国民の監察医（こくみんのかんさつい）

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第0476話 難題続き

「男性の死体、身長177センチ、髪の毛が10センチほど伸びている。

衣服は乱暴に着せられ、明らかに殴打された痕跡がある。

上半身には青白いTシャツを着用し、下半身には黒いワイドパンツを履いていた……顔面、頭部、左首筋、右胸、右肩に明らかな外傷が見られる……」

「傷口の内部と表面の特徴から、これらの多発傷は打撃器と刃物で同時に形成されたものと推測される……」

「死体検査によると、死者は顔面・頭部に複数の外傷を負い、左首筋にはナイフによる頸椎損傷があり、右胸部にも胸腔を貫通するナイフ傷が存在し、肋骨も損傷している。

両方とも致死的な傷である。

死亡原因は失血性ショックによるものと判断された」

石庭県の法医衛群は江遠が書いた報告書を読みながら、耳がピクピクと震えているように見えた。

凄い人だ。

資料作成は簡単だが、現実との整合性や表現範囲が広ければ、数行の深みのある文章よりも遥かに難しいのだ。

例えば「抗美援朝 保家衛国」のようなキャッチフレーズは、いくら理屈を並べても説得力がある。

当然、衛群の問題は文字の不鮮明さだけではなかった。

死体が普通に見える限り、書いた報告書も中途半端で、力強さとは無縁なものになる。

会議室。

投影スクリーンを見上げた局長と常務副局长、副局長たち、刑事課長や政委、副刑事課長らはそれぞれ江遠の法医報告を読みながら、各自が考え事をしていた。

「あの……現在西山方面で二具の遺骨を発見したという話だが？」

局長の声はゆっくりと重々しく響いた。

「二体の死体です」黄強民が表現を修正した。

「単独事件ではないか？」

局長の口調に希望が滲んでいた。

「違います」黄強民は簡潔に答えた。

「両者の傷跡に類似点があり、埋葬方法や場所にも類似点がある。

江遠と省庁から来た柳景輝警部補、李翔警部補の三人が一致して、これは計画的な殺人埋葬事件の一例であると判断している」

常務副局长は我慢できず尋ねた。

「計画的とは具体的に何件か？」

「まだ分からない。

現在は遺体発掘段階で、その責任を省庁の李翔警部補が担っている。

彼の説明によれば埋葬方法や場所の選択などは熟練した手法であり、単発的な新手の犯行とは到底思えない」

黄強民は石庭県局の窮状を理解していた。

解決したいのは誰も同じだが、ある意味で全員が共通目標を持つ仕事だ。

しかし新規事件となると一致点がなくなる。

「江遠はどうなっている？」

局長が突然思いついたように周囲を見回した。

「現在現場にいて捜査や現地調査を指揮しています」黄強民は特に理解できると言わんばかりの口ぶりだった。



現代の警察署は古代ほど「息讼」を要求するわけでもないが、事件発生率が高いことは決して良いことではない。

具体的には刑事課レベルで考えると、例えば公安部の捜査一課のような部署では、必死に事件を解決することは一つの話だが、それ以上に新たな事件が増えることを誰も望んでいない。

特に殺人事件が増えれば、そのプレッシャーは計り知れない。

どれほど重大かと言えば、二列の牙を持つカワガーレが噛み付いても軽い程度だ。

白健はようやくほっとした気持ちになっていた。

長年にわたる馬家庄強盗殺人事件を解決し、清河市公安局が掲げた「積案突破年」の目標を達成しただけでなく、報告書も見栄え良く仕上がった。

個人としても一定の説明責任を果たせたと感じていた。

公安部長として白健は、これが自分のキャリアにおける頂点の一時と言えるだろう——案件が誰かにどれだけ助力されたかなど関係ない。

刑事事件の解決はチームワークによるものだ。

リーダーである自分が顔に出すのは当然のことだった。

江遠が清代墓所埋葬死体事件の捜査に転じたとき、白健はむしろ喜んでいた。

黄強民の要求額が依然として高額で、鋭い牙を持ち続けていることは変わらなかったが、次の目標への欲求が白健の未来への不安を上回っていた。

今年積案突破に力を入れれば、来年には予算増加が見込める。

そのときまでに不足分を補てんすればいいのだ。

白健は頭を抱えながらも、江遠が清代墓所埋葬死体事件を解決する前に、民国時代の墓所から数年前の新鮮な遺体を発掘したという事実を受け入れられなかった。

信じられない！理解不能！

命案未解決1件から2件へ。

白健はたった二三日しか喜びを感じられなかった。

五連休よりも短い期間だ。

しかも有給休暇もないのだ。

「現地住民と幹部の間には、我々の業務を理解・支持する姿勢に欠ける部分があるため、県警本部が介入して説明や調整が必要です」黄強民は石庭县公安局の幹部たちに選択肢を与える余裕すらなかった。

