闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1265話 再会の雲韻

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白銀の炎が蕭炎の瞳孔を満たし、ややあってようやく薄らいだ。

その消滅に伴い、彼の目は再び清明さを取り戻した。

「ふう……」

吐き出す浊気と共に、彼の顔には微かな光輝が浮かんだ。

隠れもせずに喜びの色が滲み出る。

蕭炎は思わず、短い十数日の間に骨霊冷火の拒絶性を完全に解消したことに驚いた。

「今は骨霊冷火と完全に融合し、いつでも吸収できる状態だ……」

彼は眉根を寄せながら考えた。

その吸収には長い時間を要するはずだが、現在の行程を考えれば、花宗への到着が近いことを考慮しても時期外れではあるまい。

「やはり云韻の件を解決した後に吸収しようか……」

決断を下した蕭炎は心を落ち着け、眉間に燻る骨霊冷火を抑えて一瞬目を伏せた。

それからナランヤンに視線を向け、「あとどれくらいで花宗に着く?」

「もう二日ほどだ。

我々はすでに西北地帯に入り、花宗も近い…………」

「うむ、責鳞(せきりん)、少し速めに進んで早く花宗へ行きたいところだ」

彼が頷いた瞬間、青鱗の手が蛇背を叩く音と共に響き渡った。

その瞬間、空を駆ける速度は猛然と加速した。

三日後、風塵.Fatigueした三人組が連綿とした山脈の上空で速度を落とす。

ナランヤンは周囲を見回し、納戒から花びら状の物体を取り出した。

その瞬間、空間に奇妙な波動が広がり、やがて巨大な空間の壁が彼らの視界に現れた。

「これほどの規模か……」

蕭炎の目に驚きが浮かんだ。

花宗は独自の領域を築く力はないが、宗門を隠すための空間の壁という手段は決して小手先の術ではない。

その壁がゆっくりと動き始めた時、ナランヤンが彼と青鱗に手招きし、先頭で中に入った。

その後青鱗は九幽地冥蟒を収め、蕭炎も後に続いた。

空間の壁の中に入ると、一面の花……異常に濃厚な花の香りが鼻孔を突く。

その中に含まれる強大な天地エネルギーまで感じ取れるほどだった。

「奇妙な場所だ…………」

空中に浮かぶ蕭炎は、空間の壁の向こう側にある世界を見つめた。

連綿とした花山が広がり、遠目には花畑のように見える。

風が吹き抜けると鮮やかな花びらが舞い上がり、その光景はまさに幻想郷そのものだった。

「美しい…………」

青鱗はその絶景に陶然と囁いた。

「この花海は、ある種の結界だろう……」

視線の限りまで広がる花畑を見つめる蕭炎の目に微かな揺らぎが走った。

彼はこの花畑の中に存在する圧倒的なエネルギーを感じ取っていた。

空を舞う花びらの断片さえも、どこか不思議な軌跡を描いていた。

その言葉に納蘭嫣然も頷きながら笑みを浮かべた。

「これは花宗の護国大陣だ。

入り口が分からないと永遠に迷い続けるだけさ。

誰かが案内しない限り出られないわ」

「これらの花は**花だろうね。

外界では珍しい奇花なのに、こんなにたくさん……」蕭炎が鼻をくすぐりながら言った。

「全部ではないわ。

他の奇花もあって、**花の効果を大幅に増幅するものもあるのよ」納蘭嫣然が微笑みながら答えると、その言葉と共に微かな鐘の音が花畑から聞こえてきた。

「試合開始の時間だわ。

早く来て!間違えると迷子になるわ」

その鐘の音に反応して納蘭嫣然の顔が一瞬引き攣った。

すぐに彼女は促すように声をかけ、奇妙な曲線を描く軌道で花畑の中へ飛び出した。

その後ろから蕭炎と青鱗も苦笑しながらその動きに合わせて追いかける。

花畑の果てには雄大な山々が連なり、雲間から鮮やかな花々が覗いていた。

険しい峰々には建物が立ち並び、遠目にも美しい女性たちの声援が聞こえてくる。

