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怒涛の展開
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私の名前はクリスティ。
もうじき式を控えた伯爵令嬢。
今日は婚約者宅で式の打ち合わせをすることになっている。
「お邪魔しまーす。オーフェル、招待客の席順についてなんだけど──」
「きゃあ!」
「え?」
女の人の声?
「は!? クリスティ! 来るの今日だったっけ!?」
──どうやら、本当にお邪魔してしまったらしい。じゃなくて!
「オーフェル! それにリスミィ! 何してるのよ!!?」
式の話し合いに来たら、婚約者と妹が浮気していた。
「ひっどいと思わない!? オーフェルもリスミィも私に隠れて何度も会っていたなんてー! しかも、お父様もお母様も相手が身内だから、内々に片付けようとしてこのことは水に流しなさいって! そんな簡単に流せるかー!」
私は溜まった鬱憤を全て、幼なじみのヴィクトにぶち撒けた。
「それで何でうちに来るんだよ」
「だって、近いんだもん!」
ヴィクトの家は私の家のすぐ隣のため、同い年なこともあって私たちは仲がよく、子供の頃は嫌なことがあると何かにつけてヴィクトの家へ家出していた。流石にオーフェルと婚約してからこんな風にヴィクトの家を訪ねるのは今日が初めてだ。
「クリスちゃん、ヴィーくん、お茶とお菓子どうぞー♪」
「ありがとうございます。おば様」
朗らかなヴィクトのお母様からの差し入れをはぐはぐと頬張りながら、私の目からは涙が溢れてきた。
「人の部屋で泣くなよ・・・・・・」
「だって・・・・・・だってぇ・・・・・・」
「あーほらほら、拭けって」
「う゛ー」
「こんな時くらい菓子は置けよ」
ヴィクトはお菓子を食べながら泣きじゃくる私の顔を呆れながらもハンカチで拭ってくれた。
「で? これからどうすんの」
感情的になりやすい私とは正反対に冷静で合理的なヴィクトは、今後のことはどうするのかと訊ねてきた。
「正直、あんなもの見たら、オーフェルと結婚なんて出来ない・・・・・・かといって、婚約破棄なんてお父様たちが認めてくれる訳もないし・・・・・・というか、あの家にいたくない」
あの後のオーフェルや家族の言葉を思い出すと、酷く気持ちが沈む。
「好きでもない相手と結婚させられるんだ。これくらいハメ外したっていいだろ」
「私はオーフェルお義兄さまに誘われただけだもん。満足させられないお姉様に問題があるんじゃない」
「クリスティ、妹と婚約者が関係を持つなんて情けないと思わないのか? ちゃんとオーフェル君の気持ちを繋ぎ止めておけなかったお前の責任だぞ。もっとしっかりしなさい」
「そんなに騒がないで。殿方ならこれくらい普通よ。笑顔で許してあげる広い心を持たなきゃ貴族夫人なんて務まらないわ」
オーフェルとリスミィ本人たちもだけど、お父様とお母様まで私のせいだと言ってきた。
あの状況でどうして私だけが責められなきゃいけないの? どうして誰もオーフェルとリスミィは叱らないのよ。
思い出したら、悔しくて、情けなくて、また涙が溢れてきた。
「えーん! もーやだぁ! 私、げっごんじないー! ヴィクト、どっか連れてってー!」
ぐちゃぐちゃの感情を自分の胸のうちに閉じ込めておくことは出来なくて、ヴィクトの胸にすがりついてそんな我儘を言った。困らせるし、無茶振りなのは分かっている。ただ、ほんの少しだけ慰めて欲しかっただけなのだ。
「そうか。分かった。じゃあ、行くか」
「へ?」
ヴィクトが何を言っているのか、分からなかった。
私の予想では悪態をつきながらも、宥めながら励ましてくれると思ったのだけれど。
「本当は来週経つ予定だったんだけどな。まぁ、これくらい誤差だろ。平日だし、乗車券も取れるだろうし。必要なものは現地調達でいいか」
「え? あの、ヴィクト?」
「母さんー、俺、今からクリスと一緒に伯父上のとこ行ってくるー」
「はーい、分かったわ。お父様には私から伝えておくわね。気をつけて行ってらっしゃーい!」
「いってきます。じゃ、行くぞ」
「は? ちょ、待っ──どこに!?」
半日後、私は何故か住まいのある王都から遥か離れた辺境伯領にいた。
「────いや、なんで!!!!?」
もうじき式を控えた伯爵令嬢。
今日は婚約者宅で式の打ち合わせをすることになっている。
「お邪魔しまーす。オーフェル、招待客の席順についてなんだけど──」
「きゃあ!」
「え?」
女の人の声?
