規格外の教室

到冠

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規格外の乙女たちと、記録係の役割

電脳空間での疑似体験

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中等部搾乳室での絶望的な清掃作業から一夜明け、僕は全身の痛みにうめきながら目を覚ました。
昨日の記憶が鮮明に蘇る。
スクレーパーを握りしめ、床にこびりついた乳白色の分泌物を剥がし取った時の、あの不快な音と感触。
そして、何時間もの労力を嘲笑うかのように、高橋唯の胸から噴き出した乳汁の奔流。
それは、もはやシャワーなどではなかった。
水道管が破裂したかのような、圧倒的な生命力の奔流だった。
その奔流に飲み込まれた瞬間、僕の心は完全に折れてしまった。

僕が搾乳室の惨状を見て立ち尽くしていると、搾乳室の扉が開き、見慣れた顔が入ってきた。

「日向くん、大丈夫かい?」

そこに立っていたのは、僕と同年代くらいの男子生徒、高等部の記録係である日野聡だった 。
僕は、彼が立っていることに、一瞬、現実感が掴めなかった。
日野さんは、僕の疲労困憊の顔を見て、眉間に深い皺を寄せた。

「…日野さん…」

僕は、か細い声で彼の名前を呼んだ。

「うっ…うう…」

僕は、嗚咽を漏らしながら、その場に崩れ落ちた。
僕と同い年か、年下の女の子の「生理現象」とも言える、女の子達からするとなんともない日常に、翻弄されてしまう自分が情けなくなったんだ。
日野さんは、何も言わずに僕の隣にしゃがみ込み、背中を優しくさすってくれた。

「大丈夫だよ、日向くん。みんな、最初はそうなるんだ」

僕と同じ苦しみを経験した、ただ一人の理解者が、今、僕の目の前にいる。
その事実に、僕は深い安堵を覚えた。

「もう限界だろう? 清掃は僕が代わってやるから、日向くんは僕についてきてくれ。君に、見せたいものがあるんだ」

日野さんの言葉に、僕はただ頷くことしかできなかった。
僕は、ふらふらと彼の後をついていった。

向かった先は、校舎の一角にある、薄暗い部屋だった。
部屋の扉には、何も書かれていない。
日野さんは、扉の鍵を開け、僕を中へと招き入れた。

部屋の中は、まるで近未来の科学研究室のようだった。
中央には、いくつものケーブルが繋がれた、奇妙な形状の椅子が置かれている。
そして、その椅子の隣には、僕の身長ほどの高さの、全身を覆うスーツが吊るされていた。

「ここは…?」

「ここは、電脳空間体験室だ。君も知っているだろう? 男子生徒の最も重要な役割は、女子生徒たちの身体を理解することだ。しかし、数値だけでは、彼女たちの苦しみや、身体の重さを理解することはできない。だから、僕たちはこのVRスーツを使い、彼女たちの身体感覚を疑似体験するんだ」

日野さんの言葉に、僕は驚きを隠せない。
男子生徒は、この体験を通じて、女子生徒への深い共感と尊敬を抱くようになるのだという 。

「このスーツは、女子生徒の身体のデータを基に、その重さや、乳腺の張り、そして、それによって引き起こされる身体の痛みなどを、詳細に再現することができる。君が今、絶望している清掃作業も、この体験を経れば、彼女たちへの深い共感へと変わるかもしれない」

日野さんは、そう言って、僕にVRスーツを差し出した。
僕は、少し戸惑いながらも、そのスーツに袖を通した。
スーツは、僕の身体にぴったりとフィットし、全身に無数のセンサーが貼り付いているのが分かった。

日野さんは、僕にVRゴーグルを装着させると、椅子に座るように促した。

「さあ、日向くん。これから君に体験してもらうのは、君のクラスメイト、青山莉子さんの身体感覚だ。君が初めて計測した、Wカップの彼女の身体感覚を、君はこれから体験するんだ」

日野さんの言葉に、僕は唾を飲み込んだ。
青山さんの、僕の常識を遥かに超える巨大な胸。
あの胸の重さを、僕はこれから体験するのだ。

日野さんがスイッチを入れると、一瞬の暗転の後、VRゴーグルの中に、学校の教室が広がった。

しかし、それらの視覚情報よりも先に、僕の五感を支配したのは、あまりにも強烈な、現実にはありえない「重さ」だった。

「うっ…なんだこれ…」

僕は思わずうめき声をあげた。
胸のあたりから、文字通り、鉛のような重みが全身を圧迫する。
それは、今まで感じたことのない、内側から身体を押し潰されるような、いや、内側から身体を形成しているものが、重力に抗いきれず、僕の身体全体にのしかかってくるような感覚だった。

見下げてみると、視界に入ったのは、僕の常識を遥かに超える、巨大すぎる胸だった。
制服の生地を突き破りそうなほどの膨らみ。
そのあまりの大きさに、僕は息をのんだ。
つま先なんて見える気配すらない。
僕の視界は、眼前に広がる、途方もない膨らみによって完全に遮られていた。

