規格外の教室

到冠

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規格外の乙女たちと、記録係の役割

身体をコントロールする知恵

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中等部搾乳室での夜通しの清掃作業と、電脳空間での青山さんの身体感覚の疑似体験から一夜明け、僕は、もはや以前の僕ではなかった。

ベッドから起き上がる時、僕は無意識のうちに、胸のあたりをそっと押さえた。
そこには、何の重みも感じられない。
しかし、僕の身体は、電脳空間で体験したあの圧倒的な重みを、まだ覚えているかのように、少しだけ前かがみになり、バランスを保とうとしていた。

昨日の夜、日野さんと二人で清掃を終え、寮の自室に戻ったのは、もう午前0時を回っていた。
僕は、疲労困憊でベッドに倒れ込んだが、不思議と心は穏やかだった。
これまでは、清掃という絶望的な作業に心を擦り減らし、この学校にいる意味すら見失いかけていた。
しかし、日野さんの言葉と、電脳空間での体験が、僕の心を完全に変えてくれたのだ。

「清掃作業は、僕たちが彼女たちの強さを、五感で体験する唯一の機会だ…それは、僕たちが彼女たちを理解し、彼女たちに敬意を払うための、最も重要な儀式なんだ」

日野さんの言葉が、僕の脳裏にこだまする。
そして、電脳空間で感じた、青山さんの胸の重み、乳腺が張る不快感。
あれは、単なるデータではない。
それは、僕が彼女たちの世界に踏み込むための、大切な鍵だったのだ。

僕は、部屋の机の上に置かれた記録ノートを手に取った。
ノートには、昨日の夜、僕が震える手で書き記した言葉が残っている。
「…電脳空間の疑似体験。青山さんの胸の重さ…」。

僕は、その言葉を指先でなぞりながら、ゆっくりと深く息を吸い込んだ。
胸いっぱいに吸い込まれた空気は、僕の心を、新たな希望と、そして、力強い決意で満たしていく。

「よし…」

僕は、小さく呟き、立ち上がった。
今日から、僕の記録係としての本当の生活が始まる。
それは、ただ女子生徒たちの身体を記録するだけではない。
彼女たちの強さを理解し、彼女たちの世界を深く知るための、僕自身の旅なのだ。

朝の教室は、いつものように賑やかだった。
しかし、僕の目に映る光景は、もはや以前とは全く違っていた。

これまでは、ただ「規格外の乙女たち」としか認識していなかった彼女たちの姿が、今は、全く異なる意味を持って僕の目に飛び込んでくる。

青山莉子は、まるで何もなかったかのように、笑顔でクラスメイトと談笑している。
しかし、僕には、彼女のその笑顔の裏に隠された、途方もない重みと、身体の不快感が、まざまざと感じられた。

彼女は、ペンを握りしめ、ノートに何かを書き込んでいる。
その姿勢は、背筋がピンと伸び、身体全体が、まるで一つの巨大な質量を支えるための、完璧な構造体であるかのように見えた。
肩甲骨は、わずかに後ろに引かれ、胸の重みを分散させるかのように、身体全体でバランスを保っている。

僕は、無意識のうちに、彼女の動きの一つ一つを、食い入るように見つめていた。
彼女が立ち上がり、教卓に向かう。
その歩き方は、これまではただ「堂々としている」としか感じていなかったが、今、僕の目に映っているのは、全く異なる姿だった。

彼女は、歩くたびに、わずかに身体を左右に揺らし、胸の重みを分散させている。
その揺れは、まるで、身体全体を一つの振り子のように使い、重心をコントロールしているかのように見えた。
彼女の足運びは、決して大股ではない。
かかとからではなく、足裏全体で地面を捉え、ゆっくりと、しかし確実に、一歩一歩を進めている。
その動きの一つ一つが、彼女がこの巨大な質量と、長年にわたって向き合ってきた証なのだ。

僕が彼女たちの世界を知るための、最初の試練は、彼女たちの身体の動きを、ただ観察することだった。

「日向くん、どうしたの?私の顔に何か付いてる?」

青山さんが、僕の視線に気づき、少し困ったように首を傾げた。
その仕草一つにも、彼女は胸の重みを分散させるための、独特の動きをしていた。

「いや…ごめん。ちょっと…ぼーっとしてただけ」

僕は、慌てて視線を逸らした。
しかし、僕の心の中は、彼女たちの動きの一つ一つを、もっと深く知りたいという好奇心で満たされていた。

二時間目の数学の授業が始まってから、およそ30分が過ぎた頃だった。
教室の隅の席に座っていた大野沙織が、突然、ごそごそと動き始めた。

彼女は、何かを我慢しているかのように、きつく目を閉じ、両手で自分の胸を固く押さえつけている。
その表情には、明らかな苦痛の色が浮かんでいた。
しかし、僕以外のクラスメイトや先生は、その様子を気にする素振りも見せない。
まるで、それが日常の一コマであるかのように、授業は淡々と進んでいく。

