遠い遠いご先祖様の中に、私とライラックのように双子として生まれた男女がおりました。ただ──そのお二人がお互いに抱いた想いは、私がライラックに、ライラックが私に向けるような姉弟愛ではなかったのです」
母のお腹にいた頃から一緒で、同じ日に生まれた時からもずっと傍らにいた存在。
決して欠けてはならない自分の半分。双子のご先祖様たちは唯一無二の相手に、許されない想いを抱き、道ならぬ恋をしてしまいました。
誰にも認められない恋の結末がどうなったのか、双子のご先祖様がどのような道を辿ったのかは記録に残されていません。分かるのは、それが周囲にバレてしまったことのみ。
──だから、しきたりは作られました。
同じ過ちが繰り返されることがないように。また、シアーガーデン公爵家に男女の双子が生まれた時のために。
全く、迷惑な話ですよね。男女の双子が生まれたからといって、必ずしも道ならぬ恋に溺れるわけではないでしょうに。
少なくとも私とライラックには関係のない、忌々しいしきたりです。
「シアーガーデン公爵家に男女の双子が生まれた時は、女児を里子に出すべし。それがしきたりであり、私がアルメリア・ツルーネである理由です」
過去の実例に基づいて作られたこともあり、古いしきたりの効力は絶大で、私はライラックが産声を上げた瞬間に里子に出されることが決まりました。
そうして里親として選ばれたのがツルーネ男爵夫妻でした。
というのも、ツルーネ男爵夫人は私とライラックのお母様の妹だったからです。他にも王都住まいであることや、私にとって義兄に当たる息子がいて子育ての経験があること、夫妻のお人柄や環境がもっとも理想的なものだったことを踏まえての選出だったそうです。
実際、ツルーネ男爵夫妻は私にとってもう一組のお父様とお母様と呼べる存在です。
里子に出されたといっても、それはライラックと別々に育てるためであって、籍自体はシアーガーデン公爵家にあります。しきたりも周知されているため、アルメリア・シアーガーデンと名乗っても問題ないと言われておりました。
けれど、私を大切にしてくれるもう一つの家族が私は大好きで、姓に血とは別の家族の繋がりを見出だして、だからこそ私はアルメリア・ツルーネを名乗ることを選びました。
もちろん、シアーガーデン公爵家の家族のことも大好きです。
「そんな──まさか、本当に──?」
「まだお疑いになられるのであれば、他の方々にもお訊ねになられたらいかがですか? 皆様、既知の事実ですし。そうでしょう?」
ここまで説明して信じてもらえなかったら困りますし、私は最後の一押しのために周囲に問い掛けました。
当然、この場にいる方々はご存じのことで、遠くから頷いています。
大勢が首肯するのを見て、ようやく信じてくれたようで、グジル様とリマリーさんは愕然とした顔でその場に座り込んでしまいました。
「アルメリアはツルーネの姓を名乗ることを選んだけど、書類上はシアーガーデン公爵家の娘のままだ。それと、アルメリア側の婚約の証人を務めたのはツルーネ男爵夫妻だけど、婚約者を選んだのはうちの両親。今回ばかりは流石に見る目がなかったとしか言えないけど──そういうわけだから、貴様らは筆頭公爵の顔に泥を塗ったってわけ。で? これをどう清算する気なんだ?」
崖に追い詰められた人間を更に一歩一歩進ませるように、ライラックが訊ねます。
とはいえ、これは避けては通れない問題なので私も止めませんでした。
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