「は!? クリスティ! 来るの今日だったっけ!?」
──どうやら、本当にお邪魔してしまったらしい。じゃなくて!
「オーフェル! それにリスミィ! 何してるのよ!!?」
式の話し合いに来たら、婚約者と妹が浮気していた。
「ひっどいと思わない!? オーフェルもリスミィも私に隠れて何度も会っていたなんてー! しかも、お父様もお母様も相手が身内だから、内々に片付けようとしてこのことは水に流しなさいって! そんな簡単に流せるかー!」
私は溜まった鬱憤を全て、幼なじみのヴィクトにぶち撒けた。
「それで何でうちに来るんだよ」
「だって、近いんだもん!」
ヴィクトの家は私の家のすぐ隣のため、同い年なこともあって私たちは仲がよく、子供の頃は嫌なことがあると何かにつけてヴィクトの家へ家出していた。流石にオーフェルと婚約してからこんな風にヴィクトの家を訪ねるのは今日が初めてだ。
「クリスちゃん、ヴィーくん、お茶とお菓子どうぞー♪」
「ありがとうございます。おば様」
朗らかなヴィクトのお母様からの差し入れをはぐはぐと頬張りながら、私の目からは涙が溢れてきた。
「人の部屋で泣くなよ・・・・・・」
「だって・・・・・・だってぇ・・・・・・」
「あーほらほら、拭けって」
「う゛ー」
「こんな時くらい菓子は置けよ」
ヴィクトはお菓子を食べながら泣きじゃくる私の顔を呆れながらもハンカチで拭ってくれた。
「で? これからどうすんの」
感情的になりやすい私とは正反対に冷静で合理的なヴィクトは、今後のことはどうするのかと訊ねてきた。
「正直、あんなもの見たら、オーフェルと結婚なんて出来ない・・・・・・かといって、婚約破棄なんてお父様たちが認めてくれる訳もないし・・・・・・というか、あの家にいたくない」
あの後のオーフェルや家族の言葉を思い出すと、酷く気持ちが沈む。
「好きでもない相手と結婚させられるんだ。これくらいハメ外したっていいだろ」
「私はオーフェルお義兄さまに誘われただけだもん。満足させられないお姉様に問題があるんじゃない」
「クリスティ、妹と婚約者が関係を持つなんて情けないと思わないのか? ちゃんとオーフェル君の気持ちを繋ぎ止めておけなかったお前の責任だぞ。もっとしっかりしなさい」
「そんなに騒がないで。殿方ならこれくらい普通よ。笑顔で許してあげる広い心を持たなきゃ貴族夫人なんて務まらないわ」
オーフェルとリスミィ本人たちもだけど、お父様とお母様まで私のせいだと言ってきた。
あの状況でどうして私だけが責められなきゃいけないの? どうして誰もオーフェルとリスミィは叱らないのよ。
思い出したら、悔しくて、情けなくて、また涙が溢れてきた。
「えーん! もーやだぁ! 私、げっごんじないー! ヴィクト、どっか連れてってー!」
ぐちゃぐちゃの感情を自分の胸のうちに閉じ込めておくことは出来なくて、ヴィクトの胸にすがりついてそんな我儘を言った。困らせるし、無茶振りなのは分かっている。ただ、ほんの少しだけ慰めて欲しかっただけなのだ。
「そうか。分かった。じゃあ、行くか」
「へ?」
ヴィクトが何を言っているのか、分からなかった。
私の予想では悪態をつきながらも、宥めながら励ましてくれると思ったのだけれど。
「本当は来週経つ予定だったんだけどな。まぁ、これくらい誤差だろ。平日だし、乗車券も取れるだろうし。必要なものは現地調達でいいか」
「え? あの、ヴィクト?」
「母さんー、俺、今からクリスと一緒に伯父上のとこ行ってくるー」
「はーい、分かったわ。お父様には私から伝えておくわね。気をつけて行ってらっしゃーい!」
「いってきます。じゃ、行くぞ」
「は? ちょ、待っ──どこに!?」
半日後、私は何故か住まいのある王都から遥か離れた辺境伯領にいた。
「────いや、なんで!!!!?」
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