明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0182話「私は確かに天才だ」

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クンシーは車椅子に座りながらテーブルを叩きながら叫んだ。

「教会の葬儀屋は多いが、貴方の葬儀社には何が優位性がある?」

カルンは周囲を見回しながら笑みを浮かべた。

「団体割引で値下げできますよ。



「そうだ!」

「そうだ!」

カルンの適切な返答に全員から拍手が沸き起こった。

食事が次々と運ばれ、会話しながら食べ始めた。

大人数での宴会後は小グループ同士の交流が始まる。

この小集団は権力争いではなく趣味の違いで形成された雰囲気の良いコミュニティだった。

結算前、ネオが先に席を立ち、カルンに未開封のビール5本を持ってきて一緒にレジに向かった。

「未開封のビールが5本あります」

「承知しました。

お客様」

支払いを済ませた後、カルンはネオに尋ねた。

「隊長様、帰られるのですか?」

「イリーザと会うためにね。

任務終了後に必ず彼女を見に行く。

彼女も待っているわ。

貴方はどうですか?」

「ええ、そうです」

「姪妹たちを少々お待ちになってはいかがでしょう。

その場所は貴方に良い影響があるはずです」

「承知しました隊長様」

「私は先に失礼します」

ネオが焼肉店から出ていくと、すぐに夜の街路で姿が見えなくなった。

すると他の人々も個室から次々と出てくるようになり、次の行き先を話し合った。

姪妹がカルンの方へ近づいてきた。

「一緒に行きませんか?」

「はい」

「即答ですね」姪妹は驚いた様子だった。

姪妹のオープンカーに乗り込むと、カルンは最初に助手席に座ろうとしたが、グレイとヴァニーもこちらに向かってきたため後部座席を選んだ。

グレイが来てからカルンの隣に座り、二人とも膝を少しひいてみせる。

ヴァニーは運転席に戻り、カルンを見ながら尋ねた。

「狭いですか?」

「いいえ」

ヴァニーは笑った。

「VIP車両は管理所に返却済み。

任務時は申請が必要です」

「なるほど」

姪妹が運転し、約20分後、工場地帯に到着した。

そこには終業後の工場と深夜作業中の工場があった。

門番の巨漢が姪妹を見つけると慌てて挨拶してドアを開けた。

カルンも中に入ったが、その内部は喧騒だった。

ボクシングジムのような空間で多くの人々が訓練に励んでいた。

奇妙なことにその広い工場の一角には射撃場があり、銃器を扱う人々もいた。

原始的な武術と現代の火器が調和する不思議な光景だった。



皆が姵茖とヴァニーに頭を下げて挨拶し、誰も口説くことはできなかった。

二人はこの地帯の最強の団体のリーダーとして君臨していた。

姵茖が群衆を先導して奥へ進み、階段を下りた後で鉄格子を開けた。

内部には独立したエリアがあり、上階と同じレイアウトだった。

半分は射撃場、もう半分は格闘場となっていたが、広い空間にいるのは四人だけだ。

さらに、格闘場の収納庫には拳当てグローブだけでなく、種類豊富な冷兵器も並んでいた。

ヴァニーが口を開く。

「あなたの手枪は改造が必要だから今日は姵茖たちと戦術を練習する?もちろん、銃法を見学してもらってもいいわ」

「それなら他の武器でいいです」

「来い」グレイがカレンに声をかけた。

棚から槍を一本取り上げる。

「選んで」

カレンはあの夜の追跡でグレイが使っていた黒い槍を思い出すが、明らかにここにあるのは普通の鍛冶屋製で聖器とは無関係だった。

最初は曲刀を選ぼうと思ったが、躊躇して長剣を選んだ。

「上がれ」

グレイがリングに上がり、布で槍先を包んでいた。

カレンも長剣を持ってリングへ向かい、姵茖はビールの缶を持ちながら下から見守りつつ、「カレン、グレイとウェンデは当団体で隊長クラス以外最強だよ」と注意した。

カレンはあの夜の戦いで自分とグレイがそれぞれ一人ずつ目標を追って殺害し、他のメンバーはチームで協力していたことを思い出していた。

「術法は使えない」

グレイが告げた。

「それ以外なら何でもいい」

「了解です」

「始めるぞ」

グレイが近づき、カレンは膝を屈めて長剣を構えて突進した。

「バキッ!」

グレイは槍の穂先でカレンの剣を軽々と弾き、背中を向けて槍を後方に振った。

「バキッ!」

槍の穂がカレンの胸に当たり、彼女は数メートル飛ばされリングの縄へ身体を引っ掛けた後に床に転がり落ちた。

グレイがカレンを見つめながら笑う。

「あなたは正規の訓練を受けたことがないのか?」

続けてグレイは言った。

「いや、それどころか不完全な訓練さえ受けたこともないようだ」

「はい」

カレンは胸を撫でつつ立ち上がった。

「身体能力もまあ普通ね」グレイが続けた。

「マロのように陣法研究に没頭するか、ヴァニーのように銃術を極めるのも手よ。

近接戦闘なら積み重ねが必要だわ」

「検討します」

カレンは立ち上がった。

相手が自分を嘲っているわけではないと感じていた。

グレイの言葉は事実だったからだ。

身体能力に関しては、目覚め以来「カレン」のこの体を整えただけで、強化には限界があった。

苦行に耐えるのが嫌いなだけだった。



グレイが再び近づいてきた。

同じような動き、防御と銃撃の組み合わせでカレンはまた地面に転んだ。

このチャンスを活かして胸元にさらに一撃加えることもできたが、グレイは手を止めた。

「姵茖?」

グレイが姪子を見やった。

明らかにこの練習は姪子の提案だった。

姪子はヴァニの方へ視線を向けた。

ヴァニもそばに立っていた。

姪子はカレンの実力を見ていないからだ。

「これは訓練を超えた」とグレイが言った。

「どう向き合ったらいいのかさえ分からない」

ヴァニも困惑していた。

「術法を使えばいいかもしれない。

信頼してくれれば試してみる」

「承知しました」

カレンは受け入れた。

指導者がいるのに隠すのは不自然だし、このチームの雰囲気を信じていたからだ。

【暗月之刃】!

赤い模様がカレンの身体と剣に浮かび上がった。

グレイも黒い光を身に纏わせた。

そして再びカレンへ近づきかけたが、途中で足を止めた。

カレンの体には青い甲冑が現れた。

動く甲冑だった。

「もう二度やられたら歩けなくなる」

グレイは首を横に振った。

「攻撃中に霊性を分散して防御するのは愚かだ。

それは攻撃力を低下させ、最善の防御もできない。

戦況に応じて瞬時に切り替えるべきだ」

「分かりました」とカレンが真剣に頷いた。

本気で理解した様子だった。

しかしカレンは海神の甲冑を外さなかった。

あることをグレイには言いづらかったからだ。

それは自分の霊性が豊かすぎて、その分離など問題にならないということ。

正直に言えばグレイに殴り返されそうだった。

グレイもオフィーリアの実力を見たことがないため、カレンが使っている術法を知らないのは当然のことだ。

教会の仲間全員がホイフェンの知識を持つわけではないから。

グレイが再び進み寄ってきた。

今度はカレンがまず剣を構えなかった。

グレイの槍が先に動いた。

速度の助けを得てカレンは瞬時に剣を振るった。

「キン!」

しかしグレイの槍はカレンの剣を押し返した。

グレイは自分の普通の槍が力で包まれたはずなのに、溶け出すことに気づいた。

グレイは槍を引き抜こうとしたが、次の瞬間カレンは反転して槍を再び受け止め、体を後方に滑らせた。

剣と槍の擦り合わせから火花が散った;

グレイが近づくのを阻止するため、グレイはカレンに足で蹴りを試みた。

しかし甲冑は靴を吸い取り、衝撃力を伝えなかった。

距離を開けた。

背中向けていたカレンは右手剣を持ち、左手で槍を叩きつけると、剣が後方に飛び出しグレイの胸元に向けられた。

「ウム!」



グレイの胸元に輝くペンダントが緑色の光を放ち、長剣の攻撃を遮断した。

その隙にグレイは槍先を下ろし、カルンの肩口に軽く叩きつけていた。

「ドン!」

海神の甲冑(かいじんのかっちゅう)が防御力を発揮しても、カルンは全身が衝撃で震え、膝まずいてしまった。

グレイは距離を取って数歩後退した。

観客席ではヒーラーとヴァニーが顔を見合わせていた。

彼女たちは直感的にグレイが油断していたのだと悟りつつも、カルンもまた狼狽(ろうじゅう)していたことを感じ取っていた。

カルンは立ち上がると、グレイに先手を取って尋ねた。

「君は演技だったのか?」

「え?」

「面白いのか?」

「何を演じたんだ?」

「訓練したことがある」

「ない」

「それともあの術法の効果か?速度や攻撃力、防御力を上げることはできるが、連続技とその応用まで同時に向上させるのは不可能だろ」

「最後の一撃だったのか?」

「君は今習ったばかりなのか?」

「そうだ」

「そんな馬鹿な真似を信じると思うか?」

「本当だよ」

「では本気でやるから、怪我するかもしれないぞ」

「隊長が『近々重要な任務がある』と言っていた。

手加減してほしい」

グレイはそう言いながら、カルンに再び襲い掛かった。

次の交戦中、カルンの剣を弾き飛ばし、海神の甲冑(かいじんのかっちゅう)が三度槍で貫かれた瞬間、甲冑自体は破壊された。

しかしグレイは再攻撃せず、むしろ手を止めた。

「ずっと言ってきたように、攻撃時は全力で、防御時は全力で……」

カルンの海神の甲冑(かいじんのかっちゅう)が再び現れた。

「…………」グレイ

先ほどの甲冑の破壊は短時間の集中攻撃による負荷超過だったため、カルンの霊性エネルギー不足を示すものではないと気付いていた。

カルンは剣を拾い上げ、自分なりに構えたが、プロからは見られない素人っぽい構えだった。

「再来!」

その声はグレイから出た。

カルンが叫ぶことはなかった。

なぜなら彼はグレイの怒りが頂点に達していることを察知し、挑発する余裕はなかったからだ。

次の戦闘ではカルンも少し持ち堪えたものの、結局グレイが甲冑を二度槍で貫き破壊したところで終了した。

そしてまた海神の甲冑(かいじんのかっちゅう)が現れた。

「再来!」

…………

「再来!」

…………

「再来!」

………………

グレイは繰り返し破壊される甲冑を自分への挑戦と感じていた。

しかし次第に、眼前の新隊員の驚異的な霊性蓄積(りょうせいちゅうせき)に気付かざるを得なくなった。

次の攻撃で再び甲冑を破壊したとき、グレイは初めて疲れを感じた。

卵の殻を砕くのは簡単だが、剥がすのが難しいように、彼はカルンに対して殻を剥ぐ作業を続けていたのだ。



彼もまた、向かいの新入隊員が自分を傷つけないという確信から完全な防御を選ばず積極的に攻撃に出てきたことを理解していた。

もし防御を選んでいればより長く持ち堪えられただろうにもかかわらず、その隙間を突いて破甲する手順は容易だった。

重要なのは、何度も交戦の度にグレイが過去に使った技を自分に向けて繰り出すのを目撃したことだ。

単なる模倣ではなく、招式のタイミングや武器特性(槍と剣の属性変換)を理解した上で応用している点が特徴的だった。

グレイは唇を噛み締め唾を飲み下す。

現在の状況は二つの可能性しかなかった。

相手がずっと隠していたトリックで自分を欺くのか、それとも本当に学習中なのか。

その驚異的な習得速度に「干!」

と舌打ちした。

「疲れたか?休憩する?」

ヴァニーが声をかける。

グレイは槍を下ろそうとしたが、カルンの返答「まだ大丈夫です」で止まった。

「……」グレイは黙ったまま再び戦闘が始まった。

二度目の破甲に至りグレイの腕が麻痺し始める。

