国民の監察医（こくみんのかんさつい）

きりしまつかさ

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第0689話何人殺した？

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取調べ室。

何維が緊縛された取調べ椅子に座っている。

表情はリラックスした余裕の笑みで、会社経営が順調な頃、部下たちと開く小会議のような雰囲気だった。

凶悪な犯罪者を相手にする警官とは違い、陶鹿たちは何維の平和な表情に圧倒されていた。

彼は穏やかで堂々とした態度で、一種の威圧感さえ感じさせた。

「目的は何か？話してくれないか？」

陶鹿はその演技を信用しなかった。

様々な大物を見慣れた警官として、何維が殺した人間数に比べればまだ小規模だ。

現代社会では驚異的でも畏れられるほどではない。

何維は笑みを浮かべた。

「落ち着いて。

私は正直に話すつもりだ。

ただし、それ以前に確認したいことがある。

貴方たちには犯人を捕まえる能力があるのか？もし私が自首したのに、そのまま事件が解決してしまうなら…」

「それが分からないとは？」

陶鹿は興味津々だった。

何維がそう言う以上、何か情報を得られるかもしれない。

警察にとって嫌疑者は口を開けば資料となる。

「貴方たちが私を追跡する方法は？」

陶鹿は江遠の方向に顔を向けた。

「その詳細は知る必要はない。

今は貴方が状況を説明すべきだ。

逆らうな」

警官は犯人に情報を教えることを避けたいと考えていた。

欧米式の双方が同等の情報権を持つシステムとは異なり、国内では警察側が優位である。

江遠はさらに詳細に説明する必要を感じなかった。

何維は数日間取調べを受けていたため慣れており、笑いながら言った。

「私は何も隠していないと思っていたのに…貴方たちが追いかけてきたのは驚きだ。

でも、沙麗蓉さんという被害者の名前をずっと聞かれるのはなぜですか？貴方は私がその事件に関与したと疑っているのか？」

「そうではないのか？」

陶鹿は反問した。

「それだけですか？貴方は私に他にも罪があると考えているのか？」

陶鹿の背筋が凍り付いた。

何維を見つめながら、数秒間黙った後、「どういう意味だ？」

と尋ねた。

「貴方たちが複製犯殺人事件だと考えているのでしょう？私の家から証拠を発見したのか？凶器は見つけたのか？」

何維は答えなかった。

しかし警官たちは彼の表情から何かを感じ取っていた。

「沙麗蓉さんは私が殺した」何維は素直に認めた。

「ごめんなさい、お前の功績を独り占めさせてくれない。

どうしても頼みごとがあるんだ」

陶鹿は驚きながらも質問を続けた。

「証拠は何ですか？」

「私は自首しているんだから、なぜ証拠が必要なのか？」

「あなたが冤罪だと証明するためだ」

「犯罪の詳細ならある。

致死的な位置はここだ」何維が胸の前肋骨のあたりを指し示した。

「二度刺入、そのうち一度は骨に当たった」

陶鹿が江遠を見やると、江遠が微かに頷いた。

「遺体を包んだのはブルーの防水布。

アウトドア用だけど古物で、在庫処分時に手に入れた……」何維は言いながら少々得意げな表情を見せた。

陶鹿らは彼の話をさせ続けた。

犯人がこの状態になるのは口頭供述を得る最良の機会であり、死刑確定囚にとっても貴重な開放感だったからだ。

「要点を聞け」何維が数言述べた後突然話し止まった。

陶鹿が眉根を寄せた。

「江警官さん、当てられるかな？」

何維は語りかけながらも答えまいと意地っ張りにした。

飛び降り寸前の人間のように、跳ぶか迷うかで揺らいだ。

江遠は何維の犯罪細節の説明を聞きながら脳裏で光が走った。

法医学者として四体の遺体は鮮明に記憶していた。

雨天での放置による腐敗はあるものの、刺創部や突入角度など一部はまだ確認できた。

江遠は各遺体の傷口と何維の供述を重ね合わせると、その類似度が異常に高いことに気づいた……この視点から考えれば……

ここで何維も実際には江遠の返答を待たず挑発的な態度で続けた。

「貴方たちが考える模倣犯とは別に他の三件は私がやった。

私の模倣だ！」

「え？」

「なぜ？」

監視室と取調べ室では異なる声が上がった。

何維も笑わずに陰りの目つきで続ける。

「二度目の遺体放置時に撮影されたんだ。

その後スマホを送ってきた。

中には梯子と即時消去機能付きの動画があり、その映像を使って脅迫してきた」

何維は質問を待たず続けた。

「貴方たちが沙里蓉さんの事件で私が犯人と断定しようとしているこの件だが、相手が指定した殺害対象だ。

自分の犯行と区別するため意図的に私の模倣を行い、さらに証拠を残しておいた」

陶鹿のようなベテラン刑事も驚き目を瞬かせた。

一時言葉に詰まった。

何維は勝手に続けた。

「その相手も私の殺人方法の詳細は知らないが家庭事情は知り、動画で息子を脅した。

私はこれしかなかったんだ。

直接殺人手法で裏切り者を証明する方が最も確実だと考えた」

「貴方の思考回路だな」陶鹿が何維を見つめながら待った後、続けた。

「では四体目の被害者は？」

「それは我慢できなかったんだ」何維が言葉を切った。

「四体の遺体は見つかったんだろう？」

陶鹿の額に電流が走り込んだ。

「殺した人数は？」

陶鹿が尋ねる。

「相手の要求通りに一人やった。

その男は山里に埋めろと頼んだからな」何維は肩をすくめた。

「見つけてないんだろう？」

陶鹿の顔が引き締まった。

「捜したのか？」

「捜したけど見つからない。

これは私の専門外だ。

この数年、金も使っちまったし、自首するしかないと思ったんだ」何維は陶鹿と江遠を見回して続けた。

「最初の計画は『模倣犯』で済ませようと思ってた。

死刑にはならないだろうと思っていたけど、貴方たちが九を捕まえれば、死刑になっても損はない」

「九というのは、動画を撮った人物だろ？自称か、あなたからの呼び名なのか？」

陶鹿が追及する。

「自称だ」何維の声は低く沈んだ。

「一年前に連絡が途絶えた。

監視しているかどうかも分からない」

この男が殺人犯でなかったら、その発言は精神疾患としか言いようがない。

だが殺人を犯した者だからこそ、そのような発言すら重みを持って聞こえるのだ。

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