国民の監察医（こくみんのかんさつい）

きりしまつかさ

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第0688話ブレインストーミング

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江遠の家はいつも豪華な夕食を用意している。

開宴間近に、李浩辰と崔小虎、劉晟と崔啓山らが不約束で訪れた。

この一団の刑事たちは「雨中死体事件」の主力捜査員と言っても過言ではない。

来ていない陶鹿や黄強民らはほとんど虚業で、会議では主座に着きながら実働時は情報を待つ立場だった。

江遠が例年通りに多種多様なビールを提供し、料理人が必死に作った十数個の小皿を先に出すと、全員が食べながら話した。

新築の家はまだ未完成で、江遠も余裕がなかったため、あらかじめ10人以上乗れる大きな円卓を購入していた。

皆が背もたれ付きの長椅子から小円凳に乗り換えてぎゅうぎゅう詰めると、何とか収まった。

話題はすぐに事件へと向かった。

李浩辰は事前に準備した資料を示し、「陶支の最新進捗について聞きました。

現在の容疑者・河内経の経済状況も問題です。

ローンでかなり借金しており、別荘も二重担保にしました。

銀行が返済を迫れば、売却しても足りないでしょう」と述べた。

「別荘持ちながら経済的に苦しい？（牧志洋はビールと肉を食べながら箸を止めた）そんな大金を使いどこへ行ったんですか？」

「彼の妻も同じ質問をしているはずです」（蕭思がビールを飲みながら悠然と）

「主に風俗店です」と李浩辰が続けた。

「離婚前から好んでいたようです。

妻に発覚した後、離婚後にさらに悪化し、離婚時の財産分割や事業不況など複合的な要因で現在は収入を上回らない状態です」

蕭思が頷く。

「やはり妻も関心を持っていたのでしょう」

「高級遊興店の料金は高いのに効率が悪い」と崔啓山がため息をつき、「確かに風俗代による衝突の可能性はあるかもしれません」

「確かにあり得ますが、その場合でも（李浩辰は今日の議論を貴重な機会と捉え真剣に）殺害者の視点で考えると、風俗代という金額は最初から確定した数字でしょう。

途中で不満が出たとしても、相手を自宅に連れ込むまでには危険すぎます。

相手が通報すれば後々ずっと追及される」

「被害者が知人から既に通報されていたので、ここまで放置されなかったはずです」（劉晟が賛同する）

「連続殺人犯も殺人は危険です」と牧志洋は舌打ち。

「私は若い巡査に対しても言える。

私が逮捕した連続殺人犯の数は、貴方の交際相手より多い」

「しかし経済問題は根本的な課題です。

資金不足の殺害者は、熟練者でも動作が歪むはずです」（李浩辰は柳景輝を見つめながら）。

「河内の場合は生存欲求が強いと見ています。

財務危機を放置する理由はないでしょう」

彼の今日の最大目的は柳景輝との頭脳戦だったが、江遠が技術支援を提供してくれれば理想的だった。

柳景輝は当然、議論に参加したいと考えていた。

彼は脳みそを絞りながら言った。

「確かにそうだ。

風俗店に行くのは単なる遊びじゃない。

北京の別荘は高価だろうから、彼が二重債務でも数千万円は返済できるはずだ。

節約すればそれだけの金額を使うことはできない。

財政に問題があれば普通なら手を止めるはずだ……彼は性欲癖があるのか？」

李浩辰は言った。

「不自然なのは確かだが、ここまでとは限らない。

商売人だから金銭感覚がゼロになるわけがない。

前妻の話では離婚時に現金や宝石、株式などの浮財を取られ、家は子供に残すと書面で約束したらしい。

彼はそのために全財産を使い切ろうとしているのか？」

「殺人を始めたのは、いずれ自分も捕まるだろうと考えて、全財産を使い切るつもりか？」

柳景輝が飲みながら考えた。

「実際には収監後でも金を使うことになるし、それこそもっと使うかもしれない。

彼ならその辺りのことは心得ているはずだ」