彼にとっては不均衡な戦いだった。

力を制御しつつも攻撃を維持する必要があったからだ。

相手の甲冑を破る難易度は次第に増していた。

「疲れたか?」

カルンが叫んだ。

グレイは胸を大きく膨らませた。

「ふぅ……」

「最後三回でいいかな?」

「……」グレイは黙ったまま倒数第三次の戦闘に入った。

約五分間の膠着状態。

双方が互角に攻防を繰り返す中、グレイはついに力を解放して槍を突き出した。

カルンの防御を突破し海神の甲冑を破る瞬間だった。

しかし次の瞬間、カルンが再び甲冑で覆われた時、グレイの頭が眩暈した。

倒数第二次戦闘では約五分間膠着。

グレイが三度槍を振り回すもカルンは防御を固く守り続けた。

最後にグレイの槍が相手甲冑に押し付けられ、カルン自ら剣を上げて敗北を宣言した。

これは初めてグレイが破甲できなかった瞬間だった。

最終戦では双方が十時間近くも激闘を繰り返した。

グレイは全力で槍を振るいながらもエネルギーが枯渇し、カルンは過去に学んだ技と経験を組み合わせて堅実に戦った。

相手の弱点を磨耗させる卑怯な戦法だった。

最後の一撃ではグレイの槍がエネルギー保護層を失い、カルンの一撃を受けた瞬間、反射的に腕で受け止めた。



カレンが腕をひねると剣の刃は剣面に変わった。

「バキッ!」

グレイは全身を引きずり倒され、接触した場所には焼け焦げた跡があった。

カレンは手にしていた長剣を投げ捨てて術を解除し、近づいてきて深々と謝罪した:

「ごめんなさい ごめんなさい」

グレイはリングの上で息を吐きながら言った:

「大丈夫よ。

あなたがまだ『引き留める』方法を知らないからね」

ヴァニーとヒーラーが近づく。

ヴァニーはカレンの擦り傷を治療し、ヒーラーはグレイに精力回復薬を与えた。

カレンが処理を終えると、座っているグレイの前に真剣に頭を下げた:

「ありがとうございます グレイ様」

「私は自分が天才だと思っていた。

でも隊長と出会ってからは、隊長こそ本物だと気づいた。

そしてあなたと知り合った今、『天才』という言葉の意味が変わったわ」

「本当に感謝しています グレイ様」

グレイは白目を剥いて言った:

「明日の夜 同じ場所でね」

カレンは即座に気を引き締めながら答えた:

「はい グレイ様」

グレイが立ち上がり「今日は疲れたから帰るわ」と去ると、ヴァニーはカレンを見て尋ねた:

「グレイはプライドが高いのよ。

隊長以外には目もくれないわ。

でも隊長に直接頼んだからこそ、 마지かわりにあなたを指導することにしたの」

ヒーラーがカレンの前に近づき深呼吸する。

カレンは身を避けながら言った:

「汗臭いだけよ」

「いいえ それは天才の匂いよ」

「私は天才じゃないわ」

この日、暗月の剣と海神の甲冑を使う際に感じた家族信仰体系の力が再び動き出した。

その力はカレンの血脈内でしか働かず、他人には検知できない。

同じ光景は初めてこれらの術を習得した時にも起こった。

だからこそ、このディス・インメレーズ家伝来の信仰体系は、困難な学習が必要な時にのみ発動し、カレンの学びと理解を助けてくれるのだと悟った。

その度に、祖母が背後に立っているような気がした。

そのためカレンは自分が不正をしていると思い、他人から天才呼ばれるのは照れくさかった。

「ふーん 謙遜癖出たわ」

ヴァニーが冗談を言った。

カレンは答えた:

「本気よ。

私は天才じゃない。

ただ遺伝子がいいだけ」

「おーい!」

ヒーラーも応じる。

ヴァニーが尋ねた:

「どの天才でも遺伝子がいいんじゃない?」

あら、そうよね

カレンは突然ヴァニーの言葉に共感し、気付いた。

血筋による優位性を『不正』と呼ぶなら、信仰体系を持つ一族も全員不正者になるのか。

神々の力を借りる司祭たちも同様ではないか。

その瞬間カレンは全てが明確になり、安堵したように微笑んだ:

「あなた達の言う通りよ 私は天才なの」

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