明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0164話「次は生け捕りに」

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「カレン、君が審判官になったら最初にこの術を学べ。

黒い霧で入ってきて、黒い霧で出ていくのさ。

本当に美しかったわ」

「審判官時代から学べるのか?」

「裁きの官だけが使える術のはずだけど、君の経験なら階級を超えて習得できると思うわ」

「ディースは今まで私に見せたことないわね」

「彼はただの審判官だったのよ」

「ふん」

「重要なのは、禁呪を発動させても退屈でしらけさせるようなものだわ。

生活、術法、信仰には儀式感と洗練さが必要なのよ。

それが正道なの!」

そう言いながらプーアは猫の手で帽子を下ろし、顔の半分を隠した。

ガソリンスタンドに到着するとカレンは車を止め、車内の引き出しから拳銃を取り出してコートの内ポケットに入れた。

「カレン、君がそれを持ち歩いているなんて。

信じて。

私はこれからも君が粗忽で死ぬとは思わないわ。

本当に見たことないほど慎重な人だから」

「ずっと前から銃を持つ気持ちはあったのよ」

カレンはドアを開け車を降り、簡易レストランに向かって歩いていた。

店に入る直前に高身長と小柄の男が出てきた。

二人とも便服だが、カレンは指輪に注目した。

彼女は自分が队长からもらったプラスチック製の指輪を折った後、意識的に指輪を見るようにしていたのだ。

黒白の組み合わせは深淵神教の好む色で、彼らの神が地獄と天国を繋いだという栄光を象徴している。

深淵神教の人間がここにいるのか。

それともたまたまこの場所に集まった少数派なのか?

