明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0224話「神々の賭け」

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カレンが墓園に来た時、老サマンのための最後の晩餐を作ることを宣言していた。

しかしデリウスの来訪で、本当に最後の晩餐となった。

カレンはわざと豪華にすることを避けた。

毛豆チキン、宮保鶏丁、魚香茄子、雑炊汁——シンプルな三菜一湯。

小テーブルが外階段に置かれ、アルフレッドが椅子と食器を並べていた。

アルフレッドは既にカレンから箸の使い方を習得し、老サマンも前回の鍋料理体験で慣れていた。

三人がテーブルに座り、静かに食事を進める。

誰も口を開かない。

しかし葬儀屋と墓園管理という立場の違いもあり、死生観は既に受け入れていたため、沈痛な雰囲気ではなく穏やかな時間が流れた。

食事が終わると老サマンが掃帚を持って墓園へ向かう準備をした。

アルフレッドが声をかけた。

「明日朝、私がお迎えに上がりますので」

「はい」

老サマンが頷き、墓園の奥深くに姿を消す。

アルフレッドが食器を片付け、テーブルと椅子を元に戻し、外側の掃除も済ませた後、カレンのそばへ近づいた。

「帰ろうか」カレンは車の副席に座った。

アルフレッドが運転しながら言った。

「おやじさん、葬儀の準備は整いました。

ご安心を」

「何も心配ないよ」

アルフレッドが手掛ける仕事なら、十分満点で十二分と言える。

夜九時、喪儀社に戻ると、ピックが鼾をかきながら待機していた。

パヴァロ氏がほとんど現れなくなった後、カレンが実質的にこの会社の責任者となったため、この二人は以前より忙しく疲れも増したが、待遇向上でモチベーション維持できていた。

