82 / 112
79 サポートキャラに恋をした
しおりを挟む心臓の音がドクドクと耳についた。
胸が騒ぐ、この感覚はなんなのだろう…。
…なんとなく時成さんを感じてしまうなんて…、あの人の事を考えすぎて、いよいよ私はおかしくなってしまったのか…。
次会った時、一言目に何を言ってやろうかとか、今頃なにをしているのだろうかとか、体調はどうなのだろうかとか、食事はできているのかとか…
ふと気が付けば、いつのまにか当たり前のように時成さんの事を考えている自分がいる…。
というか、何故時成さんはいまだに帰ってこないんだろう
まだ回復できていないのか…、それともーー…
…時成さんが求めたのは
リブロジさんのハートと、リブロジさんを猫魔から解放する事だと、私は思っていたのだけど、まだ時成さんが帰ってこれないのは、私の思う最善が、間違っていたという事だろうか…。
脳裏に浮かぶ時成さんの姿に目を伏せながら、トキノワの玄関を開けると
なにやら事務室からサダネさんの驚く声が聞こえてきて、何かあったのだろうか。と草履を脱いでいれば、パタパタとサダネさんが私に駆け寄ってくるのが見えた。
その手には電話が握られていて、誰かと通話中なのだとわかる
どうしたんですか?と聞こうとした瞬間
聞こえてきたサダネさんの言葉に、私は目を丸くした
「由羅さん、時成様が」
「っ…!」
「帰ってこられたようです」というサダネさんの言葉を最後まで聞かないまま、私は草履を履く事すら忘れ、そのまま勢いよく玄関を飛び出した。
背中にサダネさんの慌てたような声が聞こえた気がしたけど、振り向かないまま全速力で走った
(帰ってきた…。)
時成さんが、帰ってきた……
顔が熱い
胸が苦しい
旅館まで、こんなに遠かったっけ…。
走っているせいで足りなくなる酸素に、呼吸が荒くなっていくーー…。
さきほどの電話は、時成さんからだったのだろうか
帰ってこられたのは、
リブロジさんのハートが増えたから?
私の思う最善が合っていたという事ですか?
高ぶっていく感情に呼応するように、目頭にじわりと涙がにじんだ
旅館につき、汚れてしまった足袋を脱ぎ捨て、私はまた走る。旅館の人には後で謝ろう…
見慣れた廊下を過ぎ、階段を駆け上がり、
時成さんの部屋のドアを
私は勢いよく開け放つ。
キセルの匂が香るその部屋の窓際で、
いつものように座椅子に座る時成さんが見えた
「おや」
懐かしさすら感じるその声が聞こえ、その視線が私を見た瞬間
何かが破裂したかのように、私の目から大量の涙があふれだした…。
「ずいぶんと早かったね、由羅。」
「っと、きなり、さん…」
「この場合、おかえりとただいま、どちらが正しいのだろうね?」
にっこりといつもの胡散臭い笑顔を浮かべる時成さんに、私はボロボロと涙を流しながら
その胸に、勢いよくガバリと抱き着いた
座椅子がギシリと傾いて「おっと」と驚く素振りをする時成さんは、そのまま私の頭にぽんっと手を置くと
「心配させたかな」と呟いた言葉に、当たり前でしょう…!と心の中で叫ぶ。
どれだけ心配して、どれだけ恋しかったと思ってるんですか!
「…もう勝手に、消えたり…しないでくださいよ…」
時成さんがいないと、私はまともに息ができない…。
嗚咽まじりに呟き、止まらない涙を流す私に
時成さんは小さく笑みを浮かべると、私の頭を優しく撫でた
(あぁ、いまさらに…思い知る。)
いつかのナス子さんの言葉が脳裏に浮かぶ
『頑張って否定してる時点で、すでにもう落ちてしまってることもあるから気を付けて~』
…その通りでしたナス子さん。どうやら私は、どうしようもなく鈍感だったみたいです。
いや、どちらかというと…認めたくなかっただけなのかもしれない…。
本当は、ずっと前から気付いていた…。
「由羅、そろそろ泣き止みなさい。服にしみる」
「…黙ってハンカチひとつだせないんですか」
「ださずとも私の服ですませているのは由羅だろう」
…この、どうしようもなく…いい加減で、無責任で、人の気持ちがわからない…
人間かどうかも怪しい、得体のしれない男に…
私は、恋をしてしまっているようだ…。
「…おかえりなさい、時成さん」
「ただいま、由羅。」
乙女ゲームのサポートキャラに恋をしてしまった場合
攻略方法は、存在するのでしょうか・・・?
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
能天気な私は今日も愛される
具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。
はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。
※表紙はAI画像です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる