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第0291話 ランキング1位
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「江遠帰ってきたよ。
あーもう、また格好いいのね」
「江法医さん、お見舞いに来たんだね」
「江さん、久しぶりだね!」
江遠が警視庁の庭を入ると、一声声の挨拶の中に疑問符が含まれていた。
みんなは本当は黄大佐が長陽市に売り飛ばしたことを知っていた。
こんなにも早く帰ってくるとは思っていなかったのだ。
江遠は挨拶しながら「一時的に帰ってきたんだ」と特に強調する。
「急な帰宅だね」
「久しぶりにお目にかかるね」
四階の刑事技術中隊へと上がると、まず師匠の吴軍に挨拶して短く会話を交わし、中隊長に報告した後、すぐに黄強民の部屋に向かった。
自分の机で何かを考えていただいている黄強民が、階段から江遠の声が聞こえた瞬間、急いで席に戻り、茶碗を持ち上げて口をすぼめて冷たいお茶を吹き立てる。
蛋白尿のような白い泡が浮かび上がる。
「黄大佐」
「江遠、帰ってきたんだね」黄強民は笑みを浮かべて茶碗を置くと一口も飲まずに尋ねた。
「長陽市はどうだった?余地があったのかな」
「多少はあるよ。
でも結構気遣ってくれていたみたいだよ」江遠が微笑む。
「新しい事件が終わったから帰ってきたんだ。
うちの県の監視システムはもうほぼ完成しているんじゃないかと思って」
黄強民は思わず涙が出そうになった。
寧台県の監視システムは全て江遠を犠牲にした代償だったのだ。
江遠が帰ってきて、まだ監視システムについて気遣っているなんて。
黄強民は嫁ぎ出た娘を持つ父親のような感覚に陥った。
「あー……あー、監視システムはしっかり作ってあるよ。
良いものは良いけど、もし長陽で不満があるなら帰ってくるといい。
その時は私が県庁に行って張局長たちに説明するから」
江遠が慌てて手を振る。
「そんなことないよ。
そういうつもりじゃないんだ。
ただ監視システムの進捗具合を見た気がしただけだ。
うちの江村マンションにも最近設置して、盗賊二人を捕まえたみたいで便利だったよ」
「うん、県の財政が悪いから工事が遅れているけど、全体的には順調に進んでいる。
核心部分は既に復旧されていて以前より使いやすくなったよ」
「人員は足りているかな?」
「今は臨時職員を雇っているところだ。
さらに補助警察も募集している。
残りは来年になるだろう……」
黄強民が笑いながら続けた。
「この辺で技術捜査隊の編成を準備中なんだ。
その時はあなたに中隊長としてのポストを用意するよ……」
「いやいや、そんなものは必要ないよ」江遠は手を振る。
中隊長という肩書は警視庁内部での評価で、課長補佐級に相当する。
正直に言えば、江遠が昇進を考えるのであれば、長陽市へ行くのが最も早く確実な道だ。
現在のポストである法医官こそが自分には最適だと江遠は考えていた。
この職種の要件からすると、技術捜査中隊の中隊長という異動は現状維持とは言えないのだ。
逆も然りだった。
江遠は案件が増えたことで、自分の目標を明確に見極めるようになった。
その中で、画像捜査班の班長職などは重要なポストではないと悟っていた。
黄強民は江遠の決断力に驚いていた。
彼はドアを閉めながら小声で言った。
「画像捜査班は今後も強化されるだろうが、独立した画像捜査部隊になるかどうかは分からない。
君がポストを得ておくのは悪いことではない」
「でも画像捜査部隊になっても、僕に大隊長の職を与えるわけにはいかないでしょう」
黄強民は恥ずかしげもなく笑った。
「確かにそうだろう。
県警の刑事課長は正科級から始まるものだ。
画像捜査部隊も同様の待遇になるはずだ。
長陽市で警犬を出すくらいのポストだが、県内では貴重な役職なんだ」
