明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0133話「撃殺」

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「パヴァロ、最後の機会だ。

今ここで反悔すればまだ間に合う」

「遅いよ。

貴方たちが最初から理解している通り、俺と貴方は同じ類じゃないんだ。

今さら『帰依』と言っても受け入れてくれるか? 信仰こそこの世で最も偉大な物さ。

性別や地域や民族や国家や種族の違いなんて関係なく、家族のように結束させるんだよ」

「でもパヴァロ、貴方の家族を守るなら……今ここで自害すれば許すわ」

パヴァロは首を横に振った

「必要ない」

「貴方の固執で家族が犠牲になるのは忍びないのか? あなたが亡くなれば二人の娘の血霊の粉末が手に入らなくなる。

その汚染が制御できなくなり、重荷で死んでしまうわ。

妻は強そうに見えるけど心は脆い。

貴方と娘たちを失ったら生きる気力も失うでしょう」

「月一回の血霊の粉末さえ受け入れれば娘たちは普通の生活を送れたはずよ。

それを拒んだのは貴方自身だわ」

「秩序の神が己の娘を猛獣に投げ込んだ。

それが『秩序の光』か? しかし貴方たちにはもう光は見えない」

ティルスが鞭を振り上げて部下四人に命じた

「鎮圧!」

四人の秩序小隊員が目を閉じ胸元に手を合わせると黒い壁面が現れ瞬時に開いた囚籠となってパヴァロに襲いかかった。

彼の掌から噴出する二つの黒炎は地面に衝突し反動で後方に押しやったが囚籠が完全に閉じる前に解放された

「逃げようとしているのか?」

ティルスの皮鞭が背中に炸裂した瞬間無数の火星が飛び散り鞭が腰を束縛する。

彼は黒い文字がパヴァロの身体から現れ鞭へと這い上がろうとするのを見て一瞬ためらったが結局鞭を放棄した

「貴方の命で発動させた呪文よ。

接触すれば貴方は即死だが呪文も効果を発揮するわ。

私は殺されないけど生涯に付き纏うだろう」

パヴァロの束縛が解かれた瞬間、術法を中断された反動に苦しみながらも、彼はそのことに構わず両手で地面を叩いた。

すると黒い星芒が現れ、次の言葉と共に広がった。

「秩序——黒霧の森!」

瞬時にパヴァロの姿は霧に包まれた。

四名の『秩序の鞭』メンバーは再び結陣し、新たな詠唱を開始した。

その力は虚偽と隠蔽を洗い落とすほど強大で、霧の中に身を隠していたパヴァロがまたもや姿を現した。

ティルスがパヴァロの動きを捕捉すると、手を地面に伸ばし鋭く引き上げた。

その瞬間、黒い蔓が地中から突き出て鋭利な先端でパヴァロの左肩を貫いた。

蔓はさらに成長し、彼の全身を包み込んだ。

『秩序の鞭』四名は結陣を解き詠唱を続けながらそれぞれナイフを取り出し、黒光りする護符が現れた。

彼らは霧が完全に消散する前にパヴァロを斬殺し、その身体を完全に破壊しようとした。

しかし、先頭の黒衣の男は地面にガラス片を見つけた。

同時に淡い緑色の霧が広がっていることに気付いた。

空中で笑うパヴァロの声が響く。

「これは私の二つの娘から抽出し純化した汚染源だ。

魂を侵食する毒なんだ。

先ほどから霧の中に撒いていたんだよ」

四名の『秩序の鞭』は同時に動きを止めた。

自身の身体を封じながら新たな詠唱で浄化を開始した。

この毒素は想像ほど恐ろしくなかった。

パヴァロの娘たちが汚染されたのは治療を遅らせたからだ。

神官なら適切な処置があれば問題ない。