崔啓山は焦ったように言った。

「銀行口座を調べればいいじゃないか？数千万円を三年で使い切るなんて、全部風俗店に使っているわけにはいかないだろう。

本音を言えば、毎日でも毎回でも、誰のチ●ポも三ヶ月持たないだろ」

皆が頷いた。

蕭思は反論するように言った。

「もしかしたら一度に複数人呼ぶかもしれない……」

崔啓山は若い蕭思を見下した。

「そんなプロの男なら一人でさえ勝てないんだ。

毎日三人くらい呼びつけるなんて、病気じゃないか」

牧志洋が酒を回して場を和ませたが、頭の中で考えていた。

「この話も崔啓山の一方的な見解だ。

劉文凱に聞くといいかもしれない。

治安畑で何十年もやっているのに鶏肉は食べたことがないが、走る鶏を見たことはある」

「事件に戻ろう」柳景輝が革製の小手帳を取り出した。

「財務調査は重要だが、人間関係の方に期待をかけるべきだ。

模倣犯なら何か真似している対象があるはずで、その問題さえ解決すれば本案の核心も明かになる」

「連続殺人犯はほぼ男性だろう。

殺し方や遺体の捨て方に自信があり、むしろ自慢げな点が見られる。

年齢は高く、何かに成功した経験がある……」李浩辰は時間がないため簡単な心理プロファイリングを試みた。

「江隊長はどう思う？」

江遠は考えた。

「ほぼ男性だ。

一人で遺体を運ぶなら体格が強く、少なくとも人を数十メートル運べる力と現場の掃除に必要な精力と体力が必要……他の点では分からない」

「つまり何維は犯人のプロフィールに合致しているんじゃないか」牧志洋は逮捕時の情景を語り始めた。

「彼が二人の警察から逃れた瞬間、何かを悟ったように振り返った様子だった」

常に出動する刑事、特に重大殺人犯を逮捕する任務を持つ刑事は身体能力が優れているだけでなく集中力も持続しており、何維がこの程度で二人を振り切るなんていうのは当然の結果だ。

彼の体格は明らかに一般人を超えている。

「情報分析に基づけば、何維の関係網から該当するのは限られる」

劉晟は場を和ませるように軽口を叩いた

「確かに。

父親が亡くなっていて子供も小さいので弱いつながりかもしれない。

同級生や運動仲間など」

李浩辰が柳景輝を見ながら言ったのは、既にその可能性を考慮済みだったからだ

柳景輝は劉晟を見る

「この事件の捜査時には情報分析を行ったのか？」

犯罪者の手掛かりを集める行為のこと。

例えば麻薬取引場所すら警察より詳しく知っている人物もいる。

特殊情報員や囚人からの通報など、通常の捜査では得られない情報を得られる

柳景輝が訊ねているのは共犯者可能性を問うものだった。

連続殺人犯は単独行動が多いが近年は模倣犯まで出てきて師弟関係も考慮されるようになった

犯罪者が何年間も秘密に保つことは困難だ。

昔はDNA鑑定がなかった時代、強姦事件など被害者すら報告しないケースで加害者が自白した例もあった。

犯罪者の周辺層はそのような情報を敏感にキャッチするし、逆説的に有利な状況を利用するのは容易だった

「情報分析は行った」

劉晟が肯定すると柳景輝は長く引き伸ばした音を出し手を擦りながら笑った

「つまり二つの要素。

人間関係と財務問題。

それに追加で情報交換の可能性も考慮すべきだ。

後者は逮捕時スマホやパソコンに残された閲覧履歴や会話記録があるかもしれない」

李浩辰は興奮して言った。

このような頭脳戦機会は滅多にないから

電話が鳴った。

劉晟は「陶支からのもの」と言いベランダへ向かった

1分後、彼はテーブルの期待視線を前に「何維が自白する意思があると連絡してきたが、専門捜査班長と最初に接触した刑事が同席することを要求している。

審問官は江隊と陶支も参加すれば役立つと言っている」

推理上手の柳景輝と李浩辰が同時に眉をひそめた。

現時点で考えられる限り、我々の頭脳で偶然当たる可能性はあるのか？

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