「張局長ですら約束できないような話だ。
資格がないと得られないものさ」
江遠は続けた。
「それなら刑科班が部隊になった時に解剖捜査班の班長にしてくれないか。
それに師匠には副主任を」
黄強民は驚いて言った。
「刑科班がなぜ部隊になると思う?」
「僕が千万円規模の装備を手に入れて、土地や建物などの固定資産を申請し、実験室を二つ作れば、刑科センターとして昇格するのは当然だよ」
黄強民は笑いながら言った。
「千八百万円って金額がどれくらいか分かる?鋼镚に換えると……まあ君も知ってるだろう」
黄強民が唇を噛みしめると、急にその計画が現実味を帯びてきた。
江遠が売った監視システムは千万単位だったからだ。
それが国家プロジェクト資金でなくても…
「あなたいつ昇進するんですか?」
黄強民の画像捜査班が刑事課長を目指して走り出した。
黄強民自身も刑事課長を続けるのは問題ないが、彼の性格とは合わない。
実際、刑事課長は権力のバランスを取るのが天職だ。
その仕事自体が権力を調整するものだから
黄強民は笑って言った。
「年内に問題が出なければ副公安部長になるかもしれない。
この話は妻にも言っていないから内緒にして」
「はいはい」
江遠は頷いた。
「それなら常任で刑事捜査を主管する方が適切でしょう」
「見てみよう」
黄強民は淡々と笑った。
そして真剣な表情で言った。
「もし年内に問題が出なければ、寧台県が全省の県警ランキング一位になる可能性がある。
その場合、昇進は確実だ」
今年の寧台県刑事警察本部は、現行犯殺人事件を全て解決し満点300点を獲得。
重大犯罪8類型全破で150点満点到達。
日常維持と最低ラインの300点をわずかに失い220点を確保し、規律や財務などの細かい減点約20点を差し引くと、合計650点となった。
過去には寧台県刑事警察本部が通常550点程度で、不運な年は500点前後だった。
清河市の他の県警や寧台県の他部署も同様に、隆利県刑事警察中隊などは550点にも届かないのが常だった。
したがって650点は寧台県刑事警察本部を清河市一級の戦力ランキングで首位に押し上げた。
しかし650点は寧台県刑事警察本部の限界ではない。
未解決殺人事件一件解明で100点加算(上限なし)、殺人犯逃亡一名追跡で50点加算、重大犯罪8類型未解決事件一件解明で逮捕人数に応じて50~70点加算(上限なし)というルールがある。
これら未解決事件の解決は試験の付属問題に相当し、寧台県刑事警察本部が最も困難な時期でも中隊規模の人員を2ヶ月間投入して1件か2件解明を目指す。
戦力ランキング開始以来、寧台県刑事警察本部の最高記録は未解決殺人事件2件解明と追跡逃亡犯2名で300点加算だった。
しかしその年には現行犯殺人事件が失敗し300点を減点された。
今年は異例だ。
江遠が寧台県刑事警察本部の未解決殺人事件や外地の未解決殺人事件を含む、戦力積分に該当する案件で1200点以上加算した。
つまり寧台県刑事警察本部の戦力は今年1800点を目指す計算になる。
そのうち江遠一人が6割を占める。
この数値は山南省戦力ランキング開始以来最大の「数値モンスター」だ。
過去の数値モンスターはせいぜい1000点程度だった。
県区レベルの刑事警察本部には未解決事件の条件も限られるため、江遠のように海外まで捜査し無私な精神で活動する者だけがこの異常な数値を達成できる。
寧台県警のスコアは過去500点前後だったものが今年は650点以上に急上昇した。
刑事類のスコア上限がない限り、寧台県警も数値モンスター候補になる可能性があった。
この状況下で黄強民が年末まで持ちこたえれば昇進だけでなく功労賞を受けるだろう。
黄強民は江遠を見ながら満足げに「よし、私が昇進したら刑事科学中隊を刑事科学大隊に昇格させるから」と約束した。
江遠も笑顔で同意した。
黄強民が突然思いついたように「そうだ、さっき言おうとしたことだ。