「ああ、アルフレッド」

「おやじさん、何でしょう?」

「黒市でポイント券をレルに換金して家へ送り、ローン返済を進めてくれ」

「承知しました」

「私は部屋に戻るよ」

「おやじさん、お休みなさい」

カレンが寝室のドアを開けると、自宅の猫と犬が冷蔵庫周りでうろうろしていた。

「研究は終わったのか?」

「ああ、今日は帰ってきたのが早いね。

良い知らせがあるぞ。

この冷蔵庫をアップグレードせずに完全に制御できたんだ。

クリスタルを入れた直後から動いている」

「本当か?」

カレンが冷蔵庫を開けると中央のトレイが取り外されていた。

同時に冷気が流れ込んできた。

「試してみろよ」プールが言った。

「ワン!」

ケビンが尻尾を振って飛び跳ねた。

カレンが剣箱からアレウスの剣を取り出し、垂直に冷蔵庫の中に立てて入れるとドアを閉めた。

プールはカレンの肩に乗った。

「次はこの剣を冷蔵庫から手元へ呼び出す。

僕とバカ犬が三つの方法で準備したぞ」

「最初の方法は、フルートです。

フルート自体に陣法が組み込まれているので、そこへ霊力エネルギーを流し込んでから吹き奏でれば、内部の陣法が起動して眼前に星芒が現れ、その剣が送り込まれます」

「だから戦闘前に私はまずフルートを取り出して曲を吹くのか?」

「どう見ても恥ずかしいだろう」

「少しはそう思う」

「それどころか大したことだ。

この方法を使うと相手を笑わせて気を緩ませられる効果はあるが、実際に使う時の醜さはたまらない。

だから二番目の方法としてパイプスモーキングがある。

同じように霊力エネルギーを注入してからタバコの葉を燃やし始めると星芒が現れ、その剣が来ます」

カルンが言った「パイプの方がマシだね」

「そうだね私もそう思う」

「でも戦闘前に相手に待ってもらう必要があるのか?私はまずタバコを点火するの?」

ポウルが冗談めかして「あなたはタバコを吸いながら相手を襲うべきだよ」と言った

「あなたの言う通り、パイプを持って他人にタバコを配るようなものか?」

ポウルが首を傾げて「まあ少し変な感じかもしれないね」

「三つ目の方法について話そう」

フルートとパイプスモーキングは老サマンからもらった「開け」の第一段階だ。

三つ目はポウルとケビンが自分たちのために特別に設計したものだった。

この装置の難しさは冷蔵庫の中にあるもの全般にあり、「開け」自体の難易度はそれほど高くない

「うむ、三つ目の方法はあなた専用に作った」

「ワン!」

「もちろんバカ犬が大活躍だよ。

私は気づいたんだ、このバカ犬はこういうことに精通しているようだ」

「ワン!」

ポウルの褒め言葉を聞いたケビンは珍しく尻尾を振り始めた

ポウルが皮肉を込めて「彼女たちに手作り品を作り続けたんだろうな、ずっと作って送って追求し続けても返報されないから、いつしか上達したんじゃないかな」と言った

「……」ケビンは黙っていた

カルンがケビンの無毛の頭を撫でながら「アルフレードに生え際用の育毛剤を買ってこい。

それか闇市場で髪の毛を増やす薬があるかもしれない」

カルンの気遣いを感じたケビンはすぐに笑顔に戻った

ポウルが爪で冷蔵庫の上部に指差した「そこにある箱を持ってこい」

カルンが金属製の箱を取り出し開けると、中には十二個の青い小玉が入っていた。

ビー玉と同じ大きさで手に取ると冷たい感触があった

「これは陣法玉だ。

バカ犬はフルート内の陣法を分解してその模様を再現したんだ。

使い方は簡単、霊力エネルギーを入れてから玉を捏ねるだけで自動的に陣が浮かび上がる

この玉の欠点は作成難易度が高いことと維持時間が短いことだが、あなたには問題ない

価格も高くなく闇市場で一個50円だ。

ただし製作コストは犬食料程度」

「試してみよう」カルンが一つの玉を手に取った「外で試した方がいいかもしれない。

3050の秩序券を使うなら、部屋の中で使うのは無駄すぎるように思う」



「うん、当然、動きを考えるのもいいわね」

カレンが一粒の珠を持ち庭に出ると、ブルースは肩から降りてケビンの背中に座った。

「動きは考えた?」

ブルースが尋ねた。

カレンが頷くとまず一点の霊力エネルギーを珠に注ぎ込み熱を感じたらしく、カレンは片膝をついて掌で地面を叩いた。

見かけは単なる片手での叩きつけだった。

「バキッ!」

清澄な音と共にブルーの星芒がカレンの掌下から現れるとアレウスの剣の柄がその中から顔を出し、カレンは柄を掴んで剣全体を取り出した。

同時に立ち上がった。

「うん、流れるし迫力もあるわね」

ブルースが評価する。

「ワン!」

ケビンも頷いた。

「もし私が陣法や結界がある場所にいても伝送できる?」

カレンが尋ねた。

「ワン!ワン!ワン!ワン!」

