闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0632話 師弟再会

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葱郁な山林が連なる峠の先端に、鋭利な刀剣のように突き立つ山頂があった。

その険しい崖の上部には巨岩が突出しており、そこに黒衣の青年が蓮座で坐している。

彼の目の前に巨大な朱色の薬炉が鎮まり、炉内では緑色の炎が熾烈に燃え立っている。

その炎の中には、ゆっくりと蠕動する斑紋状の液体が存在し、細かく泡立つ様子が観察できる。

その斑紋液は炎の熱で表面から微かな気泡を発生させ、爆裂すると体積がわずかに縮小していく。

この変化は一見して気づきにくいが、時間と共に明らかになるほど顕著な縮小が進行している。

さらにその液体が薄くなり始めると、内部に包まれた細かい黒色の物体が現れ始める。

それは漆黒の古びた指輪であり、その表面には新たな輝きが宿りつつあった。

この黒い指輪は以前よりも深みのある暗さを帯びており、光が反射する度に液体の体積が僅かに減少する様子が確認できる。

薬液中の精純な薬効成分が、眠っている指輪内の魂魄へと吸収されようとしているのだ。

薬老の意識を覚醒させる作業は長期的なプロセスであり、蕭炎はその準備に余念がない。

月日が経過しても反応がなくとも焦りはせず、時折目を開けて指輪を見つめながらため息をつくだけだ。

静寂な山頂では外界の騒音が遮られ、たまに近づく野生動物もその圧倒的な威圧感で逃げ去る。

この峠はより一層の清浄さを帯びていた。

二ヶ月という月日が過ぎた頃、薬炉の中で最初に掌サイズだった斑紋液は親指大まで縮小し、その中で漆黒の指輪を完全に包み込むようになっていた。

その色調は以前とは雲泥の差があり、薬液中の成分が炎の鍛錬によって圧縮され指輪の中に凝縮されていることが窺えた。

山頂の青石上に座るメデューサが狭い目を開き、下方の崖を見やると唇を動かした。

その声は冷徹なものだった。

「二ヶ月経った。

これが貴方の限界だ。

続けば他人に助けを求めることになるだろう」

遠く離れた場所からも、メデューサの冷笑がはっきりと青年の耳に届いた。

その男の顔色は少し蒼白だった。

耳を澄ました瞬間、蕭炎はゆっくりと目を開けた。

体内の斗気(とうき)が動き出す。

碧緑の炎が指先から飛び出し、薬鼎(やくてい)の中に注ぎ込まれる。

全ての動作を終えた後、彼は山頂に向かって笑みながら言った。

「どうした?心配してくれたのかな?」

「あなたが死んだら『復魂丹』(ふくこんだん)が手に入らないからさ」メデューサは口元を歪めて冷笑道った。

「ふふ、大丈夫だよ。

私の炎も貴方の薬も必ず手に入るわ」

蒼白い顔にほのかな笑みが浮かんだ蕭炎。

約二ヶ月間、連日斗気を使い続けながら『琉璃蓮心火(りょりれんしんか)』を制御するという消耗は、月ならまだしも長期間となると疲労が蓄積していく。

その程度の無理は、ましてや彼のような強者でさえ耐えられない。

「冥顽不灵(めいがんふりょう)」山頂から見下ろすメデューサは眉をひそめた。

彼女は自らに言い聞かせた。

「この男の死活に関わるのは私ではない。

なぜこんなことを口に出したのか……」

しかし、その視線は依然として下方へと向けられていた。

彼女の心は意外にも彼の安否を気遣っていた。

漆黒の指輪を取り巻く薬液が僅かに残る頃、巨石に座す蕭炎の体がわずかに震え始めた。

碧緑の炎も揺らぎ始め、明らかに限界を迎えようとしていた。

「この馬鹿……」メデューサは眉をさらに強く寄せて呟くと、身体から七彩の光が滲み始めた。

牙を嚙みしめながら、頭蓋骨に広がる疲労感と昏睡(こんすい)の誘惑を耐え抜き、蕭炎は指輪を見つめる視線を固くした。

彼には確信があった——薬老(やくろう)の覚醒は近い。

体内残された僅かな斗気も次第に枯渇し、意識は闊歩(かつぽ)する疲労と昏睡の波間に揺れ動いた。

身体の揺らぎが増す度に、メデューサの眉根はさらに険しくなった。

「自滅!?」

崖っぷちで危うげに立つ蕭炎を見た瞬間、彼女は銀歯を嚙み締めながら低く罵声を上げた。

その身体は無意識に前傾し、いつでも飛び降りる準備が整っていた。



眼前視界が次第に曖昧になっていく。

蕭炎は自分が完全な限界まで達したことを悟りながらも、このタイミングで諦めるなどと耐えられなかった。

唇を噛み締めることで得た激痛が精神を一瞬だけ覚醒させ、彼は「焚決」の運行法則を極限まで駆動させた。

体内に潜んでいた最後の一筋の斗気も引き尽くされ、薬鼎の中に猛スピードで注入されていく。

指先から溢れ出す斗気の途端、蕭炎の視界は完全に闇に沈んだ。

首が重くなり、ついにバランスを崩した身体は滑石の巨岩を転がるように滑り落ち、雲霧に包まれた断崖へと突き落とされた。

「くっ!」

その光景を見たメデューサは舌打ちをした。

だが次の瞬間、彼女は「なぜ助けようとしているのか?」

という疑問に囚われていた。

この男は死に至るだけの罪だ。

メデューサが揺れ動く間に、蕭炎の転落速度はさらに加速していた。

雲海に飛び込む前に何か支えがあれば、彼は惨たらしく粉砕される運命だった。

その様子を凝視するメデューサの目は鋭い光を放ち続けた。

瞬間、彼女は銀歯を嚙み締め、七彩の光輪に包まれて山頂から滑り降り始めた。

数回の移動で蕭炎の上空まで到達した。

その時、赤銅色の薬鼎の中で漆黒の指輪が震え出す。

表面に染み込んだ色彩豊かな液体が完全に浸透すると同時に、指輪は激しく痙攣し始めた。

その振動は鐘のような響きを放ち、薬鼎の内壁を叩く。

その波紋は瞬時に広がり、雷鳴のように山間に轟いた。

風が烈しくなり、緑の海原が形成され、天地にまで達する勢いで吹き荒れる。

突然発生した清澄な音波を感じ取ったメデューサも、今は無関心だった。

近づいてくる蕭炎を見つめながら、彼女は再び救済と放棄の間で揺れ動いた。

この男を殺すのが正義なのか、それとも何かが自分を導くのか。

最初の直感は即座に彼を抹殺することだったが、深層意識では逆の命令が響いていた。

理性と本能の戦いが激しく繰り返される。

一瞬の間も経たない間に、メデューサの瞳孔が収縮した。

銀歯を嚙み締めながら彼女は宣言するように言った:

「混蛋、運良く助かったな。

一年後に必ずお前を殺す!」

その言葉と共に玉手が薬鼎に伸びるが、次の瞬間には空間が歪んだ。

巨岩の裂け目から不気味な光が漏れ出し、メデューサは反射的に身を翻した。

「誰だ? 何者か!」

声を上げたその時、指輪から放たれた黒い光が彼女を包み込んだ。

意識が闇に沈む直前、最後に見たのは薬鼎の内部で輝く金色の文字だった——

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