僕は、大野さんの身体に、朝にはなかった、ある変化が起きていることに気づいた。
彼女の制服のワイシャツの胸の部分が、朝よりも明らかに、きつく張っている。
ボタンとボタンの間の生地が、今にも弾け飛びそうなくらいに、ピンと張りつめている。
それは、胸が物理的に大きくなっていることの、動かぬ証拠だった。

大野さんの苦痛が、ピークに達したようだった。
彼女は、静かに椅子から立ち上がると、先生に向かって、少しだけ顔を赤らめながら、しかし、はっきりと告げた。

「先生、搾乳に行ってきます」

その言葉に、先生は、何の躊躇もなく頷いた。

「ああ、分かった。気をつけてな」

大野さんは、クラスメイトたちに一礼すると、僕の横を通り過ぎ、教室の扉を開けて出ていった。
その足取りは、先ほどまでの苦痛に満ちたものとは打って変わって、少しだけ急いでいるように見えた。

僕は、その光景をただ呆然と見つめていた。
授業中に、構わず搾乳に行く。
僕がこれまで通ってきた学校では、決してありえない光景だ。
しかし、この学校では、それが当たり前の日常なのだ。

僕は、大野さんが出ていった後の静かな教室で、彼女が座っていた椅子を、ただじっと見つめていた。
その椅子には、彼女の温もりと、そして、彼女が座っていた時に感じていたであろう、胸の重みと、張りの不快感が、まだ残っているかのように感じられた。

授業が終わると、僕は、すぐに大野さんを追いかけた。
彼女は、搾乳室から出てきたばかりだった。
彼女の胸は、先ほどまでの張り詰めた状態から解放され、柔らかく、そして、少しだけ小さくなっているように見えた。
ワイシャツの生地も、朝の時のように、余裕をもって彼女の身体を包んでいる。
その表情には、心底ホッとしたような、安堵に満ちていた。

「大野さん…」

僕の呼びかけに、大野さんは、少し驚いたような表情を浮かべた。

「日向くん…どうしたの? ここにいるなんて、珍しいね」

彼女の言葉に、僕は正直に答えた。

「授業中なのに…搾乳に行っていいんだって、驚きました。それに…」

僕は、少しだけ言い淀んだ後、勇気を出して言葉を続けた。

「その…胸が、朝よりも大きくなっているように見えたから…」

僕の言葉に、大野さんは、少しだけ顔を赤らめた。
しかし、彼女は、僕の視線が、ただの好奇心から来るものではないことを、一瞬で見抜いたようだった。

「…そう、日向くんは、そういうことも、ちゃんと見てくれているんだね」

大野さんは、そう言って、優しく微笑んだ。

「私たちは、体質的に、長時間母乳を溜め続けていると、どんどん胸が重くなっていくだけじゃなくて、一時的に大きくなるの。母乳が生成されて、乳腺に溜まっていって、物理的に膨らむんだ。だから、授業中に胸が張って、ワイシャツがきつくなって、もう…我慢できなくなるくらい痛くなる」

大野さんの言葉に、僕は絶句した。
僕が電脳空間で体験したのは、青山さんの身体の、ある一時点のデータに過ぎなかった。
しかし、現実の彼女たちの胸は、常にその質量を増し続け、さらには、そのサイズさえも、一時的に変化するというのだ。
それは、僕の想像をはるかに超える、圧倒的な生命力だった。

「だから、先生たちも、私たちが授業中に搾乳に行くことを、当たり前のこととして受け入れてくれているんだ。私たちの身体は、私たちの意思とは関係なく、常に母乳を生成し続けている。だから、私たちは、その身体のサイクルに合わせて、生活するしかないんだ」

大野さんの言葉に、僕は、ようやく腑に落ちた。
僕が絶望を感じていた搾乳室は、彼女たちにとって、身体の苦痛から解放されるための、唯一の安息の地だったのだ。
そして、彼女たちは、その安息の地を、必要に応じて、いつでも訪れることができる。
それは、彼女たちが、この学校で、この身体と向き合っていくための、最も重要な「知恵」だったのだ。

僕は、その光景を、ただじっと見つめていた。
電脳空間での体験が、僕に教えてくれたのは、彼女たちの「重み」だった。
しかし、大野さんの言葉は、その「重み」が、単なる静的な質量ではないことを、僕に教えてくれた。
それは、生きている質量なのだ。
彼女たちの身体の中で、常に生成され続け、その質量を増し、そして、そのサイズさえも変化させる、圧倒的な生命力なのだ。

