闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0485話 招待

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林修崖の背後に突然現れた双翼の斗気は、蕭岩を驚かせただけでなく、その存在を知る厳皓らも思わず目を見開いた。

しばらく呆然と見つめていたが、やがて互いに顔を見合わせた瞬間、それぞれの瞳孔に重苦しい色が浮かび上がった。

「厳皓も林修崖が言う通り、斗王への壁を僅かに感じ取っているのは事実だ。

しかしその程度では、一般的な斗霊頂点と比べてほんの少し優位に過ぎない。

自身の力で双翼を凝縮するという点においては、まだ大きく差がある。

この時点で林修崖がまた一歩先を行くことを示している」

「斗気化翼」という現象は、大陸の強者になるための分水嶺と呼ばれるものだ。

その名前だけでも多くの才能者が一生をかけて追求する目標だが、その文字に込められた苦難は、ほとんどが途中で諦めてしまうほど厳しい。

斗霊から斗王までの隔たりは一階級のみだが、その間の差異は前段階よりも遥かに大きい。

以前の段階では体中の斗気を消耗させて戦うしかないが、斗王になると外界の無限のエネルギーと連動し、圧倒的な力を発揮できるようになる。

この違いは、単なる個人の力と天地の力を借りたものの差であり、一目で分かるほど明確だ。

その光景を見て、皆が同じ表情を浮かべていた。

「青炫風殺!」

林修崖の声と共に空気自体が凍りつくような冷たい叫びが響き渡った。

瞬間、谷間の風が突然凝固し、激しく渦巻き始めた。

そのエネルギーは僅かな時間で完全に収束し、次の一瞬には鋭い破壊音を立てながら空気を切り裂いて降り注ぐ。

「シュ!」

青く曖昧な影が空中から高速で迫ってきた。

その形態はエネルギー化した長剣と見分けられず、風の渦巻きが凝縮されたような存在感があった。

その速度は異常であり、さらに斗技との融合により、その破壊力は想像を絶するものだった。



青い影の攻撃目標は、林修崖の下方数丈先にある雪魔天猿だった。

後者は推力を借りて空高く舞い上がったものの、地面に足を置けないため、地上でのように自由に回避することができなかった。

強烈な気流が迫る中、雪魔天猿は牙を剥き出し低い唸り声を上げた。

体から瞬時に発生した薄白いエネルギーの光輪が巨大な氷の球へと凝縮し、その影を完全に包み込んだ。

その直後、鋭い破風音と共に衝突が発生した。

空一面に轟き渡る巨響の後に、巨大な氷の球は谷口近くの断岩に激しく落下した。

着地時の衝撃力は砲弾のごとく地面を深く抉り、十メートルを超える幅を持つ巨大な溝を作り出した。

その裂け目からさらに腕の太さほどの亀裂が四方八方に広がり、森の中にまで延伸した。

厳皓は即座に身を躍らせ、氷球周辺の乱石や樹幹へと駆け寄った。

体内の気力が急速に動員され、負傷した雪魔天猿が逃亡する前にその動きを封じるためだった。

青い影が木々の間から降り立ち、ある枝先に静かに着地した。

人々は林修崖の顔色が蒼白であることに気づいた。

彼の背後の気力翼は次第に薄くなり、細かい音を立てながら光点となって消散し始めた。

「この大物は本当に強いね。

こんな多くの人間が囲んでいるのに、それほどまでに阻害できないんだから。

もし私が特殊な功法を持たないなら、その一撃で殺されていたかもしれない。

でも逃れたのはよかったものの、気力の消耗は尋常じゃないよ」と、林修崖は厳皓らに向かって苦しげに笑みかけた。

「功法のせい?」

と聞くや、厳皓たちが驚きを隠せない様子だった。

しかしすぐに理解したように頷いた。

「ああ、特殊な功法によるものだね。

この男は既に準斗王級に近い実力があるのに、気力翼を凝縮するにはそれなりの条件が必要なんだ。

でも風属性の気力を持つからこそ、他の属性よりも容易に翼を作り出せたんだろう」

森の中から聞こえる声が続いた。

「一般論としては、自身の気力を翼として凝縮できるなら準斗王と呼ばれる。

その上で空中で一定時間滞空したり移動できれば本格的な斗王だ。

ただし前提は純粋な実力によるもので、功法の助けを借りた場合は別物さ。

林修崖が風属性であることも関係しているね。

他の属性より翼を作るのが容易だからこそ、彼はまだ斗霊と斗王の間にある壁を超えていないんだ」



