闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0821話 菩提化体涎

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拍卖場の全員が、その短時間で巨大な取引を完了させた二人を見つめながら、思わず額に手を当てていた。

このふたりはやはり尋常ならざるものだ。

こんな度胸は現地に数えるほどしかいないだろう。

三粒の斗霊丹と二粒の皇極丹という条件が蕭炎の口から出た瞬間、会場中で唾を飲み込む声が響き渡った。

その目は緑色の光を放ちながら蕭炎を見詰めている。

このレベルの薬材を一度に五粒も提示するとは、多くの人が生来初めて見る光景だ。

その行動は金貨を撒くよりもさらに度胸がある。

特別席では多くの人々が驚異の目で蕭炎と笑みを浮かべる莫天行を見つめながら、彼の豊かな財産に舌を巻いていた。

六品上品丹薬を作れる錬金術師であることが分かったからこそ、このような大量の薬材を提示しても目も瞬かずにいられるのだ。

周囲の驚異的な視線の中で取引は無事に完了し、蕭炎は笑みを浮かべながら椅子に座り直した。

他の人々とは異なる彼の目的は、その玉のような骨翼だった。

この物さえあれば、三粒の斗霊丹と二粒の皇極丹を出すことなど些細な損失ではない。

なぜなら、これがあれば天雁九行翼を作れるからだ。

それがあればこの世のどこへでも行ける。

保命に最適なこの物が五粒の薬材で手に入るというのは蕭炎にとって大きな得だった。

彼は黒皇宗がその魔兽数体を売りに出す前に、様々な手段で調べたことを知っていた。

もし自分が天雁九行翼の作り方を持っていなければ、こんな代償を払うことはなかったかもしれない。

しかし幸運にも、その玉のような骨翼について、蕭炎は霊感を通じてある程度の情報を得ていた。

そのためこの取引は、他の人々が見るように危険なものではなく、確実に利益になるものだった。

莫天行が三粒の斗霊丹と二粒の皇極丹を手に入れた後、彼の笑顔は変わらなかった。

拍手と共に巨漢たちが魔兽数体を慎重に運び出した。

その数体を見送った後も、莫天行は白髪老者に向かって手を振ると、老者は安堵の息を吐きながら退場した。

この様子から、次回のオークションは彼自身が司会を行うようだ。

それを目にした特別席では多くの人々が熱い気持ちになった。

この老人が自らオークションを行うのは、今度の菩提化体涎以外には他にないだろう。



その灼熱の視線が会場を包む中、莫天行は悠然と納戒から紫金の拳套を取り出し、掌に軽く触れた。

掌を動かすと同時に地面が割れ、数名の黒装老者たちがゆっくりと現れる。

中央の老者が黄布で覆われた小箱を両手で持ちながら、その周囲には薄い凌ぎ立つ気配が渦巻く。

彼らの足取りは一定間隔を保ち、鋭利な視線が会場全体を監視する。

何か異変があれば即座に戦闘態勢に入る構えだ。

その厳重さを見て取った観客たちも次第に静まり返り、不気味な空気が会場を支配した。

「皆様はご存知でしょう。

今回の黒皇宗のオークションで最も重要な品物とは何か。

老夫も承知の通り、ここに集まった多くの方々がこの物を目当てに来られたと確信しております」紫金拳套を装着し、莫天行の笑みは次第に消えていく。

その声は重く沈んだ。

黒衣老者たちが小箱をオークション台に慎重に置き、円陣を組んで周囲を警戒する。

この構えを見る限り、誰かが強奪を試みれば五名の斗皇級の長老を次々と倒す必要があり、さらに莫天行という実力者との戦いも待つ。

「菩提化体涎」その名前だけで会場から息苦しさを感じる。

この物が最も価値がある理由は、それを得れば『菩薩心』の消息を知れるという噂にある。

斗聖という言葉さえも、どんな勢力の防壁を瞬時に粉砕するほど恐ろしい存在だ。

その名前だけで人々の理性が揺らぐ。

「匹夫無罪 怀璧其罪」莫天行は笑みを浮かべる。

この物を持ち合わせていることが最大の過ちであるが、幸い黒皇宗は黒角域で古くからその名を轟かせる強大な勢力だ。

もしもそれが普通の勢力なら、今や全滅させられていたかもしれない。

紫金拳套を装着した莫天行の視線が会場を包み込む。

オークション台に置かれた小箱は静かに輝き、その存在自体が人々の欲望を煽り立てていた。



モーテン・ティエンフーが、特別席から放たれる灼熱の視線を眺めながら、意図的に特定の方向に視線を留めた。

その瞬間、体内の斗気(とうき)が暗躍し、掌(てのひら)で黄布を引き上げると、猛然と引きちぎった。

黄布は灼熱の視線の中で次々と剥がれ落ちた。

現れたのは透明な水晶箱だった。

照明の反射で眩しい幻想的な光を放ちながらも、人々はその眩しさを無視し、箱の中を凝視していた。

箱の中では、上品な薄緑色の粘稠物質がゆらゆらと蠕動(じゅうどう)しながら浮遊していた。

それは軟体動物のように動き、液体が層状に波打つように見えた。

その薄緑色の粘稠物は重力に抗して空中を漂い、表面には奇妙な光輝が滲んでいた。

まるで好奇心旺盛な生き物のように感じられた。

「これが菩提化体涎(ぼだいかたいえん)か?」

蕭炎(シャオ・ヤン)はその浮遊する薄緑色の粘稠物を見詰めながら、低い声でつぶやいた。

隣に座る小医仙(しょういせん)も鋭い目つきで凝視し、瞳孔の奥に興奮の光が揺らめいていた。

深呼吸を繰り返すことで熱狂を抑えながら、蕭炎は水晶箱に向けて霊感を放出した。

しかし、その霊感は何か抵抗に阻まれて跳ね返ってきた。

「やはり黒皇宗(こくおうしょう)は警戒が固いな」と、蕭炎は霊感を取り戻すと冷ややかに笑みながら言った。

「皆様の尊客方々、これが本日の黒皇宗オークションの最重要アイテムであり、多くの来場者が目指した目標です。

それが……」

モーテン・ティエンフーは箱の中の粘稠物を見据え、視線に貪欲と欲望を滲ませながら重々しく告げた。

その言葉が会場に投下された瞬間、驚愕(けんがく)の声が連鎖的に響き渡り、特別席からも熱狂的な視線が集中した。

そこには大勢の大規模勢力の存在感があった。

混乱と騒動が会場を包む中、オークション台周辺の黒衣長老たちの指先は拳(こぶし)を握り締め、冷たい視線を向けた。

さらに陰暗な場所から弓矢(ゆみや)の引き金が静かに鳴動していた。

「ドン!」

と突然、莫天行(モーテン・ティエンフー)の体から圧倒的な気魄が爆発し、鋭い眼光が会場全体を網羅した。

その存在感は斗宗級の強者であることを周囲に明確に示していた。

「皆様は黒皇宗の規則を守っていただけますか?興味があれば価格を提示していただければ良いのです。

席を立たないでください、なぜなら……」

彼は視線を数カ所に向けながら、冷厳な声で続けた。

「オークション開始!この菩提化体涎の落札です!」



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