国民の監察医（こくみんのかんさつい）

きりしまつかさ

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第0841話分析

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「江遠は死亡時刻に問題があると言っているが、最後の目撃者が被害者を見たのが8日後だった場合……つまり8日後に遺体が発見されたということになる。

その時間差はあまりにも大きい」

会議室で刑捜二課の大隊長馬季洋は指を折りながら数え上げ、眉根を寄せていた。

この事件は当初から二課に回されていたが、馬季洋自身が刑捜本部の功績ナンバーワンとして解決した案件も多かったし、法医が被害者の死亡時刻を大幅修正するケースに出くわすのは初めてだった。

「8日間とはいかにも長い」江遠は訂正しながら言った。

「私の推測では5～6日前に発見されたのではないか」

1日の時間差はあるもののまだ確定していないが江遠はとりあえず死亡時刻を3日から6日ほどに修正した。

馬季洋が言う「4日の夜最後の患者が李彦民の診療所を出た。

被害者李彦民は5日に診療所の扉を開けず、微信でグループに通知して『しばらく数日間休む』と告げた。

その後誰も李彦民を見かけなかった。

その後数日間李彦民は微信で会話したが電話には出てこなかった」

「こんな状況以前にもあったのか？診療所を何日も閉める場合、村の人はどう看病するんだ？」

柳景輝が尋ねた。

「町にも診療所がある。

村から10キロほどだ」下位警官が代弁し続けながら「李彦民はしばしば短期休業していた。

ある時期は海外旅行に行くのが好きで、閑散期に年に数回出かけることもあった。

普段でも一～二日間閉めることがあった。

村の人たちは慣れていた」

「その仕事は快適だな、我々よりずっと快適だろう」柳景輝が驚いて言った。

「診療所を開けても店番しなくていいのか？」

「村人の話では李彦民は以前一度結婚したことがあるが早婚早離婚のケースで子供もいない。

その後も再婚相手を紹介しても受け付けなかったという。

独身無子で家と診療所があるから当然快適だろう」下位警官がさらに続けた

「あなたたちよりは我々の方が幸せだよ」馬季洋は咳払いしながら気分を和らげた。

「結婚できるのは運の問題だから、我々のような仕事の人間は特に」

下位警官は刑捜本部で『家庭円満ナンバーワン』と呼ばれる馬季洋を見上げて「大隊長、そのお言葉に安心しました」と言った

「そうだ。

結婚相手が見つかるかどうかは運次第だ。

我々のような仕事の人はそもそも結婚する機会自体が少ないんだから」馬季洋はさらに続けた

「馬大隊長は本当に心の健康ナンバーワンですね」柳景輝が賞賛した

馬季洋は笑い声を上げた。

余温書も隣でニコニコしながら、会議中に話題が事件から逸脱しても止めなかった。

通常の捜査会議ではそれほど厳粛な雰囲気ではないし、あるいは創造力を発揮するためにはリラックスした空気が良いという理由で、核心メンバーが集まっても冗談を交わすことが許されていた。

長陽市刑事捜査本部は、県内の警察署を凌駕する最高レベルの犯罪捜査機関であり、隊員全員が経験と能力に優れた精鋭集団である。

余温書警視正が重んじるものは規律そのものではなく、彼らのプロフェッショナリズムにある。

軽口を叩く声が一瞬で消えた。

刑事が話題を戻した。

「もし死亡時刻を六日前に修正すれば、5日休業、7日か8日に死亡という計算になります。

その時期、李彦民は微信でメッセージを送信していたはずです。

彼が既に死んでいた場合、そのメッセージは犯人が発信したものかもしれません」

「微信の会話記録を見せてください」余温書が手を伸ばすと、即座に警官がプリントアウトした記録を渡してきた。

現代の捜査では微信が証拠として頻繁に使用される。

金銭取引や関係性の証明など、多くの事実がその中で裏付けられる。

余温書はページをめくる。

この案件には以前から注目していたものの、具体的な証拠まで詳細に調べたことはなかった。

柳景輝警視正は既に記録を確認済みだった。

「李彦民の携帯が9日に電源オフになったのは事実ですが、その間の状況はまだ不明です。

これは捜査の一つの方向性と言えるでしょう」

柳景輝はこの手がかりにはあまり期待していないようだ。

被害者が暮らした村では大部分の土地が工場用地として賃貸されている。

規模は数千人単位から数人単位まで様々で、村民の自宅も部屋を借りて住む人が多い。

さらに工場に宿舎があるため、環境は複雑で混雑している。

このような状況下では有効な手がかりを得るには、単なる聞き取りではなく徹底的な捜査が必要となる。

柳景輝はその点を恐れなかったが、徐泰寧警部補のスキルを呼び出すのに時間がかかるのは事実だった。

ただし今回は江遠警部補が同行しているため問題ない。

しかし携帯電話を探すことが犯人逮捕に直結するとは限らない。

そもそも携帯が犯人の手にあるという推測すら根拠がないし、仮に見つかったとしても犯人を特定するのは難しい。

さらに携帯は高価な財産であるため流動性が高い。

例えば犯人が路上に捨てた場合、移動人口の多い場所でどれだけ長く放置されるかは予測できない。

現在の携帯流通ルートでは、拾得者が転売した場合、24時間で華強北（電子機器市場）に到達する可能性もある。

そのためこの手がかりを追及するために人員と経費を投入するのは、絶望的状況でない限り柳景輝は勧めなかった。

「やはり死亡時刻の再考が必要です」柳景輝は江遠の発見を信頼していた。

彼の目には証拠に信用度があると感じていたが、日常的には口に出さない傾向があった。

余温書も柳景輝を信頼し、「柳警視正はどうお考えですか」と尋ねた。

「まず一つとして、馬大隊長が進めているように死亡時刻の前倒しを前提に、それまでの調査を遡って行う必要があります。

例えば監視カメラ映像や車両ナンバー写真、目撃者の証言なども7日以前まで拡大するべきです」柳景輝が答えた。

馬紀洋が隣でうなずき、『その点は進めています』と言った。

「次に、殺人者がどうやって死亡時刻の差がこんなにも大きいことを成し遂げたのか。

普通ではない手口でしょう？」

柳景輝が江遠を見つめ、『その問題を解決できれば、この事件も解決するかもしれない』と尋ねた。

推理の事件では、明らかに現実離れした状況が発生している場合、それを説明できれば全体を説明できる。

柳景輝はその点を暗黙裡に考えていた。

今日一日ずっとこの問題を考えてきたが、確かに解決策はある。

ただし具体的な手法は、各方面の検査結果次第だ。

江遠は続けた。

「毒物検査室、理化学検査室、微量物証室、そしてDNA鑑定室に大量のサンプルを送付したが、全て混雑している。

最終的な結果が出るまで待つしかない」

「優先的に検査してもらうように手配するから大丈夫だ」余温書が即座に答えた。

材料がないと料理もできない。

十分な証拠がなければ、江遠の技術も発揮できない。

案件分析をここまで議論したところで、江遠は自分の技術表を見直し、『図偵室に行って柳課長の監視カメラに何か見つかるか見てみよう』と言った。

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