乙女ゲームの世界でサポートキャラに恋をしたので、イケメン全員落としてみせます。

あみえ

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76 すればこそ

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「ぬしもモノ好きよの。自ら殺されにくるとは、自己犠牲にもほどがあるというものよ」
「わ、わざわざ殺されに来る人間なんていません。私はリブロジさんとお話をしに来たんです」
「ほう。ならば手短にするがよいぞ。この結界も頑丈ではないからの。狂猿がいるとはいえ、鳥の器の視力にこの結界は勝てぬ。破られるのも時間の問題じゃ」


 二度目だしの。と笑うその余裕に少し怖気づいてしまう
 だけど負けるな。踏ん張れ私…!と自分を鼓舞しながら私はリブロジさんを見据える


「リブロジさんは、異形と暮らす前の事を覚えていますか?」
「は?なんの話じゃ」
「私は、リブロジさんの過去を見ました」


 そこには猫に連れ去らわれる幼いリブロジさんと、泣き崩れる母親らしき女性がいた。


「なんじゃそれは、わしはずっと異形と共におる。前も後もない」
「異形から生まれたとでもいうんですか?違います!あなたは人間です!そしておそらくあなたは猫魔に誘拐されたんだと思います」


 泣き崩れながらも、必死に我が子を探すあの母親の姿が脳裏に浮かぶ


「この場所は過去の映像と同じです。きっと近くの村か町にリブロジさんの母親はいます」
「だからなんじゃ」
「え…」

 
 だからなんだって・・・


「母親がいようが、いまのわしにはなんの関係もない。いままでもこれからもわしの大事なものは異形達と主(あるじ)だけじゃ」
「関係がないって…そんなわけないじゃないですか!」
「…。煩いのう。お前の声はどうにも耳障りじゃ。もうよい。さっさと時成の光を渡せ」


 ギラリと大鎌の刃が光り、ひゅっと私は息をのむ

 まずい…まったく耳を傾けてくれない
 子供のころの記憶が少しでもあれば、心は揺れ動くはず。と思っていた私の考えは、どうやら甘すぎたようだ


「ほ、ほんとうになにも覚えていないんですか?」
「・・・しつこいのう」
「リブロジさんの母親は、泣きながらずっとリブロジさんを探していました。嘆き悲しみ、心配するその姿からは、子への愛しか感じませんでした。きっと今でもあなたを探しているはずです」
「……そうじゃな。いまでも時折この森にくる」
「え・・・」
「そのたび結界をはって追い払うのも手間での。いっそその魂を異形にやろうかと毎度思うのに…どうにもできぬのじゃ。それはわしの中にすくなからず記憶というものが残っておるからじゃろう」
「じゃあ…ど、どうして名乗りでないんですか?」


 少しでも記憶があるのなら、何故帰りたいと思わないのだろう…と疑問に思う私にリブロジさんは鎌を持ったまま小さく息をはいた


「名乗ったところであの女のもとへも人間のもとへも行くつもりはない。わしが今までどれだけの人間を傷つけてきたとおもうておる。わしはもう異形側じゃ。わしには主(あるじ)しかおらぬ。あの方が望んだことを遂行することがわしの役目」
「主って…あの方って、だれなんですか。猫魔のことですか?」
「……猫魔の中におる。残留思念じゃ。」


 残留思念…?それってあの猫が化けていた
 時成さんによく似た姿のあの男の人だろうか


「ずっと何かを探しておる。それをわしには教えてくれんが、器と光さえあれば見つけられるとおっしゃっていた。ならわしは、それを用意するまで。」


 怒りと悲しみが、奥底からふつふつとわいてくるような感覚に僅かに体が震えだした

 この人はいま、自分がどんな顔をしているのかも…きっと自覚がないのだろう

 そんな泣きそうな顔をしてる人に、私の命と時成さんの光を
 渡すわけにはいかない



「あなたは探す側ではなく探されている側です」



 目を凝らせば見える…!
 リブロジさんのおでこから、禍々しいほどの猫魔の瘴気が…!

 瘴気にもなんらかの作用があるのは、犬神の時に分かった。ならあの猫魔の瘴気にはリブロジさんを洗脳するようなものが含まれているのかもしれない



「異形側ではなく、人間側です」



 一瞬でいい、すきをつければ…!