理論上、彼らはパヴァロを殺し後に解毒する余裕もあった。

しかし四名は互いに同じ考えだった。

仲間が先に斬りつけたら自分は浄化を続けられると思っていたのだ。

その結果、誰も動けなくなってしまった。

護符の黒光りで浄化中のパヴァロはそのまま吊るされたまま放置された。

次の瞬間、パヴァロは身近な蔓に手を伸ばし掌から炎を放ち燃焼させようとした。

ティルスが再び地面を掴み引き上げると新たな蔓が現れパヴァロに向かってきた。

彼は避ける術もなく身体を下ろして傷口を開きながらも自由を得、次の刺突を回避した。

着地した瞬間——

パヴァロの上半身の左側は血まみれで、左腕も体から下がり気味だったが、彼はすぐに右手を眉間に当てた。

その瞬間、周囲に黒い霧が広がり、彼は遠くへと消えていった。

ティルスが数歩前に進み、その霧を追いついた。

重々しい声で彼は言った:

「秩序——牢獄(ろうごく)。





「ワン」(この審判官、ダメだよ)

「ニャー」(封印したあの審判官と比べれば全然ダメね)

「ワン」(彼の道は政治系だから、格闘面では弱いんだよね)

「ニャー」(そうね。

学んだことや持っている術法は基本的に審判官の日常業務に合わせたものよ)

「ワン」(そうだわ。

秩序の鞭の人間は基本的には格闘関連の術法しか知らないんだ)

「ニャー、ニャー、ニャー」(だから今回はカルンに選ばせる甲冑加持魔法は実用的な身体強化と反応速度向上が効果的で、これは秩序神教の術法『秩序の鎧』だけど、光の神教の『光の鎧』には敵わないわ)

「ワン」(それよりいいものがあるわ。

教えてあげる)

「ニャー?」

(邪神の鎧?)

「ワン」(自分で作ったんじゃないわ。

海神の鎧は持ってるわ、以前盗んだのよ)

「ニャー」(カルンの基礎がしっかりしているなら『海神の鎧』の流動性に合致するわね。

継続的に『水補給』ができるから)

「ワン、ワン」(でも近接攻撃術法も必要だわ。

中級以下の格闘ではこの組み合わせが最強よ。

あの審判官はその弱点を突かれてやられちまったのよ)

「ニャー」(暗月の刃?)

「ワン?」

(暗月一族の術法?それまで知らなかったわ)

「ニャー」(あの家族の愚かな子が私に追いかけてきて、この術法を贈ってくれたのよ)

「ワン」(それでどうしたの?)

「ニャー」(私は感謝して受け取ったけど、彼には断ってやったわ。

彼は悲しみで去りゆくのよ)

「ワン」(どんなに強力な一族にもそういう馬鹿はいるさ)

「ニャー」(暗月の刃と海神の鎧は両方とも霊性を消耗する術法だけど、カルンにはちょうど合っているわね)

「ワン、ワン」(そうだわ。

それに私たちが近くにいれば彼が相手に勝てないのは、彼の祖父の恥じゃなくて、私たちの恥よ)

「ニャー」(でも最も適しているのは秩序神教の正統術法だけど、本当に成長してからでないと効果が出ないわね)

「ワン」(最も適しているのは……彼自身の『秩序の騎士』だよ)

「ニャー、ニャー?」

(この審判官は死ぬ;違う、誰か来るわ)



秩序の牢獄が逃亡する霧を捕らえた。

霧が消えるとパヴァロの姿が露わになった。

ティルスが腕を上げた。

重々しい声で彼は言った:

「懲罰の槍(ちょうばつのやり)」

頭上に懲罰の槍が浮かび、破壊的な気配を放ち始めた。

「終わった、パヴァロよ」

しかしティルスが手を前に伸ばす直前、突然ピンク色の光輪が彼の前に広がり、その中に女性の幻影が現れた。

彼女は呪文を唱え始めていた:

「神は言った:『私は冷たい海に身を投じ、私の姉妹には温もりを与える』」

海水が突然空中に浮かび上がり、ティルスとその周囲を包み込んだ。

ティルスは驚きもせずに、体の周りに三つの壁面防御を形成し、そのまま『懲罰の槍』を原地で爆発させた。

「ドン!」

ティルスが地面に落ちるや、先ほどの爆発で意識が一瞬眩暈したものの、事前に構築した防御のおかげで身体は無傷だった。

かつて彼を囚とし得ようとした結界も既に破壊されていた。

しかしパヴァロの姿は前方にはなかった。

四人の黒衣の人間がティルスの背後に現れた。

ティルスが彼らを見やろうとした瞬間、パヴァロが以前言った言葉が脳裏をよぎった。

「我々は同じ類ではない……」

「ミルズ教団だ。

彼の仲間が現れた」

ティルスが月明かりを見上げた。

雨が降り続くため雲の隙間に薄く輝く月しか見えなかった。

静かな夜に、遠くの屋根を駆け回る猫や犬だけがわずかに動きと生気を与えていた。

「追跡を続ける」

「はい、隊長」

……

「アンニェ、ここには来るべきではなかったわ」パヴァロが言った。

「私を追及する者たちの数はそれだけではないのよ」

「来たのなら、意味のあることを話してちょうだい」

「私の計画は失敗した。

私を裁く『審判官』こそが、彼らの背後に立っているのだから」

「今さらそんな話をしても?」

「アンニェ、約ク城から出て行きなさい。

生き延びるチャンスがあるわ」

「また同じことを言うのね」

「もう手がないわ。

最初にこの件を報告した時から」

「そうだわ」

「最も現実的な解決策は、約ク城を離れて他国の管区で報告することだが、それは不可能よ。

私の調査が彼らの注意を引きつけているのに、調査しないとどうして報告できるの?」

「アンニェも同じようなことを言い出すのかしら」

「あの礼堂は『深淵神教』の場所よ。

あなたをそこへ連れて行くわ」

「無駄よ。

深淵神教は秩序神教内部の問題には口出ししないはずよ」

「どうしてそんな調子で言うの?少し誇らしげに聞こえない?」

「そうかな?」

「そうよ。

それに、あなたが逃れた理由は何かしら?他の手立てはあるのかしら?」

「原因は、国外の大区で報告する機会を試みたからよ」

「その言い訳は前にも聞いたわ」

「本当の理由は、ただそこに座って待つのが嫌だったから。

出ることこそが死を意味しても、それが解放になるかもしれないから。

だからアンニェはここに来るべきではなかったわ、ごめんなさい」

「予感があるわ。

私たちには時間がないわ。

だから少しでも役立つ話をしよう」

「どうぞ」

「私は調査ノートを、あなたが手配した人物に渡していたわ」

「あなたが手配した人物?」

「ええ、とてもハンサムな若者よ」

「ああそれね。

彼は私が手配したものではないけど、少なくとも普通の人間じゃないことは知っているわ。

私の感謝の意を伝えよう」

「構わね、少なくとも我々が死んだ後も誰かが調査を続けている。

希望は薄いが、それでも希望の残滓がある」

「そうだな」

闇堕神教の礼堂が眼前に迫っていた。

市内河川を隔てた先に人渡り橋が架けられていた。

アンヌがパヴァロを支えて橋へと向かう。

橋の中央で黒いコートを着た人物が現れた。

胸元には雷電の紋章、歴史的に秩序神教によって封印された凶獣の図柄が刻まれていた。

「これは……裁決服だ」

パヴァロが声を上げる。

「ルク裁決官様」

ルクは手を上げると黒い剣が空中に浮かび上がった。

その沙哑な声と共に言葉が届く。

「貴方の仲間、ミールズ教の信者だと言うのか?」

アンヌは笑みを浮かべた。

「はい、私は菓子屋で働いています。

年老いた為に他の店員が40レル受け取るのに私は20レルでいいと言いました。

それでも商売は伸びず、店の掃除代わりに少しでも補助金を得ています」

「ふん」

ルクが笑みを浮かべると剣がさらに上昇した。

パヴァロが口を開く。

「アンヌ、貴方の言う通りだ。

裁決官様はそんな場所には行かないだろう。

貴方が汚いからではなく、貴方が低俗だからだ」

