闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0966話 分身鍛錬

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暗闇の森の中。

篝火が薄い炎を放ち、その光は周囲百メートルの森林に赤みを帯びたように広がっていた。

篝火の側で蕭炎が膝を着き、炎の光が彼の顔を包むように照らす。

その身体には薄い赤い布のような影が映り、彼は目を閉じながら眉間にある炎の烙印から微かな光を放っていた。

しばらくの静寂の後、蕭炎の目が突然開き、眉間に宿る無形のエネルギーが爆発的に溢れ出し、周囲に急激な動きを作り出す。

その結果として現れたのは、蕭炎と完全に同じ外見の人影だった。

蕭炎が首を傾げてその分身を見やると、彼の身体を通して篝火の炎の光が透けて見えるのがわかった。

『この分身の実力はまだ斗霊級で、凝縮した時間も短いから、鋭い目を持つ者なら一目で底を見抜けるだろう』と彼は眉をひそめながらつぶやいた。

脳内の修練法によれば、最初の段階は分身の凝縮であり、それが成功すれば次にその分身を鍛錬し、本尊と同じ実力まで強化する必要がある。

確かに簡単そうだが実行は困難で、例えばフェンテンのような人物が何十年もかけても分身を殿堂級にまで昇華させたものの、大成にはまだ程遠く、現在の段階ではその距離は雲泥の差だった。

『修練法によれば、分身を凝縮したら風雷の力を徐々に分身の中に組み込む必要がある。

この風雷の力で分身の霊魂波動を隠蔽すれば、防御にもなり秘密を守ることもできる』と彼は分身を見ながら思考を巡らせた。

『つまりフェンテンの分身の身体表面にある雷光はそういうことだろう。

そしてこの風雷の力は分身の攻撃手段としても強力だが…しかし私は体内に風雷の力を保有していない。

三千雷動を修練した際に吸収したほんの一点では、分身を鍛錬するには全く不十分だ。

どうすればいいのか?』

そのように考えた彼は眉根を寄せた。

もし分身が風雷の力で守られないなら、例えば落炎のような霊魂に直接攻撃できるものに対処できず、フェンテンの分身の結末が教訓となるだろう。

『だが風雷の力をどこから得る?三千雷動を修練するのに苦労して得たのは雷雲からわずかにしか吸収できなかった』と彼は竹片を握りしめながら不覚にもつぶやいた。

その竹片は彼の指で粉々になり、彼はため息をつく。

三千雷幻身という修練法は本当に頭を悩ませる課題だった。



「バカヤロー、風雷之力が必須条件だと言ったのは誰だ? あれは単なる鍛錬方法の一つに過ぎないんだよ。

他のエネルギーでも可能さ。

お前の体の中にある異火なら、特に陨落心炎は風雷之力より遥かに強力だ。

それを分身の中に組み込めば、今後どんな魂を制御する特殊なエネルギーと出会ったとしても、全く怯む必要はない。

そうすれば、魂の分身が唯一抱えていた弱点さえも解消されるんだ。

その威力は、フェンテンの分身とは比べ物にならない」

蕭炎が頭を抱える間、天火尊者の諭す声が突然ナノカプセルから響き渡った。

「えっ……でも風雷之力を使った鍛錬方法なら、他のエネルギーに変更したら分身が壊れてしまうんじゃない? 陨落心炎なんて、魂そのものを直接傷つけるんだ。

魂の分身と接触した瞬間に完全に溶解されちゃうんじゃねーのか」

「世の中は危険こそ財産だ。

陨落心炎はお前が完全に統制下にある。

いつかそれが自身の魂を反撃するのを見たことがある? 鍛錬のバランスさえ保てば、いずれ分身は完成するだろう」

蕭炎は愚鈍ではない。

天火尊者の指摘でようやく悟ったように深呼吸した。

「大量の風雷之力を得るのは難しいからこそ、より強力な異火を使う価値がある。

失敗しても損はないし、成功すれば最後の欠点さえも埋めるんだ。

戦闘時に大きな助力になるはずだ」

「ならば試してみよう」

決意を固めた蕭炎は眼差しを分身に向けた。

その瞬間、分身が光となって眉間に消えた。

地妖傀が周囲に現れると同時に、彼はゆっくりと目を閉じ、眉心の魂の海域へ意識を移動させた。

海域の上空で蕭炎の虚像が浮かび上がり、その前に小さな光点が微かに輝く。

下方の魂のエネルギーが動き出すと、分身が再び姿を現した。

魂の分身が蓮座に座り、対面にもう一つの分身が着席する。

見ると蕭炎は深呼吸して手を伸ばし、掌に乗せた陨落心炎が下方の海域を激しく揺らぎ始めた。

この異火は彼が完全に統制下にあるはずだが、依然として魂のエネルギーから相当な距離を保っていた。



魂の海域の動きに気付かなかったのは、蕭炎が当然だった。

彼は掌を軽く振ると、墜落心炎が飛び上がり、その分身を包み込んだ。

炎が分身を囲んだ瞬間、後者は激しく震え始めた。

既に薄らいだ体がさらに透明になっていく。

「温度を下げる必要がある。

特定の温度を維持しろ。

落ち着いていれば、外界の干渉を受けないだろう。

貴方の制御能力なら可能だ」天火尊者の低い声が魂の海域から響く。

蕭炎は指先で炎を調整すると、分身を取り巻く炎が徐々に暗くなり始めた。

温度が低下するにつれ、分身の震えもやや緩和されたものの、まだ微かな動きが残る。

彼の心は外界と切り離され、炎の温度を制御し続ける。

炎が冷えるにつれて、分身からの反応が脳に伝わり、最適な温度を探り出す。

これは極めて困難な作業だ。

墜落心炎による鍛錬で分身が徐々に強化され、蕭炎はその耐性向上に合わせて炎の温度を調整し続けなければならない。

この継続的な精神力消費は疲労感を生む。

彼の魂の奥底から疲れが滲み出てきた。

しかし、蕭炎の制御能力は完璧だ。

虚幻だった分身が墜落心炎の鍛錬で徐々に凝縮し始めている。

この速度は極めて遅いように見えるが、風雷閣の三千雷幻身と比べれば雲泥の差だ。

天火尊者は彼の進捗を見て満足げに笑み、姿を消した。

魂空間では二つの蕭炎が対面して座っている。

一人は厳粛な表情で、もう一人は無形の炎に包まれている。

虚幻の体が炎の中で微かに震え、鍛錬が進むにつれ、極細かい火のつぶてが分身の中に吸収されていく。

夜明けを迎え、火の傍らで目を開いた蕭炎は疲れを滲ませた。

この一夜の消耗は激闘と同等だった。

彼はため息をつきながら独り言を囁く。

「この鍛錬は本当に難しい。

この速度なら登堂までに少なくとも二ヶ月かかるだろう。

大成にはもっと時間がかかりそうだ。

三千雷幻身という名もその難易度から来ているのかもしれない」

立ち上がると、彼は地妖傀を納戒に戻し北へ向かう。

「お前はまだ不満足なのか? 貴方の分身を見れば分かるだろう。

費天が鍛錬に費やした年数は少なくとも五年だ。

貴方が二ヶ月でそのレベルに達しているなら、それで十分ではないのか?」

天火尊者の諦めムードの声が響く。

彼は頬を引き締めて咳払いし、森林北端へと進んだ。

「出発しよう。

天目山脈は既に人で溢れているだろう。

十人の枠だが、これは斗皇への突破機会だ。

絶対に諦めない」

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