闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1431話 魂殿副殿主

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「本殿?」

その歪んだ空間から響く無情な声に、蕭炎の瞳孔は急に縮まった。

この来訪者は明らかに魂殿が仕組んだもので、そしてその人物が『本殿』と称するなら、彼こそが魂殿の謎めいた舟殿主ではないか?

黒い霧が歪んだ空間から次々と滲み出てきて、人々の視線の中でゆっくりと凝縮し、全身を黒霧で包む人影となった。

「魂殿殿主?」

小丹塔大長老はその黒霧の人影に鋭い目つきで注がり、くрюとした体をわずか前に傾けた。

周囲の空間がその場でゆらりと震えた。

「もしかしたら、副殿主と呼ぶ方が適切かもしれないな」黒霧の中で軽やかな笑い声が響いた。

「本殿の胆力に及ばないと言える相手は、今まで初めてじゃないか?……」

蕭炎は唇を歪めて冷笑し、その目で虚ろに見つめる。

彼の視線は瞬時に悟っていた——眼前の黒霧の人影は単なる投影であり、本体ではない。

「本殿の胆力に及ばないと言えるのは、この数百年間では初めてだよ……」

人影の中から奇妙な笑いが漏れ出す。

「だが貴方の今の実績は予想外だった。

もしもそれを知っていたら、あの時こそ完全に蕭藏を血洗うべきだったかもしれない」

「そんな台詞は魂殿の人間が繰り返し述べてきたものだ」蕭炎は冷たい目つきでゆっくりと語った。

「貴方の副殿主という立場なら、ここへ来た目的がそのような無駄話だけなら、この投影も存在する必要はない」

話し終えると同時に、彼の手がゆっくりと上に持ち上がり、虚ろな影に向かって空間が激しく渦巻き始めた。

「本殿が此処に来たのは、貴方の手中にある陀捨古帝玉を奪うためだ……」

黒霧の人影は笑いながら、周囲の霧が鏡のように広がり、その中で冷たい牢獄の情景が映し出された。

巨大な牢獄の中の一室に鎖のような鉄格子が網目状に張り巡らされ、中央には憔悴した一人の男が座っていた——彼の四肢は毒蛇のように絡みつく鎖で縛られていた。

その姿を見た瞬間、蕭炎の顔色が険しくなり、体が突然立ち上がった。

驚異的な殺意が全身から溢れ出し、周囲のテーブル椅子はたちまち粉々に砕け散り、天井すら凍えるような寒気が漂った。

「父!……」

彼は拳を握りしめ、爪先まで指紋が立つほど力を込めた。

その憔悴した姿は非常に懐かしく、それは確かに自分の父親——蕭戦の姿だった。

長年の別離にも関わらず、その血脈を通じた親密な感覚が瞬時に伝わってきた。

「陀捨古帝玉を本殿に渡せないなら、貴方の父の忌日は来年今日だ……」

黒霧の人影は無関心そうに笑い、「だが貴方の殺意など全く気にしない。

貴方が父親を救うためなら、その代償として陀捨古帝玉を手放せばいいだけだ」

炎の表情は恐ろしいほど険しく、拳がギシリと鳴らす。

彼は今や理性を失った獣のように赤く充血した目で眼前の人間を粉砕したい衝動に駆られていた。

「蕭炎、冷静に!」

殺意が頭蓋骨を突き破こうとするその時、滑らかな玉手が掌を包み込み、僅かに震える声が耳朜に入る。

その瞬間、炎の心臓は一拍子遅れて鼓動した。

「陀捨古帝玉を渡せ!」

炎が徐々に冷静さを取り戻すと同時に、黒い霧の中から冷たい声が響く。

「古玉を渡したら父が死ぬのが早まるだけだ。

貴様の手に乗っている間は、魂殿も動けない。

本体が姿を見せなければ、私は絶対に渡さない」

「お前は本当に父親の命を捨ててまで古玉を守るのか?」

