闘破蒼穹（とうはそうきゅう）

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第1036話 試練

その赤袍の老者がそう言うと、大庁にいる人々は一瞬で驚きを顕した。

すぐに場中で痩せた青年を見つめ始めた。

誰も予想していなかったのは、この薬煉術に並外れた才能を持つ青年が、さらにそのような能力を持っていることだった。

風雷閣の実力は焚炎谷ほどではないものの、中州でも相当な強大な勢力である。

そしてこの蕭炎という男は、彼らと因縁があるにもかかわらず無事に去ることができた。

これだけ見ても彼が凡人とは思えないことは明らかだった。

唐火児の美しい目が蕭炎を凝視し、その手が震えるほどの衝動が強まってきた。

同年代の中では、まだ彼ほど相手にならない者はほとんどいなかった。

大殿内の驚きの視線に対して、蕭炎は表情を変えずに赤袍老者を見やり、淡々と言った。

「わしが蕭炎です。

それがどうかというと？ ただ名前を変えるだけのことだ」

その赤袍老者——焚炎谷の二長老が笑いながら答えた。

「君が風雷閣と因縁があるのは、三千雷動を持っているからだ。

彼らは追跡している。

しかし君は風雷閣の弟子ではない。

この三千雷動はどこから得たのか？ そして今や我が焚炎谷の天火三玄変を狙っているのか？ 君は他人の斗技に興味があるのか？」

蕭炎は平静な表情で言った。

「三千雷動は偶然得たものだ。

その詳細は二長老にお伝えする必要はない。

天火三玄変については、わしが異火を持っているため、頂点までその威力を発揮できる。

だからこの焚炎谷に来たのだ。

そして他人の斗技に興味があるかどうかは、二長老がどうかご覧に入れればいい」

蕭炎のこの言葉には余裕があったため、二長老の顔色がわずかに暗くなった。

「蕭炎、ここは風雷閥ではないぞ。

勝手に暴れるのは許されない」焚炎谷の三長老である吴辰が眉をひそめて厳しく言った。

蕭炎はその二人の騒ぎを無視し、首位の唐震を見上げて礼儀正しく言った。

「唐谷主、わしがこの焚炎谷に来たのは天火三玄変を得るためです。

この問題はどう解決するか、あなたが一言で決めてください。

もしも天火三玄変が焚炎谷の不伝秘術だとおっしゃれば、すぐに去ります。

迷うことなどありません」

「本当にそう言うなら、信用を失うという烙印は唐震の頭に刻まれることになるでしょう。

安心してください。

約束した以上は守りますよ」

唐震が手を振ると、顔色が次第に厳粛になってきた。

二長老を見やりながら淡々と言った。

「この件はすでに決めてあります。

二人の長老は蕭炎を困らせないでください。

谷内の規則も知っているからこそ、直接天火三玄変を彼に渡すとは言わなかったのです」

「谷内規則では核心弟子が試験に合格すれば天火三玄変を得られる。

だから蕭炎がもしも合格すれば、他の者は異議を唱えることができない！ 逆らうものは谷規で処罰するぞ！」

唐震の声は最後には厳しさを帯びていた

唐震の言葉を聞いた二老と三老は顔を見合わせ、微妙な表情を見せた。

やがて二老が牙を剥いて言った。

「門派の核心弟子試験はこれまでずっと長老院が設定してきたものだ。

その試験問題もやはり長老院で決定すべきだろうか？」

この頑固な老人は明らかに天火三玄変を外人である蕭炎に渡したくないようだ。

そのためあらゆる手段を使って妨害しようとしている。

唐震の顔が険しくなり、すぐに続けた。

「二老がその意思なら試験問題を先に出してみよ」

唐震の少し緩んだ口調を見計らった二老は喜び、「この件は重大な関係があるため軽視できない。

だから老臣が直接手を下して試験する。

もし蕭炎が老臣の手で十合戦も耐えられれば、天火三玄変については谷主に任せる」

大殿の中が一瞬静まり返った。

下方の多くの長老たちは顔を見合わせて苦々しい表情を浮かべた。

二老の実力は彼らが最もよく知っている。

斗宗の頂点に近い実力で、只差一步で斗尊へ昇級できる恐るべき層だ。

彼が手を下すなら確かにあまりにも圧倒的すぎる。

唐火の眉がわずかに寄り、美目に怒りの色が一瞬掠めた。

この老人は明らかに人を試しているのだ。

二老の斗宗頂点の実力ならば、たとえ彼女でもその手で十合戦も耐えられない。

