闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1124話 魂の対決

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殿内は曹颖の突然の行動で一時的に静寂に包まれた。

彼女の周囲と蕭炎の間を行き来する光線が、この曹家の魔物めいた女が蕭炎を何度も記録更新させることで手が震え始めたことを示していた。

葉家への思惑を持つ人々は内心で幸災的さを感じていた。

状況から見て、蕭炎の助けを得て五大家族の枠を維持した葉家は、曹颖の介入があっても第一ではなくとも第二は確実だ。

そのためにはどのような結末であろうと大局は決まっていた。

とはいえその大局が決まったことで、蕭炎が曹颖に屈服する様子を見るのは一種の報復として快感だった。

曹颖が発言を始めるとすぐに会場から賛同の声が響き渡った。

盛長老は眉根を寄せた。

彼はこの笑顔で常に他人を欺くような人物であることを知っていた。

表面上の優しい表情とは裏腹に、彼女の心は冷たい氷のように硬い。

その突然の行動は手が震えたからではなく、蕭炎の勢いを挫くためだった。

暫し考え込んだ後、盛長老は視線を蕭炎に向ける。

この男の才能は確かに非凡だが、少しでもその気焰を抑えることができれば良いと考えた。

全員の視線が彼に集まる中、誰もが彼の決断を待っていた。

蕭炎は曹颖の妖艶な笑顔を見詰めながら、やがて口角を上げた。

「既に曹颖様がそのように仰せられたのであれば、私が付き合ってみるのも悪くないかもしれません」

その言葉を聞いた瞬間、曹颖の美しい頬に微笑みが咲いた。

彼女は口元を押さえながら言った。

「萧炎さんとは本当に上手いことをおっしゃいますわね」そう言いながら玉手でテーブルを叩き、蝶のように軽やかに会場中央へと移動した。

美目を曹休に向けると、「曹休様、私が試してみましょう」と優雅に申し出た。

曹休はため息をついた。

彼女は曹家では絶対的な権威を持つ存在であり、族長ですらその言葉を重んじるほどだ。

この一行が正式に曹家のチームとして確定した以上、彼女の発言は命令と同等だった。

いくら無理な要求であろうとも、彼は席に戻ることしかできなかった。

蕭炎の頷きを見た盛長老は特に何も言わずに、床に描かれた赤い円を指差して言った。

「問題ないようなら開始しましょう」

その指示を受け、五人は一斉に頷いた。

それぞれが円周上に並び、互いに一定の距離を開けるように座る。

この試合は魂魄の力で勝負するため、彼らのようなレベルでは物理的な移動は不要だった。

全員が準備を整えたことを確認すると盛長老は後退りながら手を振った。

「開始!」

その瞬間、五人はそれぞれ円周上に位置取り、対面の相手を見据えて座る。

この試合は魂魄の力で勝負するため、彼らのようなレベルでは物理的な移動は不要だった。



盛长老の喝声が途切れた直後、五人の体内から膨大な霊魂力が噴き出し、各自の体表面に巻きつきながら警戒的に周囲を見回していた。

その広大な霊魂の無形の力は広場全体を包み込み、人々の心に迫り来るような霊魂圧迫感が漂い始めた。

この重苦しさは魂の奥底から湧き上がるもので、魔導気の量とは全く関係ない。

ここでの対決は別の次元での戦いだった。

“咎d”

