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第0755話 多点
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土里不仅有指輪、ネックレス、ブレスレット、足首の飾り物、成分不明の衣服の破片が埋まっていた。
掘削を続ける警視庁公安部捜査一課の刑事はますます元気になっていった。
身外の物があるのは最高だ。
これらを通じて死体の出所を特定できるかもしれない。
死体周辺の物体で出所を特定するというのは、死体そのものからでは難しいし確率も低い。
例えば九割の確率で人間の死体だと判断した江遠でも「人間だ」とは断言しない。
なぜなら残り一割が動物の死体かもしれないからだ。
法医学者として生涯を賭けるわけにはいかない。
十回に一度くらいそういうミスがあっても許されるのか?刑事たちは確実な答えを求めているのだ。
警察が殺人事件で動いている最中に、突然「実はゴリラだった」と言われたらどうする?
十年に一回の重大な誤りでも許されない。
それより物品から人物を探す方が刑事たちにとっては馴染みのあるパターンだ。
「若い女性だろうね。
ネックレスや指輪は珍しい種類のものだったみたい」
掘削を続ける刑事が手際よく作業しながら口にした。
隣で同じく土をかぶっている年配の刑事は「ん」と鼻を鳴らし、「普通の中年の主婦ならここまで来ないよ」と返す。
「そんな偏見を持たないでほしい」
「指輪やネックレスが取れていないから金目当てじゃない。
こんな遠くまで埋めるくらいだから、プロ級の犯罪者でもないにせよ相当な手練りだ。
普通の中年の主婦はそういう連中と関わらないはずさ。
運命薄だったんだろうね」
「恋愛か色欲で殺されたのか?過去の愛人や復讐も可能性がある」
「たまたま殺しただけかもしれない」
「だったらこんな場所に埋める必要ないんだよ。
ここなら消えるし、無駄もない。
偶然の殺人なら適当に捨てればいいのに」
「人を埋めることにもコスト計算するのか?安全な場所と時間があれば必ずそうするはずだ」
数人の刑事が作業しながら会話しているうちに、沈黙が広がってきた。
「江遠はまだ定位をしているみたいだね」
「複数の地点があるからうちの部署は二カ所を監視。
七課の方も少なくとも二カ所あるらしい」
「今月の休暇はパーだな」
「今年さえ休めればいいほうさ」
会話しながらさらに土を掘ると骨が現れたので作業を止め、法医学者が来るまで待機することになった。
数人が手袋を外し、遠くで水を撒いているが誰も軽やかではない。
会議室では既に第二のマーキング地点に注目が移っていた。
植物が稀疏な場所だ。
本を読んだり埋めた経験がある人なら知っているように、頭蓋骨の上にある植物は死体液による腐食や電解質バランスの崩れなどにより、最初の数年間は成長しない。
そのためこの場所の植物が育ちにくいからこそ土を掘り返したのだ。
「近くに折れた木があるが、その樹齢の菌類は生長年数から事件発生日を算出できる」
真菌学者が即座に反応した
「骨格は犬のものか? 画像処理してみた」
刑事が電話で指示した
「次点の埋設物を探れ」
現場警官が土を掘り返す
「大量の寄生虫がいる。
犬肉では不足する」
江遠が指摘した
「第二地点から見てみよう」
植物学者たちは喜ばない。
数人が立ち上がり、土の中に埋まっているのは死体なのかと焦じらうように見つめた。
「待って、順番に見てやろう」
「まずは先ほどのものを確認しよう」
江遠が咳払いをした。
「まだいくつかポイントがあるから、早く終わらせないと現場に行けないんだ」
植物学者たちは少々淋しげいながらも、業務妨害はせずに座り直した。
江遠がうなずき、次に三つ目のポイント、四つ目を示す…
戚昌業の背筋が凍りつく。
しかし今回は江遠が早口で説明した。
大部分は前と同じ内容だったからだ。
今は実例を見るだけ。
現場の変化を見比べるだけ。
三つ目、四つ目のポイントでも死体が発見された。
江遠が二つ目のポイントに戻ると、犬の下には確かにもう一具の死体があった。
五つ目のポイントでは草むらに動物の死骸があり、植物の変化は別の理由だったようだ。
六つ目と七つ目も同様に…
結局戚昌業のチームは六具の死体を発見した。
「今日はここで終了。
明日から本格的に作業するぞ」江遠は現場効果を達成したが、植物学者たちには構わなかった。
一気に六具も出たので、夜中に目覚めてしまう人が多いだろう。
江遠が法医鑑定車に乗り込み埋蔵地に向かった。
戚昌業はパサートで追従し、ずっと電話をかけ続けたままだった。
掘削を続ける警視庁公安部捜査一課の刑事はますます元気になっていった。
身外の物があるのは最高だ。
これらを通じて死体の出所を特定できるかもしれない。
死体周辺の物体で出所を特定するというのは、死体そのものからでは難しいし確率も低い。
例えば九割の確率で人間の死体だと判断した江遠でも「人間だ」とは断言しない。
なぜなら残り一割が動物の死体かもしれないからだ。
法医学者として生涯を賭けるわけにはいかない。
十回に一度くらいそういうミスがあっても許されるのか?刑事たちは確実な答えを求めているのだ。
警察が殺人事件で動いている最中に、突然「実はゴリラだった」と言われたらどうする?