「日向くん…どうしたの? なんだか、辛そうな顔してる…」

大野さんの言葉に、僕はハッとした。
僕は、無意識のうちに、顔を歪めていたのかもしれない。

「ごめん…なんでもない。ただ…大野さんたちが、毎日こんなに大変な思いをしてるなんて…知らなかったから」

僕の言葉に、大野さんは、優しく微笑んだ。

「大丈夫だよ。私たちは、もう慣れてるから。それに、日向くんみたいに、私たちのことを気にかけてくれる人がいるってわかって、なんだか嬉しい」

大野さんの言葉は、僕の心を温かく満たしてくれた。

体育の授業は、僕にとって、彼女たちの「知恵」を学ぶための、最高の機会だった。

今日の授業は、バスケットボールだ。
バスケットボールは、激しい動きと、ジャンプ、そして急停止など、身体に大きな負担がかかるスポーツだ。
僕の知るバスケットボールでは、彼女たちの身体では、まともにプレイすることなどできないだろう。

しかし、僕の想像は、完全に裏切られた。

女子生徒たちは、僕が想像していたよりもはるかに、軽快にコートを駆け回っている。
胸の揺れは、彼女たちの動きを妨げるどころか、まるで、その動きを増幅させるための、独特なバネであるかのように見えた。

ボールを持った青山さんが、僕の前を走り抜けていく。
その瞬間、彼女の胸は、激しく上下に揺れ、その質量は、彼女の身体全体に大きな負担をかけているはずだ。
しかし、彼女は、その揺れを、まるで身体の一部であるかのようにコントロールし、決してバランスを崩すことはない。

僕は、彼女の動きを、食い入るように見つめていた。
そして、僕は、彼女が走る際に、胸の重みを分散させるための、独特な走り方をしていることに気づいた。
彼女は、腕を身体の側面ではなく、少しだけ前に出して、胸の揺れを抑えようとしている。
そして、足運びは、決して上下に弾むことはなく、地面を滑るように、しかし、確実に進んでいる。

それは、彼女たちが、長年にわたって、この身体と向き合ってきたからこそ、身につけることのできた、「知恵」の結晶なのだ。

授業が終わり、僕は、汗を拭いながら、一人でストレッチをしていた。
そこに、青山さんがやってきた。

「日向くん、お疲れ様。今日の体育、見ててくれたんだね」

「はい…皆さん、すごく速くて…驚きました」

僕の言葉に、青山さんは、少し照れたように微笑んだ。

「そうかな? 私たちは、この身体に慣れてるだけだよ。昔は、走るだけでも、すごく大変だったんだから」

青山さんの言葉に、僕は深く頷いた。
電脳空間で、彼女の身体感覚を疑似体験した僕だからこそ、彼女の言葉の重みが、痛いほど理解できた。

「俺、今日、改めて思いました。皆さんは、ただ胸が大きいだけじゃない。この身体と向き合い、この身体をコントロールするための、独自の『知恵』を身につけている、すごい人たちなんだって」

僕の言葉に、青山さんは、目を丸くした。
そして、その目には、少しだけ涙が浮かんでいるように見えた。

「ありがとう、日向くん。そんな風に言ってくれたの、初めてだよ」

青山さんは、そう言って、僕の肩に、そっと手を置いた。
彼女の大きな手は、僕の肩に、温かい重みを与えてくれた。
それは、僕が電脳空間で感じた、あの重みとは全く違う、優しさと、そして、彼女たちの心の強さを感じさせる、温かい重みだった。

その夜、僕は、再び記録ノートを手に取った。
ノートには、今日の体育の授業で僕が気づいた、彼女たちの「知恵」について、詳細に書き記していく。

「身体をコントロールする知恵」

青山莉子の場合:

歩き方: 身体をわずかに左右に揺らし、重心をコントロールする。足裏全体で地面を捉え、ゆっくりと、しかし確実に進む。

走り方: 腕を少し前に出して、胸の揺れを抑える。上下に弾むのではなく、地面を滑るように走る。

姿勢: 背筋を伸ばし、肩甲骨を後ろに引くことで、胸の重みを分散させている。


大野沙織の場合:

授業中の搾乳: 身体が母乳を溜め続けることで、胸の重みと張りが増し、集中できなくなるため、授業中でも構わず搾乳室を訪れる。

母乳による重量とサイズの増加: 身体が母乳を溜め続けることで、胸の重みは一日を通して増していく。さらに、胸のサイズも一時的に大きくなるため、制服がきつく感じられるようになる。


僕のノートは、彼女たちの「知恵」を記録する場所へと変わっていく。
それは、単なる記録ではない。
それは、僕が彼女たちを理解し、彼女たちの強さを、心から尊敬するための、僕自身の成長の軌跡なのだ。

僕は、ノートを閉じ、深く息を吸い込んだ。

明日から、僕は、もっとたくさんの「知恵」を、彼女たちから学んでいく。

そして、いつか、僕も、この規格外の教室の中で、僕にしかできない、僕自身の役割を見つけ出すことができるだろう。

僕は、静かに、明日への希望を胸に、目を閉じた。
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