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草まみれの土地

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 子供たちがのびのびと遊べる場所を探すべく、私は皆の所へ戻ると、領内探検を提案した。
 小さい子たちは探検という言葉を聞くと、目をキラキラとさせて「やる!」と賛同してくれた。
 男の子と女の子で一列ずつに並んで、万が一にもはぐれたりしないように隣同士で手を繋いで貰っている。
 私も保護者的ポジションとして、きっちりこの子たちを引率せねば!
 そう意気込んで出発する。

「本当に公園とかないわねぇ」

 行けども行けども、目に入るのは几帳面なまでに整然と建ち並んだ建物の郡。
 時々見掛ける空き地も皆で駆け回って遊べる広さじゃない。

「広い場所ー、ひろいばしょー。ないなぁ──って、うわ。何これ?」

 道に沿って進んで行くと、草がぼーぼーに生い茂った場所を見つけた。他が管理が行き届いている分、まるで人の手が入っていない密林みたいなここは目立つ。
 そこは、何年もの間手入れがされていなさそうな広い土地だった。三方を家が囲んでおり、残りの一面は小道に面している。

「ここは?」

「んっとねー、お隣か斜め後ろのおうちの土地だって」
「えっとねー、お隣か斜め後ろのおうちの土地だって」
「たしかねー、両斜め前のどっちかのおうちだって」

「「「ん?」」」

「えーと、どういうこと?」

 話を聞くと、この土地について答えてくれた子たちは、それぞれこの土地を囲んでいる家の子たちらしく、この土地について、他の二つのどちらかの家の所有地だろうから入らないようにと教えられていたようだ。けど、話を聞く限りだとどの家の土地でもないらしい。

「じゃあ、ここは所有者のいない空き地ってこと。あっ、すみませーん!」

 首を傾げていると、杖をついたおじいさんが通りかかったから、声をかけてみた。
 おじいさんは生まれた時からこの辺境伯で暮らしているらしく、土地についても詳しいようで、話を訊いてみることにした。

「ああ、この土地はもうずーっと空き地だよ。誰も買わんし、誰の持ち物でもない」

「そうですか。ありがとうございます」

 ──つまり、誰のものでもないのなら、誰が使ってもいいわよね?

「よぉし! そうと決まれば!」

 コンコン「ごめんくださーい!」
 コンコン「ごめんくださーい!」
 コンコン「ごめんくださーい!」

 土地に面している三家に話を通すと、お借りした軍手を着けて、

「よいしょっと!」

 私は草むしりを始めた。
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