「バカ犬は問題ないと言っているわ。

これは空間レベルが高いから瞬時に空間を引き裂ける。

特定の封鎖用の陣法や結界でなければ、この剣をあなたに伝送できるわ。

でもその場合、陣法と結界の維持者に反応が来るわ」

「うん、分かったわ」

カレンはブルースとケビンを見た。

「最近お疲れさまね」

「苦労ないわよ。

私たちも好きだし、あなたが家に持ち帰るポイント券が多いからラジオ妖精さんもかなり贅沢になって材料の供給も豊富で、この感じは最高よ」

「ワン!」

「さて、休みなさい。

明日サマンさんの葬儀だわ」

「そのおじいちゃんね?」

「うん」

「あの老人が死んだのは残念だったわ。

バカ犬はもしこの古びた冷蔵庫を一人で作ったなら、空間の力に対する理解と掌握のレベルが高いと言っているわ」

「あの方は自分で生きたいと思わなかったから仕方ないわ」

カレンはまず洗面所でシャワーを浴びてベッドに寝そべるとブルースが胸の上に這い上がり猫の爪を丸めてカレンを見た。

「どうしたの?」

「うん、ちょっと頼みごとがあるのよ」

「いいわ」

「ヴォルス家のあの子に頼んで欲しいの。

私とケビンそれぞれに人形傀儡を作ってもらえないかしら」

「人形傀儡?」

「ええ、特別な素材は不要で使えるものならいいわね。

私の考えでは五千ポイント券分ならかなり良いものが作れると思うわ」

「アルフレッドさんに頼んでみようか」

「いや、あなたが直接行った方がいいわ。

ラジオ妖精さんが行くと五千ポイント券しか使えないのよ。

あなたが行くなら上限なしよ」

「分かりました。

サマンさんの葬儀を済ませたら陶芸館に行って聞いてみましょう」

カレンは頷いた。

家の中のペット猫と犬が「人間になりたい」というリクエストを拒否できないからだ。

「ではおやすみなさい、わが可愛いカレンちゃん。

ほら、枕元に来て私の猫の手で布団をちょっと上げてあげるわ」ブルースはカレンの枕元に近づき掌で軽く布団を上げた。



フロアマットの上でカレンは深く伸びをした。

七時半、まだ朝食前の時間帯なのに、この日は特別に腹が減っている気がしない。

顔を洗いながら鏡を見ると、昨日の睡眠不足で頬がこけていた。

台所へ向かうと、冷蔵庫から取り出した野菜を切る音が聞こえた。

「お前も一皿? いや、二皿」

カレンは振り返り、老サマンのスーツ姿に驚いた。

紺色のジャケットにネクタイ、整った髭と髪型、薄化粧で年相応の顔つきをしている。

「レック夫人の技術は上手いね」

「そうさ。

彼女が生者にメイクするなんて思ってなかったんだよ。

でも大丈夫だったみたいだな」

「死人はみんな同じだからさ」

「でも私は後頭部に釘を打つ提案を断った」

「痛いのが嫌いなの?」

「老人のしわは歳月の贈り物なんだ」

「その台詞は女性に向けるべきだ。

彼女たちなら喜んで受け取るだろうよ」

カレンは大きな鍋で麺を茹で、巨大な丼に盛り付けた。

二人が普通サイズの碗から取り分ける。

食事中に術法の手帖を開きながら、カレンはページをめくる動作を続けている。

「何を見ているんだ?」

「私が学べそうな術法のリストだよ」

「そんなに必死なのか?」

「いや、ただ習慣的に食べ物と何か別のことに集中するだけさ」

「食事中に気を散らすのは食物への冒涜だぞ」老サマンが指摘した

カレンは頷き、手帖を閉じた。

「では本日の死者を敬う」

カレンは二杯目を飲み、スープを全て老サマンに回した。

彼は麺を口に入れる度に顔を膨らませる。

「この味付けは最高だ。

ピリ辛の唐辛子も良い仕事をしている」

「でも注意しておけよ。

今夜の葬儀で消化不良が起こったら、棺桶が汚れるんだから」

老サマンの表情が険しくなった。

ようやく問題の重大さに気付いたようだ。

シリーが台所に入り、食器を片付けながら笑顔で尋ねた。

「お嬢さん、今日は店が開いているんですか?」

彼女が引っ越してからずっと休業中だったため、最初は夜中に外食に出かけるのだと誤解していたらしい。

「うん、改装後の初日オープンだよ」

「遺体はどこにいるの? 私がレックさんのスタジオ前を通った時、そこは空いていたわ」

「私」

シリーが老サマンとカレンを見やると、カレンが頷く。

彼女は笑顔を保ちながら洗い場へ向かった。

カレンは書斎に戻ろうとしたが、老サマンも椅子を持って追ってきた。

「葬儀は午後二時開始だよ」老サマンが椅子を引き出す

「あと三時間ほどあるから、庭の花々を楽しむのもいいかもしれない」

カレンは本棚から一冊を取り出し、机に座った。

老サマンが隣に寄り添う。

「お前もここでお茶でも飲むのか?」

「いや、たまには休日だよ」

「はい」

「見に行きたいわ」