この状況まで至れば、ほとんど選択の余地はない。

江遠と柳景輝らが新たな積案として案件を棚上げする合意に達しない限り、石庭县公安局がどう思おうと捜査は継続しなければならない。

清河市公安局や省公安廳の業務指導部も間もなく電話で介入してくるだろう。

黄強民はようやく柳景輝が言う「上への管理」を理解した。

この段階では、上司である県警本部長ですら管理される立場なのだ。

さらに石庭县公安局だけでなく、石庭県全体が出動し、石家の不満を鎮め、説得・調整に当たる必要があった。

二日後。

第三具の遺体が石庭県斎場解剖室に並べられた。

白健はその光景を見て呆然とさせられていた。

「本当に墓所に遺体を埋めた人がいるのか？」

白健は一二三の遺体を見つめながら、解剖室一列に並ぶ恐怖の情景がかつての一命三屍という記憶を呼び起こした。

黄強民は公安部長の気持ちをよく理解していた。

ニヤリと笑みを浮かべつつ「信じられないのか？」

と言った。



「信じないわけじゃないけど……あー、どうしてやるんだろう？」

白健はため息をつきながらそう言った。

彼が本当のところでは解決策を探しているわけではない。

ただ、その波乱に耐えられないだけだ。

黄強民は首を横に振って隣の江遠と柳景輝を見た。

この事件はまだ始まったばかりだが、手掛かりはある。

しかしどの方向へ進むべきかは黄強民が決めたくないのだ。

「一つの方針を決めるのは簡単そうに見えるかもしれないが、実際には人力物力が大量に必要になる。

特に大規模な事件ほど、後で方針を変えようとしても容易ではない」

李翔も江遠と柳景輝を見ていた。

彼は手伝いに来ただけだが。

「私はまだ遺体を探すことにしたい」江遠はそう言った。

彼の破案への考え方はまだ未熟だ。

この種の事件について知っているのは名前だけだし、実際に触れたこともない。

しかしいくつかの手掛かりはあるものの確信はない。

江遠の考えは、やはり遺体や埋葬現場から手がかりを探すことにあった。

このような埋葬方法は、車を止める→遺体を運ぶ→穴を掘る→遺体を入れる→盗墓跡を埋めるなど、半日以上かかる作業だ。

そのたびに必ず痕跡を残すはずだが、逆に犯人は意図的に痕跡を消しているわけではない。

柳景輝はその状況を見て言った。

「それなら石庭県で再び掃討行動（黒社会排除）を行うべきでしょう」

「大変なことになるわね」

場の数人が息を呑んだ。

この規模の作戦が及ぼす影響は大きいのだ。

白健は深呼吸をして、むしろ落ち着きを取り戻した。

捜査よりも、ある程度の方向性がある活動の方が彼には合っているようだ。

柳景輝が指し示した方向なら、もし殺人埋葬を実行したのが地元の悪徳勢力であれば、解決は簡単になるかもしれない。

「私は局長に報告に行く」白健はそれ以上何も言わなかった。

柳景輝はうなずきながら白健を見送り、黄強民を見る。

「じゃあ我々も続ける？城外に移動する方がいいんじゃないか」

「構わないよ」黄強民は即座に同意した。

石庭県が大規模作戦を準備しているなら、他の県からの支援が必要になるかもしれない。

彼らが関わらない方が良いからこそ、城外へ移動するのが妥当だ。

江遠は遺体を見ながらさらに提案した。

「殡儀場の近くでどうか？」

「それなら……いいかな」黄強民は同意した。

石庭県の殡儀場は西山の近くにある。

城外に住む条件を満たし、何かあった場合に山道を封鎖すれば居住環境も良好だ。

さらに解剖室や簡易検査室があるため、少し改造すれば日常的な証拠保管にも使える。

一行はすぐに行動を開始した。

江遠の積案班全員が車で移動し、石庭県警と困惑を表す他の車両も続々と追従する。

途中、牧志洋が申し訳なさそうに言った。

「こんなに多くの車を出してしまったけど、石庭県はこれから使うんだろう？」

「彼らが必要としているのは車ではない。

それに市は支援するはずだ。

県が深刻なら支援も増えるからね」黄強民は一息ついて続けた。

「どうしても足りない場合はあとで支援すればいいんだよ」

「所属権の確定から始めると？」

牧志洋はようやく頭を殴られたような顔になった。

黄強民が笑いながら言った。

「そんなに考えるなよ。

我々は単純に一件解決すればいいんだ。

石庭県が彼らの行動を起こすのは事件と関連はあるけど、完全に混同してはいけない」

牧志洋「あー」っとようやく悟ったように、「そうか、相手が相手の動きをするなら、外県から勝手に入っていくのは当然かもしれないが、局外人から見れば不自然だ」

牧志洋が冥想するように眉をひそめていると江遠は言った。

「他人のことは気にせず、我々は現場でやればいいんだ。

ケーキの配分なんてどうでもいい。

できるだけ多く作るだけだ。

もし分けられなかったら核兵器用の離心機で雪糕を作っちまえ」

西山。

主に積案専科チームを基幹とし派出所警官が補助する隊伍は、深一脚浅一脚と山中を行く。

理論上石庭県西山の墓は宋代まで遡るが、そのほとんどは現代に達する前に掘り尽くされていた。

問題は現代の墓であろうと古代の墓であろうと江遠らが求めているのは墓の中身ではなく墓本体で、その難易度は少し高い

幸い李翔の専門性は高く、さらに第三具の遺体を発見した後、本案の規模と注目度が増すにつれ李翔はさらに二人の専門家を連れてきた。

一団の刑事たちは三人の専門家と共にゆっくりだが確実に捜索を続ける

この時代犯罪者たちが直面するジレンマだ。

自分の技術レベルや犯行能力は向上しているものの、体系的に専門教育を受けた刑事力量も増大し続けている。

さらに重要なのは彼らは重点を絞って捜査を行うことが可能で、子供なら解けない問題でも父親が手伝い、父親が解けなければ祖父が助けるという状況を作り出すことができる

最も酷なのは専門技術や能力に優れない刑事たちが集まれば大規模行動を起こし、犯行の土そのものを根こそぎ掘り取ってしまうこともある

社会で生きるのも本当に難しいものだ