「林先輩、戦闘は終わったんですか?」

戦場の外側から、韓月も美しい瞳孔に先ほどまで感じていた林修崖の強大な実力への驚異を消し去りながら、優しく尋ねた。

その言葉を聞いた瞬間、厳皓らも我に返り、下方の塵埃の中へと視線を落とした。

耳を澄ませるが何の音もなく、彼らの顔には喜びと小さな疑問が混ざった表情が浮かんだ。

林修崖は眉根を寄せながら下方を見やっていた。

自分が先ほど放った攻撃の強度は雪魔天猿に少なからず傷を与えることはできたが、それを殺すほどのものでは決してないことを彼はよく知っていた。

数々の考えが頭を駆け巡る中、林修崖は袖を軽く振ると、突然現れた強風で**塵埃を一掃した。

次第に霧散する塵の中から、巨大な坑洞が視界に入る。

その深さゆえに周囲の薄い氷層と深い闇だけが確認できる状態だった。

幽々と続く深淵を見つめる林修崖は突然眉を顰めた。

彼は坑底から微かに発せられる不気味な赤色の光を感じ取っていたのだ。

「何かおかしい、注意しておけ」心を引き締めながら、林修崖が低い声で警告した。

その言葉に厳皓らも表情を硬くし、体内の斗気を解放。

周囲から見れば色の異なる光球のように映る彼らは、強大なエネルギー圧力を発散させていた。

闇の中に隠れた蕭炎も場面の異変に驚きを隠せなかった。

文心閣の鋭敏な霊感により、彼は坑底から何か恐ろしいものが暴走する気配を感じ取っていた。

「注意しておけ、雪魔天猿のエネルギーが急激に上昇している。

やはり狂暴の血脈を開いたようだ。

あの連中の囲みは失敗するだろう」薬老の声が蕭炎の心に響く。

その口調には幸災的な喜びがあった。

話を聞いた蕭炎は一瞬驚き、すぐに苦しげな笑みを浮かべた。

その後は黙って息を殺し、場面を見守っていた。

静寂が約三、四分続いた。

時間の経過と共に坑底の異様な赤色光は増幅され、最終的には血のように鮮やかなまでに発達した。

その妖しい情景は林修崖らの心を不安にさせた。

もしそれぞれが「地心淬体乳」の誘惑力に抗えなければ、即座に撤退していたかもしれない。

ある樹の頂上から韓月は玉手で冷や汗を拭った。

彼女は戦場から離れているにもかかわらず、赤く輝く坑底から殺意と狂暴さを滲ませる目付きを感じ取っていた。

おそらくその獣も知っているのだ。

もし自分がこの地心の秘宝を発見しなければ、このような騒動は起こらなかったかもしれない。

「轟!」



氷の破片が爆発する音と共に、黒洞から赤い光が一瞬だけ現れた。

その速さは見る者を呆然とさせた。

林修崖が身を引く前に、その光は彼の胸元に直撃した。

激しい衝撃で彼は木立の中に弾き飛ばされた。

「韓月、逃げろ!」

厳皓たちが叫ぶ声が山中に響く。

樹の上で銀髪の少女は赤い影を見つめ、冷静に判断を下す。

林修崖の敗北を見て、彼女は自分がこの敵には勝てないと悟る。

白い寒気が掌から溢れ出す寸前、獰悪な獣顔が眼前に迫った。

その瞬間、韓月は目を閉じた。

しかし次の瞬間、氷結したような風が彼女の身体を貫いた。

「轟!」

厳皓たちの視界の中で、美しい雪蓮が儚く散り始める。

彼らは無力に見守るしかない。

韓月の冷たい表情には、最後まで諦めの色がなかった。



鋭い風はその切ない情景を一瞬も止まず、依然として韓月の頭部へと猛りかかろうとした。

しかし、その直前、暗い影が雷鳴のような音と共に現れ、その影が消えた瞬間には既に激しい風は空振りとなり、本来掌で粉砕されるはずだった韓月の姿は一瞬で消えていた。

近所では厳皓たちも突然の変化に驚きを隠せなかった。

彼らの視線が左方百メートル先にある木の上に向けられた時、暗い影が現れ、その胸元には震えるように横たわる韓月が抱かれていた。

彼女はまるで怯えた子猫のように見えた。

木の上で、影は膝に乗せた美しい顔を覗き込む。

白く蒼白くなった頬に映える冷たい美しさと、その上に重なる優しい表情が対比していた。

腕の中で柔らかな腰を抱くのは快適だったが、近隣の視線を感じて彼は体を起こし、微笑んで尋ねた。

「韓月先輩、大丈夫ですか?」

その声に反応して、長い睫毛が震えた。

次に開いた目は、目の前に現れた若い清潔な顔を見つめた瞬間、突然固まった。

そして、赤い唇から信じられないような言葉が出た。

「き……きみ……炎?」



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