さらに、胸のあたりから、ただの重さだけではない、鉛のような圧迫感が全身を襲う。
立つことすら困難で、僕は、その場に崩れ落ちるように膝をついた。
それは、僕の身体のコントロールを完全に奪う、圧倒的な重みだった。

「これが…青山さんの胸の重さ…?」

僕が今、体験しているのは、青山莉子の身体感覚をデータ化したものだった。
彼女が日常的に感じている、胸の重さ、そしてそれによってかかる背中や腰への負担を、僕は今、初めて知った。
重さに耐えきれず、僕は思わず手で胸を支えようとする。
制服の上から、僕自身の両手が、その巨大な質量を包み込む。
しかし、それは電脳空間の中では意味をなさなかった。
僕の手が触れた胸は、ただの視覚情報でしかなく、物理的な質量は、僕自身の身体に、依然として鉛のようにのしかかり続けていた。

「この重さで、彼女たちは毎日生活してるのか…」

僕の身体は、その重みに耐えきれず、激しく震えていた。
背中には、慢性的な肩こりのような痛みが、そして腰には、鈍い重みが常にのしかかっている。
それは、まるで、僕の身体に常に大きな荷物を背負わされているような感覚だった。

さらに、VRスーツからは、乳腺が張る不快感や痛みに近い感覚が伝わってきた。
それは、ただ重いだけではない。
乳腺が内側から突き上げるような、強い不快感だった。
まるで、身体の中で常に何かが生成され続け、それが僕の身体を内側から破壊しようとしているような、そんな恐怖さえ感じた。

「これが…成長の証…」

青山さんは、この不快感すらも「成長の証」として受け入れていると話していた。
僕が体験しているのは、彼女たちの日常だ。
彼女たちは、この重みと不快感に耐えながら、笑顔で学校生活を送っているのだ。
その事実に、僕はただただ圧倒されるばかりだった。

僕は、VRゴーグルの中で、青山さんの部屋の中を、震える足で歩き回ろうとした。
しかし、一歩足を踏み出すたびに、胸の重みが身体を揺さぶり、バランスを崩しそうになる。
それは、まるで、身体の重心が、僕の意志とは無関係に、前へ前へと引っ張られているような感覚だった。

歩くたびに、胸全体が大きく揺れ、その重みが全身に衝撃を与えた。
その衝撃は、僕の頭の中にまで響き、軽いめまいさえ感じた。
歩くだけで、これほどの苦痛と労力が伴うなんて、僕は想像もしていなかった。

僕は、部屋の隅に置かれた椅子に座り込み、目を閉じた。
僕の頭の中には、青山さんの、あの誇らしげな笑顔が浮かび上がった。
彼女たちは、この苦痛を、この重みを、決して弱さとは捉えていない。
それは、彼女たちが持つ、圧倒的な強さの象徴なのだ。

僕は、VRゴーグルの中で、しばらくの間、目を閉じたまま、青山さんの身体感覚と向き合い続けた。
彼女が朝起きてから、夜寝るまでの間、常に感じているであろうこの重みと不快感。
それが、彼女たちの日常なのだ。
その事実に、僕の胸は、締め付けられるような痛みを感じた。
それは、彼女たちへの深い共感と、彼女たちの強さに対する、僕自身の無力感からくる痛みだった。

僕は、VRゴーグルの中で、ゆっくりと目を開けた。
そこには、相変わらず青山さんの部屋が広がっている。
僕は、自分の身体にのしかかる重みを感じながら、ゆっくりと立ち上がった。
そして、部屋の中を、ゆっくりと歩き始めた。
一歩、また一歩。
その一歩一歩が、僕にとっては、これまで経験したことのないほど、重く、困難なものだった。

しかし、僕は歩き続けた。
それは、ただ歩くためではない。
それは、僕が、彼女たちの世界を、彼女たちの目線で、理解するための、最初の一歩だった。

僕は、VRゴーグルの中で、窓の外を眺めた。
そこには、バーチャルな校庭が広がっている。
校庭では、女子生徒たちが、遊びまわっている。
その姿は、僕の視点から見ると、彼女たちの身体にのしかかる、途方もない重みなど、微塵も感じさせない。
むしろ、彼女たちは、その重みを、まるで身体の一部であるかのように、完全にコントロールしているように見えた。

その光景を見て、僕は改めて、彼女たちの身体能力と精神的な強さに、圧倒されるばかりだった。
僕がVRスーツを着て、歩くだけで精一杯になっているというのに、彼女たちは、この重みの中で、成人男性を遥かに超える筋力と、類稀なるバランス感覚を身につけているのだ。

僕は、VRゴーグルの中で、部屋の隅に置かれた鏡を覗き込んだ。
鏡の中に映っていたのは、僕の身体、しかし、その身体に付随する、途方もない胸。
それは、僕の知る僕自身の姿ではなかった。
それは、僕が、彼女たちの世界に踏み込むための、最初の試練だった。

