闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0447話 鍛錬

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塔門が開いた瞬間、人々は騒然と動き出した。

消炎は説明を中断し、韓月に手を振ってみせた。

目の前の隙間が次第に広がるのを見つめながら、彼女は周囲の人波に身を任せていた。

塔門が完全に開いた瞬間、外側の群衆は一斉に押し寄せ始めた。

消炎たちも人混みを利用し、天焚煉気塔の中へと勢いよく突入した。

中に入ると、韓月は異なるルートを取るため、消炎とは別れてしまった。

去り際に「白帮(はくほう)の動きに注意せよ」と囁いた。

消炎はその好意を受け止め、彼らが視界から消えると、ようやく磐門の仲間に向き直った。

先ほど塔に入る際、彼は皆に警告していた。

「初めての新貨炙烤(しんかあしこ)には注意せよ。

心火をどう解きほぐすかのコツも伝えたが、今はまだ過激な現象は見られないようだ。

彼らは体が硬直し、目を開けずに頬を赤らめているだけだ」

約二分後、熏(くん)がまず目を開いた。

頬に微かな光輝きながら、彼女は「心火で斗気を鍛錬した成果は相当なもの」と満足そうだった。

消炎はその早さに驚いていた。

「どうやら新貨炙烤の効果検証は不要になったようだ。

陰険な歯車(いんせんなしか)が長く耐えれば良いという基準も今は無意味。

逆に、心火を早く消し尽くすほど評価されるのだ。

熏の速度は驚異的だ」

その後も順番に胡嘉(こか)、そして他の磐門メンバーが目覚めていった。

顔には輝きを放ちながら、全員がこの「心火鍛錬」から得た恩恵を実感していた。

「天焚煉気塔は確かに不思議だわ。

老生たちの進歩が早いのも納得。

内院(ないえん)の秘密はここにあるのかしら?」

熏は驚きと何か別の感情を交えて呟いた。

「ここで鍛錬すれば、効率的に上達するはずよ」胡嘉は隣で頷いてみせた。

「この塔の中なら、一年もかからず斗霊(どうりょう)に到達できるわ!」

他のメンバーも笑顔で賛同し、早くも次なる鍛錬場所を求めていた。

「消炎さんですか?」

消炎が仲間たちと練習室探しに向かおうとしたその時、中年男性が駆け寄ってきた。

「柳老(りゅうろう)様からの指示で、こちらの『中級修練室』へ案内するようとのことです」彼は胸に付いた特殊な徽章を見せて笑みを浮かべた。

「学生は消炎です。

先生には何かお手伝いできるでしょうか?」

消炎はその徽章を見て礼儀正しく尋ねた。



聞けば消炎の目が輝いた、ようやく柳長老が語ったあの特殊な中級修練室を思い出したのだ。

慌てて礼を述べた。

「ならば導きを賜わらせていただきます」

「ふん、構わぬよ、ついてこい」と笑みながら首を横に振る中年男の視線が消炎の身体を軽く掠めた。

暫し観察した後、小さく頷き前を行くように促す。

「追いかける」

背中に手を振ると消炎は慌てて先導する中年指導員に続く。

一行が塔内の中級修練室区域へ向かう。

約5分の折れ曲った通路を進み、やがて朽ちた修練室前で足を止めた。

他の修練室とは比べ物にならないほど古びたこの部屋を見て消炎らは呆気に取られた。

申請を見ながら中年指導員も彼らの気持ちを察したのか笑い声と共に扉を開く。

入口に立った消炎が一瞬ためらいを見せたが、それでも先導して入室する。

足を踏み入れると石板から脚を通じて微かな冷気を感じ、周囲の人々にも爽やかさが伝わる。

部屋内は優しい柔らかい光で包まれ、目刺しもなく眩しくない。

広さは40人程度の収容が可能なほど。

中央には漆黒の石を積み上げた広いプラットフォームがあり、床面から約2寸高い位置に設けられた。

「消炎 中央の黒石区域が修練場所だ」と中年指導員は笑顔で黒石台の端まで歩き、指差しながら説明した。

「各々に十分な空間があり、この凹みに火晶カードを挿すと体内に連続して炎が生じる。