十年に一回の重大な誤りでも許されない。
それより物品から人物を探す方が刑事たちにとっては馴染みのあるパターンだ。
「若い女性だろうね。
ネックレスや指輪は珍しい種類のものだったみたい」
掘削を続ける刑事が手際よく作業しながら口にした。
隣で同じく土をかぶっている年配の刑事は「ん」と鼻を鳴らし、「普通の中年の主婦ならここまで来ないよ」と返す。
「そんな偏見を持たないでほしい」
「指輪やネックレスが取れていないから金目当てじゃない。
こんな遠くまで埋めるくらいだから、プロ級の犯罪者でもないにせよ相当な手練りだ。
普通の中年の主婦はそういう連中と関わらないはずさ。
運命薄だったんだろうね」
「恋愛か色欲で殺されたのか?過去の愛人や復讐も可能性がある」
「たまたま殺しただけかもしれない」
「だったらこんな場所に埋める必要ないんだよ。
ここなら消えるし、無駄もない。
偶然の殺人なら適当に捨てればいいのに」
「人を埋めることにもコスト計算するのか?安全な場所と時間があれば必ずそうするはずだ」
数人の刑事が作業しながら会話しているうちに、沈黙が広がってきた。
「江遠はまだ定位をしているみたいだね」
「複数の地点があるからうちの部署は二カ所を監視。
七課の方も少なくとも二カ所あるらしい」
「今月の休暇はパーだな」
「今年さえ休めればいいほうさ」
会話しながらさらに土を掘ると骨が現れたので作業を止め、法医学者が来るまで待機することになった。
数人が手袋を外し、遠くで水を撒いているが誰も軽やかではない。
会議室では既に第二のマーキング地点に注目が移っていた。
植物が稀疏な場所だ。
本を読んだり埋めた経験がある人なら知っているように、頭蓋骨の上にある植物は死体液による腐食や電解質バランスの崩れなどにより、最初の数年間は成長しない。
そのためこの場所の植物が育ちにくいからこそ土を掘り返したのだ。
「近くに折れた木があるが、その樹齢の菌類は生長年数から事件発生日を算出できる」
真菌学者が即座に反応した
「骨格は犬のものか? 画像処理してみた」
刑事が電話で指示した
「次点の埋設物を探れ」
現場警官が土を掘り返す
「大量の寄生虫がいる。
犬肉では不足する」
江遠が指摘した
「第二地点から見てみよう」
植物学者たちは喜ばない。
数人が立ち上がり、土の中に埋まっているのは死体なのかと焦じらうように見つめた。
「待って、順番に見てやろう」
「まずは先ほどのものを確認しよう」
江遠が咳払いをした。
「まだいくつかポイントがあるから、早く終わらせないと現場に行けないんだ」
植物学者たちは少々淋しげいながらも、業務妨害はせずに座り直した。
江遠がうなずき、次に三つ目のポイント、四つ目を示す…
戚昌業の背筋が凍りつく。
しかし今回は江遠が早口で説明した。
大部分は前と同じ内容だったからだ。
今は実例を見るだけ。
現場の変化を見比べるだけ。
三つ目、四つ目のポイントでも死体が発見された。
江遠が二つ目のポイントに戻ると、犬の下には確かにもう一具の死体があった。
五つ目のポイントでは草むらに動物の死骸があり、植物の変化は別の理由だったようだ。
六つ目と七つ目も同様に…
結局戚昌業のチームは六具の死体を発見した。
「今日はここで終了。
明日から本格的に作業するぞ」江遠は現場効果を達成したが、植物学者たちには構わなかった。
一気に六具も出たので、夜中に目覚めてしまう人が多いだろう。
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