「そんなことを言うのも二老らしいわね」唐震は薄く笑みながら嘲弄の色を含ませた。

これにより二老の顔がわずかに不自然になった。

やはり天火三玄変を外人に渡したくないからこそ、このような試験を設定したのだ。

「谷主が二老の手で試すのが不適切だと判断されたなら、私がやるしかないでしょう。

聞いた話では蕭炎は風雷北閣の長老さえ斬殺できるという。

彼の底力も決して弱くないはず。

私の手で十合戦耐えられるかどうか……」

二老が言い訳に詰まった直後、三老の吴辰がゆっくりと口を開いた。

蕭炎は眉をひそめて吴辰を見やった。

彼の実力は二老より少し劣るものの、風雷閣北閣主の費夭と同等の存在だ。

厄介な相手であることは明らかだった。

「あなたたちの身分が蕭炎とは大きく異なるから試すのは適切ではない。

火兒に行かせよう。

もし蕭炎が彼女に勝てば合格とする」

唐震の言葉を聞いた一側の火兒は眉を上げた。

「火兒様は確かに優れた人物だが、現在蕭炎が火菩丹を完成させたばかりで、また女性であるため試合中に手を抜く可能性がある。

そのため適切ではないでしょう」二老はゆっくりと首を横に振った。

「三老の提案は妥当です。

もし蕭炎が彼の手で十合戦耐えられれば合格とするべきです」

火兒の頬に先ほど湧いた期待の色が凍り붙くように固まった。

憤然として二老を見つめ、その顔には殴りたい衝動が溢れていた。



唐震は二代目老中が自分の意見を否定したことに眉根を寄せ、内心で二つ子の老人たちに辟易と感じた。

この迂腐な連中に好意的な言葉など通じるはずもない…

「唐谷主様、二代目老中の強い要望により、三老中の一人である吴辰長老が試験を行うことにしましょう」

大殿の中央で立っていた蕭炎は、その瞬間口を開いた。

唐震と唐火児を始めとする一団が驚きの表情を見せた。

「萧炎よ、吴辰長老は本物の八星斗宗だ。

風雷閣北中将の費天よりも上位に位置する実力者だ。

本当にこの人物に試験させたいのか？」

唐震は眉を顰めながら蕭炎を見据えた。

萧炎はゆっくりと頷き、三老中の一人が驚いたように固まっていることに気付く。

彼は今日の二老中たちの意向に逆らわなければ、天火三玄変を焚炎谷から持ち出すことは不可能だと悟った。

ならば彼らの意図通り、この三老中の実力を試してみるしかない。

確かに吴辰の実力は費天と比べて劣らないが、現在の蕭炎は斗宗級に達しており、かつて風雷閣で追跡された頃とは比べ物にならないほど強くなっている。

彼はその前に十回以上耐え抜く自信を持っていた。

もしも何か問題が発生した場合、この老人たちに屈辱を与えることも厭わない。

蕭炎の同意を見た唐震はさらに眉を寄め、喜びを隠せない二老中たちを見るや、ため息と共に頷いた。

「貴様がその選択をしたなら、これ以上止めることはできない。

この機会は一度きりだ。

試験に落ちれば天火三玄変は貴様の手に入らないだろう。

自分の計画通りに進めるよう願う」

蕭炎は笑みを浮かべて頷いた。

彼は無謀な人物ではない。

このような試験を受け入れたのは、八星斗宗とはいえこの老人が弱いわけではないと知っているからだ。

十回以上耐え抜く自信はあるものの、勝利を約束するわけではなかった。

三老中はゆっくり立ち上がり、唐震に向かって言った。

「谷主様、貴方の恩人であることを考慮して手を下さないつもりです。

この試験が行われるのは天火三玄変が焚炎谷の秘術だからこそです。

もしも貴方が邪魔にならないよう願います」

唐震はその人物を見やりながら「迂腐」と呟いた。

三老中はその言葉に反応せず、秘術を守るためなら老人たるのも許容範囲だと諦めていた。

「この場所では広さが足りない。

大殿の外で試験を行おう。

谷内の弟子たちも興味を持つだろう。

彼らにとっても良い経験になる」

三老中は大殿を見回し、笑みを浮かべて先頭に立った。

蕭炎のそばを通る際に言った。

「貴方があたしたちの谷主様に火菩丹を作ってくれた恩があるから、試験に落ちても別の秘術や斗技を選択できるようにする」

蕭炎はその申し出を無視し、吴辰を見もせずに大殿を出て行った。

蕭炎の背中を見送りながら、吴辰はようやく我に返り嗤った。

「今の若い者は本当に自負家だ。

この老人たちがどれほど強いか知っているのかな？」