行ってみようか。
監視システムのアップグレード後はごちゃごちゃしているんだ。
具体的な進捗状況を確認してこい」と提案した。
黄強民がそう言いながら立ち上がると、江遠から渡された中華煙を手に取りつつ火をつけた。
「長陽の件は解決したか? 犯人が供述したか?」
江遠は頷いた。
「供述しました。
車賃のことで口論になったのが原因です。
犯人は足が不自由で遠方の叔父のもとへ行くためタクシーを利用していたのですが、屠畜場に近づく前に車賃を清算したいと考えていました。
」
「価格は下げられなかったが、運転手が『出城時は遠距離料金と返送料金が必要だ』と言い出した。
遠距離料金は免除するが10%増しにすると言ったところ、犯人夫婦は拒否したため口論になりました……」
「その後女運転手も揉み合いを避けたいと考え、『遠距離料金と返送料金は免除して現時点で清算しよう』と言い出した。
しかし双方に喧嘩が発生していたので犯人は車を止めて降り、車賃を払わないと宣言した。
すると女運転手が追いかけてきた」
「足の不自由な犯人は元々自己卑下傾向があり、数歩走っただけで女運転手に簡単に追い詰められてしまったため顔面に傷を付けたと同時にナイフを取り出した……」
江遠は肩をすくめた。
「些細なことで徐々に悪化していくものですね。
性格が命運を左右するものですよ」と黄強民は日常の喧嘩を見慣れたように前置きした。
「派出所勤務だと毎日のように揉み合いはあるが殺人事件になるのは稀です。
この人が犯人に成り得たのは、表面上の刺激ではなく本質的な性格によるものでしょう」
江遠はその視点を初めて聞いたようにゆっくりと頷いた。
「叔父のもとに依存するという不満や自己卑下感、そして未来への不安が複合的に作用したのでしょうね……」
「犯人の妻は阻止しなかったのか?」
「彼女こそ喧嘩の主導権を持ち、手を貸していたのです」
「死刑二件。
冤罪ではないでしょう」黄強民は同情の色一つ見せなかった
あーもう、また格好いいのね」
「江法医さん、お見舞いに来たんだね」
「江さん、久しぶりだね!」
江遠が警視庁の庭を入ると、一声声の挨拶の中に疑問符が含まれていた。
みんなは本当は黄大佐が長陽市に売り飛ばしたことを知っていた。
こんなにも早く帰ってくるとは思っていなかったのだ。
江遠は挨拶しながら「一時的に帰ってきたんだ」と特に強調する。
「急な帰宅だね」
「久しぶりにお目にかかるね」
四階の刑事技術中隊へと上がると、まず師匠の吴軍に挨拶して短く会話を交わし、中隊長に報告した後、すぐに黄強民の部屋に向かった。
自分の机で何かを考えていただいている黄強民が、階段から江遠の声が聞こえた瞬間、急いで席に戻り、茶碗を持ち上げて口をすぼめて冷たいお茶を吹き立てる。
蛋白尿のような白い泡が浮かび上がる。
「黄大佐」
「江遠、帰ってきたんだね」黄強民は笑みを浮かべて茶碗を置くと一口も飲まずに尋ねた。
「長陽市はどうだった?余地があったのかな」
「多少はあるよ。
でも結構気遣ってくれていたみたいだよ」江遠が微笑む。
「新しい事件が終わったから帰ってきたんだ。
うちの県の監視システムはもうほぼ完成しているんじゃないかと思って」
黄強民は思わず涙が出そうになった。
寧台県の監視システムは全て江遠を犠牲にした代償だったのだ。
江遠が帰ってきて、まだ監視システムについて気遣っているなんて。
黄強民は嫁ぎ出た娘を持つ父親のような感覚に陥った。
「あー……あー、監視システムはしっかり作ってあるよ。
良いものは良いけど、もし長陽で不満があるなら帰ってくるといい。
その時は私が県庁に行って張局長たちに説明するから」
江遠が慌てて手を振る。
「そんなことないよ。
そういうつもりじゃないんだ。
ただ監視システムの進捗具合を見た気がしただけだ。
うちの江村マンションにも最近設置して、盗賊二人を捕まえたみたいで便利だったよ」