カレンは知らないふりをして店内に入ったが、高身長の男が手を伸ばして彼女を止めた。

「そちらから来たの?」

眉をひそめながらカレンはその手を押しのけ答えた。

「ええ」

高身長の男はカレンの反応に笑い声を上げた。

「そちらの道は大丈夫だったのか?」

「ふん、トラックが横倒しになっていて車体を擦り傷つけられたわ。

どいて!」

高身長の男は手を引っ込めて小柄な男に言った。

「聞いたか?そこだよ。

我々は既に遅れているから早く行こう。

そうでないとメルクレ大司教に叱られるわ」

「あなたが時間を取らせたからこそ慌てるんだわ。

全てあなたのせいよ。

あとでメルクレ大司教に怒られたら『彼のせいで』と報告するわ」

「はいはい、行こうか」

二人は外に出た。

カレンはレストランに入りカウンターに立った。

「お客様、何をお取りしますか?」

最上級のセットメニュー(38レル)を見上げながらカレンは言った。

「そのセットを14個ください」

「分かりました。

合計532レルです」

**が支払いに不足していた。

カレンは口を開いた。

「500レルでいいわ」

レジ係は笑って頷いた。

「はい、お客様」

「申し訳ありません、お客様。

お注文いただいた量が多いため、材料を倉庫から補充するのに時間がかかります」

「構いませんよ。

まだ友人が来ていないので、到着したら始めましょう」

「了解です、お客様。

こちらが領収書です」

カルンは領収書を受け取り外を見やると、その背が高い男と背の低い男が自分の中古ボーンズ車に向かっていることに気づいた。

カルンはすぐにドアを開けて走り出した。

「ガソリン切れとエンジン故障を区別できないのかよ!馬鹿みたいだぜ、電線みたいな頭じゃねーか!俺たちがここまで押してきたのに」

「まあまあ、私は車の修理なんてできるわけないんだから普通じゃない?借りればいいさ。

このボーンズは最高だぜ、ほんとにお気に入りなんだよ。

見てごらん、中に可愛いネコちゃんがいるわね、黒猫が好きだわ。

あー、それにゴールデンレトリバーもいるわね、あれも大好きなのよ。

カフェで働いていた頃は、サービス生にこの色のセクシーな衣装を着てもらうようにいつも頼んでたんだ」

「そんな趣味には興味ない!」

「バキッ!」

「見てごらん、ドアが開いてるし鍵も回してある。

とりあえずこれで乗ればいいだろ」

ポー・ルは後席に跳ね上がった。

ゴールデンレトリバーはポー・ルを背中に庇い、牙を剥きながら喉から警告の唸り声を上げた。

「ふん、この犬めっちゃ怖がってるな。

毛並みが綺麗だぜ、肉も美味しそうだぜ。

ねえ、犬肉を食べた後にコーヒー三杯は飲める気がするんだよ」

「バカ!早く乗れ!」

背の低い男は運転席に乗り込んだ。

「おい、これは私の車だぞ!」

「当たり前さ、借りてすぐ返すからさ。

それにネコと犬も一緒にお預かりしてあげるわ」

背が高い男が副驾驶席に笑顔で座り込むと、最初の男はすぐにドアを閉めた。

「気をつけろ!」

「バキッ!」

カルンが銃を撃った。

二人の知らない男たちが自分の車を奪おうとしているし、車の中に弱い家族がいるとき、どうするか?