「他人の部屋に入ることというのは非常に失礼な行為です」

「貴方の寝室には主がいないでしょう」老サマンが立ち上がり、書斎と寝室を隔てるドアを開けて中に入った

カルンは止めなかった。

手にした本《春に貴方を忘れました》をめくる

これは恋愛の外見でミステリ内包の作品だ。

犯人は作者本人である

はい、作者自身が書いた「回想録」で、彼が妻との関係が崩壊し殺意を持ち、結局妻を殺して遺体を処分した過程を描いている

当時は証拠不十分のため裁判所は有罪としなかったが七年后作者がこの本を発表。

警察は書中記載の埋葬場所に基づき犯人を逮捕し無期懲役となった

ある物語は結末が明かされると味気ないものもある

しかしまたある物語は結末が明かされているからこそ面白い場合もある

カルンはページをめくる。

老サマンが寝室から出てきて再びカルンの前に座った

「回転しているわね」老サマンが言った「私は手伝わないと回転しないと思っていたのに、どうやら私の心配は無駄だったようだ」

カルンは本を置き時計を見た。

八時半だった

「貴方は私に朝の時間を台無しにしたと感じているのかな?」

老サマンが尋ねた

「少しは」

「死ぬ前に貴方が一瞬でも私のために時間を割いてくれないのか?」

「私は昨日の夕食で感情を吐き出した。

今はただ淡然としている。

貴方から何か傷つけるような感情を引き出そうとするなら、まずはキッチンに行って昼食用の玉ねぎを探してきてください」

アルフレッドが書斎のドアを開けて入ってきた。

カルンの前に氷水を置き老サマンにコーヒーを手渡す

老サマンは一口飲んで言った「私は神子が彼の息子であるとは思いもよらなかった」

カルンは急に何かを思い出したように尋ねた「貴方方は教尊様と会ったことがありますか?」

「会いました」

「ああ、よかった」カルンが笑った

「どういう意味ですか?」

「私は貴方が『教尊様、あなたは彼の息子だとは思いもよらなかった』と言いたかったのを心配していたのです」

「教尊様は外見では信使のマントを着ていて他人の視線を遮断できる。

私は教尊様の本質的な姿を見たことはありません」

「ああ、そういうことか」

老サマンが足を組んで言った「今回のパミレース教と秩序神教の提携は教尊様の支持なしには成立しなかったはず。

教尊様の前に信使空間で自身を封印した長老がいて、後ろに神子がいる。

その中間にある教尊様が清廉潔白であるとは思えない」

「そうなのか……それは分かりませんね」

老サマンが首をかしげて言った「知りたくもないわ。

もし教尊様も汚いのなら私は生まれた時から死ぬべきだったかもしれない!ははは!」

「ははは」

カルンも笑った

しばらくすると、カルンが手にしていた本を置きながら尋ねた。

「ところで、貴方様は corpses を保存するのに適した道具をご存知ですか?」

「お前、葬儀屋のくせにそんなこと聞いてやがるか?」

「私の言う『保存』は、屍体内の霊性エネルギーまで完全に封じ込めるという意味です。



「空間聖器なら可能だが難易度も高く、貴方様の秩序神教第一騎士団は皆そのような棺材を使っている筈だ」

「しかし私は購入できない」

ポイントショップには売っていない、なぜならば各教会では司祭の屍体を回収するのが基本だから明示的に販売されていない

闇市場ではあるもののカルンは効果に不安を感じていた

「貴方様がその棺材を必要とする理由は? 今すぐ私を葬るわけにはいかないし、それを作るにも時間がかかる」

「私はこれからポイント決済の葬儀業を始めたいと考えている。

貴方様は私の開店初日のお客様です」

「理屈上は割引サービスが適用される筈だが」

「私は貴方様にポイントも支払っていません」

「私がお与えするものはポイントで購入できないものだ。

あの神子様が昨日までわざわざ私の門前で跪いていたのは、その理由を知っているからだろう」

「ははあん、確かに私は得した側です」

「よし、製作図と埋め込み魔法陣の設計図をお渡しする。

貴方様が冷蔵庫の運転に人間を雇えるなら、それらを作成させる技術者も探せば見つかる筈だ

さて、幾口必要ですか?」

「特に指定は無いです」

「一口なら問題ないが、複数口が必要な場合は棺材のデザインと配置を空間魔法陣で組み合わせる必要がある。

これにより屍体内の霊性の散逸を防ぎつつ温養効果も得られる」

「それならば十二口買わないと損です」

「その通りだ。

棺材の設計図だけでなく、私が持つ空間魔法陣の設計図も手に入れることが出来る。

貴方様は幾口必要ですか? 現在すぐ設計を始めよう」

カルンがテーブルにあった氷水を手に取り一口飲んだ

「十二」

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