広場に張り詰めた緊張が半刻ほど続いた時、どこかから突然の咳声が響き、五つの膨大な霊魂力がそれぞれの眉間から光速で飛び出し、中間に乱暴に衝突した。

「バチッ!」

その衝撃点から発生した無形の波動が広がり、急に風が形成され大殿の上空を駆け回った。

その烈しい風は大殿内に「シャラ」という音を連続させた。

この凄まじい霊魂衝突で五人の身体が一瞬揺らんだが、蕭炎と曹颖だけは肩が僅かに震えただけで平常に戻った。

一方丹軒、白鷹、邱機の三人はそれぞれ異なる距離を押し戻されてしまった。

蕭炎の視線は十丈離れた曹颖に鋭く注がれていた。

彼は自分がここでの最大の敵だと知っていた。

先ほどの霊魂衝突では明らかに曹颖が自分に向けて攻撃してきたが、幸いにも準備していたため、初回の接触で狼狽することなく済んだ。

丹軒三人は完全に巻き添れで、蕭炎と曹颖の霊魂力は彼らとは比べ物にならなかった。

この状況を丹軒三人も察知し、多少不満ではあったが現実を受け入れざるを得なかった。

その差異は明確で、彼らが抵抗しても効果は薄かった。

この霊魂対決は蕭炎と曹颖の戦いだった! 彼らこそが真の主役だ!

白鷹は一隅に身を潜め、蕭炎を見つめる鋭い眼光で不満そうにしていた。

白家では注目を集める存在であるはずなのに、今日は蕭炎の配角になってしまったのだ。

これほど悔しいことはなかった。

「やはり侮れないか」

曹颖が額前の一筋の青髪を指先で払うと、妖艶な顔にさらに色っぽい笑みが広がった。

彼女は静かに手印を作り固めた。

その瞬間、周囲に渦巻いていた彼女の膨大な霊魂力が一気に凝縮し、たちまち霊魂の鳳凰へと変化した。

鳳凰の翼を扇くと空間が歪み、細かな黒い空間の亀裂が広がり始めた。

この無形の鳳凰は存在しないのにその威圧感だけでも大殿内の多くの人々の視線を集めさせた。

「行け!」

曹颖が虚空を指し示すと、清らかな鳴き声と共に鳳凰が翼を開き、蕭炎に向かって疾走した。



瞬時に巨大な霊魂の鳳凰が蕭炎の頭上に現れ、その爪が彼を襲おうとした時、彼は突然目を開き冷たい喝破を叫んだ。

「砕けろ!」

その一言で無形の霊魂の拳が形成され、鳳凰の首に激しく打ち込まれた。

轟音と共に狂暴な霊魂の嵐が発生し、堅固な床は腕一本分の幅を持つ亀裂を引き起こした。

嵐は瞬時に去り、蕭炎は恐怖の推力で三歩後退させられた。

一方曹颖は二歩だけ引いたものの、その余裕さに場が驚嘆する。

彼らはまだ葉家救済のためには関係ない陪席者だった。

白鷹は牙を剥き無形の巨蟒を形成し「無謀だ!」

と蕭炎に向かって突進した。

しかし彼の手勢である丹軒三人組は苦笑しながら退出し、この場面では彼らが何の役にも立たないことを示していた。

白鷹の突然の攻撃に眉根を寄せた蕭炎は冷たい目で向き合い、袖を振って霊魂の匹織りを放った。

「ドン!」

巨蟒は即座に崩壊し白鷹は顔色を変えながら血を吐き倒れ込んだ。

その凄惨な敗北を見て大殿中が驚嘆する。

白家の人々は互いに目を見合わせ、家族の頂点とされていた若者がここまで落ちぶれたことに絶望した。

蕭炎は動じることなく曹颖の妖艶な笑みを凝視していた。

彼女は蛇のように滑らかな動きで玉手を開き、男性陣の欲望を刺激するような姿勢を見せた。

「強かったね。

先ほどの試合では全力を使わなかったのか?」

と挑発的な調子で言う曹颖に対し、蕭炎は表情を変えずに応じた。

「あなたは美女蛇だ。

失神すれば終わりだ」

「残り二人なら早いか。

三回の霊魂掌撃を受けたら私は撤退する。

今ここで退出しても二位にはなるだろう。

葉家は救われる」

「受け入れるか、それとも引き下がるか?」

曹颖は笑みを浮かべ玉手を開き、完璧な芸術品のような姿勢を見せた。



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