「うん、県の財政が悪いから工事が遅れているけど、全体的には順調に進んでいる。
核心部分は既に復旧されていて以前より使いやすくなったよ」
「人員は足りているかな?」
「今は臨時職員を雇っているところだ。
さらに補助警察も募集している。
残りは来年になるだろう……」
黄強民が笑いながら続けた。
「この辺で技術捜査隊の編成を準備中なんだ。
その時はあなたに中隊長としてのポストを用意するよ……」
「いやいや、そんなものは必要ないよ」江遠は手を振る。
中隊長という肩書は警視庁内部での評価で、課長補佐級に相当する。
正直に言えば、江遠が昇進を考えるのであれば、長陽市へ行くのが最も早く確実な道だ。
現在のポストである法医官こそが自分には最適だと江遠は考えていた。
この職種の要件からすると、技術捜査中隊の中隊長という異動は現状維持とは言えないのだ。
逆も然りだった。
江遠は案件が増えたことで、自分の目標を明確に見極めるようになった。
その中で、画像捜査班の班長職などは重要なポストではないと悟っていた。
黄強民は江遠の決断力に驚いていた。
彼はドアを閉めながら小声で言った。
「画像捜査班は今後も強化されるだろうが、独立した画像捜査部隊になるかどうかは分からない。
君がポストを得ておくのは悪いことではない」
「でも画像捜査部隊になっても、僕に大隊長の職を与えるわけにはいかないでしょう」
黄強民は恥ずかしげもなく笑った。
「確かにそうだろう。
県警の刑事課長は正科級から始まるものだ。
画像捜査部隊も同様の待遇になるはずだ。
長陽市で警犬を出すくらいのポストだが、県内では貴重な役職なんだ」
「張局長ですら約束できないような話だ。
資格がないと得られないものさ」
江遠は続けた。
「それなら刑科班が部隊になった時に解剖捜査班の班長にしてくれないか。
それに師匠には副主任を」
黄強民は驚いて言った。
「刑科班がなぜ部隊になると思う?」
「僕が千万円規模の装備を手に入れて、土地や建物などの固定資産を申請し、実験室を二つ作れば、刑科センターとして昇格するのは当然だよ」
黄強民は笑いながら言った。
「千八百万円って金額がどれくらいか分かる?鋼镚に換えると……まあ君も知ってるだろう」
黄強民が唇を噛みしめると、急にその計画が現実味を帯びてきた。
江遠が売った監視システムは千万単位だったからだ。
それが国家プロジェクト資金でなくても…
「あなたいつ昇進するんですか?」
黄強民の画像捜査班が刑事課長を目指して走り出した。
黄強民自身も刑事課長を続けるのは問題ないが、彼の性格とは合わない。
実際、刑事課長は権力のバランスを取るのが天職だ。
その仕事自体が権力を調整するものだから
黄強民は笑って言った。
「年内に問題が出なければ副公安部長になるかもしれない。
この話は妻にも言っていないから内緒にして」
「はいはい」
江遠は頷いた。
「それなら常任で刑事捜査を主管する方が適切でしょう」
「見てみよう」
黄強民は淡々と笑った。
そして真剣な表情で言った。
「もし年内に問題が出なければ、寧台県が全省の県警ランキング一位になる可能性がある。
その場合、昇進は確実だ」
今年の寧台県刑事警察本部は、現行犯殺人事件を全て解決し満点300点を獲得。
重大犯罪8類型全破で150点満点到達。
日常維持と最低ラインの300点をわずかに失い220点を確保し、規律や財務などの細かい減点約20点を差し引くと、合計650点となった。
過去には寧台県刑事警察本部が通常550点程度で、不運な年は500点前後だった。
清河市の他の県警や寧台県の他部署も同様に、隆利県刑事警察中隊などは550点にも届かないのが常だった。
したがって650点は寧台県刑事警察本部を清河市一級の戦力ランキングで首位に押し上げた。
しかし650点は寧台県刑事警察本部の限界ではない。