 震えよとまれ、体よ動け。
 目の前のこの人は、子供の時から時がとまってしまった悲しい人間だ
 猫魔に洗脳され、猫魔の目的以外の事を全て忘れさせられた、ただの人間だ


「それ以上近づくと、楽に殺すことはかなわぬぞ」


 大鎌を振りかぶろうとしたリブロジさんに、私は持っていた小さな小刀を勢いよく投げる
 キィインと容易く鎌ではじきかえされたそれが地面にざくりと刺さるのを、リブロジさんが目で追ったその瞬間ーー
 ぐっと足に力を入れ、私はリブロジさんの両手をガシリと掴んだ
 ピッと一筋、鎌に触れてしまった腕から痛みと血がにじむ


「なにを!貴様の非力な体でわしにー…っ!?」


 言葉の途中で閉口したリブロジさんは、どうやら異変に気付いたようだ。
 触れた腕から、異形の瘴気を吸収している、私の浄化の力に…。
 操るための瘴気だからか、今までのような苦しみはないけれど…それでも猫魔の瘴気は重く、楽なものではない
 こんな瘴気を、子供のころからリブロジさんは纏っていたのか…


「な、なにをしてるんじゃ貴様…」
「ぅ・・・、もう、少し……」


 まずい、足がガクガクと震えてきた。予想よりも濃く深い瘴気に手こずる。限界も近い…。でも、あれだけは…、とキッと見上げたそれはリブロジさんのおでこ。
 映像でみた。猫魔が触れたそこが、一番瘴気が濃い。

(でも両腕を掴んでる今そこに触れる手段が…)

 仕方ない、と私は体重をのせるように腕をぐんっと下に向け力いっぱいひっぱる
 油断していたのか動揺していたのか、意外にもリブロジさんは逆らうことなく、されるままにその背を縮めてくれて問題だった身長差がなくなり
 私の顔の前にリブロジさんの顔がくる


「痛かったら、すみません!」


 そう叫ぶとすぐ、私はゴンッと勢いよくリブロジさんのおでこに自分のおでこをくっつけた
 目を瞑り、リブロジさんに触れている両手とおでこに全神経を集中させ、その瘴気を浄化していく。

 ハートがないから共鳴はできない。だから異形の塊までは破壊できないけど
 せめて瘴気だけでも浄化して、洗脳が解けてほしい


「う、この…」


 大人しくしていてくれた方だ…。ついにリブロジさんが抵抗を見せ、ぐぐぐっと腕を振り上げると鎌が私の頭上を狙った
 その瞬間に、パリィイインと聞き覚えのある音がしてリブロジさんの結界が敗れた事を告げる

 横目でみればムチで猿の異形を捕縛しているナズナさんと、結界を破ったらしいサダネさんがこちらに駆けてきて
 私の状況をみた瞬間にサダネさんがリブロジさんの鎌をはじきとばした

 それでも腕力で敵わない私をリブロジさんが振り払おうとした時、ゲンナイさんがリブロジさんの体を押さえてくれた


「ぐっ!貴様ら…!」
「おっと、叫ぶのもなしだリブロジ」
「うぐっ!!」


 皆を麻痺させたあの“叫び”も、ゲンナイさんが口を手で塞ぎ阻止したようで
 私のしたいように、と迅速に察知し助けてくれる皆に、私は小さく微笑むと浄化に集中する

 私の限界もちかいけど浄化しきるのももうすぐだ


「リブロジさん、あなたは異形といて笑ったことがありますか」
「…」
「他にも道があるんです。私はあなたが笑える未来が見たい」
「っ・・・!」
「リブロジさん、どうか笑ってください」


 ブワリと涼しい風がふき、リブロジさんの体から猫魔の瘴気が消えたのが分かった
 それと同時にリブロジさんは糸が切れたように気を失ったようで
 ぐったりとゲンナイさんにもたれかかる


 「おわりか?」


 不機嫌そうに聞いてきたナズナさんに、私は力なく頷いた


「とりあえず、リブロジさんを連れてここから逃げます…近くの村か、町にい、・・・ま…」

「あ?おい由羅」
「由羅さん!!」


 どうやら限界を超えていたらしい。私は気絶した

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