カルンの射撃技術はさすがに上手くないが、距離が近いため副驾驶席のガラスを貫いて背が高い男の肩を撃ち抜いた。

「くそっ!当たったぞ!」

背が高い男は肩を押さえながら車の後方に蹲んだ。

背の低い男はすぐに運転席の下に潜り込み、呪文を唱え始めた。

カルンが銃を構えて近づき、車内から呪文の詠唱が聞こえると、彼の心は逆に落ち着いた。

こういう状況は経験済みで、長い呪文が必要なのは弱い証拠だ。

カルンはその点では先達だった。

灰色の光の幕が窓に現れた瞬間、背の低い男は体勢を正し怒りの目つきでカルンを見据えながら次の術法を詠唱した。

「バキッ!バキッ!バキッ!」

カルンは三連射したが、灰色の光の幕に全て遮られていた。

これは秩序神教の守護壁のような防御魔法だった。



正当カレンが横身をかため、高身長の男に銃撃する準備をしていた時、小柄な男が両手を振ると、カレンの足元の道路から土が隆起し、その上に巨大な蛇が這い上がってきた。

カレンは銃で乱射したものの効果はなかった。

「くそっ!なんだこの状況は!」

カレンは驚きのあまり弾倉を空にした銃を投げ捨て、反対側の林へと走り出した。

その間も後ろを見ないように必死だった。

土でできた蛇は追跡を続けたが、程なく消えた。

明らかに小柄な男の能力は持続力に欠けていたからだ。

小柄な男はまず高身長の男の状態を確認した。

彼は瓶の中の液体を傷口に垂らすと、瞬時に凍結して出血を止めた。

「やっつけよう!」

高身長の男が瓶を地面に叩きつけて立ち上がり、カレンが逃げた方向へ向かって走り出した。

小柄な男は何か言いかけたものの、既に高身長の男が先を行っていたため、車から降りて追跡に加わった。

後部座席では、プーアルがゴールデンレトリバーの背中に顔を出すと、

「カレンさんも大喜びでしょうね」

と言った。

ゴールデンレトリバーは「ワン」と頷いた。



カレンは林に入り込んだものの深くは進まず、相手が追いついてこないことを確認した。

しばらく待つと高身長の男の姿が見えた。

彼もまたこちらを見ていたようだ。

「お前には償いをさせよう」

高身長の男が呪文を詠唱すると、灰色の炎の塊が彼の前に集まり、カレンへ向けて投げられた。

二人の間には多くの木々があったにもかかわらず、炎は障害物を避けるように飛んだ。

普通の人間に当たればすぐに燃えつき、身体は焦げ茶色に変化するが、衣服には痕跡は残らない。

カレンは動かずにいた。

炎の塊が近づくと、彼は逃げるためには左右から挟み込む形で分かれた。

「秩序——守壁!」

現在の彼は低級呪文を瞬発で使えるようになっていた。

黒い壁面が現れ、炎を受け止めると、爆散した炎が再び壁面に吸収されていった。

「オーダー神教!」

後ろから追ってきた小柄な男がその光景を見て驚いた。

彼は理解できなかった。

なぜオーダー神教の司祭が最初に拳銃で彼らを撃ち、召喚術を見せるやいきなり逃げ出したのか。

相手が「オーディンの栄誉」を唱えればこちらも「ダークネスの栄誉」と返せば済むはずなのに。

「なぜオーダー神教の司祭がここにいる!」

小柄な男は急いで重要なことに気づいた。

「すぐメルクリン大司祭に連絡を!」

高身長の男もカレンの術法に驚いていた。

普通の人間なら仕留められる相手でも、同じ神官であると気焰が沈んだ。

小柄な男の叫びを聞いた途端に後退り始めた。

カレンは小柄な男の足元から土でできた鳥が現れたことに気づき、彼は伝書鳩として使うつもりだったのだと悟った。



**(飛鳥)の霊性灌注を続けながら、カレンがこちらに向かってくる様子を見つめる小柄な男。

カレンの身に藍色の甲冑が現れた瞬間、その動きが止まった。

血赤色の曲刀が手に取られた時、彼の顔から驚愕の表情が消え去った。

「なぜ銃を使うんだ!」

叫びたい衝動を抑えながら、カレンは走り出す。

「止めろ!早く!」

男が叫ぶと同時に、巨漢が三重の土壁を唱じ始めた。

轟音と共に土壁が連続して崩れる中、海神甲冑(かいしんこうちゅう)に身を包んだカレンは無理矢理突破する。

実際には海神甲冑と暗月刀(あんげつとう)の敏捷性(じんぱくせい)が相乗効果で、上坂から下坂へ滑り込む速度は制御不能だった。

衝突による振動を完全に吸収する甲冑のおかげで、第三の土壁を突破した瞬間、巨漢の前に立つ。

剣術や刀法など構わず、眼前に斬りつけた。

赤い光線が巨漢の体を貫くと、彼は驚愕の表情で地面に散らばる自分の身体を見下ろす。

この光景さえもカレンには生理的不快感を覚えるほどだった。

死人慣れしているものの、新たな死の形態は葬儀社(そうぎしゃ)の客よりも衝撃的だった。

男が呆然と地面に座り込むと同時に土黄色の鳥が飛び立つ。

カレンはその上昇する鳥を見やると、右手の曲刀を鞭のように変化させた。

「バチ!」

音と共に鳥は空中で粉砕され、赤い砂が散る。

この技に満足しつつも、隊長(たいちょう)側の状況が気になった。

もし自分が予約したことで相手が情報を伝えられず釣り合わなかったら……。

男は絶望し、カレンに膝を下げる:

「どうか!大人!どうか許してください!」

カレンは彼を見やりながら視線を横向け、左手の曲刀で斬りつけた。

「プ!」

上半身が切り離され血飛沫(けみず)が飛び散る。

海神甲冑が即座に浄化し、カレン自身には付着しなかった。

この特性は彼にとって好ましかった。

洗い好きの性質と相容れたからだ。

装備が解かれる瞬間、暗月刀も消えた。

持続時間が短いため疲労感は軽微だった。

地面に広がる二つの血痕を見下ろし、カレンは眉をひそめる:

「つまり正統神教(せいぞんしんきょう)の審判官以下の段階なら、私は勝手に殺せるのか?」

この層の人間は術法が遅く、基本的には初級魔法しか使わず、かつて自分が複数同時に使う能力とは比べ物にならない。

海神甲冑と暗月刀で彼らの弱点を完全に掌握していた。



次の段階で、カルンはパヴァロ氏と無意識に比較した。

パヴァロ氏は戦闘に不向きだが、両手から放たれる炎が強い破壊力を備えている。

自分の海神の甲冑(かいしんのかちゅう)はその攻撃を耐えられるだろうか?