僕は、鏡の中に映る自分の姿をじっと見つめた。
そして、その姿の中に、僕は、これまで僕が感じてきた無力感や、絶望とは全く違う、何かを感じ始めた。
それは、この身体を持つことの、途方もない「意味」だった。

この身体は、ただの重荷ではない。
それは、この世界を生きるための、彼女たち自身の「力」なのだ。
この身体があるからこそ、彼女たちは、成人男性を遥かに超える筋力を身につけ、独特の知恵を育み、そして何よりも、この困難な運命を「成長の証」として受け入れる、圧倒的な精神的な強さを手に入れているのだ。

僕は、VRゴーグルの中で、鏡の中の自分に向かって、ゆっくりと微笑んだ。
それは、これまでの僕の笑顔とは全く違う、何かを悟ったような、静かで、力強い笑顔だった。

僕は、VRスーツを外してもらった。
汗だくになりながらスーツを脱いだ僕は、全身の力が抜けたような感覚に陥った。
これまではただ「大きい胸」としか認識していなかったが、電脳空間での体験を通じて、それがどれほどの重みと負担を伴うものなのかを、身をもって知った。

「…数値で見るのと、全然違う…」

僕は、震える声でそう呟いた。日野さんは、僕の言葉を聞いて、静かに頷いた。

「だろう? 僕も、初めて体験した時は、同じように戸惑ったよ。でも、この体験を経たことで、僕は彼女たちのことを、本当に尊敬できるようになったんだ」

日野さんの言葉は、僕の心に深く響いた。
これまでは、ただの「サポート」対象としてしか見ていなかった女子生徒たちへの見方が、この電脳空間での体験を通じて、根本から変わった。
それは、単なる「サポート」対象としてではなく、圧倒的な生命力と精神的な強さを持った存在としての、深い共感と尊敬へと変わっていった。

僕は、日野さんに深々と頭を下げた。

「日野さん、ありがとうございます。僕…僕、頑張ります」

日野さんは、僕の言葉を聞いて、優しい笑顔を浮かべた。

「清掃作業は、僕たちが彼女たちの強さを、五感で体験する唯一の機会だ。それは、決して絶望的な作業なんかじゃない。それは、僕たちが彼女たちを理解し、彼女たちに敬意を払うための、最も重要な儀式なんだ」

僕が絶望を感じていた清掃作業は、日野さんにとって、そして、この学校の男子生徒たちにとって、全く違う意味を持っていたのだ。

僕は、部屋の隅に置かれた清掃用具を手に取った。
それは、もはや重い負担ではなかった。
それは、僕が彼女たちの世界に踏み込むための、大切な鍵なのだ。

僕は、再び搾乳室へと向かった。
扉を開けると、まだ日野さんが清掃を続けていた。

「日野さん、交代します。俺もやります」

日野さんは、僕の顔を見て、少し驚いたような表情を浮かべた。
そして、僕の顔に、以前のような絶望の表情ではなく、力強い決意が宿っていることに気づくと、彼はにこやかに微笑んだ。

「そうか。じゃあ、一緒にやろうか」

僕たちは、二人で搾乳室の清掃を始めた。
濃厚な香気と、粘着質な分泌物の感触は、相変わらず僕の感覚を刺激する。
しかし、僕の心は、もはや絶望に支配されてはいなかった。
僕の心には、日野さんから教わった、彼女たちへの深い共感と、尊敬の念が宿っていた。

僕は、硬いブラシで床をゴシゴシと擦る。
それは、単なる清掃作業ではない。
それは、彼女たちの生命力の痕跡を、僕自身の手で感じ取る作業なのだ。

僕たちは、夜遅くまで、搾乳室の清掃を続けた。
清掃を終え、部屋の扉を閉める時、僕は日野さんにこう尋ねた。

「日野さん、僕は、この学校でやっていけるでしょうか?」

日野さんは、僕の言葉に、静かに微笑んだ。

「ああ、もちろんだ。君はもう、彼女たちの世界の入り口に立っている。あとは、一歩ずつ、彼女たちの世界を理解していけばいい。君は、もう一人じゃないんだ」

日野さんの言葉に、僕は深い安堵を覚えた。
僕は、もう一人ではない。
僕には、僕と同じように、この規格外の乙女たちを支えようと奮闘している、先輩がいる。

僕は、重い足取りで自分の部屋へと帰った。
しかし、その足取りは、以前のような絶望に満ちたものではなかった。
そこには、明日から始まる新たな生活への、ほんのわずかな希望と、そして、力強い決意が宿っていた。

僕は、部屋の机の上に置かれた記録ノートを開いた。
ノートには、まだ何も書かれていない。
僕は、ペンを手に取り、震える手で、今日の出来事を書き始めた。

「…電脳空間の洗礼。青山さんの胸の重さ…」

それは、僕の心に刻まれた、新たな希望の記録だった。
僕は、明日から、この記録ノートを、彼女たちの成長の軌跡だけでなく、僕自身の成長の軌跡として、記していくことを決意した。

明日から、僕の記録係としての本当の生活が始まるのだ。
僕は、ペンを握りしめ、明日への希望を胸に、静かに目を閉じた。


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