闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1116話 孕霊粉塵

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蕭炎一行は無事に最上階を下り、最後の階段を降りた時、彼は足を止めた。

偏頭して眉をひそめている葉重を見やると、軽く笑みながら言った。

「葉重長老はあの連中に心配しているのか?」

その言葉に応じて葉重も苦しげに頷き、「玄冥宗の勢力は確かに強い。

ここに彼らが現れるとは思いもしなかった。

白装の男の周囲を固める護衛を見れば、彼の地位は決して低いものではないだろう。

今日彼らと衝突させたなら、玄冥宗のような睚眦必報の組織では、相手が許容しないに違いない」

蕭炎は淡々と言い放った。

「これもやむを得ないことだ。

でもあまり心配するな。

彼が何か手段を講じようとしたなら、私が……」

現在の蕭炎にはそのような言葉を言う資格があった。

完全に力を解放すれば、斗尊以下の誰にも怯まず、もし本当に血みどろになるなら、滅ぼし蓮華さえ出せば斗尊級の強者も一時的に退避するだろう。

さらに彼の側には真っ当な斗尊級の強者が二人控えている。

その陣容と勢力は一流組織と互角に張れる。

玄冥宗の背景が強くとも、蕭炎の性格では単純に銅片を辰閑に渡すわけにはいかない。

双方が譲れない限り衝突は避けられない。

葉重がそれを聞いた後、彼もまた何も言えなかった。

前回の一件を経て、葉重は蕭炎の背後に非常に強い背景があると確信していた。

そうでなければあの氷河のような超級強者が避けるわけにはいかないのだ。

葉重中が考えていることを蕭炎は知る由もない。

最上階から二階に回りながら、彼は欣藍が占めている攤位を見つけた。

その場で待ちぼうけしていた欣藍が蕭炎たちを見つけて、喜びの表情を浮かべて立ち上がった。

「どうだった?」

「ふん、あの老人は最後には妥協したんだよ」欣藍はにやりと笑いながら、近くにいる紅装の老者の方へ視線を向けた。

「他に何か得るものがあるのか?」

「あいつは我慢できなかったんだろう。

万年青霊藤は非常に希少な薬草だ。

ここでは多くの人に聞いてみたが、誰も持っていないんだ」

欣藍は首を横に振って嘆いた。

蕭炎は頷き、「そのような結果は意外ではない。

確かに万年青霊藤は滅多に出ないし、高級丹薬を作るのに必須のものだからこそ、持ち主があっても公開して交換する人は少ないんだ」

欣藍が攤を片付けるよう指示した後、蕭炎は紅装の老者の方へ向き直り、笑みながら納戒から玉瓶を取り出した。

「損はさせない。

これは素心丹だ。

血精妖果と引き換えにやるから、お前は儲けた」

その言葉を聞いた紅装の老者は苦々しい表情が消え、急いで玉瓶を受け取った。

慎重に丹薬を確認した後、満足そうに頷いた。



「今後血精妖果や万年青霊藤、雪骨参といった薬材が手に入り次第北の葉院へ来れば全て欲しい。

価格は満足させますよ」そう言って水晶台に置かれた玉盒を手に取った炎の男は指先で血精妖果の表面を撫でた。

その滑らかな感触が指先から全身に広がるのを感じながら彼は納戒へと収めた後笑みを浮かべた。

「素心丹は薬師にとって大きな助けになるし特に調合が難しいため七品中級の薬師でも成功率は極めて低い。

それが高価な理由だよ」赤袍の老人も笑顔で頷いた。

炎の男が去ろうとした時老人は「お待ちください」と呼び止めた。

牛院に戻ると炎の男は早速葉重たちに門を閉めさせた。

天火尊者と小医仙と共に部屋へ入った三人は淡黄色の銅片を取り出した。

その表面には蛇のような緑色の錆が入り乱れていた。

それが刻まれた紋様を隠していたのだ。

「この銅板の価値が素心丹の処方と同等か確信しておるか?」

炎の男は紋様を見つめていた。

彼は既に複数の手段で情報を収集しようとしていたが全く手ごわかった。

天火尊者は笑いながら「若造、そこまで簡単なら君が得するはずがないだろう」と冗談めかして言った。

「ではその秘密を教えてくれないか?」

炎の男はため息をついた。

「まあまあ…」天火尊者は銅片を取り手のひらに置き灯火を斜めに向けて炎の男を見やった。

「何か見えるか?」

炎の男が凝視しても灯火の反射で見えたのはただ蛇のような錆だけだった。

彼はため息と共に「もう隠し事をしないでくれ」と頼んだ。

天火尊者は笑いながら指先に集めた気を細い針状に作り緑色の錆に差し込んだ。

すると錆がゆっくりと剥がれ落ちテーブルに散り始めた。

炎の男と小医仙はその様子を見つめ合っていた。

「さて…」天火尊者は笑みを浮かべた。



茫然とした二人を見つめる天火尊者は、その様子に特に興味を示さなかった。

約三十分の時間をかけて銅片上の緑色の錆びを全て剥ぎ取った後、二人がその謎を解くと期待した瞬間、彼は彼らの驚愕の視線の中で軽々しく銅片を投げ捨てた。

「この-r」

蕭炎は天火尊者のその動作に眉をひそめながら、一体何をやっているのか理解できなかった。

尊者は二人の困惑した表情を見て、ため息をつきながら首を横に振った。

掌を開き、テーブル上の錆びを吸い込み、親指大の緑色の球に凝縮させた。

「本当の秘密はその銅片ではなく、この無視しがちな錆の中に隠れているんだよ…遠古の遺物など、常識で推測できるものではないさ」尊者は指先で緑色の錆を蕭炎に向かって弾きつけた。

「異火で焼いてみろ。

私も気になって見たい」

慎重に受け取った緑色の球を見回しながら、蕭炎は半信半疑の気持ちで碧緑の炎を呼び出し、その球を包んだ。

この焼き入れによって、蕭炎は錆びの特殊性に気づいた。

どんなに炎の温度を上げても融けないという事実が、彼の興味を引きつけた。

「やはり何かあるか」

温もりを感じながら思った瞬間、約十分後のことでようやくその球が溶けてきた。

溶解が進むにつれ、蕭炎は錆びから微細な淡黄色の粒子が落ちてくることに気づいた。

粒子は炎の中に浮遊し、妖精のようにきらめいていた。

それは非常に強い霊性を感じさせる光景だった。

約二分後、粒子の脱落が止まった。

「そしてその粒子が全て消えた瞬間、緑色の球は完全に消失した」

炎の中には淡黄色の五粒の粒子が残り、碧緑の炎を照らすように輝いていた。

どんなに高温でも変化しないその粒子を見た蕭炎は困惑し、「これは?」

尊者の方を見ると、彼もまた深い思考に耽っていた。

しばらく経ってようやく息を吐きながら言った。

「もし私が間違えていなければ、これが遠古の『孕霊粉塵』だ」

「嘿嘿、老夫の見立ては当たったね。

この子よ、一巻の七品中級の薬方と比べれば、これは天にも届くような大金持ちをしたも同然さ!」

「孕霊楊1塵?」

尊者の急に明るくなった表情を見て、蕭炎は眉根を寄せながら小さく唸った。



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