いいや、他の防御術で守りながら海神の甲冑は最終決戦時に消費するものだ。

パヴァロ氏に斬り込むチャンスはある。

現在の自分なら、審判官(さばきがん)を殺すことは可能なのか? カルンは確信できなかったが、焦らなかった。

なぜならアレン・エステートに戻れば、マク先生のような家族信仰体系三级(さんしゅう)で腕試しできるからだ。

結局カルンは感心した。

プーアとケビンが厳選したこの二つの術法は本当に実用的だった。

ためらいながらもカルンは腰を下ろし、二つに分かれた死体の服の破片の中を探り始めた。

三本の小瓶を取り出し(中身は不明)、いくつかの瓶は自分の曲刀で砕かれていた。

さらに四百枚以上の深淵券(じんけんけん)も見つけた。

カルンが両手を広げて詠唱した:

「秩序(ちいどく)-浄化!」

浄化の光が二つの死体にかかり、霊性を消し去った。

切り裂かれた状態で蘇る可能性はあったが、カルンは他の痕跡も残したくなかった。

彼らを殺すことに心理的負担はなかった。

ウィーン法では、目の前で私有財産を奪われた場合の正当防衛は許される。

さらに高身長の男が放った二つの炎玉(えんぎょく)なら普通の人間は焼死していたはずだ。

カルンはそこまで気取らないつもりだった。

「彼らを埋めないか?」

地面を足で踏みしめた。

春とはいえまだ寒いので土は固かった。

考えた末、カルンが立ち上がった時、彼の体に白い光が浮かび上がった:

「光明(こうみょう)-炎耀!」

炎玉が死体の間へと落ちると、即座に火が燃え上がり、周囲には及ばず。

瞬く間に二つの遺骸は黒炭となった。

「あいつらを浄化するならもっと早くやればよかったのに」

カルンは喪儀社(そうぎしゃ)の夜を思い出し、ニオ直属の秩序の鞭(ちいどく・べん)隊員が死体処理にした効率に比べて自分は未熟だと感じた。

車に戻ると、二人の警察官が自分の車前で立っていた。

「警官様、これが私の車です」カルンは言いながら車内を確認。

プーアとケビンが座っているのを見て安堵し、さらに続けた。

「警官様、先ほど二人が車を強奪しようとしたので銃撃して自衛しました。

弾薬を使い切った後彼らが追跡してきたので私はその林に逃げ込みました。

ここには多くの目撃者がいるはずです」

警察官はカルンを見つめながら尋ねた。

「話終わりですか?」

「はい」

「終わったら店内で食事をどうぞ」

「え?」

カルンが振り返ると、ニオが窓際の席に座っていた。



警官道「隊長が14食頼んだと言ったんですが、なぜ余分にしたのかと尋ねたら、貴方を待っていたからだと。

我々が約克城に異動してきたことを知らなかったので、編外のメンバーが増えたとは知りませんでした」

「初めまして、私はマロです。

彼はゼーマです」

同じ警服姿のゼーマがカレンに小声で尋ねる「隊長から渡された指輪もプラスチック製ですか?」

カレンが頷くと

ゼーマがため息をついて「これで私の心が安らぎました」

つまり、隊長が贈った指輪……全てプラスチック製だったのか?

「中に入りなさい。

隊長が待っています。

他の連中は深淵神教の連中に捕まった者を連行して帰りました。

この跡に気付きました」マロが先ほど土蛇が現れた場所の破損した路面と、カレンの車窓に銃弾が貫いた傷を指差す「あなたの車の損害賠償は手配します」

「ありがとうございます」

カレンがレストランに入ると、いくつかのテーブルには食事後の皿が未片付けのまま。

ニオの前に未開封のセットが置かれていた

「隊長」

カレンがニオに近づき座る

「食事を始めなさい」

「はい、隊長」

カレンがナイフとフォークを手にとりチキンを切り始める

ニオが10レアル紙幣3枚と硬貨2枚をテーブルに置きカレンの方向へ滑らせた「規則通り、仕事後の初食は私がご馳走します」

カレンが首を横に振る「店側が半額で提供してくれたので500レアルです」

「了解しました」

ニオが32レアルを受け取り戻しながら尋ねる「あの深淵神教の連中に追われていた二人は今どこですか?」

カレンがチキンを口に運び嚙みながら答える「全員死んでいます」

「あー」ニオがため息をつく「彼らを殺すのはやめればよかったのに」

カレンがナイフとフォークを置き「隊長、私は早とちりでした」

ニオが身を乗り出し笑う「死んだらそれでいい。

次からは生きているまま捕まえろ。

生きたままなら金券で人質交換できるから」

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