闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
215 / 1,458
0200

第0228話 火種の分離

しおりを挟む
状態が徐々に頂点に戻った後で、蕭炎はようやく落ち着いてきた。

天高く月を見上げながら、彼は軽い笑みを浮かべた。

掌の上には青蓮座を乗せ、突然立ち上がると同時に紫雲翼が広がり、周囲に風が吹き始めた。

「まずは安全そうな場所を見つけてみましょう」薬老が静かに言った。

「はい、いいですね」と笑顔で頷いた蕭炎は、眼下の地形を四方八方に見回した。

ここは砂漠の端にある唯一の山脈で、その規模は決して小さいものではない。

時折狼の叫びや虎の吼声が響く中、彼は掌に青蓮座を乗せ、地面を強く踏み込むと同時にエネルギー爆発音と共に体が突然跳ね上がった。

紫雲翼が広がり、彼は巨木の頂上に軽々と着地した。

周囲の山林を見渡す間も無く、背後の樹皮を蹴って飛び出すようにして、夜闇の中の大鳥のように密林を駆け抜けた。

断崖の頂上で数度巡回した結果、彼は満足できる場所を見つけ出した。

それは急斜面の断崖の真ん中にある天然の洞窟で、常人が登攀するのは困難だが、紫雲翼を持つ蕭炎にとっては容易なことだ。

断崖を見下ろすと、その底には薄い雲が覆う深淵な空間が広がっていた。

「これならいい」と彼は満足そうに頷いた。

背中に紫雲翼を広げると同時に体を跳ねさせ、山洞の外側で浮遊した。

内部を見回すと、月光石を壁に埋め込み、暗い空間が明るく輝き始めた。

慎重に周囲を確認しながら歩く蕭炎は、細部まで目を凝らして調べた。

この異火の吸収は前回の紫火とは比べものにならないほど危険で、些かもkulpa外界の干渉があれば、即座に反撃されて灰燼となるかもしれないからだ。



狭い洞窟だった。

蕭炎は約一時間近くをかけてようやく全体を確認できた。

その間、いくつかの巨石から小さな魔物の排泄物を見つけていた。

おそらく偶然この場所に休息した飛行生物が残したものと思えた。

排泄物を取り除くために、萧炎は洞窟内部から巨石を運び出し、入口を完全に塞いだ。

わずかに隙間を開け、空気の流れを確保した。

その全ての作業を終えてようやく、萧炎は深呼吸をして山洞の中央で座り込んだ。

漆黒の瞳孔が青色の蓮台を見つめている。

掌心には汗が滲み出ていた。

「先生、次はどうしますか?」

彼は玉瓶に手を添えながら、静かに問いかける声を出す。

「まずは必要なものを全部取り出せ」と薬老が言った。

その言葉と共に玉瓶から血色の丹薬が現れた。

赤い薬品は龍眼ほどの大きさで、瓶の反射光の中で不気味な影を映し出していた。

液体のようなものが揺らぐように見えた。

「これが血蓮丹か?」

萧炎が確認すると、次に小さな玉盒から白い玉瓶を取り出した。

その中には古トルから手に入れた冰霊寒泉が入っていた。

薬老の指先から灰色の光が発生し、石床に降り注ぐと、そこには拇指大の灰色の玉石があった。

その中心部で淡い藍色の光がゆらめいていた。

「これがナリンか?」

萧炎は驚きを隠せない声を上げた。

「そうだ。

これは非常に稀な天界奇材だ。

高級の納石からこそわずかな確率で採取できるものだ。

この小粒でも価値は血蓮丹や冰霊寒泉よりも遥かに上る。

もし私が運良く得られていなければ、今の異火を手に入れてもただ眺めていただけだったかもしれない」薬老が笑みを浮かべた。



点头し、蕭炎は指先にある那枚**をちらりと見た。

これは低級の納戒で、その価値は数万ゴールドに達するが、中級の場合はそれより十倍以上かかる。

そして高級の納戒となると…その稀少さは家族や強力な勢力にも届かないほどだ。

この物の希少性は、まさに言葉通りの超絶品である。

**の比に比べれば、これはさらに極端な稀少度を誇る。

鳳毛麟角と言っても過言ではないだろう。

詳細に三つの物品を確認した後、蕭炎は蓮心にある青色の炎を見つめた。

その炎が突然爆発的に増大し、瞬く間に半空に浮かぶ巨大な炎の塊となった。

山洞内の温度が急激に上昇し、天井の岩壁から頭くらいの穴が開いた。

額の汗をぬぐい、蕭炎は二歩後退した。

炎を見上げながら、声も出せないほど緊張していた。

その手はわずかに震えていた。

「次はどうする?」

強いて平静を装う声で尋ねた。

「包囲する必要がある。

異火の勢いが大きすぎるからだ」薬老は肩を叩きながら言った。

「もしもそのままなら、この山全体が燃えてしまう」

「了解だ」

「血蓮丹を服用しないと、あなたの実力では異火に近づけない。

**を飲め」

小さく頷いた蕭炎は掌で玉瓶を掴み、丸い薬品を手の平に乗せた。



握着血蓮丹、蕭炎はそれを鼻の下で軽く嗅いだ。

奇妙の匂いが鼻先に絡みつき、その冷たい感覚は魂をわずかに震わせた。

五品級の薬材である血蓮丹を見つめながら、萧炎は拳を猛然と握りしめ、目を閉じてそれを口中に押し込んだ。

血蓮丹が口に入るとすぐに陰気なエネルギーとなり、瞬く間に蕭炎の全身の経絡(けいらく)に浸透し、血膜のように静かに血管や骨格に広がった。

血膜が体内を侵食するにつれ、萧炎の体は激しく震え始め、毛細孔から赤黒い血が滲み出てきた。

瞬く間に全身が朱色に染まり、見るものも恐ろしいほどだった。

その血が凝固するとすぐに角質層となり、蕭炎の手足だけでなく目までも完全に閉じ込められた。

血色の角質層は密不透風な血の鎧となり、萧炎を覆った。

被血色角质层包裹的手掌をゆっくりと伸ばし、半空中の異火に向かって吸い付ける力が突然発生した。

すると空に浮かぶ青色の炎が爆発的に増大し、その瞬間に恐怖の破壊力が青炎から滲み出てきた。

蕭炎は拡大する青炎を凝視しながら、異火の食喰が始まったことを悟った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

ともボン
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...