炎は薄笑みを浮かべながら答えた。

「貴様たちがなぜ急いでいるのか分からないが、古玉は父の保証書だ。

渡せば魂殿も手が出ない。

本体が姿を見せなければ私は絶対に渡さない」

「ふん、大天尊の言う通り冷酷な奴だ……この策謀など効果がないと悟ったようだ」

炎は無表情で返す。

「貴様の正体さえ分からないなら、出てこい」

「蕭炎!お前が何を勘違いしているのか分かっているのか?『天府連合』などという名前の組織が本当に魂殿と対等になると思うのか?丹塔の煉薬師たちも、我々は今まで貴様らに顔を立てていたが……」

「ハハッ!貴様たちの牙で噛み砕くのも楽しみだ」

大長老は冷笑道。

青仙子と炎黄老祖は僅かに目を開きながら黙然としていた。

炎は黒い霧を見据え、無言で拳を握りしめた。

「貴様たち魂殿の犬ども……いずれ一人ひとり殺してやる」

**(補足:文中の「冰琼」は「冷たい」と訳出、「黑霉人影」は「黒い霧の中の人形」と意訳。

原文の緊迫感を保ちつつ、日本語として自然な表現に調整)**

その瞬間、蕭炎の手が握った時、黒霧人影周辺の空間は突然崩壊し、恐ろしい力で空間を震わせながらも同時に、その黒霧人影は一瞬で消滅した。

「くっくっ、狂気じみた小僧め。

お前は一体何物か?かつての強者である蕭玄も、我が魂族に敗れ去ったのだ。

お前の星斗聖など屁にも近い。

わらわが待っているのは、貴様が自ら門を叩くその日だ。

その時こそ、わらわが手で貴様を粉々に砕いてやろう!」

黒霧人影の消滅と共に、冷たい笑い声が大殿中に響き渡り、しばらく途絶えることはなかった。

「今回の連合も、魂殿に漏洩されていたようだ。

そうでなければ、このようなタイミングで現れるわけがない。

他の勢力を脅かし、連合を阻むための演出だろう」

静まり返った大殿を見ながら、薬老がゆっくりと述べた。

「この連合は確かに魂殿も警戒しているに違いない。

彼らのような性質のものなら、このような騒動を起こすのは当然だ」

蕭炎は淡々と言い放つ。

「先ほどの副殿主と称した人物、皆さんは知っているか?」

「聞いた覚えはない。

魂族には強者が多く、この副殿主もその中から出た者だろう。

火雲老祖が眉をひそめ、冷ややかに続けた。

「だがこの者の実力はせいぜい三星斗聖程度だ。

もし本体なら投影など作らなかったはず。

勝負の見込みがないからこそ、隠れていたのだ」

蕭炎は小さく頷いた。

先ほどの副殿主も、彼らの編成を恐れていたようだった。

「皆様、連合の準備はほぼ完了したが、何か質問はあるか?」

蕭炎が視線を周囲に向けた。

「この連合の最大の敵は魂殿だ。

発表されれば、彼らは決して静かにはしないだろう。

いずれ対決の時が来るかもしれない」

丹塔大長老や火雲老祖、青仙子らが互いを見合い、最後はゆっくりと首を横に振った。

彼らのような人物が、先ほどの副殿主の一言で怯むはずもない。

「それでは明日から連合発表の準備を進めよう」

蕭炎が重々しく言い放つ。

「もし襲撃があれば、空間虫洞を通じて迅速に対応する必要がある」

皆は頷き合った。

魂殿からの反応も早く、今後の平和な日々は期待できないだろう。

「早めに帰って準備しよう」

火雲老祖らが立ち上がり、颯爽と去っていくのを眺めながら、蕭炎と薬老も笑顔で送り出した。

彼らの背中を見つめる間、二人は互いに目配せし合った。

嵐が近づく空気を感じていた。

長らく静かだった中州が、また騒動を始めようとしていたのである。



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