その山脈の中心に聳える広い山頂には巨大な広場が横切りに作られていた。

青石で造られたその広場は周囲に花模様の装飾があり、異国情緒ただよう香りが漂っていた。

現在その広場には多くの人々が集まり、皆中央を見つめていた。

中央には一男一女が立っている。

女性は豪華な錦袍を着ており、金糸で織られた紋様がその地位の高さを物語っていた。

薄い唇からはどこか冷たい色合いを感じさせる。

その隣にいる男性はだらしなく扇子を握りながら立っている。

細身の体躯と整った顔立ちから見る影もなかったが、眉心にある血のような赤点が邪悪さを増幅していた。

「雲韻、時間だわ。

登場して」

鐘の音と共に錦袍の女性が険しい目つきで言った。

その言葉と共に空高く破風音が響き、白い影が軽やかに広場へ降り立った。

足元には美しい花模様が描かれていた。



白い影が広場に軽やかに降り立つと、一瞬の間もなく場内の全員の視線がそちらへ向けられた。

何度目であろうかその光景にも関わらず、多くの人々の目に驚きの色が浮かんだ。

場の繁栄さは、白い衣装をまとった女性に集約されていた。

漆黒の髪は三千本もの長さで滝のように垂れ下がり、腰まで届くその艶やかな光景は、山中で世俗から隔絶した花仙のような存在感を放っていた。

彼女の美しい顔立ちには、骨髄に染み込むような穏やかさと透明感があり、目ヂカラだけで人々の心を鷲掴みにする類いのものではなかった。

この女性は、ただ四つの文字で言い表される存在だった。

風華絶世。

そしてその輝きは、雲韻以外に誰にも似つかない。

彼女が蕭炎と別れた数年の歳月が、地底に埋もれる名酒のように彼女の魅力を熟成させ、人々の心を酔わせるほどになっていた。

その穏やかな表情は、雲の動きに合わせて変わるだけのもので、争いへの欲望など一切感じられない。

花宗の長老たちはこっそりと頷き合った。

宗主が死ぬ直前に云韻を大統領に任命した理由が、この一目で分かるような光景だった。

錦袍の女性の隣には邪悪な男がいた。

彼は白い衣装の女性を見つめながら熱狂的な視線を向けた。

その美しさは、命を賭けてでも所有したいほどのものだった。

雲韻に注がれる全員の視線が、錦袍の女性の手首を握らせ、彼女の目には深い憎悪が浮かんだ。

「私は今日来ないと思っていたのか」と冷たく言い放った。

「宗主様、私は宗主の座を望んでいません。

なぜそんなに追い詰めようとしているのですか」

雲韻は眉をひそめてその女性を見つめた。

「ふん、もし本当に望まなければ、老宗主が生涯かけて培った斗気を渡せばいい。

私が云韻を受け入れたのも、それが理由だったのに……まさか花宗の宗主の座に手を出すとは」

雲韻は首を横に振り、穏やかな声で言った。

「もし私は花婆婆が宗主だと知っていたら救わなかったでしょう。

それに老宗主の斗気封印は私の体内に残っています。

欲しいなら取りに来ればいいのです」

「ふざけるな!私が怖いと思っているのか!」

錦袍の女性は冷笑を浮かべ、隣の邪悪な男を見やった。

その男は雲韻から目が離せなかったため、彼女は激怒した。

「妖郎、一緒に手を出そう!」

「云韻は老宗主の斗気を受け継いでいるはずだ。

一対二でも問題ないだろうし、花宗の規則も知っているはずよ。

パートナーがいれば同時に動くこともできるわ」

雲韻の顔に笑みが浮かんだ。

「宗主様、手を出してください。

私は……」

彼女の言葉は途切れた。

空から突然風切り音が響き、瞬間で広場に現れた人物が云韻の手を掴んだ。

その男の声は極めて肉迫的だった。

「小雲よ、遅かったか?」

多くの驚愕の視線の中、雲韻の頬は赤く染まった。



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