アンヌが頷いた。

「そうですね。

私は申し訳ありません。

確かに汚いですが、問題は清潔な裁決官様がなぜここに立ち塞がっているのかです」

パヴァロが続ける。

「貴方の汚れと比べれば、貴方は清潔そのものだ。

貴方が触れた汚れさえも貴方に好意的に働くだろう」

「パヴァロ、貴方が何を想っているのか知っていますか?私は貴方と共に死ぬ覚悟はしていますが、貴方とは違うからです。

秩序神教の闇の中に潜む汚濁は全て腐敗したと信じていました。

それが貴方と出会った時から変わりました」

「安心してください。

秩序は彼らを裁くでしょう」パヴァロが決意を持って言う。

「私は確信しています」

ルクは何も言わなかった。

代わりに重々しく告げた。

「秩序——裁決の剣!」

黒い剣が瞬時に無数の剣影を作り出す。

パヴァロは胸元を指し手を合わせて唱えた。

「我が絶対的忠誠を以て、貴方の偉大なる名を讃えます。

この時、貴方の目を開いてください。

貴方の視線がこの世に降り注ぐよう祈ります

禁——秩序の眼!」

パヴァロの背後に黒い渦が現れた。

その奥深くには閉じられた目に似たものがうっすらと見える。

この光景はアラン・エステート劇場でも見たことがあったが、当時はより鮮明で、貴重な瞬間を差し掛けていた。

ルクは全く動揺せず、むしろ意図的に一拍子遅れてパヴァロの背後の渦がゆっくりと消えていくまで待った。

パヴァロは全身を床に伏せさせられ、鼻や口から血が流れ続けた。



「パヴァロ、お前は本当に愚か者だ」

膝をついたまま声すら立たないパヴァロが言うと、

「ただ奇跡を願っていただけで……残念なくらいに」

アンヌが詠唱を始める。

「神よ。

この世が海に沈む時、一切の汚れはその場所に葬り去れ!」

橋の両端の水が一瞬で橋上へと引き寄せられ、ルクに向かって二つの巨大な壁を作り出す。

ルクの手が軽く前に出るだけで、

無数の剣影がその壁を貫き、アンヌの体を突き抜ける。

同時に膝をついたパヴァロもまた同じように貫かれ、彼らの身体には穴が開いていく。

裁断の剣の気配は肉体だけでなく、魂までも切り裂く。

この戦いは逆転不可能なものだった——

ルクがその場に現れた時点で結果は決まっていた。

アンヌの死によって呼び寄せた水幕の制御を失い、橋面へと降り注ぐ。

ルクの周囲に黒い光輪が形成され、水流を遮断する。

衣服すら濡れないが、アンヌとパヴァロの遺体は流れに流され河下へと漂う。

ルクが鎖を手にした瞬間、後ろから老人の声が響く。

「かつて諸教会が平和と安定のために秩序神教に譲歩する約束があった。

だが今や、彼らは自らの門前まで迫ってきたのか?」

ルクが振り返ると、赤と黒の法衣を着た老者がいた。

「秩序神教は背教者を粛清している最中です。

ご迷惑をおかけしました」

「ふん、そうだったのか。

私はもともと出てこようとは思っていなかったが、禁咒の気配を感じてから出るしかないと思ったんだ。

この礼堂が朝日で消える前にね。

次回このようなことがあったら、裁決大人に公文を送って知らせてくれないか?」

「承知しました」

「よし」老人は礼堂へと戻り、今や秩序神教の強大さが露わだった。

ルクは遺体が流れている方向を見やる。

その影すら見えなくなっていた。

ティールスの姿が橋に現れ、「裁決大人、あの二人はどうなった?」

「死んだ」

ティールスを見つめるルクの目には嫌悪の色が露わだった。

「遺体は?」

「河へ落ちた。

流れている」

「裁決大人がなぜ遺体を……」

「人間は私が殺した。

遺体はお前たちに探してもらう」

「…………」

黒い霧がルクを包み、消えていった。

「本当に高慢なやつだ」ティールスは後ろの四名を見やる。

「まだ動いてないのか?河へ行って遺体を探せ!」

……

遠くの河岸でプアーレがケビンの背に乗っている。

ケビンは全力疾走中。

「早く、早く!すぐそこだよ!あれだ!行け!にゃー!」

「ワン!」



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