そこから気を鍛錬し筋肉や骨格を強化し実力向上ができる」

その言葉に消炎らは興味津々で近づく。

黒石台の上には燃料と思われる不思議な物質で個人用修練エリアが区画され、各エリアに1寸程度の石製プラグイン口があった。

「初めて天焚煉気塔での修練となるので注意すべきルールを説明しよう」と中年指導員は立ち上がり沈黙した。

暫し考えた後続けた。

「炎による鍛錬は実力向上に効果的だが、無理して長時間行うと問題が起きる。

炎の暴走力を含むため、気を浄化する際にもその一部が混ざり込む。

現在の貴方たちの実力と炎への耐性では、半日間の修練後1日の休息を取るのが理想だ」

「そして慣れてきたら徐々に時間を延ばせ、斗霊級になったら塔内で4~5日連続修練も可能だが、今は規則通りのスケジュールで行うべき。

無理すると自身が損なわれるから内院では見過ごせない」

中年指導員は真剣に注意を促した。

その言葉に消炎らは皆頷いた。



見ると、中年の指導者がようやく笑みを浮かべて手を振った。

「分かったなら、そろそろ時間を作業室に入りなさい。

初めての修練室での効果は非常に顕著で、多くの優れた才能を持つ新入生がここで昇級した例も少なくない。

君たちにも期待しているぞ」

そう言いながら袖を軽く振り上げたその瞬間、指導者は外へと踵を返す。

消炎はその背中を見送りつつ、何かを思い巡らしていた。

そして急ぎ足で追いかけて出口まで送ったところで、低い声で「先生、ちょっと待ってください」と囁いた。

消炎の言葉に驚きを表した指導者は、彼が小瓶を手渡すと同時に「今日はお世話になりました。

これは静かに修練できる丹薬です。

たいそう貴重なものではありません」と笑みを浮かべた。

指導者が玉瓶を受け取ろうとしたその瞬間、消炎は急いで引き返そうとする彼の手を止めた。

「小僧、安心しなさい。

このエリアは私が担当しているんだから、じっくり修練していなさい」

「ふふん、ありがとうございます」と消炎が笑顔で頷く。

指導者は朗らかに声を上げた。

「お気に入りなら『候虎』と呼んでくれればいいぜ」

「では、こう虎さんです」と消炎は軽やかに笑った。

「ああ、行けよ。

しっかり修練してこい」候虎が手を振る。

消炎が頷いて扉を閉じた後、指導者は笑みを浮かべて首を横に振りながらつぶやいた。

「この子は人間くさいな、なかなか上手いことするもんだ」

「うーん、こんな変わった修練方法は初めて見たぜ」

消炎が部屋に入ると同時に胡嘉の声が聞こえた。

彼は黒い石台を撫でていた。

消炎は笑顔で頷きながら近づき、指先でその温かみを感じ取る。

その異様な温熱に触れた瞬間、体中の気の流れが活発になった気がした。

「やはり不思議だね。

みんなも席を確保して座りなさい。

この初めての修練で何人か昇級するかもしれないんだから」

消炎は背中に背負っていた巨大な玄重尺を取り出し、掌を返すと納め物に収めた。

軽やかな動きで左側の席を選んで座った。

指導者の指示に従い、磐門の仲間たちもそれぞれの場所を見つけて移動した。

石台に座り直し、ますます濃厚になる温熱を感じながら深く息を吐いた。

指先で軽く弾かれた青色の火晶カードが掌に乗る。

両手で握ったそれを慎重に凹みに差し込むと、軽い音と共に微かな光が飛び出した。

その光の中で消炎は148という数字が1減っていることに気づいた。

これは明らかに1日の修練費用として火能を徴収した証拠だった。

火能が引かれた直後、消炎はゆっくりと目を閉じて手のひらで印結を作り、体を硬くして瞑想に入った。

その後ろからも順番に火晶カードが凹みに差し込まれる音が響き、微かな光が部屋全体を包んだ。

光が薄れると、さっきまで囁いていた声は完全に消え、静寂だけが残った。

その中で規則正しい呼吸音だけがゆっくりと響き渡り始めた。



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