未解決殺人事件一件解明で100点加算(上限なし)、殺人犯逃亡一名追跡で50点加算、重大犯罪8類型未解決事件一件解明で逮捕人数に応じて50~70点加算(上限なし)というルールがある。
これら未解決事件の解決は試験の付属問題に相当し、寧台県刑事警察本部が最も困難な時期でも中隊規模の人員を2ヶ月間投入して1件か2件解明を目指す。
戦力ランキング開始以来、寧台県刑事警察本部の最高記録は未解決殺人事件2件解明と追跡逃亡犯2名で300点加算だった。
しかしその年には現行犯殺人事件が失敗し300点を減点された。
今年は異例だ。
江遠が寧台県刑事警察本部の未解決殺人事件や外地の未解決殺人事件を含む、戦力積分に該当する案件で1200点以上加算した。
つまり寧台県刑事警察本部の戦力は今年1800点を目指す計算になる。
そのうち江遠一人が6割を占める。
この数値は山南省戦力ランキング開始以来最大の「数値モンスター」だ。
過去の数値モンスターはせいぜい1000点程度だった。
県区レベルの刑事警察本部には未解決事件の条件も限られるため、江遠のように海外まで捜査し無私な精神で活動する者だけがこの異常な数値を達成できる。
寧台県警のスコアは過去500点前後だったものが今年は650点以上に急上昇した。
刑事類のスコア上限がない限り、寧台県警も数値モンスター候補になる可能性があった。
この状況下で黄強民が年末まで持ちこたえれば昇進だけでなく功労賞を受けるだろう。
黄強民は江遠を見ながら満足げに「よし、私が昇進したら刑事科学中隊を刑事科学大隊に昇格させるから」と約束した。
江遠も笑顔で同意した。
黄強民が突然思いついたように「そうだ、さっき言おうとしたことだ。
行ってみようか。
監視システムのアップグレード後はごちゃごちゃしているんだ。
具体的な進捗状況を確認してこい」と提案した。
黄強民がそう言いながら立ち上がると、江遠から渡された中華煙を手に取りつつ火をつけた。
「長陽の件は解決したか? 犯人が供述したか?」
江遠は頷いた。
「供述しました。
車賃のことで口論になったのが原因です。
犯人は足が不自由で遠方の叔父のもとへ行くためタクシーを利用していたのですが、屠畜場に近づく前に車賃を清算したいと考えていました。
」
「価格は下げられなかったが、運転手が『出城時は遠距離料金と返送料金が必要だ』と言い出した。
遠距離料金は免除するが10%増しにすると言ったところ、犯人夫婦は拒否したため口論になりました……」
「その後女運転手も揉み合いを避けたいと考え、『遠距離料金と返送料金は免除して現時点で清算しよう』と言い出した。
しかし双方に喧嘩が発生していたので犯人は車を止めて降り、車賃を払わないと宣言した。
すると女運転手が追いかけてきた」
「足の不自由な犯人は元々自己卑下傾向があり、数歩走っただけで女運転手に簡単に追い詰められてしまったため顔面に傷を付けたと同時にナイフを取り出した……」
江遠は肩をすくめた。
「些細なことで徐々に悪化していくものですね。
性格が命運を左右するものですよ」と黄強民は日常の喧嘩を見慣れたように前置きした。
「派出所勤務だと毎日のように揉み合いはあるが殺人事件になるのは稀です。
この人が犯人に成り得たのは、表面上の刺激ではなく本質的な性格によるものでしょう」
江遠はその視点を初めて聞いたようにゆっくりと頷いた。
「叔父のもとに依存するという不満や自己卑下感、そして未来への不安が複合的に作用したのでしょうね……」
「犯人の妻は阻止しなかったのか?」
「彼女こそ喧嘩の主導権を持ち、手を貸していたのです」
「死刑二件。
冤罪ではないでしょう」黄強民は同情の色一つ見せなかった
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(。-人-。)
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